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『宝石の国』黒沢ともよさん、小松未可子さんインタビュー/例えるならフォスとシンシャはすれ違う恋人!? 脆くて儚いふたりの魅力とは

例えるならフォスとシンシャはすれ違う恋人同士!? TVアニメ『宝石の国』黒沢ともよさん、小松未可子さんが語る、脆くて儚い凸凹コンビの魅力

2017年10月より放送中のTVアニメ『宝石の国』。本作は今から遠い未来、かつて存在した生物が、不死の身体をもつ「宝石」になった世界で、月から飛来する謎の敵“月人”と宝石たちとの激しい戦いを描く、強くてもろくて美しいアクションファンタジーです。

独創的な世界観と、個性的で美しい宝石たちの愛らしさ、そして謎に包まれた物語が魅力の作品ですが、この度、フォスフォフィライト役・黒沢ともよさんと、シンシャ役・小松未可子さんにインタビューを実施!

作品の魅力や、宝石という難しいキャラクターの役作り、フォスとシンシャの関係性などをお伺いしました!

 

宝石なのに生々しくて生命力に溢れるキャラクターの魅力は?
――最初に原作を読んだ際の印象をお聞かせください。

フォスフォフィライト役・黒沢ともよさん(以下、フォス/黒沢):私は今までたくさんの数の漫画を読んできたわけではないのですが、その中でもこの作品は線が少なくて余白が多く、読み手のイマジネーションを掻き立てる作品だと感じました。

 
――京極監督曰く、オーディションでは台本を見ずに、身体を動かしてフォスを演じられたということですが。



黒沢:私にとってフォスの言葉遣いが自分の感覚に近かったのと、原稿の中に「月に行くなんて言うなよ」というセリフがあり、遠くに投げかけるようなお芝居だったので、手元の紙を見て演じるよりは……と思って演じさせていただきました。

私自身、すべてのオーディションでそういったアプローチをしているわけではありませんし、今回の作品だから特別そのようなアプローチをしようと思ったわけでもありませんでした。たまたまだったので、これが上手くマッチしたのかなと思って嬉しかったです。

 
シンシャ役・小松未可子さん(以下、小松):原作を読んだとき、昔読んでいた手塚治虫さんの作品のような……それこそ、ともよちゃんが言っていたように線が少なかったり、表現が多くないと言いますか。

少ない情報の中で伝えられる情報量を、読者がいろいろなことを想像しながら作っていくものだなと感じた作品です。

私もオーディションを受けるにあたって読ませていただきましたが、どのキャラクターも動きは多くないけど、思わず飛び出てきそうな生命力のあるキャラクターがたくさん登場してきました。

実際のところ彼らが生命なのかは謎なんですが、そこに生命力を感じる不思議な感覚があって、とても面白い作品だと思います。

 
――生と死の概念がないのに、生々しさや生命力が感じられますよね。それぞれ演じられているキャラクターの魅力は、どういったところだと思いますか?

黒沢:あの世界観の中での魅力は“タフさ”ですね(笑)。いち視聴者として観ると“情けなさ”が逆に魅力になってくるのかなと思うんですけど。

その情けなさが、あの世界観では完全に仇になるので、そこが逆転していく面白さと言いますか、客観的な視点だから応援できるフォスは魅力的だと思います。


小松:シンシャは物語が進むとより分かると思いますが、良いところは“優しさ”だと思います。ただ、性格自体は捻くれている部分がありますね(笑)。それはシンシャの性質から来るものでもあり、物理的に宝石たちを寄せ付けられない部分でもあります。

また、他の宝石たちを傷つけないためにも、自分から離れている部分もあるんです。本当は離れたくないんですけど、心すら傷つけないように振る舞っている点もあると思います。

でもそこが捻くれ過ぎず、真の優しさを持っているからこそ、自分も誰かに救いの手を差し伸べたり、差し出されたときは自分も希望を持ってみたりとか。

宝石なんですが、揺れ動く感情にはどこか人間らしい部分があって、本当に幸せになってほしい宝石ナンバーワンですね(笑)。

黒沢:幸せになってほしい、愛されてほしい!

