ZAQ『Z-ONE』ロングインタビュー

ZAQロングインタビュー|普通だからこそ尖りたい。何でもありが私自身。紆余曲折を経てたどり着いた答え『Z-ONE』

約2年振りとなるニューアルバム『Z-ONE(ゾーン)』を発表したシンガーソングライターのZAQさん。今作には、テレビアニメ『フリップフラッパーズ』OP「Serendipity」、劇場版アニメ『映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-』の主題歌「JOURNEY」「こころのなまえ」などのタイアップ曲を含む全12曲が収録。クリエイティブな感性を持つZAQさんならではの多彩な楽曲が詰め込まれています。

しかし、彼女の武器であるこの“多彩さ”が自分自身の悩みの種だったとインタビューで語ります。明るく、変幻自在に曲をクリエイトするイメージの裏で、ストイックに自分の歌の在り方と生き方を追求してきたZAQさんが、苦悩を越えて新しいスタートを切れた理由とは何だったのでしょうか。じっくりと話を訊きました。

「私って何なんだろうって悩んでたこと自体が、私だった」

――今回アルバムが約2年振りにリリースされましたが、この2年を振り返ってみるといかがですか?

ZAQさん(以下ZAQ):いろいろありましたね。事務所を離れてフリーになったということもありますし、環境が変わって変化のあった時期だったのかなと。成長したのか、退化したのかは分かりませんが色々と変わりました。

良い方向にいったとは自分では思っていますけど……やっぱり、もっと頑張らなきゃなって。

――フリーになったことでそういう気持ちって強くなりましたか。

ZAQ:そうですね。私を支えてくれるメンバーは変わってないんです。だからそこには救われています。

ただ、しっかりしなきゃなとは思います。みんなの負担にならないように(笑)。そう思いながら、新たな環境に身を投じたいなと。

――アルバムにはどんな気持ちで向かわれたんですか。個人的にはオンリーワンの存在感を持つZAQさんならではのアルバムだなと思ったんです。もしかしたらタイトルにもそういった意味が込められているのではないかなと思ったんですが、どうでしょうか?

ZAQ:オンリーワンはいちばん伝えたいメッセージなのかもしれないです。

『Z-ONE』というタイトルにしたのも、ZAQはこの世界に1人しかいないんだぞってアピールと、「ゾーン状態」という、アスリートなどが集中していて周りの音が聞こえなくなるほど精神を研ぎ澄ましている心理状態の意味と、「ここが私の世界なのよ」っていう意味も込めて、トリプルミーニングにしたんです。

なかでもオンリーワンだぞって想いはすごく強いですね。

――ZAQさんのアルバムのタイトルってそのときのモードが反映されているように思うんですが……。

ZAQ:そうですね。1枚目は自分が音楽の研究員になった設定をラボという言葉に落とし込んで『NOISY Lab.』。とてもやかましい、言いたいことがあるっていう意味も込めてます。

2枚目の『NO RULE MY RULE』は、ルールがないのが私のルールっていうZAQとしての生き方を提示していて。アルバムのタイトルは常に強気ですね。

――そして3枚目となる今作で、オンリーワンであるということを改めて伝えたかった理由はなんでしょう。

ZAQ:ずっと「自分の音楽ってなんなんだろう」って思ってて。周りからは「ZAQって色々なことやれるよね」って言われることが多いんです。私自身も、変幻自在に音楽も見た目も変えて「これ本当に本人?」って言われるようなものを目指していたんですけど、だんだん自分が透明化してきて……ZAQの音楽って結局何が言いたいんだろうなって。

それで悩んだ2年間でした。アニソンってジャンルに身を投じてはいるんですけど……私の音楽のジャンルってなんなんだろう? なんでもありって、つまりお前はなんなんだって。

