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『ポプテピピック』須藤Pが語るアニメ化制作秘話│ファンから募った質問にも回答

アニメ『ポプテピピック』を作った元凶の須藤Pにインタビュー!再放送の理由や先行上映会のうっかりを告白!ファンから募った質問にも回答

2018年1月より放送中のTVアニメ『ポプテピピック』。原作は、4コマウェブコミック配信サイト「まんがライフ WIN」にて連載中の、大川ぶくぶ先生による作品です。TVアニメ初回放送時には、視聴者の予想を裏切る内容に、大きな話題を呼びました。この度、アニメイトタイムズでは、番組プロデューサーである須藤孝太郎氏へのインタビューを実施!

企画の立ち上がりから現場でのエピソード、スタッフィング・キャスティングをはじめ、様々な裏話を伺いました! さらに、Twitterでみなさんから募集した須藤氏への質問にもお答えいただいたので、そちらもご紹介します!


 

何故、クソマンガをクソアニメにしようと企画したのか

――まずは本作における須藤さんの役割からご紹介をお願いします。

須藤孝太郎氏(以下、須藤):本作において、私は企画・プロデュースという形で参加しているんですけど、簡単に言うと「原作をアニメ化したいです」と言った張本人です。そこから制作会社や音響会社、音楽を作る方などのスタッフィングを固めて、予算やスケジュールを管理します。あと本作で遊んだところとして、再放送を決めたあたりですね。

――そもそも社内で許可が下りてからスタッフィングなどに着手するかと思いますが、どうやって本作のアニメ化企画を通されたのでしょうか?

須藤:まず制作陣が集まる企画会議で、原作モノのアニメを作りたいのか、オリジナルアニメを作りたいのかなど、アニメ製作にまつわる話し合いが行われています。その場に私が原作を持って行って説明したんですけど、まず通らないですよね(笑)。


 

――(笑)。

須藤:「これはどうなんだろう?」という顔をされました。私もいくつかやりたい理由があって、例えば業界的なことを挙げると、今パッケージの売上が落ちているじゃないですか。ビジネスモデルが変わってきていて、配信や海外展開などの手段が色々とあると思います。そこで、私は「グッズがすごい売れると思います。これをキングレコードのIPとして売り出せば絶対に良いと思うんですよね」と推し出しました。

やっぱり本作はキャラクターに力があるコンテンツなので、『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』、『サザエさん』など、お話を見てなくても内容が分かるという共通項がわりとあるかなと思いまして、絵だけ見て分かればグッズは売れていくかなと(笑)。

グッズ主体のアニメはまだ他に多く見られなかったので、今後はこういう作品が増えてもいいんじゃないのかなと思ってプレゼンして、会議で「じゃあやって……みる?」という流れになりました。まぁ最終的なOKは出なかったですけど……。


 

――それでも許可が下りなかったんですね……。

須藤:なかなか首を縦に振ってもらえなくてですね(笑)。うちの部署の上が三嶋(※)という人間なんですけど、三嶋から「お前、本当にこれやりたいのか?」と聞かれて、「やりたいです」と答えました。

その際に「プロデューサーは、人生に一回くらいカードを切ってもいいだろう。その一回をこの作品に使っていいのか?」と聞かれましたが「あ、はい。これに使います」と。まぁダメならもう一回使えばいいかなって思ったので(笑)。そして「じゃあ使ってみろ」と許可が下りたので、そこから展開していきました。

※本作のエグゼクティブプロデューサーの三嶋章夫氏。水樹奈々さんのプロデュースをはじめ、キングレコードが手がけた多数の作品に参加


 

――そこで須藤さんがワイルドカードを切って社内の問題はクリアしたと。

須藤:いくつか難題はありましたけど、なんとか進められました。大きなポイントとして、本作は製作委員会を組まずにキングレコード一社で製作しています。先ほどの会議では、それも込みで「委員会とかもうよくないですか?」と話をしていて(笑)。

――委員会方式が主流の昨今、かなり珍しいと思いました。製作委員会を組むことで、リスクを軽減しているケースもありますし。

須藤:もちろん、委員会形式もメリットはあります。各社のリスクを軽減できるわけですし、それぞれ得意な分野で勝負できますから。音楽を手がける会社や商品化を担当する会社などで振り分けることも可能ですが、キングレコード社内にもそれらの機能はあるので、じゃあキングレコードの中でどれだけできるかを試してみようかなと思って。

また、全部うちの部署の人間で担当しているので、方向性などの確認ごとのフットワークが軽くてやりやすかったところもありますね。あとは「この作品を出資してください」と言っても、ちょっとオススメできなかったので、全部キングレコードの責任でやった方がいいかなと思ってそうしました(笑)。

――道連れにしてしまうよりは……と(笑)。

須藤:そうですね(笑)。委員会方式は、キングレコードに居た大月(※)がやり始めたと思うんですけど、私の中では自社で覚悟を持ってやった方がいいという考えだったので、今回の形になりました。

※元キングレコード専務取締役の大月俊倫氏。プロデューサーとして『新世紀エヴァンゲリオン』などを手がける


 

――ちなみにアニメ化の話はいつ頃から立ち上がったのでしょうか?

