『LOST SONG』鈴木このみさんインタビュー|主演声優初挑戦のアーティスト「鈴木このみ」さんが、アフレコ初日の自分に伝えたいメッセージとは……!?
3月31日にNetflixで第1話が先行配信された『LOST SONG』。4月7日からはいよいよTOKYO MXなどで放送中です! そこで地上波放送中の本作について、田村ゆかりさんとダブル主演を務める鈴木このみさんにお話をうかがいました。
声優初挑戦について、ダブル主演のプレッシャーについて、そして収録裏話について……。アーティスト活動とは大きく異なるけれど、「表現をする」ことにおいては共通することが多い演技を、鈴木さんがどう感じているのか?
アーティストから声優へ、声優からアーティストへ。その独特の視点から見えてくる「演技論」とは、はたして……!?
まずは「アニメジャパン2018」、お疲れさまでした!
――「AnimeJapan2018」では朝から『LOST SONG』放送直前スペシャルステージがありましたね。お疲れさまでした。自分も眠い目をこすっていましたが、鈴木さんのパワフルなステージでテンションが一気に上がりました(笑)。
鈴木このみさん(以下、鈴木):よかったです(笑)。朝イチの歌唱はなかなか大変でしたねー(笑)。
――スペシャルステージでも歌われていたオープニング主題歌「歌えばそこに君がいるから」は疾走感があっていいですよね。特にステージでは全身全霊で歌われていて、この作品にかける鈴木さんの熱意が伝わってきました。手ごたえはいかがでしたか?
鈴木:緊張しました。AnimeJapanはこれまでも招待していただいているのですが、今回は主題歌を披露するのと同時に、声優としてもステージに立つわけですからね。でも主題歌を歌い終わったあとは、キャストのみなさんと一緒に登壇したので、トークをしているうちに少しずつほぐれていきました。
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キャラクターの「リン」として歌うということ
――PVの映像部分では、田村ゆかりさん演じるフィーニスとデュエットをされています。そこも本作の見どころかと思いますが、歌収録はやはり別々だったのですか?
鈴木:別々でした。収録では、「田村さんならこう歌われるのかな?」「フィーニスはこういう感情で歌っているはずだから、それならリンはこう歌うのかな?」と、イメージを膨らませながら挑みました。
今まで私はソロアーティストとして活動させていただいて、他のアーティストさんとコラボをすることはあっても、キャラクターを演じながら歌うことはなかったので、それはすごく新鮮で楽しい経験でしたね。
――いちアーティストとして歌うことに加え、今回はキャラクターの要素が入ると。
鈴木:それはかなり意識しました。オープニング主題歌を歌う時は「鈴木このみ」ですけど、劇中歌は「リン」なので、普段のロック調の歌い方だと、少女なのに「ゴリッ」としてしまうんです(笑)。
とくにリンは素直な女の子なので、そこはなるべくストレートに歌うよう心がけました。
――なるほど。
鈴木:あとは「いかにそのシーンとマッチしているか」「そのシーンでリンが感じた想いをいかに届けられるのか」を大事にしたかったので、歌のうまさやテクニックよりも、その時に自然と出てきたものを使ってもらうようにしました。
例えば普段の自分なら「ここは少し音が揺らいでいるからカットしようかな」と思うところを、あえてOKにしてもらったんです。
――今後、ライブなどで『LOST SONG』のOP主題歌「歌えばそこに君がいるから」を聴くときに、「鈴木このみ」の感情なのか、「リン」の感情なのか考えながら聞くと、またひとつ深みが出そうですね。
鈴木:そうですね。ただ昨年の夏頃から、作中ではずっとリンとして生きてきたので、自然とどちらの想いも出てくるのかなと思います。リンとは共通するところが多く、物事に対する感じ方だったり、仲間に支えられているところだったり、歌が大好きで食べることも大好きだったり……。
その意味で主題歌の「歌えばそこに君がいるから」は、「リンの想い」も「鈴木このみの想い」も100%届けられる歌になっていると思います。
――物語が進むにつれて田村さんとのデュエットが聞ける機会がやってくるかと思います。よくアーティストさんは、デュエットの時はソロとは違うパワーを発揮できるとおっしゃいますが、収録ではいかがでしたか? 歌に籠める想いはやはり違ってくるものなのでしょうか?