――ZAQの存在意義といいますか。

ZAQ:そうそうそう。ZAQのサウンドってなんなんだろうって考えて……。「カーストルーム」(TVアニメ『ようこそ実力至上主義の教室へ』OP主題歌)を作るときに、色々な音楽をまぜてつくってみたんです。目指したのはアシッドジャズだったんですけど……オシャレだし、ポップだし、結局なんなんだろう? ってサウンドになって。

で、そのときに「これってジャンルとしては何なんだろう?」って思うのが、私なんだなって思ったんです。私って何なんだろうって悩んでたこと自体が、私だった。

曲を作り上げてきたなかで、ZAQというジャンルが出来あがってきていたんだって答えに気づいたのが「カーストルーム」だったんです。

それまでは……色々な音楽に触れてきて、色々な情報をアウトプットできるところは私の武器の1つなんですけど、それに対してフェイク感を感じていたんです。

――フェイク感ですか。

ZAQ:私はクラシックしか真面目に通ってなくて、昔っから「ロックが好きで」「EDMが好きで」みたいな生き方をしてないんです。好きなジャンルを聴かれても「ロックもEDMも好きだし、ジャズもファンクもR&Bもヒップホップも好きだし」って答えてしまう。クラシックを通ってきたからこそ、全部好きって、そのジャンルに対してはニセモノなんじゃないかって劣等感があったんです。

で、それがさっきの悩みに直結していたんです。全部好きだからこそ、全部やれるからこそ、自分はニセモノなんだって劣等感があったんですけど、それってZAQとしての色になってるからよくない? って。そういう気持ちになれたのはここ最近ですね。

――逆にそれまで、ずっと悩まれていたということですよね。

ZAQ:悩んでました。見た目を変える、曲調を変える、つまり覚えてもらえないんです。

「今回はこうきたか、面白い」って思ってもらえたらベターだけど、こいつ色々やってるな、言いたいこと分からないなって思われてしまうんじゃないか。

でも私は色々な音楽をやりたいんだって相反する感情があるなかでやってきたので、今回はそこらへんが吹っ切れた感じがしています。

――それに気づいたというのは、かなり大きなターニングポイントではないですか。

ZAQ:そうですね。やっとプラスに変えることができた。だからやりたい放題やれたんです。

――でも私から見たら強みですよ。ロックやEDMを1本だけやってる人のなかでクラシックをきちんと理解されている方ってそう多くはないと思うんです。クラシックの楽典を知ってるひとにしか作れない音楽は絶対にあると思います。

ZAQ:確かに、クラシックは“クラシック”というくらいだから全ての音楽の基本なんですよね。そこを通ってきたというのは、めちゃくちゃ強い武器だなって……音大を卒業してから思いました(笑)。

ちゃんと通ってきて良かったなって。ZAQとして生まれ変わったからこそ思えました。お母さんのありがたみって離れてみないと分からないんだなっていう(笑)。

――(笑)。では「カーストルーム」ができたことでZAQさんとして吹っ切れたところがあって、それがアルバムのヒントにもなったんでしょうか。

ZAQ:ヒントにはなりましたね。

――タイトル曲はどういう経緯でできていったんですか?

ZAQ:アルバムの打ち合わせの時にリード曲をどうしようかって話になったんです。そこでコライト方式でいろいろなミュージシャンとやるのはどう? って提案をもらって。

今までは全部自分が主導となって、「こういう音楽にしたいです!」って主張ばかりで作ってきたので……ぶっちゃけ、その中でできちゃうんですよね。それ以外のエッセンスが欲しいって言われて。

ZAQには出せない音を誰かに表現して欲しい。ZAQの扉をもう一枚開いたところを見たいって言われて。

――ZAQさんのなかでそう言われて腑に落ちるものがあったんですね。

ZAQ:そうですね。自分の大事な子どもを誰かに託すのは勇気のいることだし、親としては変な整形や化粧をされたらどうしようって思っちゃうわけですよ。

でも人を頼ることって私のなかでも絶対に大きな進歩になるなって確信があったので、不安よりもそっちのほうが大きかったです。

これまで編曲を任せることはあったんですけど、アルバムに収録されている「Serendipity」(TVアニメ『フリップフラッパーズ』OP主題歌)は、まるまるR・O・Nさんに「お任せします! あなた色に染め上げて下さい!」って勢いでお願いしてて。

