田中理恵さん&KENNさんがロボットに勝っていることは……? Hulu配信海外ドラマ『ヒューマンズ』声優インタビュー
料理、洗濯、掃除、家事全般から介護まで、生活のあらゆる面を担ってくれて、文句も言わない。そんなロボットがいてくれたら……。
10月11日(水)よりHuluプレミアで配信される作品『ヒューマンズ』では、現代に“シンス”と呼ばれる人型のロボットが普及した世界が描かれます。
イギリスでも大ヒットし、ついに日本に初上陸した海外ドラマでもある本作。本稿では、日本語吹き替え版の声優として参加しているシンスのアニータ役・田中理恵さんと、謎の青年・レオ役のKENNさんに行ったインタビューを通して、作品の魅力に迫ります。
お二人が演じる役柄についてはもちろん、ロボットや人工知能へのイメージなど、話は多伎にわたりました。
ロボットが身近になると人間関係はどうなる?
──まずは、『ヒューマンズ』の紹介も含めて、お二人が作品に触れての感想をお願いします。
アニータ役・田中理恵さん(以下、田中):現在の世界観は変わらず、その世界でロボット(シンス)が使用人として家庭に一台はある、みたいなイメージを想像していただけると良いと思います。
レオ役・KENNさん(以下、KENN):しかもそのシンスが、車くらいの値段で買えるんですよ。体が不自由な方のために政府から派遣されたりもします。
田中:それが普通になっている世界なんですよね。どんどんバージョンアップしていくので、古いシンスは廃棄されていくのが当たり前みたいな。国で普通にシンスが定着している印象ですね。
私たちからしてみると、まだ非現実的な世界なんですけど、パソコンが人型になったり、いつかの未来にはそういうことがあるのかなと思っています。ロボットが何でもやってくれるようになって、医療技術も人間に勝っているみたいな。
その中で一般家庭のとある家族がシンスを購入して、そこから不可解な出来事が色々起こってくるというストーリーから始まります。
KENN:シンスは、見た目が本当に人間と遜色ないくらいの姿形なんです。関係性というか、メンタル的な繋がりを持ちながら家族の中に入って行動していて。そういうところも不思議で、人間関係がすごくリアルですね。
田中:そうですね。そこからどうなるのか……。
KENN:どれぐらいネタバレして良いのかなって迷ってます(笑)。
作品を見た印象としては、田中さんが仰った通り、現在っぽい時代の中での出来事で、家庭によって関わり方や使い方が全然違うというのが僕の中ではすごく新鮮でした。
「もしこういうロボットがいたら、こういう風になるんだ」「こういう部分を手伝ってもらえる」「すごく便利」って思いましたね。
でも人間関係の中で、逆に生活しづらくなってしまったりする部分も、もしかしたらあるのかもしれないなと思いました。だからこそ、人間同士の絆や想いが逆に出てくると言うか。『ヒューマンズ』には、それが如実に現れているなと感じました。
田中:人間同士の関わり合いの中にシンスが親密に、密接に関わってくると人間関係はどうなってくるんだろうっていうのを、すごく考えさせられるドラマになってます。
KENN:ロボットが人間と同じ形をしているからこそ、どう接して良いんだろうっていう。
──私も作品を拝見させていただきましたが、ロボットが人間の形をしているってだけで、あんなに戸惑うんだなっていうところがよく分かりました。
田中:他人と生活している様な気持ちになりますからね。「この人は……!? そうかシンスか!」みたいな(笑)。
KENN:純粋な小さい子は、シンスをすごく慕うんですけど、ある大人は「これはロボットだから、そんなに人間扱いはしない方が良い」っていう考え方なんですよね。だから家庭にシンスが一体いるだけで、シンスに対する見方が変わってきちゃうのかなとも思いました。
田中:忙しい共働きの家族から見ると、召使いの様にご飯作ってくれたり、身の回りのお世話をしてくれているシンスは、「すごいなー」って思いますね。
KENN:すごいコストパフォーマンスですよね。数百万円で、車買う感覚ですから。
田中:充電も自分でしてくれますからね。すごいなって思います。
何か裏がありそうなアニータ、誰よりも人間臭いレオ
──アニータとレオの魅力は、どんなところだと思いますか?
