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『劇場版マクロスΔ』MX4D専門家にインタビュー!

『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』MX4D上映記念! マキナの香りは河森監督監修済み!? MX4D専門家にインタビュー

ついに河森正治監督監修による『マクロスΔ 激情のワルキューレ』のMX4D版が、2018年5月11日より公開。これを記念してメディア向けの先行上映会が開催されました。

上映後はMX4Dの専門家、ソニービジネスソリューション株式会社プロジェクトマネージャーの條々淳さん、株式会社ダイナモアミューズメントモーションプログラマーの野中友恵さんにインタビューを実施。『マクロスΔ』という作品をMX4Dで表現することのこだわりについて語っていただきました!

さらに、『マクロスΔ 激情のワルキューレ』のMX4D版の公開を記念して河森正治監督よりメッセージも到着。本稿では、MX4Dのインプレッションも含め、開発者インタビューをお届けします!

▲左から野中友恵さん、條々淳さん

▲左から野中友恵さん、條々淳さん

まずはMX4Dを体験! そして感じたこと

『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』は2016年に放映されたTVアニメ『マクロスΔ』全26話を再構築して2時間という限られた時間にまとめた作品です。

筆者もTVアニメ、今回の劇場版と全て見させていただきました。特に今回の劇場版の見どころは、メッサ―の散り際と、3DCGを使ったワルキューレのライブシーンでしょう。

劇場版はTVシリーズとは違い、2時間という限られた上映時間のため、鮮度の高い悲しみを維持したままメッサ―の死を迎えられるのも感慨深いところです。

劇場版になったことで、没入感をました『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』が、MX4Dになったら……。果たしてどうなるのか? 体験してきました!

MX4Dを導入している作品の多くは戦闘シーンが多い印象です。それは『マクロスΔ』も同じく。しかし、『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』では、ワルキューレによるライブシーンも豊富になっています。

戦闘シーンではあまり使われないお尻に感じる音楽独特のリズム(4つ打ち)、ライブ演出を盛り上げるストロボなどのギミックも贅沢に感じることができるため、新たな発見と満足感があります。

また、物語中盤にマキナのセクシーショットが登場するシーンでは、ふっと甘い香りが鼻孔をくすぐります。これは河森監督が監修したマキナの香りとのこと! 劇場に行けばマキナの香りが嗅げちゃうんです! マキナファンにはたまらない演出となっています。

MX4Dを取り入れることで作品の魅力が更に増したことは勿論、MX4Dと『マクロスΔ』の相性が良く、ファンに更なる没入感を提供していると感じました。

▲MX4Dのプログラミングを行う野中さん

▲MX4Dのプログラミングを行う野中さん

河森正治監督からのメッセージが到着!

『マクロス』シリーズは、最初の劇場版『超時空要塞マクロス~愛・おぼえていますか~』を作った頃から臨場感、体感を意識しています。「映画を見る」というより「空間の中に入りこんで」自分がパイロットになったり、ライブ会場で歌姫のLIVEを体験しているような、「肌で感じる」「魂を揺さぶる」作品を目指してきました。

そしてついに『激情のワルキューレ』では、実際にMX4Dの専用シートで振動や風を感じると「ああ、目指しているところに、また一歩近づけたな」と実感しました。『激情のワルキューレ』MX4Dは本当に映画館でしかできない体験です。ぜひより深く「マクロスワールド」に踏み込んで、ワルキューレの一員、デルタ小隊の一員として、さらなる「激情」を味わってください。

MX4D専門家にインタビュー、『マクロスΔ』だからこそこだわった演出とは?

――『マクロスΔ』の劇場版ということで、本作ならではのMX4Dの見どころはどこでしょうか?

條々淳さん(以下、條々):MX4Dを導入する際、アニメーションでの注文は多いのですが、『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』で他のアニメとは一線を画した点は“音楽”です。音楽がマクロスのキーになっているので、音楽に焦点を当ててプログラマーに作っていただいています。

野中友恵さん(以下、野中):今回『マクロスΔ』には戦闘シーンと同じくらいライブシーンにも没入感と迫力が感じられるようにプログラムしました。

特に前半のライブシーンでは、客席とステージの上を滑空するカメラの目線に合わせて動きを付けました。現実ではそういった視点からライブを観ることはできません。MX4Dならではのワルキューレたちの間をすり抜けるような感覚を味わっていただけるようにしました。

あとはワルキューレの5人それぞれの色があるので、その色に合わせてストロボが点滅したり、音のリズムに合わせて座席が振動するようになっています。


――河森正治監督から何か指示はありましたか?