須藤:2016年の春頃だったと思います。ちょうどLINEスタンプが発売され、みんなが使い始めてネットで話題になった頃ですね。そこで面白いなと思いつつ、単行本も本屋で見かけるようになったので、そこで購入して企画立ち上げの準備に取り掛かりました。ただ、竹書房さんと弊社は、ここ10年くらい付き合いがなく、知り合いも居ないので、単行本の後ろに書いてある代表番号に電話して伺いましたね。

【コミック】ポプテピピック(1)
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――そこから1年後の2017年4月、エイプリフール企画の『星色ガールドロップ』アニメ化発表を経て、『ポプテピピック』のアニメ化が初解禁されました。

須藤:『星色ガールドロップ』の時点で原作読者の方にとっては先の展開が分かると思いますし、あえてなぞった方が面白いかなと思ったので、あの形で発表することになりました。その名残で、今もURLはhoshiiroのままですが。



 

――なるほど。本作には様々なスタッフの方が関わっています。どのような基準でスタッフィングされたのでしょうか?

須藤:最初にアニメ化したいと言ったときに、竹書房さんにお伺いして許可をいただきましたが、そのときはまだ制作会社が決まっていなくて。そこで、私は上坂すみれさんの音楽の担当もしていまして、1stアルバム「革命的ブロードウェイ主義者同盟」のアニメPVを、神風動画さんにお願いしていたことを思い出したんです。そのご縁で「こんなクソマンガなんですけど……」という話を持ち込んで、引き受けていただいたことがスタートになります。

神風動画さんにお話しに行ったときに、様々なご提案をいただきました。そもそも原作自体が哲学だったので、どうしようかという話になった際、バラエティ感を出していく方向性に決定しました。オムニバスと言いますか、ショートショートの形……例えば『ウゴウゴルーガ』のような内容で展開することが決まり、最初の座組が固まりました。

――たしかに、あのアニメをバラエティ番組と言われれば、どこか納得できるような気が……?

須藤:私は元々バラエティをはじめとする実写が好きなんです。昨年4月に放送していた、「上坂すみれのヤバい○○」は、私がキングレコードに入社してから、初めて実写バラエティを立ち上げることができたので、今度はそれのノウハウを活かして『ポプテピピック』でやってみようかなと思い、今回の形になりました。

――「上坂すみれのヤバい○○」では、マスコットキャラクターの「腸壁荒れ太郎 a.k.a.サブカル女絶対追い詰めるマン」のキャラデザも大川ぶくぶ先生が担当されていますが、それも今回のアニメ化のご縁で?

須藤:同時並行で『ポプテピピック』の制作が進行していたので、『水曜どうでしょう』のonちゃん的な立ち位置で番組のマスコットキャラクターを作ってみようと思い、ぶくぶ先生にお願いしました。

ぶくぶ先生が描くマスコットキャラクターなら幅広いグッズ展開ができるかもと期待していたんですけど、全然売れなかったので『ポプテピピック』とは違うんだなと実感しましたね(笑)。

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――(笑)。ともあれ座組が固まってからは、何を基準にして、どなたがスタッフに声をかけたのでしょうか?

須藤:神風動画さんの人脈で、スペースネコカンパニーの監督をされている青木(純)さんや、AC部さん。あとは青木さんのツテで、フェルトパートをやっているUchuPeopleさんにお声がけしました。また、ゲームパートのドット絵を担当している山下(諒)さんは、まだ大学生4年生でこの春に卒業するんですけど、「卒業論文の代わりにいいんじゃない?」みたいな話をして、どんどんスタッフィングが広がっていきましたね。

私の方では劇伴を担当している吟さんに声をかけました。「何曲くらいですか?」と聞かれたので、「とりあえず全部で。主題歌と挿入歌と劇伴を担当すれば、いっぱい印税入るんじゃないですか?」みたいに返したら受けていただけることになって。あとは音響会社のグロービジョンさんに話を通して、だいたいのスタッフが決まりましたね。

――放送されたアニメは、原作のエピソードはもちろんのこと、スタッフごとにオリジナル要素が濃い内容になっていました。さっきの実写のお話もそうですし、フェルトパートやゲームパート、『ボブネミミッミ』などありますが、話の基盤はどのようにして作られているのでしょうか?

