声優・梶裕貴さんが今伝えたい“想い”とは? 初の著書『いつかすべてが君の力になる』発売記念イベント囲み取材をお届け!
2018年5月17日(木)、『進撃の巨人』エレン・イェーガー役、『七つの大罪』メリオダス役などでおなじみの声優・梶裕貴さんの初の著書「いつかすべてが君の力になる」刊行記念として、書籍お渡し会が開催されました。
梶さん初の著書「いつかすべてが君の力になる」は5月10日(木)に河出書房新社より発売されると、完売店が続出。11日(金)には緊急重版が早くも決定し、発売から約2週間で累計4万部を記録しています。
本稿では、書籍お渡し会の前に行われた囲み取材の模様をお届け! 梶さんが書籍に込めた想いや執筆することの大変さ、声優仲間からの反響などたっぷり語っていただきましたのでぜひご覧ください。
梶さんの熱い想いとエネルギーが詰まっている1冊
━━初の著書発売おめでとうございます! まず、本を出版することになった経緯を教えてください。
梶裕貴さん(以下、梶):お話をいただいたのがきっかけです。僕が声優を目指し始めた14歳の頃は、知りたくても情報がなかなか集まらなかった時代で。こういう本があったら参考になったかな、というイメージで今の自分が書ける文章でみなさんにお届けできたらなと思い、今回のお話をお受けさせていただきました。
━━実際に、出来上がった本をご覧になっていかがでしたか?
梶:書いているときは“繕っても仕方がない”という部分と、“でもなるべくキレイな形に”という気持ちが入り混じり、文章にすることの難しさなどいろいろなハードルを感じていました。でも、いざ出来上がったものを見てみると、自分の“伝えたい”という想いが文字に強く現れているように感じて。この本の文章と、役者としての自分が持っているカラーみたいなものがどこかで繋がっているのかなと思いました。
実際、読んでくださったみなさんから「僕らしい」「すごい熱とエネルギーを感じる」というお言葉もいただいて、お芝居と同じで僕の想いの強さがにじみ出ているものになったのかなと思います。
━━確かに。梶さんの中にある“想い”が強く現れているように感じました。
梶:本にも書いていますが、諦めないこと、苦しくても最後までやり切ることは本当に大事。本が完成したときの達成感はもちろん、誰かに何か伝えられるものがあるんだなと再確認できました。
━━本を出版された今、誰に何を伝えたいですか?
梶:14歳に向けた本のシリーズ(※1)なので、中高生を中心に夢を追いかけて頑張っている子たちや夢を探している子たちに何か届けられたら良いなと思っています。堅い教則本だったり、声優人生を振り返ったりする内容のご依頼だったら、お受けできていなかったと思うんです。また、僕も実際に「声優になりたい!」と思ったのが14歳ということもありご縁を感じ、今の自分だからこそ、その子たちに何か伝えられることがあるのでは、という想いもありました。
※1:「14歳の世渡り術」シリーズ。2007年に創刊され、「知ることは、生き延びること。」をモットーに、友達・家族・進路・社会の仕組みなど幅広いラインナップをそろえている。
━━今声優を目指している方も手に取られると思います。梶さん自身、どのような想いで本を書かれたのでしょうか。
梶:「声優を目指したい!」と思っている方がいれば、背中を押してあげたいなと思いますし…それ以上に、14歳という多感な年頃に、彼らがどういう風に過ごしたら、その後の人生を人間として豊かに過ごしていけるかなと考えながら執筆しました。大人になって考えれば些細なことかもしれないけれど、彼らにとってはすごく重大なことで、息苦しく感じてしまっている子たちもいると思います。そういう子たちの何かの救いになれるような面があればな、という想いで書かせていただいた部分もあります。
━━発売されてからすぐに重版がかかり、累計4万部を突破するなど大反響ですね!
梶:出版業界の情報に疎いので数字についてはよく分かりませんが…(笑)、書いた以上は多くの方に触れていただきたいのでとても嬉しいですし、それを良いものとして吸収していただけたらありがたいです。
━━梶さん自身、本屋さんで自分の本が並んでいる風景をご覧になりましたか?
