秋アニメ『直感×アルゴリズム♪』ができるまで! NTTドコモ副島義貴プロデューサーインタビュー
10月に放送が予定されている日中合作生アニメ『直感×アルゴリズム♪2』。NTTドコモと中国の国営企業傘下の「ミグ文化(※)」が制作する作品だ。
制作総指揮を務めるのは『けものフレンズ』で知られる福原慶匡プロデューサー。そして、福原さんとタッグを組んで、NTTドコモでプロデュースを行っているのが、今回お話を伺った副島義貴さん。過去に放送された前作『直感×アルゴリズム♪』が生まれたきっかけから、続編『直感×アルゴリズム♪2』を決定した経緯など、詳細に語っていただきました。
(※)ミグ文化:中国通信最大手のチャイナモバイルの関連会社。アニメなどに関するビジネスを担当。
NTTドコモがアニメの制作を決定した本当の理由
――『直感×アルゴリズム♪』の1stSEASONから制作を担当していた副島さんは、NTTドコモでどのようなお仕事をされているのでしょうか?
副島義貴さん(以下、副島):説明してもなかなか理解されないだろうと思いつつ。ちゃんと社員的に説明をします。話すと長くなりますけど、いいですか?(笑)
――よろしくおねがいします(笑)。
副島:2010年くらいにドコモと地上波放送局が一緒に作った「NOTTV(※)」という放送局があったんです。いまはなくなってしまいましたが、そこで僕は編成という立場で番組の企画や調達をしていました。そのときたまたま自分はアニメを担当していたんです。
NOTTVで配信中『中川翔子のアニメが好ぎだーっ!』にゲスト出演させて頂きました!学生の頃は肩身の狭いオタク生活を送っていましたがそんな私にしょこたん様はたくさんの勇気を下さいました!今回一緒にお話ができて本当に嬉しかったです♡♡♡ pic.twitter.com/rnYgmltZKr
— 山本希望 (@nojomiy) 2015年3月23日
(※)NOTTV:スマートフォン向けの放送局。アニメ・声優関連では、『声優生電話』『中川翔子のアニメが好ぎだー!』などの独立番組を放送。
――NOTTVはAKBやスポーツ、アニメに力を入れていましたね。
副島:初めは地上波で流れているアニメを調達してくるような感じでしたが、そのうち局内的に「オリジナル番組を作ろう」という動きが出てきました。それで、開局当時からお世話になっていたニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さんに協力していただき、2013年に『吉田尚記がアニメで企んでる』という番組を制作したんです。そのタイミングで、さまざまなクリエイターさんとお話をする機会をいただきました。
――当時、アニメイトタイムズも番組レポート取材でお世話になりました!
副島:番組は1年間やったんですけど、そのうちに当時の上司が、「クリエイターの方の話を聞くだけじゃなくて、なにか作ってはどうか?」と言い出したんです。それを吉田さんに話したら、「おもしろいんじゃないですか」と。当時、吉田さんはどこまで本気だったのかはわかりませんけどね(笑)。
――そういった背景があったとは……。
副島:そんな時期、吉田さんが『吉田尚記がアニメで企んでる』の放送中、こっちが何も言ってないのにもかかわらず、いきなり番組に来てくださっているゲストの方々に「アニメを作りませんか?」と言い出したんです(笑)。そのときのゲストが、『直球表題ロボットアニメ』の石ダテコー太郎監督と福原慶匡プロデューサーだったんです。
――その時歴史が動いたみたいなエピソードです(笑)。
副島:確か番組では、AnimeJapanのステージで流すための1話だけのアニメを作ろうって話だったと思うんですけど、いつの間にか13話分を作ろうみたいな話になっていました(笑)
『みならいディーバ』が生まれたのは吉田アナの無茶振りから!
――当時の福原さんの印象はいかがでしたか?