須藤:各クリエイターに自由にお任せしています。「何かあったら私が責任を取りますので」と話していて、制作について深くは追求していませんね。その中でもすごいと思ったのは、AC部さんの『ボブネミミッミ』です。本来、脚本や絵コンテから始まり、ラフに着手してから進行しますが、AC部さんはオンエアで流れている映像が最初からそのまま届くんです。あれが初稿なんですよ。

そして、誰も何も言わないので通ってしまいます。もちろん尺は指定してから発注しているんですけど、何が出来上がってくるか分からなくて(笑)。ただ、それが一番面白いと思うので、そのまま自由にお願いしています。


 

――フェルトパートは、まさか挿入歌まで付くとは思いませんでした。

須藤:フェルトパートは、UchuPeopleさんから「フェルトアニメをやりたい」とお話をいただいたので、そのままお願いしたら歌詞を書いてきてくださったんですよ。

「これに音楽をつけてほしい」というリクエストだったので、音楽を作ってレコーディングして音源を送ったら、UchuPeopleさんが振り付けした動画が届きました。さらに「これをそのままフェルトでやります」という提案をいただいたので、そのまま進めていただいたらオンエアの形になりました。


 

――では須藤さんは本当に制作に対してほぼノータッチで進められたと。

須藤:そうですね。フェルトはコマ撮りでやっているので、かなり大変なんじゃないかと思います。歌が多いのは……なけなしのキングレコード感と言いますか(笑)。

あとストーリーパートと呼ばれるものが、第1話や第2話にありましたが、これは私がお声がけした木戸雄一郎さんに構成・脚本に入っていただきました。今はフリーで活動されている方なんですけど、最近子どもが生まれてちょっとお金が……という話だったので、「じゃあやってみますか?」と声をかけてお願いしました。



 

――先ほどから生々しい話が飛び出しますね(笑)。

須藤:みなさんの生活の足しになるような形でできればいいなと思って(笑)。ただ、通常のアニメだと、上がってきた脚本をもとに会議が行われて絵コンテに取り掛かると思うんですけど、本作の場合はストーリーパートの脚本が上がってきても、最終的にはかなり変わっているんですよね。

関西に住まわれているぶくぶ先生には、月一で東京まで足を運んでいただき、作中に入れるネタなど監修に入ってもらって、それをVコンテに起こして見て、もう一度直しています。普通ならやらない手法なんですけど、とりあえず映像にしてみようという考えです。

テンポ感や間は映像にしてみてやっと分かるので、なかなか大変な作業でした。原作も、みなさんが読んでいるスピードがそれぞれ違うと思うので、どれが正解なのかを探すために色々と調整しつつ進めています。尺が余ったら尺調整のコーナーとして、おみくじをやればいいですからね(笑)。

――第2話のあのシーンは尺調整のコーナーだったんですか……(笑)。

須藤:あれでいくらでも調整できます。流すだけですから(笑)。


 

――でも、かなり特殊な進行ですよね。本来なら各工程で話し合いを重ねてOKが出たら進めて行くものの、一度全部を作ってから協議を重ねて作り直すと。

須藤:もちろん先行して映像は作っています。そこに付随してディレクターの青木さんから「このシーンはこの音楽が欲しい」と細かく発注が来るので、もう映画じゃないんだからと思いつつ(笑)。

今は累計100曲以上の劇伴が作られています。普通、30分のアニメ12話分の劇伴は50曲あればかなり多い方なんです。それなのに15分アニメでワンクール100曲以上っておかしいと思います(笑)。

――ということは、第4話でポプ子とピピ美がレースをするシーン、某車漫画風のキャラクターが登場する際に、それっぽい劇伴が流れますが、そこも指定が?

須藤:そうなんですよ。全部細かい部分まで発注が来ますが、やってみようということでオンエアの形になりました。


 

――やはり大川先生のアイデアは多く含まれていたり?

須藤:多いですね。特に第1話は色々なネタが入っていますし、そんな細かいところまで拾わなくても……という部分も、ぶくぶ先生的には入れた方が『ポプテピピック』っぽいとアイデアをいただきます。現場の人間的には、ぶくぶ先生の考えを最大限活かす方向性で進められていますね。

――特に第1話ではゲームのパロディネタが多数見受けられましたが、ああいうネタも大川先生のアイデアがほとんどなのでしょうか? それとも現場のスタッフの方のアイデアも?

