『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』野沢雅子×山寺宏一インタビュー|レジェンド声優二人の考える「鳴き声」論
7月13日(金)から上映開始となる『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』。アニメイトタイムズでは本作の公開を記念し、ポケモンを毛嫌いする変わり者のお婆さん・ヒスイ役を演じる野沢雅子さんと、オリバー市長と幻のポケモン・ゼラオラの二役を演じる山寺宏一さんにインタビューを実施。
完成した映画の感想や、声優として数々のキャラクターを演じてきたお二人が思うポケモンの魅力について語っていただきました。
登場人物それぞれにスポットを当てたポケモン映画初の群像劇
ーー野沢さんはポケモン映画には今回初出演となりますね。
野沢雅子:私はTVアニメ『ポケットモンスター』シリーズに一度出演していて、今度は映画に出られて、最高ですね。
ーー今回演じられているヒスイさんはポケモン嫌いのお婆さんという役どころでしたね。
野沢:私は自分の持った印象で役にスッと入っていくタイプですから、ヒスイさんになりきって演じたんですけど、自分と同じような部分を持っている人だったので、自然と演じられましたね。
ーー山寺さんは今作でポケモン映画21作目の出演になりますが、『みんなの物語』にはどんな気持ちで臨まれましたか?
山寺宏一:21作異なる役で出演させていただいて、毎回役が違う分、新たな作品に出ると思ってやっています。今回は重要な役を二役演じさせていただいているので、気合いを入れて頑張りました。
ーー完成した映画をご覧になっていかがでしたか?
野沢:お子さんも世界観に入りやすいし、大人が観てもいい映画だなと。ぜひこの作品は親子三代で行ってほしいなと思いました。
山寺:これまでも、たくさんの新しい登場人物やポケモンが出ることはありました。でもそれぞれにスポットを当てて、それぞれが色々なものを抱えていて、それを乗り越えるという。いわゆる“群像劇”的なものは初めてだったんじゃないでしょうか。
観ている人はどこか自分に当てはまる部分があって、共感してもらえるんじゃないかなと感じました。
「ポケモンパワー」を感じたシーン
ーーそれぞれの登場人物にスポットが当たる中で、今回本当にヒスイさんのポケモンへの想いが溢れているシーンが泣けるんですよね。
野沢:そうなんですよ。「ポケモン嫌い」というのもすごくわかるんですけど、本当はそうじゃないというね。
ヒスイさんの人間としてのどこかに「常にポケモンたちが自分の側にいてくれる」というのが流れていて、それで生活していると思うんです。
山寺:ヒスイさんが最後みんなに指示するシーンが凛々しいんですよね。野沢さんの声でビシッと言われたら、みんな引き締まって「やらなきゃ」ってなりますよ。笑
ーークライマックスでサトシが言った「ポケモンパワー」というセリフも印象深かったですね。
山寺:「ポケモンパワー」というのは、これまであるようでなかった言葉ですよね。ポケモンそのものが持っている力ではなく、ポケモンとの絆によって生まれるパワーというのはいい言葉だなと思いました。
今回ポケモンたちも大活躍しますからね。もちろん感動する物語だと思うけれども、それぞれのポケモンが力を合わせて活躍するシーンや「このポケモンやるな!」というシーンもいっぱいあるので、そんなところも観てほしいと思います。
ーー野沢さんは映画の中で好きなシーンはどこですか?
野沢:サトシとピカチュウは一体感があっていいですよね。サトシはなんでもない時にポケモンたちと一緒にいるじゃないですか。それが彼らしいし、そういうシーンが好きです。
ーーいいですよね、阿吽の呼吸というか。
野沢:サトシにしてみたらすべてがピカチュウであって、ピカチュウにしてみたらすべてがサトシであって。お互いのすべてをわかっている感じで。
それで二人で行動していると、「ポケモンパワー」が出ているって感じがしますよね。
レジェンド声優二人の考える「鳴き声」論
ーー山寺さんはこれまでのポケモン映画作品でも幻のポケモンを数多く演じられていますが、役作りで準備していることはありますか?
山寺:僕はポケモンに関してはノープランで行くんですよ。毎回新しいポケモンですし、どんなことを求められるのかわからないので。
今回のゼラオラは基本的に猫っぽくというリクエストを受けました。あとは気持ちですね。人間を憎いと思っているのか、助けようと思っているのか、その想いの先に声があるんですよ。
特に音響監督さんは細かいんですよ。例えばパンチをくり出す場合、それがアッパーカットなのか、横からなのか下からなのか、それを表現してくださいと言われたり。
ーーポケモンは言葉が喋れない分、感情表現のやり方ひとつ取っても奥深いですよね。
山寺:僕が野沢さんに聴きたいのは、ピカチュウがすべての回を「ピカ」と「チュウ」だけでサトシとやりとりしているじゃないですか。
そういう意味では、鳴き声だけで感情表現をする元祖は野沢さんだと思うんですね。その野沢さんから見て、大谷育江さんが演じるピカチュウをどう思われますか?