鈴木:それはあったと思いますね。実際に隣に立って収録したわけではありませんけど、相手の存在を感じながら収録していますから、歌に籠める想いの部分は強くなったと思います。リンは村でのびのびと育ち、フィーニスは王都でカゴの鳥のような日々を送っていて、取り巻く環境は正反対です。
でも二人とも「歌」でつながっているんです。リンとしてマイクの前に立った時、フィーニスの想いを感じながら歌うことでさらにレベルアップできたのかなと思います。
――そこは今後、イベントなどでお二人のデュエットを聞いてみたいところですね。そして「森田と順平」監督といえば『Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-』でシリーズ構成を務めた方です。『LOST SONG』も世界観設定の作り込みや張り巡らされた伏線が楽しみですよね。
鈴木:先の展開がすごく気になる物語になっていると思います。それに謎が解明されてから楽曲を聴くと、歌詞に籠められた意味に気づいてハッとさせられるのではないかと思います。
私が書いたオープニング主題歌の2番は、実は物語が大きく動き出す、第8話のことを思って書いたものです。物語本編を観てから改めて楽曲を聴いていただくのが一番心に響くのかなと思います。
――そういえば、AnimeJapanの会場で無料配布されていた『LOST SONG』のCDには挿入歌も入っていましたね。雰囲気がなんとなくミュージカルっぽいというか、キャラクターの心情を表現したような感じがしたのですが、そのあたりにはどんな意図があったのでしょうか?
鈴木:監督の中では、楽曲の前後でうまくシーンがつながる「その場面に合った歌にする」という意図があったと思います。この作品は歌が注目ポイントではありますけど、あくまでも軸は物語なんです。
それは私も同じで、「物語があって歌がある」と考えていますから、物語の流れを崩さないようとにかく大事に歌いました。
――それでミュージカルっぽく聞こえたのですね。ミニドラマパートから挿入歌に繋がるのですが、高揚感あるイントロを長めにとって、リンのワクワクするような心情を表現しているように感じました。
鈴木:実際、監督とはレコーディングをはじめる前に、「ここはこういうシーンなので、こういう感情の籠め方をしましょう」という話し合いをたくさん重ねてから挑みました。
それに、実際に歌が使われる場面の映像を見たり、自分が収録したセリフを聞いたりしながらレコーディングをしたんです。その意味で前後のシーンとうまくつながる、その場面に合った歌になったのかなと思います。
「声優」をしたことで見えてきたもの
――CDのドラマパートで鈴木さんの声優としての演技をしっかりと聞かせていただいたのですが、セリフがすごく聞きやすいというか、「これで初挑戦?」という印象を持ちました。
鈴木:ほんとですか!? ……よかったです(笑)。私自身、アニメ好きなのでドラマCDをよく聞くんですけど、今回演じる側になったことで「こうやって録ってたんだな」と思いました。
――実際にマイクの前に立ってみていかがでしたか?
鈴木:いろんな大人の人に見守ってもらいつつ、すごくドキドキしながら収録しました。
今は最終回を残すのみという段階まで収録が進んでいるので、だいぶスムーズにセリフが出てくるようになりました。私の中にリンちゃんが生きてるんだなって実感します。
――一年前と比べて、演技をする心構えというのはどのように変化しましたか?
鈴木:どうなんでしょうね……。収録初期から「私がリンちゃんなんだ」という心構えはあった……というか、そうなるように心掛けました。
――というと?