野中:「音のキメに合わせて動きもキメてくれ」という指示がありましたね。カメラ目線で追っかけると割とスムーズな動きになるんですけど、スムーズな動きからキュッと止まるのってプログラム的に難しいんです。

激しい動きからキュッとつんのめる様な形で止まるのは上手くいくんですが、ふんわりしながらちょっと体にGをかけるというのは難しいんです。なので今回は今まで使ってこなかった数値で、かなりイレギュラーなプログラムを入れました。

條々:実は、プログラミングする際にMX4Dを製作している本国アメリカからいくつかパターンをもらっているんです。基本的にはそのパターンを映像に当てはめていくんですが、今回その範囲を超えて作りました。

株式会社ビックウエスト・畠中雄一さん(以下、畠中):あと、河森監督はシーンチェンジした時にもそのガタガタをこぼして欲しい、というのはよく言っていましたね。余韻を残して欲しいということですね。

――表現するのが難しかったところはどこでしょうか?

野中:ライブシーンでふんわりした可愛さとキレのあるダンス感を両立させることが一番苦労しました。意外と戦闘シーンに関しては4D映えするというか、ハマりが良かったので、かなり楽しみながらスムーズに製作することができました。難しかったのはライブシーンだけですね。

條々:今までドンパチやる作品はあれど、ドンパチとライブを両立させる作品はありませんでしたからね。

――空戦のシーンでは視点が敵味方入れ替わりますが、ここはどのように調整されているのでしょうか?

野中:基本的には味方側の視点になることが多いんですが、戦闘シーンだと画面の切り替わりでカメラと、敵と、主人公の主観をそれぞれ移動するような、それでいて邪魔にならずスムーズに移行できるように頑張りました。

――今までMX4Dのような体感型シアターを体験したお客さんの反応はいかがでしたか?

野中:実はMX4Dは映画ファンからすると敬遠されがちというか「俺はもっと静かに映画を観たいんだ」っていう人もいて。でも若い人は、こういうアトラクション的に楽しんでくれる方が多いんですね。

『マクロスΔ』は特にキャラクターの個性が独立していて、それぞれのキャラクターにファンがいます。そして、MX4Dは、そのキャラクターにもなれるし、キャラクターに近づけるんです。この両方を感じられるのは大きいと思いますね。

実はエンドロールにも深いこだわりが……。

――ライブシーンや戦闘シーンが混同している場面はどうされているのでしょうか?

野中:本当に激しいバルキリーのドッグファイトは戦闘8割くらいに重点を置いてつけています。その他のライブシーンと戦闘シーンが交互に出てくるところはそれぞれ視点を入れ替えながら両方感じられるように調整しました。

特に畠中さんからは初めてのライブシーンで4つ打ちが体に感じられるようにしてほしいとのご意見をいただきました。キャストのライブの演出的なところも全部取り込んでいますね。

技術的な難しさはないんですけど、河森監督からエンドロールのところも何か趣向を凝らして欲しいと言われまして……。

歌っているキャラクターが誰かを判定して、それに合わせた色をつけました。どの声優さんが歌っているかを聴きとるのに丸1日費やしましたね(笑)

條々:実はエンドロールにMX4Dは今までつけたことが無くて、初の試みでしたね。

――映画は2月頃公開でしたが、間が空いたのは映画が公開されてからMX4D版を作り始めたからなのでしょうか?

畠中:実は、公開は2018年2月9日だったのですが、完成が公開間近だったんです。そこからMX4Dをお願いしたので時間がかかってしまったというところがあります。

條々:MX4Dは、完パケ(完全パッケージ)の状態でいただかないとプログラムが作れないんです。音のタイムコードがかなり重要なポイントになるので、完パケをいただいてからも製作日数が1カ月程かかります。

ほとんど手作業でつけていくので、それでどうしても時間がかかるんです。でも、河森監督には本当にMX4Dに興味を持っていただけましたよね。

野中:かなり、河森監督が監修してくれたことで見落としていた演出だったり、気づかない状況設定を仰ってくれたので、そこも全て取り入れています!