須藤:あれはゲームパートを担当する山下さんが、最初に「こういうのをやりたいです」と挙げてくるんですけど、明らかにヤバいものばかりなんですよ。「山下さん、これはマズいですよ……」という話をしていて、そこから直していきました。なので、そういったゲームのパロディはクリエイター側のアイデアも多いですね。


 

――手直しをした結果、それでもあの形になったと。

須藤:最初はそのままだったので、「山下さんの今後の為にも直した方がいい」という話をずっとしたような気がします(笑)。

――同じく第1話から、フランスのエピソードは、どうやって生まれたのでしょうか? 先行上映会や本放送でぽかんとしている視聴者の方が多く見受けられたのですが……。

須藤:神風動画さんからのアイデアです。神風動画さんの中に、フランス人の方がいらっしゃるんですよ。

――実写で登場されていた方ですよね。

須藤:そうです。あの方は日本語が喋れなくて、社内では英語で会話をしているそうなんですけど、そこで神風動画さんが「彼に原作を渡して自由にやらせたら面白いんじゃないか」と提案されたので、それを採用させていただきました。

日本語が分からないため、絵だけを見て内容を想像して描いた結果があのパートです。なので設定も何もなく、ポプ子とピピ美がパリに行ったり、フランス人の自虐ネタが盛り込まれたりしています。

さらに、そのスタッフの方がひとりで手がけているので、海外のアニメっぽい動きをしているのは、そういった理由です。声もフランスの声優さんにお願いして、映像を現地に送って収録しています。ただ、こんなにかかるんだと驚きましたね……(笑)。


 

――(笑)。そして視聴者のSAN値を下げたと思われる『ボブネミミッミ』ですが、そもそも『ボブネミミッミ』とは何なのでしょうか……?

須藤:私も分かりません(笑)。最初に現場で見たときに『ボブネミミッミ』ってタイトルが出るじゃないですか。まず「タイトルが違う!」と思って。

でも内容は一番原作に準拠しているので、箸休め的な感じで見ていただければ嬉しいです。現場のみんなやっぱりAC部さんの映像が好きなので、視聴者の方にとっては刺激が強いかもしれませんが、きっと癖になってくると思います。“見るストロング・ゼロ”みたいなものですね。



 

何故、再放送されることになったのか。須藤Pは語る

――同じく視聴者を驚かせた再放送システムですが、なぜ再放送することになったのですか?

須藤:最初に神風動画さんとも話し合いましたが、どう考えてもショートアニメだろうと15分アニメの予定で作ってもらっていました。WEB上で流そうとも考えていたんですけど、途中から私がTVでも放送したいと思うようになってしまったんです。

そもそも初期の段階で、ぶくぶ先生の方から「例えば主音声が女性で、副音声を男性にすることって可能ですか?」と聞かれて「なるほどな」と思いつつ。

でもWEBだとできませんし、TVだと15分アニメを流すとしても残りの15分が余るじゃないですか。去年、うちで放送していた『徒然チルドレン』と『アホガール』みたいに、別の作品と半分ずつ放送できるわけでもなかったので。だから、最初はうちで人気のあった『よんでますよ、アザゼルさん。』の再放送でも流そうかと考えていたんですけど、そもそも同じ内容を流せば埋まることに途中で気が付いたんです。

ただ、それだけだと事故っちゃうので、ぶくぶ先生から提案いただいたように、主音声と副音声……ではないですけど、前半と後半で男性声優と女性声優で分けてみれば面白いかなという結論に行き着き、毎話キャストを変えてしまうことになりました。

誰がポプ子とピピ美を演じるのかという声もネットでよく見ていたので、それなら全員違う人にしてやろうと思って。それなら論破できるかなと。そうすることによって、「○話のポプ子が好き」「私は○話のピピ美が好み」みたいな会話ができますし、次は誰が来るのかなど色々と話題になると思ったので、それを企画書に落とし込みました。

そこからグロービジョンさんに「こういう作品なんですけど……」と持って行きましたが、「こんな大変なことできるわけないです」と言われてしまって。「なんとかやりたいんですよねぇ、お金はいくらでも出すので……」という交渉をして、なんとかお願いすることができました。


 

――こちらも視聴者の方は気になっていると思いますが、キャスティングに基準はあるのでしょうか? 明確な意図を持って、毎回ゴールデンペアをキャスティングされているなと思っていて。

須藤:最初はぶくぶ先生もキャスティングを気にしていました。その後、毎回キャストが変わることになったときに、どんな組み合わせが見てみたいのかリストをもらったんです。

