映画『青夏 きみに恋した30日』原作者・南波あつこ先生×皆見ナミオ役・水石亜飛夢さん対談|「(上湖村が)ここにあるね」と太鼓判の再現度
2018年8月1日(水)に全国ロードショーとなる映画『青夏 きみに恋した30日』。原作は、2013年から2017年にかけ講談社「別冊フレンド」で連載された、南波あつこ先生による人気コミック『青夏 Ao-Natsu』です。
夏休みを田舎で過ごすことになった都会の女子高生・理緒と、そこで出会う地元の男子高生・吟蔵との〈期間限定の恋〉を描いた、葵わかなさん&佐野勇斗さんW主演のラブストーリー。さらに、理緒や吟蔵の友人たちを、古畑星夏さん、岐洲 匠さん、久間田琳加さん、水石亜飛夢さん、秋田汐梨さん、志村玲於さんらがフレッシュに演じます。
そこで映画公開を記念して、原作者・南波あつこ先生と皆見ナミオ役・水石亜飛夢さんに対談インタビュー! 作品の魅力や制作の裏側などを伺いました。
リアリティある世界観&イメージ通りのキャスティング!
――水石さんは、出演が決まる前から南波先生の作品をご存知だったと伺いましたが、『青夏 Ao-Natsu』を読んだ印象はいかがでしたか?
皆見ナミオ役・水石亜飛夢さん(以降、水石):南波先生の作品は以前、漫画が好きな友達がいて彼の家で少しだけ読んでいて知っていました。今回のお話しをいただき、「『青夏』ってあそこで読んだな」と。そこから改めて、全巻読み直させていただきました。
少女漫画は、“キラキラ”してて、みんなが憧れる“夢”みたいなイメージがあって。もちろん『青夏』にもありますが、「漫画にしかないことだね」とか「こんなことあったらいいね」っていうことじゃなくて、親近感が沸くというか、「本当にあるんじゃないか」というリアリティをすごく感じました。世界に入り込んでしまって、読み切った後は「良かった」と、拍手を送ってました!
原作者・南波あつこ先生(以降、南波):うれしいです! “夢物語”的な少女漫画も好きなんですが、自分が描く時は、もうちょっと現実的な話を描こうとしていて。キャラクターも、ヒーロー的な“ザ・王子様”な感じじゃなくて、ちょっと情けないところがあったりヘタレだったりとか。そういうところも意識して描いているので、リアリティがあると言っていただけたのは、すごくうれしいですね。
水石:ナミオ役だということはお話をいただいた時に知っていたので、原作を読んでいる時もナミオ目線を意識する部分もあったんですけど……理緒ちゃんと吟蔵くんの恋愛が展開していって。映画では描かれていないですが、ナミオくんもさつきちゃんといろいろあったりして、最後まで感情移入してしまいました。
南波:本当にうれしいですね。映画化が決まった時は、世の中に作品がいっぱいある中で、自分の作品を見つけてくれて、読んでくれて。それを「実写にしよう」と、多くの方が思わないと実写化って実現しないと思うので、うれしくて光栄に思いました。
実は、今回の企画が上がってから、決定するまで2年ぐらい期間があって。私も最初は、企画が流れたと思ったんですよ。2年も間が空いたので、「そういえばあんな企画もあったけど、流れたんだろうな」と思っていた時に「あれ動いてます。まだ」って言われて、ないと思っていたぶん、2回うれしかったですね。
水石:そうだったんですね。でも、ベストタイミングですよね、葵わかなさんと(佐野)勇斗くん主演で。僕は、2人が主演と聞き、びっくりしましたね。「ピッタリ」というか、僕が出てる側だというのもあると思うんですけど、この映画を原作に漫画の『青夏』が描かれたといわれても不思議じゃないくらい、本当にハマっているというか違和感がないですね。
勇斗くんも、カッコ良くてかわいくて、ちょっと不器用でちょっとクールなところもあって。勇斗くん本人は「吟蔵とは全然似てない」と言ってるんですけど、周りから見ていると、似ているというか重なる部分がたくさんあるんです。その本人の資質みたいなところが、吟蔵に反映されています。本人は気づいていないのか、謙遜なのか分からないですけどね(笑)。
葵さんも、漫画の中に生きているキャラクターを、あんなに生き生きとしたリアリティある感じで演じられていて、まさにピッタリという感じです。
――ファン代表ともいえる水石さんから見て、イメージ通りのキャスティングということですね! 南波先生から見たイメージはいかがですか?