それも勇気のいることだったんですけど、今回は(自分以外の誰かと)一緒に作ってるという点で新しいです。

――作曲はANCHORさんとの共作クレジットで、編曲はそのANCHORさんが所属する豪華サウンドクリエイターチーム・ZiNGが担当されています。どんな制作だったんでしょうか。

ZAQ:最初はデータのやりとりからはじまりました。作曲家のANCHORさんは年下の男性で、最初は「ZAQってこういう音楽をやってきたよな」ってところに考慮して気をつかってアレンジを投げてくれたんです。だから「もっと自由にやっていいですよ」って返事をしたら「やりたい放題やらせてもらいますね」って。

そういうやり取りがあってデモができたんです。そのあと楽器のレコーディングに入ったんですけど、ZiNGさんってメンバーが本当に凄くて……。

ピエール中野さん(Dr / 凛として時雨)、ANCHORさん、Nobさん(B / MY FIRST STORY)、滝善充さん(G / 9mm Parabellum Bullet)っていう凄腕ミュージシャンがそろっているので、それぞれの主張があって。それを聴いているだけでも楽しかったし、レコーディング自体が本当に楽しくって。

――もうバンドのような感覚ですもんね。

ZAQ:そうですね。みんながみんな主張のあるアーティストっていうのは、これはまた凄いことなんだなって思いました。

今までの普通のやり取りではなくて、相手から「こうしたい」って意見がハッキリ出てくるんです。「このルートはこうなってるから、俺はこういうやり方でいく」みたいな感じのやり取りがその場でされていくんです。デモと大きく変わりはしないんだけど、ちゃんと人間が弾いている感じがする。

特に滝さんのレコーディングが楽しくて、自分らしさってこうだと思うんだって音を出してくれるんです。もうバンドマンって凄いなって。バンドに憧れた瞬間でした。

――バンドのZAQさんも見てみたいですね。

ZAQ:バンドができないのは……私が強いからなんです(笑)。みんなが強いと「私も負けたくない!」って思っちゃうんですよ。それは悪いところだなって。

今回のアルバムの飛び道具としてそういう曲があるくらいが、いちばんクリエイティブな気がします。私は間違いなく音楽性の違いで解散するタイプです(笑)。先に言っておきます。

――アハハハ(笑)。でも「Z-ONE」はそんな凄腕ミュージシャンたちのなかで、ZAQさんが自由に歌われている印象があって。歌い方もワイルドですよね。

ZAQ:歌詞の強さは安心します。自分でこういう歌詞が書けると安心する。誰かを対象にしたアニメソングの場合は、その人にトランスして作るので、こういうありのままの裸の歌詞って……まぁすぐ書けるんです。強気で、性格をそのまま出せたから。

――そのまま出せたのは、このメンバーであることも関係しているんですか?

ZAQ:いや、そこはあまり関係ないです。この曲はアルバムの看板曲だし、代表は私だぞ! って気持ちが根底にあるんです。そこに皆さんが協力してくれているというか。歌い方の面では、音楽に持っていかれたところもありましたけども。

歌のレコーディングは別日で、ANCHORさんが立ちあってくれたんですけど、自分は自分なりの歌の主張があって。ZiNGさんと一緒で、「俺、こうしたいと思う」っていうのが歌にあって。それが反映された感じです。

――そんな「Z-ONE」からの「カーストルーム」という流れがまた良いですよね。

ZAQ:「カーストルーム」は多分ここ最近でいちばんみんなの印象に残った曲だと思うんです。だから2曲目といういちばん良いところに持ってこようかなと思って。

――さらに「未開トオン」っていう。強烈なインパクトを残す3曲が続きます。キュートなラップで聴きやすいんですけど、強いメッセージが込められていて。

ZAQ:前からラップ曲を1曲は入れていたんですが、1枚目はファンクになって、2枚目は超ヒップホップになって。今回は女の子っぽいガーリーなラップに挑戦したかったんです。

