『カードキャプターさくら』エンディングテーマ「Jewelry」早見沙織さんインタビュー|早見さんとさくらちゃんの不思議な関係
声優、アーティストとして活躍中の早見沙織さん。昨今はビッグタイトルに関わることも多く、2018年4月より放送中のTVアニメ『カードキャプターさくら クリアカード編』では、エンディングテーマを担当しています。
早見さんが歌う曲は「Jewelry」。宝石と名付けたこの曲にはどんな想いが込められているのでしょうか?
早見さんと『カードキャプターさくら』の数奇な運命、そして、彼女のこれまでの歩みが詰まった「Jewelry」について、インタビューしてみました。
仮タイトル「ハッピー」が光り輝く「Jewelry」に
――まずは、『カードキャプターさくら クリアカード編』のエンディングを担当ことが決まったときの感想からお聞かせいただければと。
早見沙織(以下、早見):私もアニメをタイムリーに見ていた世代なので、参加させていただくことにプレッシャーがありましたね。幼少期に見ていた作品の中でも5本の指に入るくらい大好きなんです。親にねだって玩具もいっぱい買ってもらったし、父親を引っ張って映画も見に行ったくらいです。
まさか自分が関わるなんて思ってもみなかったので「えっ!?」っていう衝撃がありました。
この前だって、たまたま母と京都の漫画ミュージアムに行ったんですけど、さくらちゃんの大きい画用紙ブックがあって、普通に可愛いから買いましたから(笑)。そうしていたら、のちのちエンディングを担当ですよ。
そのときの緊張といったら……。喜びももちろん大きかったですけど、同じくらいドキドキというか、どうなるのかなという気持ちはありました。
――最初は、スタッフさんに「次は『カードキャプターさくら』だよ」って言われたんですか?
早見:そこで偶然が重なるんです。3rdシングル「夢の果てまで」のカップリング曲を私が作詞作曲させていただいて、その時に他にも使った曲が何曲かあったんです。ディレクターさんに「こういった曲があります」と提出して、数曲をアレンジしてもらいました。
実は、結論から言うと、その初期のアレンジの中の1曲が「Jewely」としてご縁があって使ってもらえることになったんです。
「Jewely」の元曲は、私がアーティスト活動を始めたばかりの初期にできた曲で、「明るいやつをやろう!」と思って、仮タイトル「ハッピー」みたいな感じでした(笑)。
「なんでもいいから、私の明るい成分を引き出そう!」と思って作ったんですけど、私の曲の中でもここまで明るいものはなくて……。「ここまで底抜けに明るいものをアルバムの中に入れるのはどうなんだろう?」ということで一度お蔵入りになって、もしかしたらもう日の目を見ないかもと思っていました。
そうしたら、偶然にも同時期に『カードキャプターさくら』のお話があったんです。そこでの発注が「とにかく明るい」「ハッピーな気持ちになる曲が欲しい」ということでした。
でも私のイメ—ジって、太陽というよりちょっと落ちている感じだし(笑)、水色寄りのピンクだなって思って。そこで、お蔵かもと思っていた曲がすごく明るいから、プロデューサーさんが「僕これで行きたいんだけど」って言ってくださったんです。「ありがとうございます」とお返事して、「Jewelry」になりました。
――すごいですね。本当に運命みたいです。
早見:私もすごいびっくりしています。こんなことあるんだという感じ。でも、だから余計プレッシャーみたいなものもあって……。さくらちゃんワールドがあるから、私ってどうなんだろう……みたいな。
私も『カードキャプターさくら』が大好きだし、オープニングは坂本真綾さんだし、私がその中に入って行けるんだろうか……と、放送されてから今もドキドキしています。
――でも、作品にピッタリな曲になっています。
早見:それはすごく意識しましたね。元々の曲が倉内達矢さんのアレンジですごく『カードキャプターさくら』っぽくなったんです。私がイメージする『カードキャプターさくら』の色合いに近いものが生まれた気がします。
そんな曲ができたから、歌詞を描くときは『カードキャプターさくら』のエンディングだということを意識しました。
――「Jewelry」というタイトルは、後から付けたんでしょうか?
早見:タイトルは最後に付けましたね。いっぱい候補があったんですが、1度プチブレインストーミングみたいなものをやったんです。
――チームでですか?