 
――フォスとシンシャでは掛け合いも多いかと思いますが、演じられている役どころから、お互いのキャラクターをご覧になった印象はいかがでしょう?

黒沢:シンシャはいじらしいですね。愛らしいと言いますか。フォスとして見ると「なんか惹かれる」「助けてあげたい」「僕が助けなきゃ」「助けてもらったし」「なんか悔しい」……のように「なんか○○」という言葉にできない感情になってしまいます。

私からは、フォスが見ていないシンシャの一面を知っている上で可哀想だと思いますし……でも、ただただ可哀想って言いたくない気もします。「気づいてあげてほしい」「愛してあげてほしい」という危うさが魅力的で、すごい寂しそうです。


――シンシャはどこか精神的に脆く儚いイメージがあります。

黒沢:でも、それが怒りや攻撃に繋がらなくて、グッとこらえて食いしばっているのが見られるじゃないですか。切ない眼もするし。それが、より助けてあげたくなるような魅力かなと思います。

 
――なるほど。小松さんにとってフォスはどのような印象を?

小松:すごく真逆な存在だと思うので、シンシャを演じている立場からすると、羨ましいキャラクターになるのかなと思います。ともよちゃんが言っていたタフなところですね。精神的なタフさもあれば、硬度的にはシンシャが一番脆いので、ある意味で心の硬度が違うのかもしれません(笑)。

黒沢:心の硬度!(笑) たしかに!

小松:それこそ縦横無尽で誰にもない突破力のようなものを、がむしゃらなのかもしれないですが持っていて。それを実際に行動や形にする力があると言いますか。破天荒だからこそ、何か救いになるのではと希望を持っている、希望に変えられるキャラクターだなと思います。

シンシャは抗いたいけど、諦めているように見えて……でもどこか諦めきれていない。唯一、見えている光がフォスなので、個人的にそういう部分から期待と羨ましさがありますよね。

 
例えるなら、すれ違う恋人!? 実は似ているけどアシンメトリーなフォス&シンシャの魅力
――キャラクターからすればお互いに複雑な印象ですし、複雑な心境を抱えていますよね。そんなキャラクターを演じるにあたって、役作りも難しかったのかなと思います。性別や死の概念のない宝石ですし、先ほどお話しいただいた心境もありますし。

黒沢:イベントでもお話しさせていただいたのですが、フォスにははじめから不思議と共感できたのでむしろ宝石を演じることの方が難しく感じました。


――と言いますと?

黒沢:宝石たちは、人間の人体構造が通用しないキャラクターだと思うんです。第2話では、走っているときに息が入っているシーンがあったりはするのですが、彼らには肺や臓器機能がない、いわゆる金太郎飴状態で性質が均一。そこで走りの息を入れるときに、どうしたら入れられるんだろうと考えました。

フォスは「めんどくさい」とか言うんですけど、疲れもしないし痛みも感じない存在が「めんどくさい」って言うなんて、どういうことなんだろうと考えました。

 
――さらに性別もなければ、厳密に死の概念があるわけでもないと。

小松:性別に関しては何も考えないという手段を取っていました(笑)。例えば女性だったら、いわゆる女性らしいと思われているイメージを誇張したものを形にして、みなさんの中のイメージを固めていくことの方が多いんです。

でも本作においては、みなさんの中にあるイメージが、それぞれ異なっていることの方が多いんじゃないかなと思ったので、今回はあえて考えずに演じました。

 
――キャスト発表前も男性が演じるのか女性が演じるのか話題になりました。

小松:ただ、シンシャの発する言葉は多くなく、羅列するようなキャラクターでもないですし。考え抜いて喋ることの方が多いんですが、言葉の裏にあるものは、伝えたい想いとは違って、思わず隠したいからこそ出てしまう言葉で。

シンシャの中では、そうやって裏腹になっているものが多いので「なんでこの言葉に行き着いたんだろう」と考えながら演じていました。そこに関しては「ここはこういう気持ちなので、このように?」というような、明確なディレクションは良い意味でありませんでした(笑)。

黒沢:シンシャのセリフ難しかったですよね。想いの複雑さに対して言葉数が少なすぎて。

小松:そう! 足りないんだよね(笑)。

黒沢:他の宝石たちと話してない宝石だから(笑)。

小松:そう言えば、そこはディレクションで言われたかな。外界の人と接していなくて、ある意味で引きこもっているような状態なので。

黒沢:能動的に遮断してますもんね。

小松:そうそう。遮断しているから、最初の方に「あまり誰かと接しているような雰囲気はないので」とディレクションしていただいた覚えがあります。コミュニケーションが上手くとれない存在と。

黒沢:でも、フォスもコミュニケーションを上手くとれないんですよ?(笑) 


――フォスもですか?