南波:キャストさんについては、候補の段階から教えていただいていて。「異論ないです」と、割とスムーズにいった感じです。役衣装とか見せてもらい、具体的になってきて……正直言うと、水石さんのキャラクターだけ「直しをお願いします」と(笑)。
水石:ナミオくんは、キーパーソンと言えばキーパーソンで、まとめ役だったり吟蔵の背中を押す役どころだったりして、一番最初のビジュアルは原作からひとひねりした感じになっていたんです。
黒縁メガネに髪の毛がハネてて、下駄履いてみたいな。軸は外れてなかったんですけど、僕は僕で「ナミオくんに寄り添えたらな」と思っていたので、先生から「変更していただきたい」とお話が出た時は、それはそれでうれしかったですね。
南波:ナミオ役の水石さんだと見せていただいた時に、「あ。もう、ナミオじゃないか」と思ったんですよ。第一印象で「もう、このまま出てほしい」と思っていたら、少し手を加えられていたので「あれ?」と思って。「水石亜飛夢の無駄遣い!」と思ったんです(笑)。でも直していただいて「これいい!」ってなったんで、お願いして良かったなと。
水石:そう言っていただけて、うれしいです。でも、僕でよかったら無駄遣いしていただいて大丈夫ですよ(笑)。
漫画の世界が「ここにある」と感動
――(笑)。完成した映画をご覧になっていかがでしたか?
南波:自分の想像してた『青夏』の世界が、具体的というか、小道具とか思ってた以上にちゃんと現実になっていて「すごいなぁ」と。現場に入った時に“上湖神社”と書かれたすごく大きいのぼりを見て、「上湖って本当にあったんだな」と思って、まずそこに感動しました。
水石:スタッフさんと話していた時に、やっぱり造形に力を入れていると仰っていました。「すごく作りこんだ」って自信を持って仰ってて、“大鳥百貨店”とか“成瀬そば”とか、そういうところも原作ファンの方には「(上湖が)ここにあるね」ってなるんだろうなと思います。
南波:私も「あるね」って思いました(笑)。自分がネーミングしたものが現実に現れたと思って「おぉぉ!」と感動しましたね。
――キャストさんから、キャラクターらしさを感じたシーンなどありましたか?
南波:お芝居のこととか全く分からないので、演技についてはどうこう言って変になるのも嫌なので、キャストさんが決まった時点でキャストさんを信じてお任せしてるんですが、水石さんが“ナミオポーズ”を確立してくださったのはすごくうれしかったです。
原作の、ちょっと小さい1コマで描かれているところを拾ってくださっていて、「すごいなぁ。本当に読み込んでくれてるんだな」とうれしかったです。
水石:ありがとうございます。うかがってみたかったのですが、『青夏』のストーリーはどういう風に生まれたんですか?
南波:最初の取っ掛かりみたいなのは、自分が田舎に旅行に行った時で。入ったお蕎麦屋さんに、そのお蕎麦屋さんの家の子供だと思われる中学生と高校生くらいの兄弟が、お店番をしていたんですよ。「お手伝いしているんだなぁ」みたいな雰囲気で、「なんかいいな」と思って、そこから広げていきました。
キャラクターとかはいろいろあるんですけど、主人公はポカリスエットのCMに出てくるような子を描きたいとか。あとは、単純に夏の田舎を描きたいみたいな感じですね。
水石:先生の今度の新作も、古民家が題材だったと思うんですけど、懐かしい感じのものが好きなんですか?