梶:実は、まだ本屋さんに行けていないんです。(本が)並んでいるところを見たら、やっぱり嬉しい気持ちが込み上げてくると思います。今までも雑誌等で表紙を飾らせていただいた際に本屋さんで見かけて心がザワザワした経験はありますが、今回の本は僕の顔のどアップなので……(笑)。著者・梶裕貴というところもあり、より恥ずかしい気持ちがありますね。
━━表紙のデザインは梶さんの案でしょうか?
梶:自分の案ではありませんが、そうなるかなとは思っていました(笑) 「声優って何だろう?」「どういう人が書いているんだろう?」という方も当然いらっしゃると思うので、すぐに分かっていただけるようなものになったのかなと。
━━ちなみに、同じ業界の方から何か反響はありましたか?
梶:お世話になっている方々にお渡しして、すぐに読んでくださったり感想をいただいたり…。先ほどお話した熱やエネルギーの部分を感じ取ってくださって、今プロでやっている役者さんにも想いが伝わり反応がいただけるのは本当に嬉しいことです。すでに、現場で「先生!」といじられています…(笑)
「声優」というお仕事を多くの方に知ってもらいたい
━━少年時代から下積み時代まで赤裸々に書かれていますが、すべてをさらけ出すという意味では、それなりの覚悟があったのではないでしょうか。
梶:誰しもいろいろな苦労があって、何が良くて何が悪いというものではないと思いますが、声優を目指すことの楽しさや苦しさ、その両面にある事実を、自分が経験したことを通して届けなければ意味がないなと思いました。声優になるためのルートやお芝居の技術といった具体的なことよりも、どんな気持ちで挑戦し続けたら良いのか、という“気持ちの部分”を感じてもらうことが大事かなと。あくまで一例という思いで書かせていただきました。
━━書いていて苦しかった部分はありましたか?
梶:何をしていても「遊んでいる暇があったら本を書かなきゃ!」という自分が常に後ろにいてずっと苦しかったので…完成したときはホッとしましたね(笑) また、声優業界の仕組みは一概に言えない部分があるので、文章でどう伝えるべきなのか、“生みの苦しみ”を感じました。
執筆は初めての体験でしたので、声のお仕事をしながら最後まで書ききることの難しさを感じることも多々あったり。自分の名前で本として形にさせていただくので、僕自身も妥協はしたくありませんでしたし、かなり時間をかけて納得のいくものに仕上げていく作業がとても大変でした。
でも、実際に、表紙のついた本として形になったときはやはり嬉しかったですね。全国各地で多くの方が手に取って読んでいただけていると耳にし、本当に嬉しく思います。
━━逆に、書いていて楽しいと感じた部分はありましたか?
梶:楽しいというか、1番最後の締めの部分を書いているときは、「もう少しで完成する!」という安心感がありました(笑) 真ん中あたりを書いているときは「本当に終わらないんじゃないか」「もしかしたら、発売まで10年くらいかかるんじゃないか」という気持ちでしたので…(笑) 書き終わった後も何度も見直したり修正したりと大変でしたが、直接お渡し会で手に取ってくださったみなさんと顔を合わせられる瞬間が、何より幸せだと思います。
━━本の中では、お父様とのお話もありました。実際に本が発売された今、改めてお父様に伝えたいことはありますか?
梶:実家に連絡をしたときは、すでに購入してくれていたようで……。この本を通して親子の会話が生まれたら良いですし、なかなか本を出版させていただく機会などないので、また新しい形で親孝行ができたのかなと。向こうにもそう伝わっていたら嬉しいです。
━━また、“究極の選択”に迫られた体験について書かれていましたが、最近あった“究極の選択”があれば教えてください!