そこで話数とかは関係なしに挙げていただいたものを、私の方で実現性の高いペアや盛り上がりそうな順番をピックアップして、各話にキャスティングしていきました。主題歌や挿入歌もその流れからのキャスティングですね。「この人たちなら面白そうだ」と思う組み合わせで選んでいます。

でも、こういう作品なので、どう演技していいのか分からないと思うんです。そのときに仲の良いコンビの方だと、現場で演技について話し合いをされた上で掛け合っているので、知らない方同士よりは、そういう組み合わせの方がスムーズに行くのかなと。

 

――それこそ第2話の悠木碧さんと竹達彩奈さんが最たる例ですよね。

須藤:そうですね。ただ、本作では毎回キャストが変わるので、その度に謝っています。TVアニメの第1話のアフレコ前には、監督やプロデューサーなどから挨拶がありまして。作品の概要や方向性を説明してから、その作品のアフレコが始まるんですけど、本来ならキャストが固定されているじゃないですか。

本作は毎話・毎パート違うので、その度に挨拶をしなきゃいけないんですよ。それで、毎回みんな口を揃えて「この度は本作に出演していただくことについて、お詫び申し上げます」と謝罪した上で、「ノリと思いつきの作品なので、こちらからの指示は特にないです。自由にお願いします」という話をします。

人によっては「少しでもいいので演技について指示はありませんか?」と聞いてくださるんですけど、こちらは「特にないです。分かんないです」としか言わずに、そのまま演じていただいていますね(笑)。


 

――では尺やノイズなどの技術的なディレクション以外は、これと言った指示もなく?

須藤:いえ、お任せと言っているのに、意外と青木さんが「ここはこうした方がいいんじゃない?」って口を出して「青木さん話が違うじゃん!」みたいなやり取りも多々あります(笑)。

それこそ大御所のキャストの方にリテイクって出しづらいじゃないですか。でもバンバン指示を出すので、現場の知っているスタッフはわりとヒヤヒヤしていたりします。ただ、それはそれでアリだなと思って、そのままにしているんですけど(笑)。


 

――キャスティングという点では、第1話の冒頭や予告映像の『星色ガールドロップ』には、小倉唯さん、水瀬いのりさん、上坂すみれさんが出演して挿入歌を歌われています。こちらは、本作の楽曲がほぼ網羅されている「ポプテピピック ALL TIME BEST」に収録されるそうですが……?

須藤:『星色ガールドロップ』に出演する3人も、まさにキングレコードって感じですよね。うちの会社ではなく、市民レコードさんがリリースしているんですけど、ちょうどいい3人がいるなと思っています(笑)。

――昨年3月あたり日本武道館を埋めていそうな3人ですね(笑)。

須藤:もしイベントをやった際にはお客さんが来るかなと思いまして……(笑)。


 

――また、主題歌を担当する男性コンビはPなおふたりが、女性コンビはアイドルなおふたりが担当されています。

須藤:リスペクト、ですね。


 

第3話が上映され、壇上で(主に上坂さんによって)乱闘騒ぎになった先行上映会の真相とは?

――昨年12月に行われた先行上映会ですが、その場では第3話が上映されました。イベントに参加したファンは、本放送時にかなり混乱している様子でしたが、こちらはどういった意図があったのでしょう?

須藤:そもそも私は一言も「第1話先行上映会」なんて言ってないんですよね(笑)。「先行上映会」としか打ち出しておらず、第3話の先行上映をしただけなんですよ。本当に偶然で第3話になっただけです。色々な方にお声がけをして香盤表を埋めている中で、たまたま上坂さんと小松(未可子)さんのスケジュールが合っただけの話で。


――では、たまたまキャスト発表の段階で小松さんと上坂さんのスケジュールを確保することができていて、たまたまメディア露出のタイミングでスケジュールの空いていたおふたりにお願いすることになったと?

須藤:そういうことです。先行上映会も、第3話の上映をするということを書き忘れちゃったんですよね……。うちの会社は勘違いをよくするので、まぁしょうがないかなと。

――各メディア媒体では上坂さんが本作について語られていたので、どういった心境でインタビューを受けていたのか気になるところではあります……(笑)。

須藤:上坂さんには普通に怒られましたね。「私たちをピエロにするんじゃない!」と言われましたが、こちらからは「そういうつもりはちょっとしかない。2週待ってくれれば第3話に出演しているから」となだめました。申し訳なかったなと思っています。

――先行上映会で小松さんと上坂さんがバツの悪そうな顔をしていた理由が分かりました……! そして、1月31日に発売されるBD・DVD第1巻ですが、TVアニメとしてはかなり早いリリースですよね。