「未開トオン」は……ドライなことをいいながらも、心のなかで熱いものが燃えているっていう歌にしたかったんです。まだ開けていない音を探しにいこうぜって曲です。

――「未開トオン」の編曲はTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDさんが担当されていますね。

ZAQ:TECHNOBOYSさんにお願いすることは最初に決まっていたのでTECHNOBOYSさんだったらこういう音にしてくれるかな? って想像しながら作って、それをお渡しした感じです。

シティポップに然り「可愛い」と「テクノ」って凄く相性がいいんですよ。こういう音楽ってあんまりやってこなかったから、挑戦的な曲になったかと思います。

「ああいう生き方してみたい」って思われることがシンガーソングライターの使命

――今作には、タイアップ曲が約半分収録されているんですよね。改めて多くのアニソンを歌われているんだなと感じると同時に、色濃いなと感じます。

ZAQ:そうなんです。シングルの表題曲やタイアップ曲って全部強いんですよ。だからたまには味を薄めないと胃もたれしちゃうなって感じもあって、「未開トオン」みたいな曲も入りやすい曲も入れたんです。

――なるほど。例えば5曲目の「ロストグロウ」は爽やかな力強さで、そのあとにイントロも入っていて。こういう曲は意識的に入れられたんですね。

ZAQ:そうですね。というのも、今回のアルバムには男性的な視点の曲が多いんです。「Z-ONE」は一人称が“僕”ですし、「カーストルーム」は下克上を目指す男の歌ですし、「Last Proof」(『劇場版 トリニティセブン 悠久図書館と錬金術少女』主題歌)は「ライバルをぶっ殺すぞ!」って歌。

「JOURNEY」(『映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-』OP主題歌)は「あなたが大好き! この気持ちどうしたらいいんだ!」って曲で、「Serendipity」は友達との絆を大切にしていこうという歌……どの曲も感情が激しいんです。「ロストグロウ」は失恋の曲で。

男性目線の濃い曲が続いているので、女性の優しい気持ちや弱い部分を出したいなと思って間に挟みました。

――「ロストグロウ」に<儚いノイズ>という言葉が出てきて1stを思い出したんですが、「ノイズ」という言葉は意識的に入れられてるんでしょうか?

ZAQ:ノイズって言葉が好きなんですよ。好きな言葉っていっぱい使っちゃうんです。「あの歌手、すごいあの言葉使うよな」って言われないようにボキャブラリーを増やしていかなきゃいけないなと思うんですけど(笑)、ノイズって言葉は好きですね。

――ノイズって言葉に惹かれる理由ってなぜだと思います?

ZAQ:なんか……いい子ちゃんではいたくないって気持ちがデビュー当初からあったんです。だから見た目を奇抜にしたり、音で変わったことをやったり……そういうイタズラ心があるので、そういう意味での比喩かな。

――そういうイタズラ心が生まれる理由って、なんでなんでしょう。

ZAQ:私自身がとても普通な人間だからです。普通だからこそ、変人に憧れるんです。めっちゃくちゃ普通なんですよ、本当に。

――いやいやいや!(笑)

ZAQ:なんでこんなにつまらないんだろうってくらい、普通で。普通だよね、私!(と、スタッフに問いかける)

スタッフ:意外と普通……。

一同:(笑)。

ZAQ:そうなんです。めちゃくちゃ普通なんですよ! 普通に騙される、普通に恋をする、普通になまける……みたいな普通なところがあるんです。だから尖っていきたいなって願いを込めた存在、それがZAQなんです。