――いったん野中さんの方で全体を組んで、それを河森監督に体験してもらって、「ここはこうお願いします」みたいなのやり取りがあったということですか?

野中:2往復くらいありましたね。

條々:そこは通常フローとしては完パケをいただいた後に1週間くらいで象徴的なシーン5分程度仮つけで野中さんが組んでいきます。その後クオリティーチェックという形で河森監督に来ていただいてその5分を観ていただきます。

その後作品の方向性やコンセプトを河森監督とすり合わせして、河森監督からご意見を色々いただいた上で完成まで一気に進みます。

完成した時点で最終クオリティーチェックということで河森監督に全編通して観ていただきました。先ほど紹介させていただいたプログラミング画面を野中さんが叩きながら、横で河森監督が座ってずーっと観ているんです。

一同:(笑)。

條々:MX4Dはプログラミングが元になっているので、最初は本国アメリカで作っていたんです。でも、日本人とアメリカ人の感覚って違うんです。

某作品で精神世界に入り込むというシーンがあったんですが、アメリカのMX4Dの技術者は何を表現しているのかわからなかったんです。実際に出来上がったものは、フワフワした動きをずっとしているだけでした。「これはダメだな」って思いましたね。

やはり日本に持ってきて、実際に監督に監修していただくというところまで持っていかないと、日本のお客様には受け入れられない。

そこで見捨てられてしまってはどうしようもないので、監督さんが作っている時に思い描いていたクリエイティブな部分のコンセプトっていうものをMX4Dまで落とし込もうと思いました。

そのためにも、監督さんにはできる限りお越しいただき、率直な意見をいただいて、それを全部野中さんが組み込んでいくという体制になっています。特に『マクロスΔ』では河森監督にはカッチリ来ていただきました。

畠中:どこにそんな時間があったんだっていうくらい、1往復で2時間くらいみっちりやるので、トータル4時間かけてあーだこーだやりながらやっていましたね。

――先ほどのような空戦シーンでは監督から何か指示はありましたか?

野中:空戦シーンは、プログラマーとして「あ、こういう視点を忘れちゃだめだな」という情景がありました。ハヤテがバルキリーに乗って後ろから攻撃されて前につんのめるシーンです。

プログラマーの基本としては映像と音に合わせて特殊効果をつけるんですが、体がガンッ! と前に倒れるシーンが一番激しい動きだったんです。

でも監督は「後ろから攻撃されているところをもっと大きくしてその慣性で前に倒れるような感じにしてほしい」と言われて、本当にプログラマー感覚ではなくパイロット感覚になるのが大事だなと気付かされました。

過剰な演出として特殊効果をつけがちなんですが、もっとリアリティ寄りになってもいいのかもしれないなと思いました。

畠中:監督も本当に楽しそうにしていましたね。そもそも面白いっていうのと、ご自身が作られた映画にもう1個MX4Dという演出を新たに加えられるっていうのが楽しかったみたいで。

全く違うものになるっていうことは凄く言っていましたね。だから監督も、演出をつけるのが大変だったと思います。

野中:バルキリーの変形シーン、駆動シーン、稼働シーン、微細な振動は全部拾いました。いわゆる子供がロボットで遊ぶ時の「ウイーン、ガシャン」的なものは全部感じられるようにしています。そこはプログラマーとしてとてもお勧めするところです!

條々:実はプログラマーは彼女と若い男性がいるんですけど、二人とも『マクロス』かなり好きなんだよね?

野中:そうですね。

條々:アニメに対する造詣が深くて、ちょっと感情移入をしすぎるところがあるんですが、逆に細かいところの動きも作業的につけるんじゃなくて、作品内容や作品のバックボーンなんかも含めて全部調べ上げてくれるんです。そこがやっぱり日本で作ってて一番いいところですね。

畠中:河森監督がこだわっていて何回か「ああじゃない、こうじゃない」って直接やり取りしていたのが、メッサ―のラストです。最後の戦闘でヴァール化しながら操縦するので、体がボコボコボコッ! ってなっていくところは何回か調整されていましたよね。

野中:メッサ―感覚を……。

畠中:メッサ―になれると!