須藤:普通はオンエアしたクールの2ヶ月後の末とかですよね。1月放送だとすれば3月末あたりがセオリーだと思います。もちろん制作進行上の都合やリテイクなどの問題があるとは思いますが、私の方でなんとかしたいなと考えていて……やっぱり盛り上がっている時期に買いたいじゃないですか。

全6巻だと、最終話の近辺で第1巻が出て、最終巻は次の次のクールまで行ってしまうので。欲しいなと思ったときに手元にあるのが一番だと思い、かなり早いリリースになりました。

強引ではありますが神風動画さんにご協力いただいて、第4話までオンエアした翌週にパッケージが手に入るように調整しました。私がそういった商品が欲しいから思い立ったんですけど、やってみたらめちゃめちゃ大変で(笑)。何かあっても手直しできないんですよね。


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――プレス工場へ入稿する都合上、1月の放送時には第4話まで完成していないと間に合いませんよね。

須藤:第1巻に至っては年内にパッケージをプレスしているので、視聴者の反応を見ないまま出来上がっているという最悪な状況です。小売店の方も反応が分からないうちに受注を締め切ってしまうので大変だとは思いますが……。ただ、お客さん目線で考えれば、それがベストかなと。

――特典のオーディオコメンタリーには大川ぶくぶ先生と、マフィア梶田さんが出演されていますが、こちらはどういった内容になっているのでしょうか?

須藤:ポプテピピックのコメンタリーとしての認識で収録をさせて頂いております。

――非常に気になります……! ちなみに『KIRIMIちゃん』公式Twitterに、『シャケテピピック』なるイラストが投稿されていましたが、こちらは……?

須藤:恐らく向こうの方が勝手にやっているんじゃないでしょうか(笑)。私も可愛いなと思いました。是非グッズ化して欲しいです(笑)。


須藤Pに殴り込み! 読者の質問にひたすら答える!

――ここからは一問一答形式で、事前にTwitterで募集して読者の方より寄せられた質問にお答えいただきます。まずは視聴者の感想から。

Q.なんでこんなクソアニメに私はハマってしまったのでしょう。毎日見過ぎて台詞覚えた。グッズに金落としてます。ダイスキ。

須藤:あっ、なんかすみませんって感じです……。

Q.星空ガールズドロップ見たいです(懇願)。最後にいつも笑わせてもらってるのでクソさに磨きをかけて頑張ってください!

須藤:ぜひ。小倉唯さんが準レギュラーなので、これからも見ていただけるとありがたいです。


 

――一番多かった内容は、やはり作品にまつわる質問でした。早速ご紹介していきます。

Q.どれだけの関係各所に頭を下げましたか?

須藤:……。

Q.作ったあとにクソアニメだなって思う事ありますか?

須藤:最高の出来だと思っています。

Q.初めて会った時のぶくぶ先生の印象をお願いします。

須藤:すごく物腰の柔らかい方だったので、逆に奇妙でした。

Q.アニメ放送後の反響は、予想より大きいものでしたか。

須藤:キャストが変わる再放送システムは、多分ウケるかなと思っていたので、私はある程度予想していました。

Q.三ヶ月放送延期した理由を教えてください。

須藤:それはもう勘違いですね。

Q.一話のオーキド博士っぽい人の声優は誰だったんですか?

須藤:矢野正明さんという方です!

Q.第2話の「恋して?ポプテピピック」は何コマ撮ったんですか?

須藤:ちょっと私にも分からないくらいのコマ数ですね。


 
Q.アニメの舞台裏(1話のアニメスタッフや2話の声優さんの裏事情)をアニメに組み込む考えはどの様な思いで採用なされたのでしょうか?

須藤:第2話のアフレコブースでのやり取りは青木さんがやりたいと話していて、最初はもっと過激な内容が提案されていました。私の眼鏡を投げ捨てる描写まであったんですけど、譲歩してキャッチボールになりましたね。私からすればそれでも十分ですし、個人的にはマイナスでしかないので(笑)。

Q.何を考えながら作ったらあんなクソアニメ(褒め言葉)作れるんですか

須藤:とりあえず面白ければOKを基準に、工程を考えずに作っています。

Q.ポプテピピックでこれから作ろうと思っているグッズ、これまでの中でこれは会心のものだと思っているグッズを教えてください。

須藤:去年の夏コミで出したクソセットです。中には竹書房の欠片が入っていて、あれは面白かったと思います。

――それはちゃんと竹書房に行って採集を?

須藤:……ご想像にお任せします。

Q.クロノ・トリガーは好きですか?

須藤:めっちゃ好きですね。とてもやり込みました。

Q.何故クソアニメのOPをおしゃれでかっこよくしてしまったのですか?

