祝・アカデミー作品賞!映画『シェイプ・オブ・ウォーター』と日本アニメの多からず少なからずな関係
映画『シェイプ・オブ・ウォーター』が、第90回アカデミー賞にて、作品賞、監督賞(ギレルモ・デル・トロ)、作曲賞(アレクサンドル・デスプラ)、美術賞、(ポール・デナム・オースタベリー、ジェフリー・A・メリヴィン、シェーン・ヴィア)最多4部門を受賞しました。
本当におめでとうございます。
アニメファンの方は、受賞にあまりピンと来ない人も多いかもしれませんが、実は関連性が多からず少なからず。知ればきっと『シェイプ・オブ・ウォーター』にも、強い興味が湧くのではと思います。
今回紹介するキーワードだけで並べてみると、「マジンガーZ」、「パトレイバー」、「杉田智和」といった感じです。これでも、良くわからないかもしれませんが、選んだワードの中心にいるのは、ギレルモ・デル・トロ監督、そして映画『パシフィック・リム』です。これを聞けば、『シェイプ・オブ・ウォーター』と、ちょっと関連性のある話にも見えると思います。
それでは、どうアニメファンと間接的に繋がっているか紹介します。
「偉大な勇者はマジンガー」は、少なからずアカデミー賞にも影響を与えている?
まず、ギレルモ・デル・トロ監督は、永井豪先生の『マジンガーZ』の大ファンなんです。そして、その影響を受けてできたとも言えるのが映画『パシフィック・リム』(2013年)です。
実際、今冬に公開されたマジンガーZの公式情報の中にも、
世界へ波及したクールジャパンの先駆けとなり、日本以外でも放映され、ヨーロッパ、中南米などで特に人気を博した。ハリウッド映画「パシフィック・リム」のギレルモ・デルトロなど世界中のクリエーターにファンが存在する。(参照記事)
と書かれています。
また、フランス・アヌシー国際アニメーション映画祭で行われた『劇場版 マジンガーZ/INFINITY』イベントには、ギレルモ・デル・トロ監督が実際に参加し、大興奮の様子も報告されています。
フィギュアやグッズを大量に買い込んだファンや「マジンガーZ」や「グレンタイザー」のTシャツを着た熱狂的なファンが集まる中、その観客席になんと『パシフィック・リム』監督のギレルモ・デル・トロがサプライズで参加! 突然の登場に観客が喜ぶ中、続けて永井豪先生が観客席へと現れ、ギレルモの持参したノートにマジンガーZのイラストとサインを直筆。ギレルモは大興奮で「サンキュー!アリガトウ!」と大きな抱擁をかわし、感激の笑顔でガッツポーズをとっていました。(参照記事)
実際に永井豪先生と出会ったギレルモ・デル・トロ監督は、感動のあまり涙ぐみながら「ずっとお会いしたかった。子供の頃にクリスマスプレゼントで(マジンガーの)おもちゃをもらって遊んでいた。本当に光栄です。感謝の気持ちで一杯です。永井さんの作品にとても影響を受けています」と嬉しそうに語ったそうです。
そして、後に対談をした二人は、『パシフィック・リム』と『マジンガーZ』をつなげるような発言もしています。
「永井先生の作品は僕や僕の世代の人たちに大きな影響を与えている。僕の人生を変えたんだ。子供の頃、友達みんなとアニメを見ながら、永井先生の名前を見て、『この人は一体誰なんだ?!』と騒いでいたんだ。僕の作品も大きな影響を受けている。『パフィシック・リム』の中ではエルボーパンチも登場したんだよ!」(参照記事)
監督を導いた要素の中に確実に永井豪先生の『マジンガーZ』があり、その先に『パシフィック・リム』が確実に存在しています。そして、そのさらに進んだ先にあるのが、今回の『シェイプ・オブ・ウォーター』なんです。
『パトレイバー』は、ロボットから人と社会を語る作品!
この動画は、『THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦』時のプロモーション動画。
内容を見てみると、『うる星やつら オンリー・ユー』の頃からの押井守監督のファンで、ジェームズ・キャメロン監督のススメで『パトレイバー』を観たなどの話が紹介されます。そして、『パトレイバー』は『パシフィック・リム』に大きな影響を与えていると明言しています。
そして、「押井さんの何が先駆けていると思いますか?」の問いに彼はこう答えます。
「ロボットを使って人の話をつくる。ロボットを使って社会の話をつくる。サイボーグ・ファンタジー・SFを使って現代の話をする。作品は未来を題材にしているけど、(押井監督は)人間の状態を見ているんです。」
『パトレイバー』から『パシフィック・リム』はもちろんのこと。『シェイプ・オブ・ウォーター』にも繋がるような発言をしています。
声優・杉田智和さんが主演を努めた『パシフィック・リム』は、吹替が好調!