副島:そもそも最初に紹介してくださった方から「すごい変わった人がいる」と言われていました(笑)。直接お会いして話したときは、CGアニメの話だったり、音楽業界の話を伺いました。福原さんは芸能・音楽業界出身なので、「アニメ業界もこうやったら、もっとうまくいきそうだ」みたいな、おもしろいアイデアをお持ちだったんです。そして鮮明に記憶しているのは、「NOTTVみたいな後発メディアは、普通のアニメを流しても見てもらえない。もっと違ったアプローチがあるんじゃないか?」と意見をもらいました。
――親身になって相談に乗ってくださったんですね。
副島:ええ。いま思うと、それがまさに『みならいディーバ』だったんですね。それで最終的に『みならいディーバ』を制作すると決まったとき、普通のアニメじゃないアニメを作れる適任者ということで、石ダテコー太郎監督と福原慶匡プロデューサーにお願いしたんです。当時、ネットでは『MMD』を使ってアニメーションを作る文化は盛んでしたが、アニメ番組を作ってしまったのはおふたりが手がけた『直球表題ロボットアニメ』だけだったと思います。
――深夜放送にもかかわらず、話題になったアニメです。
副島:そして『みならいディーバ』の企画を進めようとしたら、今後はCGキャラクターのアニメが増えてくるんじゃないか……ということで、吉田尚記アナが、さらにハードルを上げるように「生でやったらおもしろいんじゃない?」とか言い出すんですよ(笑)。
――完全にハードルが上がりました!!
副島:その当時、自分は作品のことをよく分かっていなかったので、「生だからおもしろい」、「生だから奇跡が起こる」という意味が、さっぱりわかりませんでした。生でもつまんないものはつまんないと、ずっと思ってました。
――その考えは、いま変わりましたか?
副島:完全に吉田さんの言っている通りでした。振り返ってみると、当時吉田さんが言っていたことって、けっこうすごいことだったんだなって。それを『みならいディーバ』として実現できたのは石ダテさんと福原さんの力があってこそですけど、NOTTVという新しい局の番組を見てもらうキッカケを作っていただいたのは、吉田さんのアドバイスでした。
すっごい!!!これは、すっごい!自分で企画立ててた #生アニメ 「みならいディーバ」ですが、重要な技術進捗があったので、それを確かめてるんだけど…!!!いやー!!思いついた時ヤバいと思って、打合せし過ぎで慣れてきてたけど、やっぱりヤバイ!そろそろ、第一回放送が発表できる!楽しみ!
— よっぴー (@yoshidahisanori) 2014年6月2日
やっばい!!!みならいディーバ、リハーサル中!!自分で企画しておいて言うのもなんだけど、生放送アニメってめっちゃくちゃ面白いよ!!!こんな映像、マジで見たことない!!そして実は音楽も生で演奏してもらうとか、こっちもヤバい才能だー!! #生アニメ
— よっぴー (@yoshidahisanori) 2014年6月30日
――『みならいディーバ』のスタッフさんたちには、頭が上がりませんね!
副島:はい。ですが残念なことに、NOTTVは2016年6月末に閉局しまして、僕は6年ぶりにNTTドコモに戻ることになりました。そして配属されたのが、「スマートライフ推進部グローバルビジネス推進担当(現 ビジネス基盤戦略担当)」という、まったく畑の違う部署です。ここは僕がまだNOTTVにいた時代に、仕事を手伝ったことがあったセクションです。
本日12:00をもってNOTTVは終了しました。最後の10分NOTTVを振り返るフラッシュ映像が流れみならいディーバ最後のシーンのウイとルリ「みんなありがとう。」が流れ終了しました。皆様 とってもありがとうございました。#NOTTV pic.twitter.com/B5XkQ5wEfL
— 「みならいディーバ(※生アニメ)」公式 (@Minarai_Diva) 2016年6月30日
奇跡のような偶然の連鎖から『直感×アルゴリズム♪』が作られた
――どのような仕事を手伝ったのでしょうか?
副島:この部署のミッションの一つに日中韓の通信事業者が連携して、コンテンツからインフラまで様々な取り組みにチャレンジするというものがありました。当時の担当部長から、アニメを海外に紹介したいと相談を受けて、NOTTVでお世話になっていたアニメ企業さん、それこそ角川さんやアニプレックスさんはどうですか?と紹介したんです。
――日本のアニメを日中韓の通信網で配信するのですね。
副島:そのつもりでした……が、その担当部長さんが、なにを間違ったのか(ホメ言葉)、海外で開かれた会合の席で『みならいディーバ』をメインの企画として紹介しちゃったんです(笑)。
――また歴史が動いた瞬間ですね(笑)。
副島:そこからトントン拍子で話が進んで、『直感×アルゴリズム♪』のプロジェクトが始まりました。それが2015年ごろだったと思います。ちょうどNOTTVが閉局する少し前だったと思います。NOTTVが閉局してから、僕はNTTドコモで『直感×アルゴリズム♪』のプロジェクトに本格的に参加しました。所属している会社が変わっても、僕はラッキーなことに仕事は同じ状態でした。
――では、会社が変わっても仕事はやりやすかったですか?