須藤:ギャグテイストな作品なので、最初こそ面白い方向性がいいのかなと考えたんですけど、逆にOPをカッコ良くしたら二重の意味でクソアニメが台無しになるかなと思ったので、狙って一番カッコ良いOPを作りました。

――OP映像ではブラウン管テレビを壊すところから始まってインパクト大だと思いましたし、まさに『ポプテピピック』らしいなと。

須藤:あれは実写で本当に壊しているんですよ。

Q.この作品が立ち上がってから、出演声優さんには何回土下座したのでしょうか?

須藤:土下座はしていません。ただ、一言「申し訳ない」と。

Q.ツイッター以外も含め、我々視聴者の反応はどの程度チェックしていますか?

須藤:結構見ています。みなさんが『ポプテピピック』に対してどのようなことに興味を持っているのか気になっていたので、始まる前からチェックしていました。声優を誰にするかのキャスティングも、そういったところに繋がっています。

Q.正直このアニメくそだと思いますか?

須藤:クソだと思います。それは間違いありません。

Q.キャストは何人ぐらいで考えられたのでしょうか? また、断られたケースはありましたか?

須藤:一応、こちらで希望した声優さんにお声がけしましたが、スケジュールが合わないケースもありました。こちらも強くは言えない作品なので。

Q.竹書房本社はしょっちゅう破壊されてますが、キングレコードの本社はいつ破壊されるのですか?

須藤:みなさんが破壊したいと思ったときに、きっと破壊されていると思います。


 
Q.アニメの出来について、ぶくぶ先生から何か聞きましたか?

須藤:ぶくぶ先生も、とても楽しまれていると伺っています。

Q.2期や劇場版やりますか?

須藤:やらないですね。

――そこは即答なんですね……。

須藤:はい。と言いますか、今はこの3か月を乗り切るので精一杯なので……。

Q.CV.天龍源一郎、長州力はまだですか?

須藤:字幕つけたいですね……(笑)。

Q.今日も一日頑張るぞいを高田憂希さんにやって欲しいです。

須藤:さすがにそれはできないです……私もある程度は社会人なので(笑)。


 
Q.声優さんの演技を見ての感想を教えてください。

須藤:みなさん演技が違って面白いなと思います。アドリブの入れ方やブレスの仕方だったり。声優の専門学校などで教材にすればいいんじゃないかと思いました(笑)。みんなあれを見ながら勉強できると思うので、教材にぜひ。使用料、ご相談させて下さい。

Q.この反響は予想してましたか?

須藤:予想していないとワイルドカードは切れませんし、なるべくして動いていたので。

Q.ダイハード好き過ぎですよね?

須藤:全シリーズ大好きです。


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Q.クソアニメを作ることで得たものと失ったものを教えてください。

須藤:得たものと言いますか、自分の考えたものが世に出て、その反響を見るのは面白いと思います。これだけ反響をいただける作品は多くないので。失ったものは、会社で話しかけられなくなりました。

――周囲からの風当たりに変化が?

須藤:去年の「上坂すみれのヤバい○○」をやっていた頃からそうだったんですけど、ついに話しかけられなくなったので、ヤベーやつだと思われたのでしょうね。

Q.実際 どれくらいのヤバイ橋を渡ってる感じでプロデュースしてますか?

須藤:何かあったらキングレコードを辞めるぞ、という覚悟でやっています。そうでもしないとメンタルが保たないので(笑)。

Q.竹書房の爆破シーンにかける予算をこっそり教えてください。

須藤:5000兆円くらいじゃないですか?

Q.ニコニコ動画では1話は330万回、2話もこの1週間で200万回再生されています。これについてどう思われますか。

須藤:私、ニコニコ動画が好きなんですよね。今はYouTubeに人が流れていったり、勢いが下がってきていると言われいますけど、まだまだ面白いサイトだと思うので『ポプテピピック』で盛り上がってくれれば個人的に嬉しいなと思います。

Q.ポプテピピック実写化のキャストについて。

須藤:電気グルーヴさんとかどうですかね。

Q.収録前と収録後の声優の方々の反応が気になりますので、主観でもいいので教えていただきたいです。

須藤:収録前はみなさん不安な顔をされていて、終わった後はぐったりされています。こんな難しい役は初めてと言う方が多いですね。

Q.もし『ポプテピピック』でノーベル賞を取るとしたら、どの賞を狙いますか?

須藤:アニメーション神戸ですね。

Q.須藤Pと大川ぶくぶ先生の声の回を作る考えはありませんか?