黒沢:フォスの場合は空気が読めないから、結局シンシャとはコミュニケーションがとれない者同士の会話なんですよね(笑)。

一同:(笑)。

 
――たしかにフォスの言葉数は多いです。ただ、それらがことごとく噛み合ってなく……。

黒沢:「つまり何が言いたいの?」って思うようなこともあるんですよね。

小松:シンシャはコミュニケーションをとろうとして上手くとれないタイプで、フォスはコミュニケーションをとっているんだけど実際はとれていないタイプで(笑)。

黒沢:でもシンシャは手を伸ばせば一発で届くんですよね! だから見ていてむず痒いところがあるのかなと思いました(笑)。「もっとこうすればいいじゃん!」っていうのを……。

小松:外野が言いたくなるんだよね! そこで言っちゃえばいいじゃんって(笑)。

 
――まさに凸凹コンビですね。

小松:わりとシンシャから伝えているつもりだけど、伝わりきらないことが意外と多いよね。

黒沢:告白のシーンで花火に音をかき消される……みたいな! 「俺、お前のことが!」と言って花火がドーン!

小松:「えっ!? なんてー!?」って(笑)。

黒沢:そんな感じですね(笑)。


――なるほど(笑)。改めてふたりの噛み合ってない理由を再確認することができました。

黒沢:で、ダイヤとボルツは逆にお互いのことを伝え過ぎて上手くいかないコンビですね。

小松:お互いに察し合い過ぎちゃうんだよね(笑)。

 
――そのふたりと良い意味で対比になっているのかもしれません。また、先ほどディレクションのお話が出てきましたが、演じるにあたって監督をはじめ制作陣から説明やディレクションは他にもあったのでしょうか?

小松:、収録ではコンテのような絵にあわせて演じたのですが、第1話の収録を始めるとき、キャスト全員に生っぽいやり取りにしたいので、あまり絵を気にせずに思ったようにやってくださいというディレクションがありましたね。

黒沢:個人的には空間把握だったり距離感、カメラワークが分かった方が演技しやすいので、絵があるのは助かりました。無で演じるには、アクションや世界観が広大すぎて難しいと思います。

また第1話のシンシャとの掛け合いのシーンで、指定されたタイミング(ボールド)の息継ぎだと意味合い的にどうなのかなと思ったので、テストで自分が思うようにやってみたら「ボールドとは合ってなかったけど、そのままでいいよ」と言ってもらえることも多くて。そういう意味では自由に演じさせていただいた現場です。

 
――改めて完成された本編をご覧になっていかがでしたか?

小松:想像以上でしたね! 表現もそうですし、質感といい、音といい、空気といい……想像し得なかったものが世界として出来上がっていて、まさに宝石の国が作られたなと思いました。

黒沢:グラフィックも綺麗ですし、カメラワークも丁寧な印象を受けました。プロデューサーの武井(克弘)さんとも話していたんですけど、京極監督が自ら演出に立たれて第1話や第2話を担当されていて、セリフや心情変化に対して言葉が入ってきやすい優しいテンポ感だったと思います。

カットが変わるタイミングや余白のタイミングなどもすごく丁寧でした。音楽に乗せて切り替わっていく演出も素敵だと思うんですけど、本作では静寂の中のテンポ感を大事に作られている感じがして、すごくドキドキしました。

