TVアニメのキャストと音楽による新感覚LIVE「蟲師 音楽夜話『蟲音・奏』」が公演開始! 企画&演奏を務めるアニメの劇伴作曲家・増田俊郎さんと、ギンコ役・中野裕斗さんにインタビュー
漆原友紀さん原作(講談社刊)のTVアニメ『蟲師』を五感で体感するLIVE「蟲師 音楽夜話『蟲音・奏』」が、東京・DDD青山クロスシアターにて2018年12月12日(水)~17日(月)に上演!
アニメで劇伴を担当した増田俊郎さんが企画したLIVEで、70種類を超える楽器を使った劇伴の生演奏と、TVアニメでメインキャラを務めた中野裕斗さん・土井美加さん・うえだゆうじさん・小林愛さんの生演技、そしてアニメ映像のコラボレーションだけでなく、増田さんとキャスト陣によるトークなども行われます。
本稿では、公演を直前に控えた増田さんとギンコ役の中野さんにインタビュー。公演の内容や見どころをご紹介いただきました!!
構想から12年、奇跡が重なり遂に夢のステージが実現!
――「蟲師・音楽夜話『蟲音・奏』」は増田さんが企画提案されたそうですが、公演することになったきっかけを教えてください。
作曲家・増田俊郎さん(以下、増田):さかのぼること12年前、TVアニメ『蟲師』1期の放送期間中に、中野さん、小林愛ちゃん、土井美加さん、それと長濱監督がトークライブ・ツアーをやっていたんです。その時、当時のメーカーの方から「ミニライブをやってみませんか?」とお話をいただいて。
でも、蟲師の曲を忠実に再現するための膨大な数の楽器群とその演奏者、また十分なリハーサルのための時間と予算など、いろいろ問題があって、やむなく断念しました。でも、当時のプロデューサーさんから「この作品は時間が経っても腐る作品じゃないから、何年かかったとしても条件が揃ってからやればいいよ」と言っていただいて…。その言葉でなおさらライブをやってみたい…という気持ちが強くなりました。
その後、皆さんもご存知のように待望の第二期「蟲師・続章」の放送が始まったわけですが、諸般の事情により放送された「蟲語(むしがたり)」というトーク特番に私も呼んで頂きました。で、その収録日直前に「何か楽器を持って来てもらって演奏してもらう事は可能ですか?」と連絡があったので、いくつか珍しい楽器を持って行きました。現場に到着するとキャストの方達もその楽器に興味を持ってくださったので、それならば…と言うことで出演者全員に楽器を持ってもらい、私が指示を出して即興で一曲、生演奏を行ったんです。
番組のエンディングでほんの1~2分の曲だったのですが、意外にも視聴者の方から大きな反響があったことをのちに伝えてもらいまして…。その時、それならば即興ではなく、ちゃんとした曲を演奏したらもっと喜んでもらえるんじゃないか?…と感じて、さらにライブ実現への気持ちが高まっていったわけです。
――神秘的で独特なサウンド感で好評だったので、その演奏の様子は皆さんも関心があったんでしょうね。
増田:2015年には『詠舞台 蟲師』も行われて、そこでもオファーを頂いたのですが、今度は私のスケジュールが合わなくて参加できず、またしても悔しい思いをしたので「こうなったら自分でやるしかない」と、具体的な準備を始めたんです。
また、続章の作業にも使えるよう、その数年前に作業場となるスタジオを構築していたので、その場所にすべての楽器をセットアップしておくことができるようになり、いつミュージシャンに来てもらってもすぐにリハーサルできる環境が整ったので、ようやくここまでたどり着いたという感じです。
――構想から12年というのは壮大なプロジェクトですね。
増田:ただ、制作の状況が整ってもアイデアを形にして行く作業は大変で、試行錯誤の連続でした。その後、ようやくある程度の形ができて、内容を理解してもらえるくらいの尺が出来上がった段階で、長濵監督、アニプレックス、中野さんを始めとするキャストの皆さんにも集まって頂いてプレゼンを行ったんです。そのプレゼンがとても評判が良かったので、さらに尺を作り足し、今度は講談社の担当編集・宮崎さんやその他アニメ・スタッフの方々にもお集まり頂き、再度プレゼンを行いました。結果、大絶賛。中でも監督の「やりましょう! だって僕が見たいんですから」という言葉にめっちゃ押され、さらに本腰が入ったわけです。
そこからさらに1年ちょっとをかけて、劇場などの周辺の準備に取り掛かったわけですが、まさに“蟲”の仕業…としか言いようがないような偶然が度重なり、たくさんの皆さんの恩情に溢れた協力を得たことでようやく実現の運びとなったわけです。思えば『蟲師』という作品は、気持ちの結集という形で昇華したアニメだと思っているので、必ず実現できるという確かな手ごたえはずっとありました。
――中野さんは今回の企画を聞き、更にオファーが来た時の感想は?