須藤:さすがにそこは声優さんというプロがやっているので、素人が出る必要はないと思います。


 
Q.毎回豪華キャストが増えていますが、打ち上げは豪華なホテルとかでやるんですか? 逆に鳥貴族とかでやるんですか?

須藤:手っ取り早く済ませられたらいいなと思っています。

Q.野沢雅子さんは何話で登場しますか?

須藤:……。

Q.どうしてアニメ版は原作以上にこんなにまでクソすぎるんですか?(笑)

須藤:原作がクソだから仕方ないと思います。

Q.1番予算を使っているのは何処ですか?

須藤:楽曲に一番お金がかかっています。

Q.ぶっちゃけ、アニメ版「上坂すみれのヤバい○○」と何が違うんですか?

須藤:全然違います。

Q.これは「上坂すみれのヤバい○○」2期という認識でよろしいですか?

須藤:そう思って見ていただけるのであれば、「上坂すみれのヤバい○○」のBOXを買っていただけると嬉しいです。

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Q.たつき監督に依頼する予定はありましたか?

須藤:ないです……。

Q.個人的にこれが1番アウトというネタがあったら教えてほしいです。

須藤:……。

Q.『ボブネミミッミ』スペシャルはないのでしょうか。

須藤:私も見てみたいです。

 
Q.もちろん竹書房は破壊しますよね?

須藤:どうでしょうかね。原作でも破壊されちゃっているので。

――そういえば第4話でもゲーム風の画面の中で破壊していましたよね。

須藤:そうですね。これ以上やらなくてもいいんじゃないかと。ポプ子とピピ美がこちらに向かって来なければいいなと思うばかりです。


 
Q.「上坂すみれのヤバい○○」に続いて今度はヤバいアニメを製作されているキングレコードさんですが、今後もヤバい作品を提供してくれるのでしょうか?

須藤:もうこれで終わりです。健全な作品を目指して『生徒会役員共』の続編が作れたらいいなと思っています。

 

――最後にファンの方へメッセージをお願いします。

須藤:真面目なことを言うと、毎話内容が違うオムニバス形式なので、見逃した方もその話数から見て分かります。BD・DVDを買ってくれとは言わないので、これを見て他の人がどんな感想を持っているんだろうか、というコミュニケーションツールとして活用していただければ嬉しいです。ひとりぼっちなのが一番良くないと思うので、ネタとして使っていただければいいのかなと。

そして、『ポプテピピック』としても、全力で『バジリスク ~桜花忍法帖~』の応援ができればいいなと思っています。

――ありがとうございました!

[企画・取材・文・撮影/鳥谷部宏平]

商品情報

●TVアニメ『ポプテピピック』BD&DVD vol.1
発売日:2018年1月31日(水)
価格:¥6,800+税
品番:Blu-ray:KIXA-775/DVD:KIBA-2304
【収録内容】#1-#4
【商品仕様】トールケース
【音声特典】オーディオコメンタリー(出演:大川ぶくぶ、マフィア梶田)
【映像特典】ノンクレジットオープニング・エンディング 他
【封入特典】リバーシブルジャケットイラストポスター

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●「ポプテピピック ALL TIME BEST」
CD3枚組/TVアニメ「ポプテピピック」BGM、エンディング曲他収録予定
発売日:2018年3月28日(水)
価格:3,980円+税

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作品情報
TVアニメ『ポプテピピック』
<作品概要>
竹書房の4コマウェブコミック配信サイト「まんがライフ WIN」にて、2014年11月から配信している大川ぶくぶ氏の作品。

<あらすじ>
キングレコードのヘマにより、TVアニメ&シーズン3同時スタートの夢は潰えた...。果たして2人はアニメスタートまで生き残れるのか...?

<STAFF>
原作:大川ぶくぶ(竹書房「まんがライフ WIN」)
企画・プロデュース:須藤孝太郎
シリーズ構成:青木純(スペースネコカンパニー)
コンセプトデザインワークス:梅木葵
音響監督:鐘江徹
音響効果:小山恭正
音響制作:グロービジョン
音楽:吟(BUSTED ROSE)
音楽制作:キングレコード
シリーズディレクター:青木純(スペースネコカンパニー)、梅木葵
アニメーション制作:神風動画
製作:キングレコード

<CAST>
ポプ子 三ツ矢雄二、江原正士、悠木碧、古川登志夫、小松未可子、中尾隆聖、日笠陽子、玄田哲章、金田朋子、中村悠一
ピピ美 日髙のり子、大塚芳忠、竹達彩奈、千葉繁、上坂すみれ、若本規夫、佐藤聡美、神谷明、小林ゆう、杉田智和

公式サイト
公式Twitter

(C)大川ぶくぶ/竹書房・キングレコード
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