――ZAQさんはZAQという存在を客観視されているんですね。

ZAQ:あ……そうかもしれない。あくまで人が聴くものですし、見られているものだから……どうやってZAQという人間を料理してやろうかって思っているんです。

誰かの目標になることは全アーティストの使命だと思うんですけど「こうなりたい」「この人見てると元気が出るな」って思われることが私の目指すアーティスト像で。

距離の近いアイドル、偶像としてではなく、「ああいう生き方してみたい」って思われることがシンガーソングライターの使命だと思っています。

だからZAQという人間は、カッコつけてしまうんです。カッコがついてるのかはよく分からないんですけどね(笑)。普通の人間なので。

「悩みながら作ったから、これもZAQという色に」

――「SPEED JUNKY」はメロディックパンクのような曲ですよね。一人称は「わたし」なんですけど、男の子のような感じというか。

ZAQ:そうですね。目指したのは青春パンクです。デジタル部分を極力そぎ落として、人間の生感を大事にして、ファンタジーを抜いて作っていきました。少年っぽい曲になったと思います。

私1番の歌詞がすごく好きなんです。<楽しくてとても してるソワソワ>って言葉が歌詞っぽくないというか。気持ちが早まってしまうから倒置法になってしまうっていう。会話のような感じにしたかったんです。

グルーブってリズムの隙間にできるものなので、それをなくしたかったんです。この曲にグルーブなんてモノはない(笑)。

――(笑)。タイトル通り速いですもんね。

ZAQ:このタイトルにはエピソードがあって、私は速い曲が多いのでレコーディグのときにドラムの方に「ZAQさんってスピードジャンキーだな」って言われたんです。それがしっくりきたんですよね。「確かにスピードジャンキーだ」と。

速い曲をずっとやってきてるなと思って、それを今回音楽にしました。

――速い曲は確かに多いですよね。なぜだと思います?

ZAQ:アニメのオープニングが速いからです!

――ああ、なるほど! 疾走感と言いますか。

ZAQ:クラシックとヒップホップを通ってきてる人間だから、速い音楽って通ってきてないんです。アニソンは速くて疾走感があって、オープニング感がある、ワクワク感がある、バトル感がある……ひとの気持ちをドキドキさせる。

アニソンはそれをダイレクトに表現するので、そうやって作ってきたんですけど……それが表に出ると「ZAQって速いよね」と。しかもライブでそういう曲を中心に歌うから「ZAQのライブって激しいよね」と(笑)。

――あはは(笑)。続く「ordinary it」は対になるような曲ですよね。それこそジャジーの雰囲気で。

ZAQ:これはシングル「BRAVER」(TVアニメ『食戟のソーマ 餐ノ皿』OP主題歌・本アルバムにも収録)のカップリングに収録された曲なんですけど……(歌詞を読んで)懐かしいな。

「カーストルーム」はアシッドジャズを作りたかったのに、できあがったジャンルが分からなくて“なんだこれ?”って感じだっですけど……「ordinary it」で最初に目指したのはロカビリーなんです。

――あ、確かにウッドベース入ってますもんね。

ZAQ:そうそう! もっと色々なジャンルをやってみたいなと思ってたところに「ロカビリーってどう?」って言われて、それはやったことないからやってみようと。

でも、お恥ずかしながらロカビリーって全然通ってなくて、チャック・ベリーって誰? ロカビリーってリズムがシャッフルしてるギターってこと? それってジャズと何か違うんですかって状態でした。

そう思って悩みながら作ったから、これもZAQという色になったんです。私のなかのロカビリーはこうだ! って思いながら作ったんですけど、周りは認められないと思う(苦笑)。

ただこれも「SPEED JUNKY」の性が出ていて、サビは速い(笑)。

――(笑)。確かに速い。でも歌の表情が「SPEED JUNKY」とは全然違いますよね。

ZAQ:アレンジを変える、歌い方を変える、メロを変える、はできるんですけど、声は変わらないんですよね。1回喉を潰すとか、骨格を変えるとかしないと声は変えられないんですけど……。