最後のキーワード「杉田智和」は、みなさんも知っている人気の声優さんです。アカデミー作品賞に直接関係がある訳ではありません。強引かもしれませんが、間接的には関係していることもあり、ぜひ知ってほしいので紹介します。
『シェイプ・オブ・ウォーター』と同じ、ギレルモ・デル・トロ監督の『パシフィック・リム』。『マジンガーZ』『パトレイバー』の系譜ともいえる本作は、公開時、日本人にも多いに受け止められます。特に、アニメファンに受け止められた印象です。というのも、公開時、字幕版よりも日本語吹き替え版の方が上映館が多かったのです。
作品のモチーフが日本人向きだった事もありますが、杉田智和さんを筆頭にして、著名な声優さんがしっかりと脇を固めたことも大きく影響をしているかなと思います。声優さんは下記のメンバーです。
【『パシフィック・リム』出演声優一覧】
ローリー・ベケット:杉田智和
マコ・モリ:林原めぐみ
スタッカー・ペントコスト:玄田哲章
テンドー・チョイ:千葉繁
ハンニバル・チャウ:ケンドーコバヤシ
Dr. ニュート・ゲイズラー:古谷徹
Dr. ハーマン・ゴットリーブ:三ツ矢雄二
ハーク・ハンセン:池田秀一
チャック・ハンセン:浪川大輔
パシフィック・リム ローリー・ベケット
本当に豪華な声優陣です。
主演の杉田さんも、『パシフィック・リム』の出演が、嬉しかった様子。トークイベントで、こんな事を語っています。
「普段話さないような人からも“観たよ”って声をかけてもらって、本当に嬉しかった。こんなに強く続編を望んだことはないな。(参照記事)」
アニメのど真ん中で大きな活躍をされている声優さんに、「強く続編を望む」と言わしめる『パシフィック・リム』、そして、ギレルモ・デル・トロ監督作品。きっと、どこか無条件で愛せる匂いがしたのではないかと思います。実際、多くの方がその匂いに誘われて、吹替版を見たんだと思います。
アニメファンのみなさん、同一線上にある『シェイプ・オブ・ウォーター』もどこか気になりませんか?
※補足:『パシフィック・リム』続編、※『パシフィック・リム:アップライジング』
は4月13日(金)公開。監督は、スティーヴン・S・デナイトになります。
監督の受賞コメント
最後に、監督の受賞コメントを紹介します。
ギレルモ・デル・トロ監督は、ハリウッド映画界という遠くにいる方ではなく、私達と同じように日本の作品をこよなく愛し日本のアニメとモノづくりの良さを知っている方、アニメファンという目線で読んでもらえればと思います。
ありがとうございます。
メキシコで子供時代を過ごしてきましたが、E.Tとかウィリアムマナーとかいろんな人を憧れにしていました。
一週間前にスピルバーグ監督に「もし受賞したらレガシーの一部なんだ。このフィルムメーカー世界の一員なんだ、誇りに思え」と言われました。本当に誇りに思います。
これを捧げたいのは若い人達です。今のあらゆる状況を変えようとしているのは若い人達です。
私が子供だった頃メキシコで育っていて、こういったことが起こるとは想像もしていませんでした。
しかし、それが実現しました。夢を見ている人達、ファンタジーを使って現実について語りたいと思っている人達に伝えたいです。
夢は実現するんです。切り開いて中に入ってきてください」(ギレルモ・デル・トロ監督)
#TheShapeofWater cast and crew shine bright as they celebrate their #Oscars triumph at the after party last night! pic.twitter.com/5mFFfCJJoe
— The Shape of Water (@shapeofwater) 2018年3月5日
『シェイプ・オブ・ウォーター』のアカデミー賞受賞、本当におめでとうございます。
作品情報
【STORY】
1962年、アメリカとソビエトの冷戦時代、清掃員として政府の極秘研究所に勤めるイライザ(サリー・ホーキンス)は孤独な生活を送っていた。だが、同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と一緒に極秘の実験を見てしまったことで、彼女の生活は一変する。
人間ではない不思議な生き物との言葉を超えた愛。それを支える優しい隣人らの助けを借りてイライザと“彼”の愛はどこへ向かうのか……
監督・脚本・プロデューサー:ギレルモ・デル・トロ『パンズ・ラビリンス』『パシフィック・リム』
出演:サリー・ホーキンス『ブルージャスミン』、マイケル・シャノン『テイク・シェルター』、リチャード・ジェンキンス『扉をたたく人』、ダグ・ジョーンズ『パンズ・ラビリンス』、マイケル・スツールバーグ『シリアスマン』、オクタヴィア・スペンサー『ドリーム』
(C)2017 Twentieth Century Fox
(C)永井豪/ダイナミック企画・MZ製作委員会
(C)2015 HEADGEAR/「THE NEXT GENERATION –PATLABOR-」製作委員会
(C)2013 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.AND LEGENDARY PICTURES FUNDING,LCC