梶:晩御飯を食べた後に、“甘いもの”を食べるかどうかです。贅沢なものが1個あると、今日も1日頑張ったなと思えるんですが…遅い時間に糖質を摂るのは罪じゃないですか(笑) もう32歳なので毎日結構悩みますが、だいたい食べちゃってますね(笑)
━━(笑) 最後のページには、『進撃の巨人』などで音響監督を務めた三間雅文氏のスペシャルインタビューも記載されています。
梶:声優という職業と密接な役どころである音響監督という立場として、僕もいろいろな作品でお世話になっている恩師の方に文章を寄せていただけてとても嬉しかったです。読ませていただき、僕が現場で感じている三間さんの印象と変わらず、厳しい目もありながら熱意と愛情を持ってお仕事に取り組まれている方だなと改めて感じました。
音響監督さんからの言葉は、声優以上にみなさんの元にはなかなか届きにくいものだと思うので、これをきっかけに違う角度から声優という職業について触れていただけるのではないかなと思っています。
━━「なにかを作る」のが好きだと書かれていましたが、次回、作りたいものがあれば教えてください。
梶:自分は恥ずかしがり屋で緊張しやすい人間なので、もし才能があるならば絵や文章を書いたりと、表に出ずにクリエイティブなことをしたい想いはあります。でも、10代・20代を振り返りながら今の気持ちを書かせていただいて、やればやるほど“声優”で良かったな、声優に向いていたんだな、と。みなさんのおかげでこうやって進んでいけることが本当にありがたいです。
僕自身というよりも作品や役を通じて、どうお芝居で表現するのかが声優のお仕事だと思うので、これをベースにしつつ、機会があれば絵・文章・写真・音楽など、いろいろなことに挑戦して声のお芝居のフィードバックにしていければと考えています。
━━今後、文筆業を本格的に行う予定は……?
梶:面白そうだなと思いつつ、改めて本を書くことの楽しさと難しさが分かりましたし、自分のことを書くのと完全な創作物をつくるのはまったく違うと思うので……いつか時間ができて、うまくまとまったときに形にできたら良いなと思います。書けるものなら、フィクションを書いてみたいです。
━━改めて、今後の声優としての目標や夢を教えてください。
梶:今まで以上に、声優としての面白さや魅力をより多くの人に伝えていきたいです。声優という職業は“良い声の人たち”や“変わった声の人たち”という認識ではなく、“声でお芝居をする役者”なんだと多くの人に伝わるようなお仕事をしていけたらな、と思います。
━━「いつかすべてが君の力になる」というタイトルの通り、きっと多くの方が梶さんから力をもらっていると思います。最後に、梶さん自身が背中を押されている、支えられていると感じるものがあれば教えてください。
梶:やっぱり、応援してくださっているみなさんですね。何かを表現するときは、当然何かを届けたいと思っていますし、それを受け取ってくださる方がいるからこそ楽しく嬉しい気持ちになるものです。僕個人というよりも、作品とキャラクターとして何が届けられるか、それが伝わったときが1番嬉しいです。“誰かの役に立ちたい”という想いが、僕の背中を押していると思います。
━━ありがとうございました!
【梶】「いつかすべてが君の力になる」刊行記念 書籍お渡し会
— 梶裕貴@staff (@KAJI_staff) 2018年5月17日
お越しくださった皆様、三省堂書店の皆様、河出書房の皆様、本当にありがとうございました!
心を込めて書いた書籍を直接お渡し出来る喜び…
感無量です。
今後とも、声優・梶裕貴をよろしくお願いします!! pic.twitter.com/FQ3etvX3yH
書籍情報
『いつかすべてが君の力になる』
梶裕貴・著
平成30年5月10日発売/四六判/188ページ
定価:本体1300円+税
ISBN:978-4-309-61713-8●Cコード:0376
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309617138/
【目次】
第1章 僕が14歳だった頃
第2章 夢に向かって進むということ
第3章 「声優」って、どんな仕事?
第4章 プロフェッショナルとは
第5章 選ばれ続けるために
【著者プロフィール】
梶裕貴(カジ ユウキ)
『進撃の巨人』エレン・イェーガー役、『七つの大罪』メリオダス役など多数の話題作で主人公を務める。09年「第3回声優アワード」新人男優賞を、13年、14年の2年連続で「声優アワード」主演男優賞を受賞。