鈴木:「自分がリンちゃんで大丈夫なのかな?」という不安は、もちろんありました。ただそう思いながら現場に入るのは、作品を楽しみにしている皆さんにも、そして共演者の皆さんに対しても凄く失礼だと思うんです。
「アフレコがはじまる頃には、リンちゃんとしてできあがっていなければならない」と思って、一年間、演技レッスンをしました。
――その後、アフレコ初日を迎えていかがでしたか?
鈴木:「やるしかない」というところまでいきました。リンちゃんはいろいろな人と関わることでどんどんと成長するキャラクターですから、今はその成長に置いて行かれないよう意識しながら生活しています。
――そうやって毎回収録を積み重ねていくうちに、きっと、見えてくるものが変わってきたと思います。例えば演技を細かく見るようになったりだとか、役者の視点で物語を読み解くようになったりだとか、そういった変化はいかがですか?
鈴木:ありましたね。プライベートでアニメを観るにしても、例えばスープを「ズズズ」とすする音ってどうやって出すんだろうと演技面に注目してみたり、家にいる時は普段の生活では絶対に出ない「……」や「!」をあえて声に出してみたり、そういうことをするようになりました。
それに先輩方から「他の作品を見て覚えることもすごくいいことだから、いっぱい意識して見るといいよ」とアドバイスをいただきましたし、なるべく意識してアニメを観るようになりましたね。
――気持ちの作り方は歌と通じるものがありますか?
鈴木:通じます。私は最初、切り離して考えていたんです。でも演技を学ぶようになってから、ライブで「あれ? 最近違ってきたな?」と思うことがちょくちょくあるんですよ。今までは気持ちをさらけ出すことで「嫌われたらどうしよう」「誤解されたらどうしよう」と色々なことを考えて表現の壁を作っていました。
それが、キャラクターとぶつかることに挑戦することで取り除かれ、歌の中の気持ちをストレートに表現することができるようになったのかなって思います。なので今は、ライブがもっともっと楽しくなっています。
過去の自分にかけた言葉から見えてくる「成長の証」
――もしもアフレコ初日の自分に何か伝えられるとしたら、なんと伝えますか?
鈴木:え!? 初日の自分にですか……?? うーん……そうですね……。それでしたら、「そんなに気張らなくても大丈夫だよ」ですかね(笑)。
「緊張しなくても大丈夫だよ」と言いたいですし、心に正直になるのはすごく気持ちいい事だと思うので「怖くないよ」と伝えたいです。
――監督と共演者も、初日の鈴木さんに対して同じことを思っていたかもしれませんね。
鈴木:そういえば、アル役の久野美咲ちゃんに「声も歌も同じ表現することだから、そんなに構えなくていいんだよ」と言われてハッとしました。確かに表現したいことは同じですし、私は表現することが好きなので、胸を張ってここにいていいんだなって。
――ほかに嬉しかったアドバイスや言葉はありましたか?
鈴木:私は大阪出身なので気を抜くと訛ってしまうんです。そんな時に田村さんから、「台本にこうやってイントネーションを書くとわかりやすいよ」と教えていただきました。
メル役の茅野愛衣さんには、食べる演技を麩菓子を使って教えていただいたり、別の機会には「練習用にどうぞ」とバズラ役の小山剛志さんにパンをいただいたりしました(笑)。
――田村さんは福岡県出身なので、イントネーションではご苦労されたのかもしれませんね。
鈴木:田村さんはたまに遠くを見つめることがあるんですけど、その時の姿には儚さがあって、フィーニスそのものというか、本当のお姫さまみたいなんですよ。
あと3年くらい前に『ゴッドタン』というバラエティー番組に出演したのですが、田村さんがその放送を見てくださってたみたいで、話しかけてもらえたことが凄く嬉しかったです!
次なるチャレンジ……!!
――本作では声優に初挑戦された鈴木さんですが、一番の収穫はなんだと思いますか?