ギンコ役・中野裕斗さん(以下、中野):僕は、はなからやるもんだなと思ってました(笑)。連絡を受けてから改めて増田さんの音楽を聴き直しつつも、こんなにすぐはできないだろうと思っていたら、予想以上の早さだったのでうれしかったし、光栄です。前回の『詠舞台』から4年近く経っていたからオリンピックみたいだなと。4年に1度のお祭り的な(笑)。
増田:正式にオファーするまでにクリアしなければいけないことがたくさんあったので、そこに至るまでの各ステップでメールを送っていました。「今日、制作を手伝ってくれる方が見つかりそうです」とか「劇場が確保できました。」とか。
中野:その都度、ご報告していただいて(笑)。
増田:中野さんとは付き合いもそれなりに長いし、主役という立場なのにこれほど周囲に気を遣わせない人も珍しい…と感じるほどフレンドリーな方なので、仲良くさせていただいています。
中野:ギンコというキャラ自体、そういう人間なので。ここまでギンコを維持し続ける12年間でした。目立たぬよう、はしゃがぬよう(笑)。
増田:そうなの?
中野:気を付けていかないとって。そんな部分も含めて選んでいただけたのかなとも思っているので。
70以上の楽器で生演奏+役者の生演技を生で体感してほしい
――今回のアニメの映像に、音楽担当の増田さんが他のミュージシャンと一緒に生演奏する中で、中野さんたちキャストが生で演じるというのは前代未聞ですよね。70以上の楽器が並ぶステージも壮観で。
中野:そうですよね。
増田:恐らく前代未聞でしょうね。アニメの音楽打ち合わせ時には、「この作品は音楽はいらないよね」という監督とも意見が一致してスタートしている点も異質ですし。この作品の音楽自体が、効果音なのか環境音やノイズなのか、聴く人によって受け止め方や感じ方も違うと思ういます。そうした楽曲をもし目の前で、生でその音を聴いた時、どんな印象を受け、どんな体験になるのか?…を味わってもらいたいです。
――劇伴を生で聴けるだけでも豪華なのに、生音をバックに役者さんが演じる声が聴けるのもぜいたくですね。しかも180席という、距離が身近な空間で。
増田:とは言え、音楽だけで2時間近く…となるとちょっと変化に乏しいかな…という気もする。バンドのメンバーがあと4人くらい居ればまた変わって来るんでしょうけどね。なのでアニメあっての音楽…という括りを中心にすると作品をなぞることで共有できる思いもあるし、反応も豊かになるなと考えて芝居の部分を盛り込もうと考えて…。でもそうなるとやっぱり役者の方々に出て欲しくなりますよね、当然…。で…段々グレードアップして1つの形が見えてきた。でも…、そこからがまた大変でした(笑)。
苦労している最中に、美加さんから「舞台は異種格闘技で、私たちはいつもそういうことをやっているので、ちゃんと順応できるから大丈夫ですよ」という心強い言葉をいただきました。ほんとに有り難かった。
――第1部の生演奏+朗読+映像のコラボレーションで『特別篇 日蝕む翳(ひはむかげ)』をやろうと思った理由は?
増田:エピソードとして、『日蝕む翳』が一番ふさわしいと思ったんです。他に好きな話もたくさんあるけど、舞台にかける以上、振り幅が大きく、ダイナミックな演出ができたほうが良いと思ったんです。例えば荷車を引くシーンは打楽器もたくさん使えるし、面白そうだなと。
あと、『日蝕む翳』は第2期が始まるノロシになった作品で、ターニングポイントとしてのパワーがあると感じていたので、これを再現してみようと。前後編の長尺だったので、1ステージを作るのにちょうど良かった。すべての条件にハマったんです。
サントラ好きの中野さんは、生演奏をバックに興奮する気持ちを抑えるのにひと苦労!?