野沢:素晴らしいと思います。私は鳴き声のセリフに「人間だったら」と擬人化した言葉を全部書いて演じていたんですよ。
山寺:なるほど、それが見ているみんなに伝わっているんですね。大谷育江さんもきっと同じだと思います。
野沢:本当にピカチュウの気持ちが伝わってきますよね。鳴き声だけで伝えるというのは大変なんですよ。人間役の言葉に比べて数倍のエネルギーが必要なので。
言葉を言う方が楽というのはおかしいですけど、感情って伝わるじゃないですか。それを文字という形にしないで伝えないといけないですからね。
山寺:そういう野沢さんの背中を見てポケモンを演じている声優もレギュラー陣にはいっぱいいるので。
今回はリサのイーブイや、トリトのラッキー、そしてカガチのウソッキー。特に今回ウソッキーはいっぱい喋っていて。でもあれ「ウソウソ」しか言ってないんですよ。笑
野沢:「ウソウソ」しか言ってないけど、感情が伝わるんですよね。笑
山寺:ウソッキー役のうえだゆうじくんが上手いんですよ。全部を「ウソッキー」「ウソウソ」でやっているけど、たまに「ウソォ…」と普通の会話みたいになるのがウソッキーの面白さで。それがこの劇場版でも存分に生かされていましたね。
ーー最後に映画を楽しみに待っているポケモンファンの「みんな」へメッセージをお願いします。
野沢:お友達とでも、親子三代一緒にでもぜひ劇場に足を運んでください。そして映画を観た後の会話まで楽しんでいただければと思います。
山寺:今回ポケモンの楽しさや素晴らしさを再確認させていただいた作品でした。ポケモンはフィクションの中の存在だけれども、「自分にとってポケモンに代わる存在って誰だろう」と考えるのもいいかもしれません。
前作『キミにきめた!』で原点回帰がありましたけど、『みんなの物語』もまた違う世界観の作品になっているので、その違いを見届けてほしいと思います。初めてポケモンに触れる方でもわかる作品になっているので、ぜひ劇場に足を運んでください。
ーー素敵なお話をありがとうございました!
インタビュー・文:吉野庫之介 撮影:鳥谷部宏平
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「劇場版ポケットモンスター みんなの物語」
<INTRODUCTION>
ポケモン映画が、新たな一歩を踏み出す――。
20周年記念作品「キミにきめた!」の大ヒットから1年――。監督を始めとする制作陣に若き才能が加わり、全く新しいポケモン映画「みんなの物語」が遂に誕生。この夏、みんなと一緒に、まだ誰も見たことのない冒険へ向かって、キミも一歩を踏み出そう!
<STORY>
人々が風と共に暮らす街・フウラシティでは、1年に1度だけ開催される“風祭り”が行われていた。祭りの最終日には伝説のポケモン・ルギアが現れて、人々はそこで恵みの風をもらう約束を、昔から交わしていたという。
ポケモン初心者の女子高生、リサ。
嘘がやめられなくなってしまったホラ吹き男、カガチ。
自分に自信が持てない気弱な研究家、トリト。
ポケモンを毛嫌いする変わり者のお婆さん、ヒスイ。
森の中で一人佇む謎の少女、ラルゴ。
偶然、風祭りに参加していたサトシとピカチュウは、5人の仲間たちと出会う。それぞれが悩みを抱え、パートナーのポケモンと一歩を踏み出せない中、みんなが出会うことで、運命の歯車が動き出す……。ルギアとの約束は守られるのか? そして幻のポケモン・ゼラオラの正体とは??
今、人とポケモン、みんなの絆が奇跡を起こす――。
■公開日
7月13日(金)ロードショー
■キャスト・スタッフ
声の出演
特別出演:芦田愛菜 川栄李奈 濱田岳 大倉孝二 野沢雅子・中川翔子 山寺宏一
サトシ:松本梨香
ピカチュウ:大谷育江
ムサシ:林原めぐみ
コジロウ:三木眞一郎
ニャース:犬山イヌコ
ナレーション:石塚運昇
原案:田尻 智
監督:矢嶋哲生
アニメーションスーパーバイザー:湯山邦彦
エグゼクティブプロデューサー:岡本順哉、片上秀長
プロデューサー:下平聡士、松山進、知久敦、大日向 俊
脚本:梅原英司、高羽 彩
アニメーションプロデューサー:加藤浩幸、和田丈嗣
キャラクターデザイン:金子志津枝
総作画監督:西谷泰史、丸藤広貴
音響監督:三間雅文
音楽:宮崎慎二
アニメーション制作:OLM / WIT STUDIO
製作:ピカチュウプロジェクト
配給:東宝
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