鈴木:チャレンジすることの大切さをすごく感じました。声優はもちろん、アニメタイアップの楽曲を畑亜貴さんと共作することもそうですね。やらせていただけて本当によかったです。まずは「一歩を踏み出す」ことが一番大事ですし、きっとこれは誰にでも当てはまることだと思います。
――今後、チャレンジしてみたいことはありますか?
鈴木:チャレンジしてみたいことですか……? そうですね……。
――例えば「こんな料理を作ってみたい」とかでも(笑)。
鈴木:確かに最近、料理がマイブームではありますね(笑)。今は正直『LOST SONG』のことで頭がいっぱいではありますけど、このような機会があればまた声優をやらせていただければと思いますし、アーティストとしても大きく成長出来たと思うので、武道館や横浜アリーナなど、もっと大きなステージが踏めるようなライブアーティストになりたいと思います。
――歌がキーワードの作品だけに、「Live LOST SONG」とか「LOST SONG Fes」なんか期待しちゃいますね。
鈴木:いつかやってみたいですね。リンとフィーニスが歌姫役ではありますけど、劇中では色々なキャラクターが歌に参加しますから、出演者みんなで『LOST SONG』の世界観を表現するライブとか出来たらいいですね。
たかはし智秋さんが演じるポニー・グッドライトは、日本に1つあるかどうかというような珍しい楽器(ポルタティフ・オルガン)を使っているんです。それがライブで披露できるかどうか気になりますよね。そういった音色のひとつひとつにも注目してアニメを観ていただけたらと思います。
――それでは最後に、読者のみなさんへメッセージをお願いします。
鈴木:『LOST SONG』は歌が見どころではありますけど、やはりストーリーももの凄く面白いので、そちらにも期待してほしいです。すでにご覧になった皆さんは第1話から衝撃を受けたのではないでしょうか。
あとはイベントもやりたいですし、アーティストとしてもっともっと大きくなりたいと思っているので、『LOST SONG』ともども宜しくお願いします!
[取材・文/気賀沢昌志]
TVアニメーションシリーズ『LOST SONG』作品情報
─この歌は星の運命すら変える 2大歌姫による幻奏叙事詩(ファンタジーオペラ)
<配信>
Netflix先行配信:2018年3月31日(土)より毎週土曜
Netflix全世界配信:2018年夏
<TV放送>
TOKYO MX:2018年4月7日(土)より毎週土曜25:30~26:00
サンテレビ:2018年4月7日(土)より毎週土曜25:30~26:00
KBS京都:2018年4月8日(日)より毎週日曜23:30~24:00
テレビ愛知:2018年4月8日(日)より毎週日曜25:35~26:05
BSフジ:2018年4月11日(水)より毎週水曜24:00~24:30
<スタッフ>
原作・監督・脚本:森田と純平(MAGES.)
キャラクター原案:福田知則(MAGES.)
アニメーションファシリテーター:櫻井親良
メインキャラクターデザイン:金子志津枝
サブキャラクターデザイン:原修一・藤澤俊幸
デザインワークス:バーンストーム・デザインラボ
美術監督:大久保錦一
背景美術:でほぎゃらりー
色彩設計:大西峰代
撮影監督:山本弥芳
作詞:畑亜貴
<声優>
リン:鈴木このみ
フィーニス:田村ゆかり
アル:久野美咲
ポニー・グッドライト:たかはし智秋
ヘンリー・レオボルト:山下誠一郎
アリュー・ルックス:瀬戸麻沙美
モニカ・ルックス:芹澤優
コルテ/メル:茅野愛衣
バズラ・ベアモルス:小山剛志
ルード・ベルンシュタイン4世:鈴木裕斗
ドクター・ヴァイゼン:小形満
タルジア・ホークレイ:糸博
オープニング主題歌:「歌えばそこに君がいるから」
歌:鈴木このみ
エンディング主題歌:「TEARS ECHO」
歌:フィーニス(声:田村ゆかり)