南波:ちょっと渋めの題材が好きですね(笑)。
水石:そうなんですね、そこが気になっていて。僕がキャピキャピしているタイプでもないので、レトロというか、「エモい」みたいな(笑)。リアリティある方が僕は好きですね。「わぁ、キュンキュンする」というのが、少女漫画の根幹にはあると思うんですけど、いかにその世界に入り込めるかって重要だと思うし、「自分にもこんなことあるかもしれない」と思いたい。夢物語過ぎない方が好きですね。
――『青夏』は、吟蔵たちのように地方に住んでいる方も、理緒たち都会に住んでいる方も、どちらも「あるかも」「あったらいいな」と憧れるシチュエーションだと感じますね。
南波:私自身は“ザ・郊外”出身で。IKEAと大きいイオンと、ららぽーとが近所にあるみたいな、田舎でも都会でもないみたいなところだったので、どちらにも憧れがあって。
それも『青夏』を描こうと思った理由でもあるんですけど、どちらも良いところがあるじゃないですか。どちらも良いところがあって、自分もどちらも好きなので、「どちらもいいよね」というバランスに気を使って描きました。
水石:確かに、どちらの魅力もありますね。僕も、都心でも田舎でもない、すごく微妙なところなので(笑)。幼い頃は、父の実家のある蓼科とかの自然がいっぱいあるところに親しみがあって。大人になってくると、なかなか行けないので、今回の撮影は緑とか川とかめちゃくちゃ楽しくて癒されました。
水石:都心は都心で憧れがあったし、この仕事を始めてから来るようになって「ビルが高くて怖い」とか思いましたが、今は好きになりましたね。初めて新宿に来た時は「このモード学園って何?」とか、ずっと上見てキョロキョロしてました(笑)。
南波:すごい形のビルですよね(笑)。
――私も地方出身なので、吟蔵たちが都会に抱くイメージに共感します。
水石:人も多いし、歩いていて「歩道橋が揺れるって何?」みたいな。いろいろなタイプの人いますしね。最初は人に酔う的な感覚で(苦笑)。
南波:私も、郊外から都内に遊びに行く時とかに、電車の混み具合がすごく怖かったです。ラッシュとか意味分かんないみたいな(苦笑)。
――だからこそ、都会と地方それぞれの良いところに気付けるのかもしれないですね。最後に、ファンの方にメッセージをお願いします。
水石:原作の映像化は、ファンの方が気になると思うんですけど、題材にリアリティがあり、フレッシュなキャストみんながキャラクターにハマっているので、期待して見に来てください。漫画で描かれる“上湖”の世界も、“上湖”のキャラクターたちも都会のキャラクターたちも、ちゃんと映画の中に存在しているので、映画『青夏』のキャラクターたちに癒されに、キュンキュンされにぜひ劇場まで足を運んでいただけたらうれしいです。
南波:見た方が「こんな夏休み過ごしたい」と思ってくれたら、それが一番幸せだなと思います。水石さんも仰っていましたが、“上湖村”とそこに登場する人たちがリアルなので、原作を読んでいる方には、「漫画の中に出てきた“上湖村”と、映画の“上湖村”は同じです」と言いたいです(笑)。本当に同じ“上湖村”なので、ぜひ見に来てほしいです。
作品情報
【ストーリー】
夏休みの間、大自然に囲まれた祖母の家で過ごすことになった都会育ちの女子高生・理緒(葵わかな)は、そこで地元の高校生・吟蔵(佐野勇斗)と出会う。少しぶっきらぼうだけど実は優しい吟蔵に、理緒は一瞬で恋に落ちる。吟蔵も、まっすぐな理緒に次第に惹かれていくが、夏休みが終われば離ればなれになってしまう──。わかっていても止められない想い。吟蔵の幼なじみで婚約者の万里香(古畑星夏)や、理緒に想いを寄せる祐真(岐洲匠)たちも巻き込み、恋はどんどん加速していく。果たしてこの恋のゆくえは──?
【出演】
葵わかな 佐野勇斗
古畑星夏 岐洲 匠 久間田琳加 水石亜飛夢 秋田汐梨 志村玲於
霧島れいか 南出凌嘉 白川和子 / 橋本じゅん
原作:南波あつこ『青夏 Ao-Natsu』(講談社「別冊フレンド」刊)
監督:古澤 健
脚本:持地佑季子
音楽:得田真裕
配給:松竹
公式サイト
公式Twitter(@aonatsu_movie)
©2018映画「青夏」製作委員会