早見:いえ、自分でです(笑)。ブレインストーミングなのに、ブレインが1個しかないという(笑)。
いつも歌詞を描くときに使うノートで、いろいろ書いてみたんです。でも、文字数とかを考えても始まらないなと思って、「私がさくらちゃんからもらったものは何だろう?」って考えるようにしました。私がドンピシャで見ていた世代だったので、それができたのがありがたかったですね。
「私が『カードキャプターさくら』を見ていたときの気持ちはどうだったのか?」「今、振り返ってみて、それは何だったのか?」といろいろ考えて、印象に残っているキーワードをノートに書いて、そこから派生していろいろ書いて、その中の1個が「Jewelry」だったんです。
小さいころにときめいたもの、メイク道具、変身ステッキ、ジュエルとか。それも宝飾じゃなくて宝石、ジュエリーなんですよね。玩具の横についているような。子供のころに憧れたイメージ、色が真緑とかのような。わくわくしたものが印象に残っていて、「Jewelry」がいいかもなと思いました。
――確かに女の子が好きなものですね。いろいろとノートに書き留めたそうですが、歌詞の「大丈夫」という言葉も『カードキャプターさくら』から来たんでしょうか?
早見:この「大丈夫」の部分に関しては超偶然なんです! あとで考えてみたら、そういえばそうだったという部分なんです。
さくらちゃんの口癖が「絶対、大丈夫だよ」というのをすっかり失念しておりまして……。これは偶然なんです。
あとさらにすごいことがあって、「大丈夫」になる前にもう一個これかこれにしようと思っていたものがあったんです。そのもう1個が「絶対ね」だったんです。
「絶対ね」か「大丈夫」にするか悩んでいて、別のスタッフさんと話していたら「『カードキャプターさくら』のエンディングをやるんですよね」って言われて、その流れで「絶対大丈夫ですよ」と答えたら、「それ桜さくらちゃんの口癖ですよね」って言われてハッとなりました。
本当に無意識だったんです。さくらちゃんが引き出してくれたなーと思って、びっくりでした。
――きっと、以前聞いていた言葉をさくらちゃんが呼び戻してくれたんでしょうね。
早見:そうですね。本当にびっくりしました。
『カードキャプターさくら』の作品内に共通しているメッセージってあるじゃないですか。信じるとか、絆とか、愛とか。それ全てを含めて「大丈夫」と言ってくれるさくらちゃんの感じをイメージしたのかなって思っています。すごくいいものを貰ったなとノートに書いていました。
「また会えるよね」というキーワードもあって、これは最終話のさくらちゃんのセリフです。「また会えるよね」って言って終わるのはずっと覚えていて。
これは絶対に入れたいと思って、Bメロの最後のところに入れました。でも、サビのところは偶然で本当にびっくりしました。
――お話を聞いていると、すごくアニメ視聴者とマッチングした歌になっていると思いました。
早見:そう思って貰えると嬉しいです。20年前にアニメを見ていた世代の人だとよりいっそう思うことは近いかなと思います。
自分を作ってくれた『カードキャプターさくら』
――『カードキャプターさくら』は、早見さんにとってどんな作品でしょうか?
早見:やっぱり幼少期の憧れですよね。自分の後世に残る感性をさくらちゃんが作ってくれた気がします。
まず、『カードキャプターさくら』は色使いが最高にキュートなんですよね。ふわっとした印象で、私も小さいころからパステルカラーが大好き。これもさくらちゃんの影響があって、原色だけよりも、優しい空色とか、優しい水色とか、さくらちゃんっぽい、ふわっとした色が好きなんです。
あとは、さくらちゃんのパパが「さくらさん」って呼ぶんですけど、私がそれに憧れていたらしく、両親に「沙織さん」って呼んでくれって言っていたらしいです。私はそのことを忘れていたんですが、今もそれが定着していて、家の中では父も母も「沙織さん」って呼ぶんですよ。
それも「あなたがさくらちゃんを見て言ってきたんだよ」ってエンディングを歌うことになってから聞いて、「え? そうでしたっけ?」となりました。生活の一部になっていることの起源がさくらちゃん発信だったということが多いです。
――それはすごい!
早見:私は忘れちゃっていましたけど(笑)。
『カードキャプターさくら』は、さくらちゃん以外にも、キャラクター1人1人がすごく濃くて、誰を見ていても面白いんですよね。
――『カードキャプターさくら』で好きなキャラクターは誰でしょうか?