副島:それが、NTTドコモでコンテンツを作る場合と、NOTTVで作る場合では状況が異なります。NTTドコモはコンテンツで収益を得るビジネスを生業にはしていなかったため、必ずしもコンテンツをつくる必然性がありませんでした。
――ですが、結局『直感×アルゴリズム♪』は作られました。
副島:中国と一緒に取り組むに際して自分なりに2つの事を考えてみました。一つは取り組むサービスのレイヤーです。
ご存知の通り中国の場合、プラットフォームやインフラは海外のものをそのまま受け入れるのが国のルール上難しい。なのでできるとすると、コンテンツや体験といったものが良いのではないかと。そしてもう一つは取り組むスタンスですね。今回日本の良いものを中国に持っていくという発想ではなく、できれば日本と中国の良いところを組み合わせてで可笑しなもの(まだ世の中にはないという意味で)を一緒に作ってみようと、それが僕の中ではやっぱり“生アニメ”だったんです(笑)。
そして運が良いことにNTTドコモは「5G」と呼ばれる次世代通信を売り出していくことになり、そこで新しいエンタメ体験ができるコンテンツが必要になりました。それが『みならいディーバ』のようなライブやVR/ARなどと相性の良い作品、『直感×アルゴリズム♪』だったんです。
中国企業とコンテンツを作る苦しみとは
――『直感×アルゴリズム♪』の1stSEASONを制作したときは、スムーズに進みましたか?
副島:『直感×アルゴリズム♪』の1stSEASONを作ってわかったのは、生アニメかどうかという以前に、中国と一緒に仕事をするというのがこんなに大変なことなのかという……。
――スムーズではなさそうですね(笑)。
副島:コミュニケーションの部分で、日中お互いが苦労しました。1stSEASONが無事に放送できたのが奇跡と思えるくらい、つくることだけでいっぱいいっぱいでした。日本も中国も本来は目標があったはずなのに、正直に言いますと達成までは行き着けず、とにかく「やりきった!」だけという部分が大きいです。
――そこまで苦労したのに、なぜ2期の制作を決定したのでしょうか?
副島:なので、初めは社内でも要検討事項でした。、しかしながら先程お話した「5G」というインフラで、ひとつでもお客様が「おもしろい!」とか「新しい!」と思ってくださる体験を生み出していくことが、お客様がNTTドコモを使っていただく意義に繋がっていくのではないかと考えたからです。そしてチャイナモバイルもやはり同じ「5G」の導入を控え、私たちと同じ課題に取り組む必要がありました。そこで両者の目的は一致しました。
――なるほど。物創りが大変かどうかは、お客さんには関係ありませんからね。
副島:以上のことを踏まえて福原さんとガッツリとお話したとき、日中合作は提供者側が言うことじゃない。視聴者が「これは日本と中国が一緒に作っているんだね」と、自然に感じてもらうことが、真の日中合作だとおっしゃっていました。僕らはついつい提供者の目線で、「これは日中合作だからね!」などと言ってしまいますがこれは勘違いだったと反省しています。。それと同じように、「これは新しい技術の5Gだからスゴイんだよ!」とアピールしても、お客様には中々響きません。新しい技術の先にある新しい体験もあわせてお客様に提供し、お客様自ら「5Gスゴイかも」と思っていただけないと意味がありません。
――合作の押し売りと技術の押し売り、まったく同じですね。
副島:なので、せっかく準備している新しい技術「5G」を使って、お客様に新しいエンタメ体験をしていただく取り組みとして『直感×アルゴリズム♪2』の制作が決定しました。
――『直感×アルゴリズム♪2』が生まれた興味深いお話をありがとうございます。
副島:いろいろお話しましたが、僕はたまたまコンテンツ製作を経験させていただき、そこに会社のミッションと合致する部分があったので、それをなんとか活かして今まで取り組んできた生アニメなどの新しいライブコンテンツの可能性を探っています。またここに来てVチューバーのような新しい形のコンテンツに多くのファンが付き始めたというのも、5年前に「みならいディーバ」という作品に取り組んだ者としては「やっと時代が来たのだなぁ。頑張らねば」という原動力になっています。こういうものが、次世代の新しいサービスやコンテンツを生み出すきっかけにつながるのは、とてもおもしろいですね。
今日、静かな革命が起きてたかもしれないんだけどその記事! #生アニメ 『みならいディーバ』のこともこんなに書いてくれてる…!『直感×アルゴリズム♪』誕生秘話インタビュー | アニメイトタイムズ https://t.co/6oug7AZ27w
— よっぴー (@yoshidahisanori) 2017年8月17日
うおー、今日のイベント用の映像、いま見終えた…!直感アルゴリズム、最後こんなに泣けるとは…!ってみならいディーバのときも、付き合ってくれた人ならわかると思うけど、最後超感動あったんだよな…!今日、イベント来てくれる尻友のみなさん、どうぞよろしく!さぁ寝ないと…! #生アニメ
— よっぴー (@yoshidahisanori) 2017年10月5日
次世代インフラ「5G」の回線が活きる未来のコンテンツ
――『直感×アルゴリズム♪2』では中国でのイベントも予定していますか?