 
――本作も折り返しを迎えますが、今後の見どころをふまえて読者の方へメッセージをお願いします。

小松:作中ではいろいろなストーリーが進行していて、宝石たちの暮らしぶりや、彼らがどんな存在と戦っているのか、月人とはどうなっていくのか。そして先生は何者なんだという部分もあれば、シンシャは仕事を見つけられるのか……など(笑)。様々な要素が同時に進行しているので、今後どのような展開を迎えるのかが大きなポイントでもあり、注目してほしい点でもあります。

何より後半は謎に迫る部分がテーマになっていきますし、みなさんが疑問に思っているところが、徐々に突き詰められていくシーンも多くなると思います。どのキャラクターも怪しく見えてしまうかもしれませんが、そういった意味でも楽しんでもらえるような作りになっています。


黒沢:「この時点でここまで進んでいるなら、こんな展開が待っているんだろうな」と察している原作読者の方はいらっしゃると思いますが、これからどんどん演出が良くなっていくことを、いろいろな方から伺っています。

ゲストキャラクターも登場してきますが、個人的にご一緒できて嬉しい先輩方との共演だったので、続々と登場するキャラクターにも期待して、フォスの人生をかけた大冒険を最後まで見守っていただければ嬉しいです。


――ありがとうございました。

[取材・文・撮影/鳥谷部宏平]

 
作品情報
TVアニメ『宝石の国』
10月7日よりTVアニメ放送中
★TOKYO MX:毎週土曜22:00~
★MBS:毎週土曜26:38~
★BS11:毎週土曜23:00~
★AT-X:毎週土曜21:30~
※放送時間は変更になる可能性もございます。

●今から遠い未来、僕らは「宝石」になった
講談社「アフタヌーン」で連載中、市川春子原作、累計発行部数140万部突破の人気コミック「宝石の国」。

今から遠い未来、かつて存在した生物が、不死の身体をもつ「宝石」になった世界で、月から飛来する謎の敵“月人”と宝石たちとの激しい戦いを描く、強くてもろくて美しいアクションファンタジーコミック。

連載当初より、その独創的な世界観と、個性的で美しい宝石たちの魅力、そして謎に包まれた物語が人気を博し、注目を受けている。

●本作待望のTVアニメ化が決定!!
TVアニメシリーズのメインスタッフは監督に京極尚彦(『ラブライブ!』)、シリーズ構成に大野敏哉(『青の祓魔師 京都不浄王篇』)、そしてキャラクターデザインに西田亜沙子(『ラブライブ!』)ら豪華スタッフが参加!

また、アニメーション制作は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』や『劇場版 マクロスF』のCGパートを手掛けたオレンジが担当。美しい宝石たちの煌きや、月人との独創的でダイナミックなバトルアクションシーンなど、3DCGで眩い世界観を表現する!

<STAFF>
原作:市川春子「宝石の国」(講談社『アフタヌーン』連載)
監督:京極尚彦
シリーズ構成:大野敏哉
キャラクターデザイン:西田亜沙子
CGチーフディレクター:井野元英二
コンセプトアート:西川洋一
色彩設計:三笠 修
撮影監督:藤田賢治
編集:今井大介
音楽:藤澤慶昌
音響監督:長崎行男
制作:オレンジ

★オープニングテーマ 「鏡面の波」YURiKA

<CAST>
フォスフォフィライト:黒沢ともよ
シンシャ:小松未可子
ダイヤモンド:茅野愛衣
ボルツ:佐倉綾音
モルガナイト:田村睦心
ゴーシェナイト:早見沙織
ルチル:内山夕実
ジェード:高垣彩陽
レッドベリル:内田真礼
アメシスト:伊藤かな恵
ベニトアイト:小澤亜李
ネプチュナイト:種﨑敦美
ジルコン:茜屋日海夏
オブシディアン:広橋涼
イエローダイヤモンド:皆川純子
ユークレース:能登麻美子
アレキサンドライト:釘宮理恵
ウォーターメロントルマリン:原田彩楓
ヘミモルファイト:上田麗奈
スフェン:生天目仁美
ペリドット:桑島法子
金剛先生:中田譲治

>>TVアニメ『宝石の国』公式サイト
>>TVアニメ『宝石の国』公式Twitter(@houseki_anime)
>>TVアニメ『宝石の国』公式Instagram

(C) 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会
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