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- 石橋悠
- 1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。
数々の名作アニメを生み出したタツノコプロ生誕55周年記念作品『Infini-T Force(インフィニティ フォース)』が2017年10月よりTVアニメとして放送中です。
本作では、人気ヒーローのガッチャマン、テッカマン、ポリマー、キャシャーンが協力して、新たな敵と戦う姿が描かれます。
ヒーローの中でも1人だけ人間ではないキャシャーン。そんな難しい役に斉藤壮馬さんが魂を込めています。
そんな斉藤さんにインタビューを実施。今だからこそ見てほしい、タツノコヒーローたちの魅力をお伺いしました!
壮大なプロジェクトに参加した緊張感
──アフレコ現場で印象的だったことはありますか?
斉藤:先輩方が優しい方ばかりで、何気ない会話をしつつ、マイク前では生の掛け合いでしかできない緊張感を味わえました。
鈴村健一さんがすごくグルメなので、近所の美味しいお店を教えてもらったり(笑)。
他には、みなさんゲームがお好きだったりするので、ゲームの話をしたり。
あと僕が子供の頃にリアルタイムでタツノコヒーローたちに触れてきたわけではなかったので、教えていただきましたね。ほんわかした現場で、みなさん優しかったです。
──タツノコヒーローについて、どんなことを教えてもらったんですか?
斉藤:例えば最初ポリマーのバトルシーンを見た時に、「このポリマーって何でカンフーぽい感じになってるんですか?」と聞いたら、「これはもともとブルースリー風にという演出があって云々」みたいな。
本当にみなさんヒーローが大好きなので、目がすごくキラキラしているなって思いました(笑)。
それを聞いてると、こちらもすごくワクワクしてくるというか。そんな現場でした。
3人とも頼れるお兄ちゃんみたいな感じがあって好き
──斉藤さんは『新造人間キャシャーン』は、ご存知でしたか?
斉藤:オリジナルは観てなかったんですけど、2008年に放送された『キャシャーン Sins』は見ていたんです。それが初めて僕がタツノコヒーローに触れた作品でした。
『キャシャーン』って勧善懲悪でもないというか、割と悲壮感や悲哀を感じる世界観があるんです。『キャシャーン Sins』もその雰囲気を感じますよね。
『キャシャーン Sins』を見はじめたころくらいの年代から、僕もそういうダークなものに傾倒し始めたんです(笑)。
オープンエンドがすごくカッコ良くて、それも好きだったし、印象に残ってました。
──『キャシャーン Sins』と今作とそれぞれで印象が変わったりしましたか?
斉藤:今回は『キャシャーン』という作品ではないので、わりと軽妙なキャラ同士の掛け合いがあったりします。
鉄也はそこまでありませんが、健(鷲尾健)がフレンダーに追いかけ回されたりしていますよね。
CGの綺麗さも相まって、テンポの良さもすごくいいんです。
その中で鉄也は鉄也で、自分のアイデンティティを探していきます。
城二のものですが、「仲間に出会えたっていうのは幸せなことだよ」みたいな、サラっと聞こえるようでいて重みがある台詞などもあったりして、武士(鎧武士)に付けられたあだ名じゃ無いですけど、“少年感”が出ていると思いますね。
──あんな寡黙なキャラクターでも、あれだけ楽しい雰囲気になるんだなと思いました。
斉藤:3人が世界の説明をしているのに、エミ(界堂笑)と鉄也が廃墟のスロープをスィ〜って飛んだりとかしているんです(笑)。「全然話聞いてない!?」みたいな(笑)。それも年下感あって可愛いなって思いました。
──今回演じられたキャシャーンの魅力を教えてください。
斉藤:底抜けに明るい人も素敵だと思うんですけど、キャシャーンは、どこか心に影を抱えているというか、土台のところで自分は人間じゃないんだというペシミズムみたいなものがあります。
端整な顔で、表情にはそこまで乗せないまでも、本人はすごく苦しい思いをしている「悲しい運命萌え」みたいなのがあるんじゃないのかなって思います(笑)。
登場人物たちはみんな嘘をつかないんです。裏表のない人達がチームになっていて、裏表がないからこそ、普通の人の文脈とは違う受け答えをしてしまう天然っぽさもある。
本心を隠しきれないというか、言葉にニュアンスは乗せないけど、「僕は人間じゃないから」って言っちゃうみたいな、そのストレートないじらしさも魅力なんじゃないかなと思います。
──他のヒーロー達はどうでしょう?
斉藤:一番の萌えキャラは健ですよね。科学戦隊なのにIH知らんのかいみたいな(笑)。それがもう可愛くて。
対する武士と城二(南城二)は、すごく現代に適応していたり。
でも、健がいざという時に直情的ではあるんですけど、「大丈夫だ」って言ってくれるとやっぱり心強いです。
城二は一番セリフが多いと思うんですけど、全ての説明を担ってくれる。しかも『テッカマン』もめっちゃ強い。
『ポリマー』はみんなのムードメーカーですね。僕も武士のオーディションを受けていて、「鈴村さんです」と聞いた時は「なるほどな!」と思いました。
お調子もののキャラのようでいて一番大人というか、周りのことが見えています。
基本タイプは違えど、3人とも頼れるお兄ちゃんみたいな感じがあって好きです。
実はヒーローより悪役が好き?