私の声って向き不向きがあって、私がどれだけ萌え声を出そうとしても「ZAQだな」ってなる声で。だからこの曲もロカビリーっぽい歌い方をしても、R&B感というか、ソウルフルな歌い方になってしまうんです。でもそこは自分の声に正直に歌いました。

――それも、ZAQ節になっていて。歌詞はどんな想いで書かれたんでしょうか。

ZAQ:結構シニカルな歌だとは思うんです。<不実なくせに「誠実であれ」と願ってた>って言葉もそうですけど……自分は悪いことをやってるのに政治家は叩いて、自分だって言えないことはあるのに誰かが恋愛をしたら怒って……綺麗なことを求めすぎている日本人のことを皮肉ってます。

君が投げたナイフは投げっぱなしで刺さってないと思ってるだろうけど、その言葉は誰かを傷つけてるよって歌ですね。

――アルバムの最後に「こころのなまえ」(『映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-』ED主題歌)が収録されています。『中二病でも恋がしたい!』はZAQさんの中でも大きな存在だと思うんですが、どんな想いを込めて作られたんでしょうか?

ZAQ:デビューしたのが『中二病でも恋がしたい!』の歌で(「Sparkling Daydream」)。それ以来たくさんの『中二病』作品に関わらせてもらってきたんですが、それの集大成となる曲を作って欲しい、年表のような曲にして欲しいと言われて……どうしても大きなテーマにはなりますよね。

壮大な愛の歌、感謝の歌にしたいなって思いました。あんまりそういう真面目なことや、誰かを思うことって苦手なんですけど、『中二病』の力を借りて書けました。歌で色々な表情を見せたつもりです。

――この曲を最後に収録したのは、ファンの方への感謝の気持ちを伝える為でもありますか?

ZAQ:そうですね。アルバムの最初と最後ってメッセージになると思うんです。1曲目の「Zone」で自分を主張して、最後では皆さんありがとうって気持ちを伝えたかった。

「今の私の全てですって胸を張って出せるアルバムに」

――アルバムが完成した率直な感想というのはどうでしょう?

ZAQ:マスタリングが終わって2週間くらいは「あー! 終わったー!」って気持ちだったんですけど、今になってくると……(暗い声色で)「もうちょっとああしたかった」「ここはああすればよかったかもしれない」みたいな反省点が出てきてしまって……。

――反省会が行われているんですか(笑)。

ZAQ:完成してからみんなの手に届くまでの、この1か月間っていちばん苦手なんです。色々な感情が巡ってソワソワするんですよ。

――でも素晴らしいアルバムだと思います。ZAQさんの生き様がいちばん出た作品になったのではないでしょうか。

ZAQ:そうですね。アルバムは“この期間の私のまとめ”みたいなところがあって。1曲1曲に対する思いもあるけど、まとめてみたら全部私だった。

嘘がないという意味では、集大成というか。これが今の私の全てですって胸を張って出せるアルバムになりました。

――アルバムリリース後はツアーが開催されますが、どんなツアーになりそうですか?

ZAQ:シリーズ化されている年末に開催している“KURUIZAQ”というライブでは好き勝手やってるんですけど、今回のツアーはアルバムをメインにしたライブになると思うので、できるだけ世界観を統一させたいなという気持ちがあります。

ミラーボールをつけてダンサー、つけたいなぁ! 1800人くらいステージに乗ってもらいたい(笑)。

――多い(笑)。ミラーボールのキラキラした感じというのは、「Z-ONE」のMVの雰囲気に通じるところがありますもんね。

ZAQ:結構ぶっ飛んだ内容になりました(笑)。アルバムの初回盤にMVと、ライブの映像も入るんです。それを観てもらえばライブの雰囲気が掴めるかなと思います。

――分かりました。最後にひとつ質問させて下さい。先ほど「クラシックとヒップホップを通ってきてる人間だから……」といった話をされていたじゃないですか。そんなZAQさんがアニソンに惹かれた理由ってなんだと思いますか。

