『ラブライブ!』の音楽を手掛けたプロデューサーは、新たな声優ユニットで何を見たのか?『きみの声をとどけたい』木皿陽平プロデューサーインタビュー
2017年8月25日より公開される映画『きみの声をとどけたい』。「キミコエ・オーディション」と題し、大々的に行ったオーディションで選ばれた6名が声優として花開く瞬間となります。
選ばれた6名はNOW ON AIRというユニットで活動中。このNOW ON AIRの楽曲をプロデュースしたのが、『ラブライブ!』などの音楽を手掛けた、ランティスの木皿陽平さんです。
今回、新たに取り組んだ声優ユニット・NOW ON AIRと『きみの声をとどけたい』との関わり方を、プロデューサー目線からお聞きしました。
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──まずは『きみの声をとどけたい』のプロジェクトに参加することになった経緯を教えてください。
木皿陽平さん(以下、木皿):最初にメインの子たちのオーディションをやるという話が来たんです。その子たちがユニットとして活動する話だけ聞いていました。
イメージイラストとシナリオを確認させていただいたのみで、作品についてはまだ全貌がよくわかっていませんでしたね。
──実際にプロジェクトが始動してからはどういったことをされていたんですか?
木皿:基本的には彼女たちの楽曲は全部僕が制作プロデュースしています。そのほかのユニットとしての活動についてはアドバイスできる範囲ではしていますが、基本は音楽主体です。
──こういったオーディションはこれまでに経験されたことはありましたか?
木皿:いくつかの審査の中のひとつで審査員を担当したことはありますが、ここまで多くの審査に関わったのは初めてかもしれません。
──経験されてみてどうですか?
木皿:大変ですし、人の人生を左右するので気力体力使いますね。
──これだけ長い期間やっていると情も入ってきますか?
木皿:もちろんそれはありますね。15名くらいに絞った後、何か月間かレッスンをして合宿もやって、というのを間近に見ているので、もう全員に受かってほしいくらい。
ですけど、そういうわけにもいかないので悩みましたね。責任ある決断をしなければならなかったので大変でした。
【ニュース】ファイナリスト15人が大奮闘! 次世代ヒロイン声優発掘プロジェクト「キミコエ・オーディション」3次審査合宿1日目に密着! https://t.co/mKdoAKsyAz pic.twitter.com/HHk5rNyuIz
— アニメイトタイムズ公式 (@animatetimes) 2016年8月3日
──木皿さんと言えば外せないのが『ラブライブ!』ですが、『ラブライブ!』での経験は本作にも活かされているのでしょうか?
木皿:どうですかね。女子が集まったら大変だなということはわかっていました(笑)。30過ぎのおっさんには未知の生物が集まっているようなものなので。そういう意味では適度な距離の取り方とかは、活かされているのかもしれません(笑)。
それはさておき、多人数でどう美しいものを見せていくかという点においては、『ラブライブ!』をやっていてよかったなと思います。
──やはり一人一人、同じレベルで気にかけてあげないといけないものですか?
木皿:それはありますね。ひいきは絶対してはいけません。
『ラブライブ!』の経験もあって、「今こういう状態なら、この人はどこまでいける」というのが見えるようになったかなと思います。
──NOW ON AIRの個々の成長はそれぞれどう思いますか?
木皿:すごく成長していますよ。全員オーディションのときよりは垢抜けています。
服装だけでなく、みんなかわいらしく、美人になっています。歌も成長していますし、若さというポテンシャルを感じます。
聴いたことのあるような優しさとか懐かしさ
──先日NOW ON AIRにインタビューさせていただいた際、お仕事も増えてきて人生が変わったというメンバーもいました。今回のオーディションをやった意義はどのように考えていますか?
木皿:声優さんになる道って色々あると思うんですけど、ここまで明確に役がある形って一般公募だとあまり聞きませんよね。
間口を広げるというのはいいことだし、ちゃんと役に向かってレッスンをしてくれた上で選ばれるのは、その人の運だけじゃなく実力が見られます。
そういう意味では、このやり方はとても有意義だと思います。審査員やスタッフはすごく大変ですけど(笑)。ただホイホイとはできませんね。みんな、相当準備してました。
──準備段階から考えるとどれくらいの期間になりますか?
木皿:1年くらいやっているんじゃないでしょうか。オーディション期間だけでも半年くらいやってますので、かなり長かったですよ。
書類審査とかも膨大な量をちゃんと見ていましたし。最初はひたすら声と歌を聴き続けていたのを覚えています。
──映画も含めてこのプロジェクトに対する印象はいかがでしたか?
木皿:最初にキャラクターイラストだけ見せてもらったとき、ちょっと想像がつかなかったんです。最近のアニメではあまりみない感じのテイストだったので。
完成品を見て、改めてあのキャラクターでよかったなと思いました。シナリオを読ませていただいたらすごくいいお話でしたし、コトダマって文字でしかイメージがなかったので、実際どう描かれるのか想像しながら仕事をしていました。
この作品自体は小さなコミュニティの中での心温まるお話なので、壮大なお話とはまた違う良さあると思います。曲も優しいイメージを統一して持ってやっていました。
──プロジェクトに参加されて、ご自身の目標はありましたか?