──印象的だったシーンはありますか?
斉藤:バトルシーンや2話で鉄也の悲しいシーンが伏線になってくるところも印象的なんですけど、アボカドのクリームパスタを作るシーンが……!
城二が、アボカドを半分に切って、包丁にくっついたままの種を包丁を振ってシュッと捨てるんです。それがまさに僕が家のキッチンでやっているのと同じ動作なんですよ(笑)。
従来のアニメってそういう描写って割と省かれがちだったと思うんですけど、『Infini-T Force』は、細部にこだわりがあるみたいで。
モーションキャプチャーを使って、アクターさんが一度演じているからこそ、そういう細かいところにリアリティが出るのかなと思いました。
そういうバトル以外の細かい表情を大きいスクリーンで見て欲しいな、と思いましたね。
──斉藤さんはアボカド食べてそうだなと思いました(笑)。
斉藤:そうですね(笑)。僕もアボカドのクリームパスタ好きです(笑)。
──原作のキャシャーンから意識的に拾っている部分はありますか?
斉藤:タツノコプロさんの作品の男気みたいな要素を、けっこう他のキャラクターが担保しているかなと思ったんです。
逆に鉄也の場合は、今回のこのビジュアルと今作の設定に重きを置いて作っています。
無理して引っ張ってこようという意識はしなかったんですが、さっき話をしたように根本的な心持ちというか、自分のアイデンティティの揺らぎではないですけど、それが敵との戦いのキーポイントにもなってくると思います。
体は機械で心を移植して、「じゃあ心っていうものは一体なんなのか?」っていうのが彼の人生のテーマだと思うんです。
その根本的な部分は全くブレていないと思います。別に無口なだけであって、ナヨナヨしている人というわけではありません。
真の強さというか、軸に持っている思いの熱さみたいなものを持って、マイク前に立とうというのは決めて臨ませていただきました。
──斉藤さんが思い描いていたヒーロー像とはどんなものでしょうか?
斉藤:子供の頃はヒーローものとか戦隊ものをよく観ていました。
でも、昔から正義のヒーローに憧れるというよりは、敵の怪獣とかに憧れていて。
ドラマを背負わされている敵とかいるじゃないですか。そういうのに昔から心惹かれるものがあるんです。
例えば戦隊のメンバーなら、レッドよりはブルーかブラックみたいな(笑)。
シックスマン的なものが好きでしたね。
そいつって意外と敵か味方か分からないみたいなところがあるじゃないですか。そういうトリックスターが好きでやりたかったんです。
──今作に登場しているヒーローの中に、憧れているキャラクターいますか?
斉藤:僕はキャラクターとしては武士が一番好きなんです。誰に助けて欲しいかといえば……やっぱり「ガッチャマン』ですかね。
鍵ってまさにレッドみたいな感じじゃないですか。自分の中に全く無い要素なので。
でもやっぱり、敵チームが好きですけどね。ダミアン(ダミアン・グレイ)とか! 「タケェシィ〜」っていう台詞の数を毎回数えています(笑)。
──やっぱり敵キャラクターが気になるんですね。
斉藤:みんな好きなんですけど、立ち位置的にはダミアンが一番好きかな。
確か僕、ダミアンもオーディションを受けていて。ずっとこういうアクの強いやつをやりたいと思っていたんですけど、平川大輔さんに決まってとても納得したのを覚えています。
まさに本音を見せないというか。やっぱり、こういう立ち位置のキャラクターが好きなんだなって思いましたね。
あとはベル・リンさんが可愛い(笑)。これはねぇ……キッズにこういうの見せて良いんですか?(笑)
僕がキッズだったら間違いなく将来の好きなタイプはこういう感じになっちゃうと思います。
ラジャ・カーンはこれからキャシャーン的には気になってくると思います。ラジャ・カーンが一番真人間というか、良い人だなと思いますよ。
キッズたちにはぜひ純粋な目で見て欲しいですし、タツノコヒーローが好きだった方は昔を思い出しながら今を楽しんで欲しいです。
初めて見る方には違うものが見えるんだろうなと思うので。
──エミ(界堂笑)はどうですか?
斉藤:登場キャラクターたちが、キャラクターとして完成しているので、エミみたいな引っかき回す中心人物がいないと話が進みません。
エミは人に愛されたり、人を信じるということ全然知らずに育ってきました。
健から「100%信じろ」っていきなり言われても、視聴者の方もなかなか感情移入できないと思います。
それをエミが「そんなこと言われたって、急には信用できないよ」って突っぱねて行くのが、観てくださっている方に寄りそってストーリーが展開している一つの要素なのかなと思います。
こちら側からすると、「もう少しいうこと聞いてくれないかな?」みたいな気持ちが無いわけでは無いんですけど(笑)。
ある意味この作品で一番成長するのはエミなのかなと思います。
健も言ってましたけど、「お前の名前は笑(エミ)っていうのに、お前は全然笑わないな」っていう。そのエミが果たして心からの笑みを出せる日が来るのか……それは3話以降に乞うご期待です!(笑)
──(笑)。僕はエミの部屋着が好きです。
斉藤:ホットパンツ! あれは本当にもう……ホットパンツで締めて良いんですかね(笑)。
いつの間にか「マジうざい!」って言われる側の気持ちで観ちゃう
[インタビュー/石橋悠]
1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。