早見:みんな大好きなので迷いますね……。幼稚園〜小学校のときに一番憧れていたのは、雪兎さんです。雪兎さんは本当に憧れて、恋していました。
途中で柊沢エリオルっていう雪兎さんテイストな英国紳士が出てきて、幼稚園のときから紳士的な人が好きだったので、エリオルくんにも憧れを抱いていましたね。
あとは、ごっこ遊びをするときは、なぜだかさくらちゃんじゃなくて知世ちゃんをやっていた気がします。さくらちゃんはもちろん、知世ちゃんにも愛情を持っています。あとは、お母さん陣も素敵でした。
――やはり紳士が好きなんですね。
早見:さくらちゃんのパパも紳士感がたまらないですよね。料理もできるし、かっこいいです! みんな基礎数値が高いんですよ。
あと今回、改めて『クリアカード編』の放送が始まってアニメを見てみたら、ケロちゃんかわいいなって思いましたね。小さいころってああいうキャラクターやぬいぐるみとかに触れる機会が多いじゃないですか。マスコットみたいな。
悩みの手触りが新鮮になってきた
――最近の早見さんは、『カードキャプターさくら』や『はいからさんが通る』など、大きなタイトルを務めることが多くなってきていると思います。その心境はいかがでしょうか?
早見:いやー本当に信じられない気持ちですね。なんだかやっぱり不思議だなって思いますし、すごくありがたい気持ちで、本当に縁だなと思います。これが縁じゃなかったら何なんだという感じで、本当に感謝です。ありがとうございますの一言に尽きます。
自分が好きだった作品とか、誰もが知る作品で出会ったものは、そこじゃなかったら出会えなかったのかなと思います。関わらなかったら「私とは全く違う世界」と考えていたけど、そこで貰ったものが次の自分の糧になって、今生きていってるのかなって思います。その都度、緊張感はすごいですけどね。
――毎度、ニュースも多くてこちらが驚かされています。
早見:本当に偶然なんですよ。ありがたいことです。もっと頑張らないとなと思っています。
――ちなみに、様々な作品に引っ張りだこになっている理由、ご自身で何だと思っていますか?
早見:ええ!? うーん、理由とかはあまりなくて、縁と偶然かなと思っています。
――「なんで私が?」って思うときはありますか?
早見:ありますよ! いつもプレッシャーは感じてるんですけど、「私じゃダメだ」と思ったら試合終了だなと思っています。嫌だなと思うことはないですね。具体的には「いや、まじでぇ?」くらいな感じです(笑)。
最近では、昔お世話になった方とも仕事でご一緒できることが増えてきました。それこそ私が声優をはじめて、2〜3年目にお世話になった方ですね。そのときの私の思い出したくない「うあ〜〜!」なことを知る方が、10年後とかになって、「大きくなったね」「久しぶりだね」って言ってくださるんです。
当時教えてもらったこともすごく多いですし、そういう積み重ねが大事だったんだなって思います。その経験が、これからを考えるきっかけになりました。
ある時にお世話になった方が、ひょんなことで私を呼んでくれたりするので、そういうのがありがたいですよね。この仕事って、重なるときは重なるし、ないときはないので、たまたま今が重なるその時なんだなって思います。
――なるほど。大きなタイトルに関わると、やはり忙しいものですか?