田中:忠実な家庭用のロボットっていう印象をまず受けたんですけど、でもちょっと普通の一般家庭で使用しているロボットとは違う雰囲気を醸し出してるんですよ、1話から。
なんかちょっと怪しい、サスペンスなことが起こりそうみたいな(笑)。
アニータってそういうキャラクターですよね。何か企んでるような、無表情の中にも、丁寧語の中にも何か含んでる様な感じに見える。
「この女、なんか危ないんじゃないか!?」みたいな不穏な空気を家庭に持ち込んでいるというか。影を落とすみたいな、そういうキャラクターの演出をされてますよね。
アニータは、ちょっとミステリアスな感じの印象のキャラクターですね。
──KENNさんが演じるレオはいかがですか?
KENN:レオは、ある意味誰よりも人間臭いのかなって僕は思っていて。
自分の中で抱えている信念を達成させるために、ひたすら突き進んで行きます。その中で考えている事や取っている行動は、ものすごくエネルギッシュで、すごく人間臭くて。
純粋というか、ひたむきというか。そういうところが魅力の一つかなって思います。
レオは決して強い人間じゃないんです。すごい力で敵をやっつけるとか、すごい頭脳で問題を解決するとか、そういうキャラクターじゃない。でも想いだけはすごく強い。
そういう部分が時に儚さも持っています。だから、周りの人たちに「なんとかしたいな」って思わせるんです。
俺は演じさせていただきながら、弱いくせに頑張っちゃうレオを見て「あー! すごい応援したい、レオのこと!」って思うんですよね。
ただ今より #Huluプレミア「ヒューマンズ」の配信をスタート!
— Hulu Japan (@hulu_japan) 2017年10月10日
人間そっくりの万能アンドロイドに、もし“意識”があったら…?@tanakarie @KKEENNNNUU https://t.co/H65D1Ggruz
アニメとは違う吹替えならではのチャレンジ
──人間そっくりのロボットということで、演じる上での難しさはあったのでしょうか?
田中:アニ—タはロボット然とした話し方をするので、最初はすごく違和感を感じながら演じていましたね。人間の形をしているのに、女優さんが話しているのに、ロボットっぽく話さないといけないんだよなって。ずっと研究していました。
最初は英語の音声を聞きながら練習して、次は音を消して、口パクだけで自分で声を当ててみたりもしました。色々試行錯誤しましたね。
第1話のアフレコは本当に何とか切り抜けたんですけど……。
KENN:いや、完璧でしたよ……! 全然とちらないし。
田中:いやいや! とちってたとちってた!(笑)
KENN:すごいなーと思ってましたね。
──田中さんのキャリアでも、そこまで試行錯誤をされたんですね。
田中:そんなにたくさん吹き替えの仕事やっているわけではないので、どうしようと思って(笑)。ずっと、ずっと練習していました。
──何か参考にされたんですか?
田中:私は元々海外ドラマがすごく好きなんです。Huluさんの配信を吹き替えでずっと見てるんですよ。
見て楽しんではいるんですけど、自分で実際やるとなると、こんなに大変な事なんだっていうことを本当に実感しました(笑)。
通常のアニメーションのアフレコの予習の倍の倍ぐらいの時間をかけて……。もっと倍かもしれない。倍の倍の倍の倍くらい時間をかけて(笑)。それから収録している感じですね。
アニメのアフレコとやっぱり全然違うんです。間合いだったり、元々の原音に合わせてやるのもあって。
日本語に訳されている台本をどういう風に合わせたら上手く合うのかなとか、考えることが多くて。試行錯誤しながら頑張ってやっていますね。
KENN:本番なんかもう、すらすらペラペラと。すごい余裕に見えてましたけど、ストイックにやられていたんですね。
田中:全然そんなことないでしょ!(笑) KENNくんは、優しいからこういう風に言ってくれていますけど(笑)。全然、もう合わない時は合わなくて「どうしよ! どうしよ!」って冷や汗出るみたいな感じでした(笑)
──KENNさんの役は、謎が多い人物ですね。
KENN:レオは、ネタバレが多くて言えないですよね。
田中:そうですね、言えないですね(笑)。
──ちょっと言える範囲で(笑)。
田中:実は私たち、アフレコが実際もうあと2話で終わるんです(笑)。だから「ネタバレしないように気をつけながら取材は受けようね」って話していました。
KENN:物語のさわりを説明すると、レオは、冒頭でアニータらしき女性と意味深なシーンがあってから、主人公たちのお話とはまた別のところで行動します。