一同:(笑)。

畠中:本当に何度もやり取りしていましたもんね。

――MX4Dはアメリカ、4DXは韓国で作っていますが、日本で作ることによって4DXとの差別化ができたのではないでしょうか?

條々:そこで差別化をしているっていうのはありますね。やっぱり直接監督さんに来ていただいて監督さんに演出を付け加えていただけるっていうのは僕らMX4Dにとっての一番の魅力になりますね。

畠中:河森監督も「おお、おお!」って言いながら体験していただいて。じゃあディスカッションしましょうってなった時に、A4の紙に細かくタイムコードも含めて全部書いていたんです……。映画館の暗闇で!「そんなにあるんだ!」って思って見てましたもん。

野中:逆にピンポイントでココとココをこうしてほしいって仰ってくださるので有難かったですね。

MX4D初めての監督だとニュアンスで「ここを全体的にグイーッて感じで」みたいに感覚がつかみ切れないことがあるんですけど、河森監督は「ここはこう!」ってちゃんと指示してくださるので流石! っと思いましたね。

畠中:多分本人MX4D初めてだと思います。

野中:河森監督もこういう新技術が使えるんだったらカット割りもMX4D向けに変えてもいいのかなっていうのをちょろっと仰っていたんですよ。

何人かの監督さんもこういう新技術に興味を持っていただけるので、「こうやってやるならカット割りをこういう風に変えたらこれに合うよね。今から……いや無理か」みたいな話をして。

監督によってはMX4Dをやると途中でわかった段階でカット割り変えてきましたね。1つの演出というところでMX4Dを想定した演出を作っていただけるのであればうちとしては非常にありがたいことですね。

――演出という意味ではライブシーンの時に香りが出てきましたよね

野中:後半のシーンは無いんですが前半にはありますね。お風呂のシーンと、ケーキのシーン、マキナが端末から顔を出してセクシーなポーズをとるシーンですね。

條々:匂いに関しては河森監督からもオーダーがありましたね。でも匂いには制限がありまして、100%オーダーに答えることはできませんでしたね。

畠中:でも香りは選んでいましたよね。「こっちの方がいいなぁ」っていう感じで。

――なるほど。では、最後に劇場版『マクロスΔ』MX4Dを楽しみにしているファンの方にメッセージをお願いします。

野中:先ほども申し上げましたが、メカの変形と駆動のリアリティある振動が、音楽と風が感じられるようになっています。

ライブシーンはもしかしたら一度見ただけでは気づかない演出や、異彩な演出まで盛り込みました。また、ドッグファイトのシーンはかなり激しいので是非体力を温存して観に来てください!

條々:MX4Dが単なる動く椅子っていう風に捉えるのではなくて、監督さんの演出が組み込まれていますので、その意図をMX4Dがサポートしているというところで、作品のもう一つのバージョンとして観に来ていただきたいなという気持ちでいっぱいです。是非楽しんでいただけるとありがたいです!

――ありがとうございました!

[文・撮影/古瀬敏之]

作品情報

『劇場版 マクロスΔ 激情のワルキューレ』

2018年5月11日(金)より
TOHOシネマズ、MX4D(R)劇場にて上映決定!

配給:ビックウエスト

■上映予定劇場
TOHOシネマズ 新宿
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
TOHOシネマズ 西新井
TOHOシネマズ 府中
TOHOシネマズ 宇都宮
TOHOシネマズ ららぽーと富士見
TOHOシネマズ ららぽーと船橋
TOHOシネマズ 柏
TOHOシネマズ 海老名
TOHOシネマズ ららぽーと横浜
TOHOシネマズ 川崎
TOHOシネマズ 赤池
TOHOシネマズ 二条
TOHOシネマズ なんば
TOHOシネマズ 鳳
TOHOシネマズ 西宮OS
TOHOシネマズ 岡南

※上記は予告なく変更となる場合がございます。あらかじめご了承ください

『マクロスΔ』公式サイト
『マクロスΔ』公式Twitter(@macrossD)

(C)2017 ビックウエスト/劇場版マクロスデルタ製作委員会
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