早見:大きいタイトルに関わると、それだけみなさんの目に飛び込みやすいから、インパクトが強いですよね。でも、「忙しいですね」って言われるときと、忙しいときのずれがあるんです。
確かに忙しいけど、実は雑誌とかあまり載らなかったけど、去年のあのころのほうがめっちゃ忙しくて……みたいなことがしょっちゅうなんです。こまこましたゲームの収録とか、外画の吹替えとかもあって、その外画が大変で寝れなくて〜とか、が結構あるんです。
そういういろいろなことがあったから、動じるけど動じすぎなくなりました。それは、父が教えてくれたんです。父は、バリバリ働いていて私より忙しい人なんですけど、「人生は波があるからね。いい時も悪い時もあるから、誰にでも起こることと思っておけばいいよ」と言われました。その言葉に救われたところはあります。
――いい経験をされたんですね。
早見:でもいつもびくびくしてますよ!「怖いよ〜放送始まらないで欲しいよ〜」みたいな(笑)。
『カードキャプターさくら』だって、いつも録画しているんですけど、エンディング来る前の30秒くらい前からドキドキしていて「エンディング来ちゃう来ちゃう〜」って思っています。
――早見さんでもそういうところがあるんですね(笑)。
早見:ありますね。すごいドキドキしますし、元々緊張しやすいから、初めて行く現場とかもちょっと緊張しますね。今でこそ落ち着いていますけど、はじめは「考えたくないよ〜行きたくないよ〜」って感じで、ずっと下を向いていたこともありました。
声優あるあるなんですけど、収録にペンを忘れて、「ペンを貸してください」が言えなくて、ペンシルアイライナーを使ったりとかもありました。私じゃないんですけど、友達の声優さんは、ガラケーを使っていたころ、「電話がなったらクビ!」って思っていたらしくて、収録の前に電池パックを外していたのを見たことがあります(笑)。
でも、みんな同じような経験をしているんですよね。今なら私だけじゃなかったってわかります。
――やはりそういう経験があって大人になったからこそ、こういう曲が作れたのかなと思います。
早見:そうかもしれませんね。いろいろな経験をして、毎日をハッピーにっていう感じです。
最近は、これまでとは違う新しい悩み方になっていて、悩みの手触りが新鮮なんですよ。「生臭くない!」みたいな。触りすぎて、生ものがドロドロになっているんじゃなくて、悩みなんだけど新鮮。
占いにも書いてありました。「今年は一周回って吹っ切れた」みたいなことが。本当にそうなのかもなと、今話していて思いました。
――では、そんな早見さんの今後の展望をお聞かせください。ヒントだけでもいいので!
早見:ライブは……やると思いますね。私はやりたいと思っていて、スタッフもライブ大好きが集まっているので、夢を叶えられたらいいなと思っています。
あとは、楽曲の性質、テイストとかも、またマニアックにしていけたらいいなーと思っています。叶えるためには私自身も勉強する必要があるし、今年はもっと扱える素材を増やす時期ですね。
お寿司屋さんだったら出せるネタを多くするみたいな。えんがわとかも出していきたいです(笑)。甘エビと、ほたてみたいな、絶妙なところを出していきたいと思っています。マグロとたまごとはちょっと置いておいて(笑)。
できることなら私はガリ的な曲が好きなので、それも入れられたらいいなと思っています(笑)。無いは無いでやっていけるけど、後で欠かせなくなる感じ。そういうものを作れるように頑張っていきたいし、そういうものを関連付けていけるアーティストにしたいです。
「アーティスト・早見沙織」の名前を出たときに、「こういう曲やっている人」と、ひとつにまとめることは難しいし、その必要はないけど、思い浮かぶ中のひとつの要素として関連付けられるイメージにしていきたいなと思っています。
――「早見沙織とは?」ということですね。
早見:そういうところを持っている、と感じられるようになれればと思います。
――今年も躍進の年になりそうですね。
早見:今年は学びます! ガリを生産する工場ラインを整えていきたいと思います(笑)。ガリ需要市場が育って欲しいですね(笑)。
――新しいガリが楽しみです(笑)。ありがとうございました。
[インタビュー/石橋悠]
作品情報
早見沙織
TVアニメ「カードキャプターさくらクリアカード編」
エンディングテーマ収録
4thシングル「Jewelry」
2018年3月28日(水)発売
<アーティスト盤> CD +特典DVD (2枚組)
価格:¥1,800+税
ジャケット:早見沙織仕様
CD収録曲:全4曲収録予定
1.Jewelry (作詞・作曲:早見沙織編曲:倉内達矢)
(TVアニメ「カードキャプターさくらクリアカード編」エンディングテーマ)
2. タイトル未定
3. Jewelry (instrumental)
4. タイトル未定(instrumental)
特典DVD収録内容:「Jewelry」MUSIC VIDEO
<通常盤> CD (1枚組)
価格:¥1,200+税
ジャケット:アニメ仕様「カードキャプターさくらクリアカード編」
アニメ描きおろし
CD収録曲:全4曲収録予定
1.Jewelry (作詞・作曲:早見沙織編曲:倉内達矢)
(TVアニメ「カードキャプターさくらクリアカード編」エンディングテーマ)
2. タイトル未定
3. Jewelry (instrumental)
4. タイトル未定(instrumental)
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