お芝居的な面でいうと、すごく人間臭いところがポイントですね。それこそ吐息だったり、細い息遣いのお芝居が多くて。そういう部分はすごくやりがいがあるなと思いますね。
田中:アニメーションとは全然違うよね。息とかってアニメーションそんなに入れないから。「うっ!」とか「あっ!」とかは入れるけど、吹替えでは普通に息をしている「スー」とか、鼻をすすったりする音も全部入れるんです。
収録中も細かな描写が多くて、見逃しちゃうんですよね。
だから私の場合はヘッドフォン付けたりして、音量を大きめにして耳に入ってくる音を取ったりしています。こういう風にやるんだなっていう学びがありましたね。
KENN:その原音の役者さんと全く同じタイミングで、息を吸ったり吐いたりするのが面白いですよね。
田中:なるべくノイズがするような息を、あんまりアニメーションでは入れません。逆に吹替えでは、女優さんや俳優さんの芝居を忠実にやっていくというのが、新しい発見でした。
KENN:だからレオはアニータとは違って、人間臭いリアクションや息がすごく多い。そこでレオとアニータのギャップを付けているのかな、という風に僕は感じました。より人間臭くトライしたいなと思いながらアプローチさせていただいていますね。
リアルでも高解像度!?
──お二人はロボットや人工知能に対してどういうイメージがありましたか? そしてヒューマンズに関わって、そのイメージは変わりましたか?
田中:人工知能って何となく怖いなっていう印象があって。アナログな私からしてみると……まあゲームが好きなのでアナログでもないんですけど(笑)。
KENN:もうバリバリですよ!(ゲームをやる動作をするKENNさん)
田中:今すっごく嘘ついた!(笑)
一同:(笑)。
田中:(笑)。イメージのお話でしたね。人工知能って、IQが高い人とかよりも、さらに頭が良かったり、ほぼ完璧というイメージですね。そういうのが現れているのは脅威ですよね。
それがもし暴走して、一人歩きし始めたらどうなるんだろうとか、征服されないんだろうかとか、私は危機意識を感じるタイプでした。AIに襲われる怖いゲームがあって、そういう先入観があったりするんですけど(笑)。
でも、すごく便利にもなります。どうしても不自由で手伝って欲しいことも全部やってくれる。そこは凄いなって思いました。
だから一家に一人シンスが欲しいなっていうのはあるんですけど、暴走した時怖いなっていうのもあります。
KENN:僕も小さいころに『ターミネーター』(1985)を観たことがあるので。あれも機械が暴走して戦争を起こして。
田中:そうですね、あれすっごい怖いですね!
KENN:機械がすごく発達してしまうと、人間を超えてしまうみたいな怖さがある。
でも田中さんがおっしゃった通り、介護だったり、本当に困っている人たちのために何かアシストできる機能はすごくありがたいなって思います。
僕は車の免許を数年前とって、自分で車を運転しているんですけど、運転苦手なので……(笑)。
一同:(笑)。
田中:あー、そうなんだ!
KENN:運転してくれたらいいなーみたいな(笑)。
田中:アニータは、運転してましたね。あれはすごいなって思いますよね。絶対ミスらないでしょうね。
KENN:今は、自動アシストがついている車もあるから。それがどんどん発展して、ボタンひとつで目的地まで行ってくれるようになるのかなーなんて。
田中:寝てたら目的地に着いてるみたいな感じですね(笑)。
でも、やっぱり怖いですよね。そうなると一般家庭に浸透しすぎて、家庭のあり方が全部変わっちゃいそうな気がするんですよね。お母さんがご飯を作るのっていうのも無くなっちゃったりしそう。
KENN:おふくろの味がね。
田中:何か……変な感じですよね。
KENN:でも便利ですよね。今スマホとかもワードを予測で出してくれるじゃないですか。
田中:呼びかけたら「何ですか」って言ってくれますからね。
KENN:それがもっともっと発展していくんでしょうね。
でもだからこそアナログなことが、とても大事で楽しいと思えるのかもしれませんね。例えばお手紙とか。あとは自分の足を使って色んな場所に行って景色を見たりとか。
僕もゲームが好きだから、ゲームの中ですごく綺麗な景色の場所に行ったりとかするけど、自分で実際いろんな所に行って綺麗な景色見ると、「すごい解像度綺麗だなー」とか思っちゃう(笑)。
田中:あれ!? そっち!?(笑)。
KENN:違う違う! これがリアルだな、みたいな感覚でした(笑)。
人間はシンスに勝てるのか!?