副島:そうしたいです。1stSEASONのときはタワーレコード渋谷でファンイベント「尻友感謝祭」を開催しました。あのとき、実は中国から何人ものファンが来てくださっていたんです。それとは反対に、日本人のファンも「中国のイベントに行きたかった」と言ってくださった方が何人もいます。なので、できれば2期では日本人と中国人が、物理的に国を超えて参加できるイベントを開催したいです。当然、いろいろな事情で海外まで行けない方も多いのは承知しています。なので、ライブビューイングなどの環境を整えるのも、僕たちの仕事です。
――通信事業者NTTドコモさんの本領発揮ですね。
副島:こういうときこそ「5G」の回線が活きてくると考えています。
――タイムラグはかなり減りますか?
副島:「5G」の特徴の一つでもあるのが「低遅延」です。近い将来、みなさんが「5G」の回線をお使いいただけるようになった時実感していただけると思います。5Gの環境が整ってからという話ですけど、5Gの持つ強みがきっといままで以上に「ライブ」というエンタメに対して活きてくると考えています。
東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会まで1400日!
— NTTドコモ (@docomo) 2016年9月23日
ドコモは「5G」という通信技術を使った、新しい大きな夢を描き始めています。詳しくは⇒https://t.co/NRxoiiu65o #Style20 pic.twitter.com/WvgLkNYJgf
作品情報
「生放送アニメ 直感xアルゴリズム♪」(2ndシーズン)
キャスト
キリン:鈴木みのり
シー:岩井映美里/[歌]シャオ・ウー
Bunny P:劉セイラ
スタッフ
企画:中国移動・NTTドコモ・ミグ文化 総合プロデュース:ジャスト プロ
技術協力:DMM.futureworkshttp://dmm-futureworks.com/
アニメーション制作:ダブトゥーンスタジオhttps://w-toonstudio.com/
インタラクティブ・配信協力:ドワンゴhttp://dwango.co.jp/ ビリビリhttps://www.bilibili.com
配信:2018年秋(予定)日本・中国
【配信予定サイト】
【配信予定サイト】
niconico(ニコニコ)/日本
bilibili/中国
咪咕圈圈/中国 他
番組公式サイト【日本語サイト】
番組公式サイト【中国語サイト】
「直アル TGS2018に出展!」
いよいよ明日より開催される東京ゲームショウ2018に「直感xアルゴリズム♪」出展いたします。TGSでは一足先に”直アル”を体験していただく企画盛りだくさんです。来場者限定グッズをご用意して皆様のお越しをお待ちしております。
またTGS2018出展を記念して1stシーズンを9月22日(土)、23日(日)の2日間連続一挙放送いたします。お楽しみに!
詳しくはこちらをご覧ください。
直感×アルゴリズム♪ 1st Season 全話一挙放送 1日目
2018/09/22(土) 開場:09:50 開演:10:00
http://live.nicovideo.jp/gate/lv315754370
直感×アルゴリズム♪ 1st Season 全話一挙放送 2日目
2018/09/23(日) 開場:09:50 開演:10:00
http://live.nicovideo.jp/gate/lv315754387
番組HP:http://project-algorhythm.com/
番組Twitter:https://twitter.com/algorithm_jc
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