ZAQ:なんですかね……。(しばらく考えて)理由は明確には分からないんですけど……CMでアニソンをパッと聴いたときに「なんだこの曲」って思ったんです。その「なんだこの曲!?」って気持ちが新鮮で。

凄く美しいハーモニーで、複雑化されたメロディとコード感のなかにストリングスが入ってくる。しかもそのストリングスがめちゃくちゃ攻めてる。「なんだこれ!」って。

それで漁ったら……有象無象のジャンル性があって、アニソンに楽しさを感じたんです。クラシックで決まった音色のなかで作ることばっかりをやってきたからこそ、こんな楽しい音楽があったんだ、そんな飛び道具があったんだ! って思ったのかもしれません。

その楽しさを見つけてから、私もやりたいって。自分の中の混沌とした何かを突き詰めたいと思ったのかな……。

――ZAQさんの気持ちがアニソンと共鳴したんですね。

ZAQ:そうですね。アニソンのなかにもヒップホップやジャズっぽいもの、クラシックのようなものもある。なんて自由なんだって。これだけ自己表現に垣根がないって素晴らしいなと思ったからこそ、飛び込みたいと思った。それが始まりでした。

ただ、垣根がないからこそ、自分のなかで何をやっているのかが分からなくなったりもしたんですけど……それは最初にお話した通りです。

ちょうどその時期はニコ動が全盛期でいろいろなひとがいろいろな主張をしてもいい! って流れになってきてて。ヒャダインさんを見て「革命ってこんな風に起こすんだ」って衝撃を受けたんです。それで「絶対に女版のヒャダインになるぞ!」って。天と地のような差ですけども(苦笑)

「なりたい」って思える夢があったことが自分のなかで大きかった。音高も音大も出て、周りは音楽をやめてしまったけど、私にはそれしか才能がないから音楽をやりたい。でも楽しいことしかやりたくないから、楽しいと思えるアニソンを突きつめたいって思ったんです。

[インタビュー逆井マリ]

『Z-ONE』リリース情報

初回生産分特典:セルフ・ライナーノーツ、ZAQ LIVE TOUR 2018チケット先行応募チラシ封入

<CD>
01. Zone
作詞:ZAQ 作曲:ZAQ、ANCHOR 編曲:ZiNG
02. カーストルーム(TVアニメ『ようこそ実力至上主義の教室へ』OP主題歌)
作詞・作曲・編曲:ZAQ
03. 未開トオン
作詞・作曲:ZAQ 編曲:TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND
04. Last Proof(『劇場版トリニティセブン』主題歌)
作詞・作曲・編曲:ZAQ
05. ロストグロウ
作詞・作曲:ZAQ 編曲:蓮尾理之
06. -interlude-
作曲・編曲:ZAQ
07. JOURNEY(『映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-』OP主題歌)
作詞・作曲・編曲:ZAQ
08. BRAVER(TVアニメ『食戟のソーマ 餐ノ皿』OP主題歌)
作詞・作曲・編曲:ZAQ
09. SPEED JUNKY
作詞・作曲・編曲:ZAQ
10. ordinary it
作詞・作曲・編曲:ZAQ
11. Serendipity(TVアニメ『フリップフラッパーズ』OP主題歌)
作詞・作曲:ZAQ 編曲:R・O・N
12. こころのなまえ(『映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me-』ED主題歌)
作詞・作曲:ZAQ 編曲:虹音

<Blu-ray>※初回限定盤のみ収録
ZAQ LIVE TOUR 2016「NO RULE MY RULE」
2016年10月22日(土)東京・新木場STUDIO COAST
01. NO RULE MY RULE
02. Sparkling Daydream
03. ヴィヴァーチェ!
04. KURUIZAQ
05. hopeness

Music Video
01. Zone
02. Serendipity
03. Last Proof
04. カーストルーム
05. BRAVER
06. JOURNEY

ZAQ Official site

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