木皿:僕らの仕事は、映像を作る方々がその映像をより良くするための音楽を作ることなので、それを叶えることがまず一番でした。
それを上回るようなものが提示できればなとも思っていたんですけど、この作品を観る人が求めるものは、奇をてらったものではなく、優しさや、どことない懐かしさだと思ったんです。
そういう気持ちが自然と湧き上がるようなものを提供することを目標としました。
──それぞれの曲はどのように制作されたんですか?
木皿:基本的に伊藤尚往監督から「このシーンで使う曲を作ってください」っていうのが来て、何度も何度もやり取りしました。監督からは一貫して“耳なじみのいい曲”を要求されましたね。
具体的には、三森すずこさんの歌う子守歌は、クラシックの曲ベースに、とか。
僕は「懐かしさ」という言い方をその時は思いつかなかったんですけど、耳なじみの良さというのは、聴いたことのあるような優しさとか懐かしさとかそういうものなんだろうなと理解しましたね。
すごいいいお話でした。泣けますよ。
──プロデューサーという立場は、曲作りにどこまで関わるのでしょうか?
木皿:歌物は全部僕が発注からレコーディングからミックスまで全部チェックして、ディレクター的なことはやっていました。
──今回特に曲に込めた想いはありますか?
木皿:具体的には、あまりありませんね。僕の仕事は、監督の想いを形にすることなんです。
打ち合わせしていても話がとっちらかりがちだったんですが、熱意はすごく伝わってきたので「何とかいいものを作ろう」と思ってやっていました。
NOW ON AIRのみなさんにとって、ひとつのゴールであり、ひとつのスタートとなる特別な作品になると思ったので、彼女たちの熱量を全て受け止めて歌という形にする覚悟を持ってやっていました。
──その覚悟の中、レコーディングしてみてどうでしたか?
木皿:とても気合を感じましたね。気合を感じ過ぎた故にレコーディングで「もっとこうできますか?」っていう要求が強すぎたりして、それに対応しきれなくなってパニックになっちゃうような場面もありましたが……。
みんな、作品のことをすごく理解してくれていました。他の役者さんだと、もちろん理解はしてきてくれますけど、ひとつの作品に対してここまでの熱量をかけるっていうのは難しいと思うんです。
そういう意味でいうとNOW ON AIRのみなさんはこれのために頑張っているので、とても熱量を感じられました。
──数多ある作品の中で本作の立ち位置とは何でしょうか?
木皿:わかりやすい萌え系とはまた違いますからね。観た結果としてNOW ON AIRの6人が好きになる作品なんじゃないかなと思います。
劇中の関係性と実際の彼女たちの関係性はまた違いますけど、作品を通じてNOW ON AIRが気になってくるんじゃないかと思います。いい感じの青春映画ですよね。
──本作は、コトダマがテーマにもなっていますが、ご自身がコトダマの力を感じた瞬間はありますか?
木皿:コトダマって本当にあると思っている部分もあって。口に出すことでやらなきゃいけなくするとか(笑)。
ちゃんと目標を口に出して人に言うことで自分を追い込むという意味で、口に出すことはありました。
想いを秘めているよりは、口に出した方が願いが叶ったり目標が達成したりするんじゃないかなと思います。
──木皿さんが本作に関わった中で届けたかったものは何でしょう?
木皿:この作品の音楽を聴いた人がすごく温かい気持ちになってほしいし、最後の「キボウノカケラ」と言う曲はさわやかな清涼感とかを感じてほしいです。
多幸感にあふれてはいないんですけど、ほんのり優しくて、観た後にすがすがしい気分になってくれたらなという風に思っていました。
──では最後に、完成品をご覧になった手ごたえはいかがですか?
木皿:すごいいいお話でした。泣けますよ。色々な人が同じように温かい気持ちになってくれて、最後に「キボウノカケラ」が流れて、すごくさわやかな気持ちで映画館を出られるんじゃないかなって思っています。
[インタビュー/石橋悠]
映画『きみの声をとどけたい』
8月25日(金)TOHO シネマズ新宿ほか全国ロード―ショー
【ストーリー】
舞台は湘南・鎌倉―。女子高生たちの悩み、葛藤、そして夢。届けたい“声(想い)”-。海辺の町、日ノ坂町に暮らす行合なぎさは将来の夢が見つからず少し焦っている16才の少女。
『言葉にはタマシイが宿っているんだよ、コトダマって言ってね――』
小さいころ祖母から聞いたコトダマの話をなぎさはある出来事から信じていた。 ある日、なぎさは何年も使われていないミニFMステーションに迷い込み、出来心からDJの真似事をする。すると、偶然にも放送されたコトバは 思いもかけない人に届いていた―。
【キャスト】
片平美那/田中有紀/岩淵桃音/飯野美紗子/神戸光歩/鈴木陽斗実/三森すずこ/梶裕貴/鈴木達央/野沢雅子
【スタッフ】
監督:伊藤尚往
脚本:石川学
キャラクターデザイン:青木俊直
アニメーションキャラクターデザイン:髙野綾
音楽:松田彬人
制作:東北新社 マッドハウス
製作:「きみの声をとどけたい」製作委員会
イメージソング「この声が届きますように」(NOW ON AIR)
http://kimikoe.com/movie
>>「きみの声をとどけたい」公式サイト