──お二人はシンスに勝っていることは何かありますか?
田中:えっ! シンスに勝っていること?
──お二人とも料理とかを好きだそうですね。
KENN:いや僕なんか全然レベルが……(笑)。
田中:いやちょっと、どうだろう。シンスって本当に高性能なんですよ。プログラムどおりに何でもできちゃうんですよね。食事も作れるし、身の回りの世話も全部やってくれるんです。
KENN:田中さんのシンスより勝ってること知ってますよ。
──えっ、何ですか?(笑)
KENN:言っていいですか?
田中:何だろう?
KENN:コミュニケーション力です。
──あー!
田中:私、全然ないよ!
KENN:そんなわけないじゃないですか!
田中:いやいや!
KENN:数年前、違う現場でご一緒させていただいた時に、たまたま同じゲームにハマっていたことがあって、その時に率先して攻略ポイントを教えてくださったんです。
今回も座長としてすごくみなさんに気を遣って下さっていました。
田中:本当へなちょこな座長で(笑)。みんなに助けてもらっている感じですよ、本当に。
KENN:いつも美味しい差し入れを持って来てくださったりとか、先輩から後輩まですごいお気遣いなさってたりとか。本当にコミュニケーション力だと思いますね。……なんて俺が言っちゃいましたけど(笑)。
田中:汗ダラダラです、チクショウ(笑)。この後撮影なのに(笑)。
──(笑)。逆に田中さんはKENNさんがシンスに勝っているところは何だと思いますか?
KENN:いや、ないです(笑)。
田中:KENNくんのシンスより勝っているところは笑顔!
一同:(笑)。
田中:本当に彼もコミュニケーション力はすごく高いので。先輩にすごい気遣いをする方で、すごく気持ち良いですよね、一緒に仕事していて。そういう空気にしてくれる。
KENN:あ、泣いちゃいそう(笑)。
田中:KENNくん、ちょっと待って……! 本当に、現場で一緒になって楽しい人ですよね。KENNくんは、一緒の現場になって嬉しいなってみんなに思わせる人ですよね。
そういう空気を作ってくれる人っていうのがなかなかいません。
KENN:今日はよく眠れます……!(笑)
一同:(笑)。
──今日はありがとうございました!
[インタビュー/石橋悠]
『ヒューマンズ』作品情報
進化したテクノロジーが、人間の居場所を奪うことはできるだろうか? サム・ヴィンセントとジョナサン・ブレイクリーが描く新テレビドラマ「ヒューマンズ」は、私たちの住む現代世界を舞台に展開するスリリングな物語である。人間に代わってどんな仕事もこなす最新の高機能ロボット“シンス”は、忙しい人の必需品として世界に普及した。家庭や職場で活躍し、人と生活を共にするシンスに、人間は恐怖、情欲、憎しみ、親しみ、さらには愛情といった感情をぶつけはじめる。しかし、そんなシンスにもし“意識”があったら…?
<出演者>
ジェンマ・チャン
トム・グッドマン・ヒル
キャサリン・パーキンソン
コリン・モーガン
ウィリアム・ハート
ダニー・ウェブ
ウィル・テューダー
エミリー・バーリントン
アイヴァン・ジェレマイア
ルーシー・カーレス
テオ・スティーヴンソン
ピクシー・デイヴィス
ニール・マスケル
ルース・ブラッドリー
<プロデューサー>
ジェーン・フェザーストーン
デレク・ワックス
ラース・ランドストローム
ヘンリック・ウィドマン
クリス・フライ
<監督/演出>
ルイス・アーノルド
サミュエル・ドノバン
チャイナ・ムーヨン
<原作/脚本>
サム・ヴィンセント
ジョナサン・ブレイクリー
ラース・ランドストローム
<チャンネル>
Endemol Shine International