新しい仲間の存在に浮き立つ12人――ツキノ芸能プロダクション」所属『劇団アルタイル』ショートストーリー連載第15回！

2.5次元芸能プロダクション「ツキノ芸能プロダクション」に設立されたバラエティタレントユニット『劇団アルタイル』。歌もダンスもお芝居も……というマルチなタレント活動をする彼らの日々を、ショートストーリーと挿絵でお届けする連載です。

ついにオーディションが終了し、劇団アルタイルの追加メンバーが決定しました。今回は、新しい仲間の存在に、そわそわと浮き立つ現メンバー12人の様子をお届けします。

劇団アルタイル『新メンバー決定！』
【あらすじ】
オーディションが終了し、ついに劇団アルタイルに加入する新メンバーが決定した。浮き足たつ現メンバーは、さっそく合格者のプロフィールを確認することに……。

【ストーリー】
タツヒコが会議室の扉を開けたとたん、待ち構えていたヨウスケはいの一番、ひょこっと立ち上がった。
「来た来た、タツ～！」
ヨウスケだけではなかった。集まったアル劇メンバーはみんな、興味津々な面持ちでタツヒコに注目している。
「みんな、待たせて悪かったな」
「ほんとほんと、待ちくたびれちゃいましたよ」
トウマが悪びれない様子で言って、笑う。
「お疲れさまです、タツヒコさん！　それで……決まったんですよね？」
リンタロウの問いかけに、タツヒコは頷いた。
「ああ、新メンバー確定だ。今からみんなにもプロフィールを見せる」
「おお～！」
口々に、嬉しそうな声が上がる。

「最終的に誰が選ばれたんだろう。楽しみだなぁ！」
「イツキさん、いーなー。やっぱ俺も審査員やりたかった！」
「大丈夫。いつか、トウマにもトムテさんの導きがあるよ」
「え、えーと……」
「雑談はあとにして早く見せてください、タツヒコさん」
ヒジリの促す声に、タツヒコは肩にかけたトートバッグからファイルを取り出し、書類を会議室の机に広げた。
「新メンバーはこの７人だ」
身を乗り出すようにして、全員が書類に注目する。

「げっ！」
「ノブアキだ」
真っ先に声を上げたのは、イズモとリツだ。
「ハァ……アイツ、マジで受かりやがった……」
「ノブアキすごい」
「この、麻布ノブアキってひと、イズモとリツの知り合いなのか？」
首を傾げるマキに、うんざりした顔のまま、イズモが書類をつついた。
「ここに書いてある経歴見ろよ」
「ツキプロ子役部門から移籍……ああ、なるほど」
「オーディションの日、絶対受かるからよろしく、って連絡が来てたよ」
イズモと打って変わった笑顔で、リツがはにかむ。
「へえ、すごい自信だな」
「俺は速攻ブロックと着拒した」
「……いや、イズモ。いくらなんでもそれはひどいだろ」
「マキはアイツのウザいポジティブシンキングっぷりを知らねーから、そういうこと言えんだよ！」

「あ、このひと！」
リンタロウが驚いた声を上げ、書類を指した。
「見てください、イツキさん。蔵前カズキくん、残ってます……！」
「あ、ホントだ！　よかったね、リン」
「もしかして、リンに憧れて応募しましたーっていう？」
「そうそう」
「あのときは、ホントにビックリしたなぁ……」
「いろいろ面倒見てやれよ～、リン」
「はいっ！」
「あ、トウマが書類を持ってきてくれたとき、ちょうど選考してた子も残ってるね。ええと、駒込タイキくん？」
「うわぁ……そんな気はしてたけど……」
「？　どうかした？　もしかして、知り合いとか？」
イツキの問いに、トウマは思い切り首を横に振った。
「いやいやいや！　まさか！　ないない！　ないですって！」
「そう……？」

「おい、イツキ。お前が言っていたモデル上がりは、コイツか？」
「あ、そうそう。中野タツヤくん。ヒジリ、知ってる？」
「いや……やっぱり、顔を見てもピンと来ない。ということは、そこまで露出はしていないんだろう」
「ヒジリは相変わらず手厳しいね。でも僕はこの子のこと、少し気になるな。彼にはどこか、近しいものを感じるよ」
「は？　ユウリと、近しい……？」
「どういうことだよ。まさかこいつ、新手の妖精か……？」
サクヤとイズモが神妙な面持ちで顔を見合わせると、ユウリはいっそう意味深に微笑む。
「ふふふ。会えるのが楽しみだな」
「やめろよ！　オマエが笑うとなんかこえーよ！」

「なあなあ、俺はこのひとがめちゃくちゃ気になるっ！」
そう言って、ヨウスケが、書類を一枚ピックアップする。
「見ろよ、元スタントマンだって！　すっげー！」
「ああ、森下ショウゾウさんか。確かに、お前と気が合いそうだったよ」
「マジで？　タツにそう言われると、期待が膨らむなあ！」

「ええと、ミカドさんは気になるひと、いますか？」
さりげなくリンタロウが話を振ると、ミカドは「そうだな」と少し考え込んだあと、書類を指した。
「彼かな、両国ジュンペイくん。ちょっと気負ってる感じがある。この固さが初々しくて、気になるな」
「へー。どれどれ？　この中ではわりと地味……と見せかけて、特技が剣道とバイオリンと……ほかにもたくさん！　ふんわりセレブの香りっ！」
「ト、トウマくん、トウマくん」
「なるほど。そういった要素が、彼の表情に影響を与えている可能性はあるね。なんにせよ、もう少しリラックスしてもらえたらいいな」

書類をためつすがめつしながら、わいわいと、話は尽きない。
（新メンバーか）
はしゃぐメンバーの様子を観察しつつ、タツヒコはちいさく息をついた。
現在12人。新たに7人が加入し、総勢19人となる。ツキプロのユニットとしては大所帯の部類だ。
（人数が増えれば、増えたなりにいろいろあるだろうな）
大変なこと、そしてもちろん、楽しいことも。
（だがまあ、始まる前から悩んでいても仕方がないな。考え過ぎずに、ひとまず行動してみることだって、大切なんだと俺は学んだ）
去年の今ごろの自分なら「リーダーは荷が重い」と、ヨウスケにこぼしていたかもしれない。
（でも、俺たち全員、去年までとは全然違う）
足りない部分は、伸びしろになる。
知らないことは、世界を広げる。
色々なことを経験して、弱点だって強さにもなることもあると知った。
だから、今はただ、期待感で胸を膨らませていればいい。
そして、彼らが寮にやってきたら開口一番、メンバーみんなでこう言って迎えよう。

――輝ける一番星を目指す場所。劇団アルタイルに、ようこそ！