――本日、通し稽古をされましたが、実際に生演奏をバックに演じた感想は?
中野:小学生の頃から映画やTVのサントラが大好きでした。レコードをかけながら自分でセリフを言ったりしていましたが、今回、生演奏の中で芝居ができるので、すごく気分が高揚して。ただ、そのテンションのまま演じると、ギンコではなくなってしまうので。
増田:高ぶらない人だからね。
中野:そうなんです。その折り合いを付けるのが大変で(笑)。ほどよい緊張感の中、楽しくやらせていただきました。
――生演奏を体感して、耳で聴くというより、心の奥まで届くような感覚でした。
中野:鳥肌立ちますよね。
増田:皆さん、おっしゃるのはアフレコでは音が入っていないので、その差が大きいと。もちろんアニメの収録時に音楽が入っていることはほぼあり得ない。さらに今回は生演奏ですからね。愛ちゃんも音楽に押されて、数段階、演技のテンションがアップしてしまう…と言ってました。
中野:そうなんですよね。でも、この曲が流れたら『蟲師』というのがあるじゃないですか? 「キター!」って。そう……「ロッキーのテーマ」みたいな(笑)。それ劇伴の醍醐味だと思うし、大切な要素だと思っています。
――では、キャストの前で生演奏をした感想もお聞かせください。
増田:リハーサルではアニメの時の音声を使って、そのタイミングの中で音の制作や調整をしていましたが、実際に現場に来て、その場で演じてもらうと様々な違いがあるわけですよ。早さも出だしも違う。その瞬間に「生声だ!」とその時の現実に直面するんです。「生だ! 生ギンコだ!」って…。で、コッチもやっぱりアガるんです。
中野:(笑)。
――あと、中野さん、土井さん、小林さんが生演奏に参加するコーナーにも驚きました。
増田:さっき「鈴の雫」でチ~ンとやったやつ、良かったよ。
中野:本当ですか? 今回、お客さんが見に来てくださるので、あえて大きめにやってみました。音に関しては素人なので。
増田:中野さんはまだ自覚ないかもしれないけど、こっちにはちゃんと伝わってきているので、もう少し慣れてきたら演奏に参加している感がもっと感じられてくると思いますよ。こういうものなのか、音楽のアンサンブルって…と。
中野:今回は、僕という楽器を通して、声や演奏でいい音を出して、アンサンブルとして参加できればいいなと思っています。
増田:そう! 実は(化野役の)うえだゆうじ君に企画を話した時、「僕たちもバンドの一員として、ボイスという楽器で参加する。そんな感じでいいですか?」と聞かれて。こちらの意図がすぐに分かってもらえて、うれしかったです。お客さんにもアンサンブルに参加していただくコーナーがありますので、ご協力お願いします。
「目で聴く・耳で見る」、そして公演ごとに変化・成長するステージを体験してほしい
――では皆さんへメッセージをお願いします。
増田:とにかく、来て、見て、聴いてください! ですね。「目で聴く・耳で見る」というキャッチコピーを考えたんですけど、このステージを体感していただければ意味が分かると思います。耳から入ってくる情報で、映像が目の前に入ってくる感覚になったり、目で見て、「あんな音が出てくるんだ」と聴こえてきたり。今までにない体験ができると思うので、ぜひ来てください。
中野:意気込みは、意気込まないことです。ギンコの芯の部分は通したいなと。また、公演ごとに演技や演奏のコラボレーションに変化が生まれると思うので、できれば何度か見ていただけるとうれしいです。セリフも変わっちゃうかもしれない(笑)。
増田:変わるでしょうね。さっきは早くも、化野(役のうえだゆうじさん)がすでにそうなってた。化野の方がギンコよりかなり偉そうになってたし(笑)。
中野:自由度が高いステージですから。とにかく自分の役割を全うできれば。
増田:今後はもっと自由度を高くして、登場キャラ全員、生演技で舞台を作れたら凄いことになるだろうな…と期待が膨らんでます。今後も続けていきたいと思っています。
中野:チャンスさえあれば。僕も楽しみにしています。
「蟲師 音楽夜話『蟲音・奏』」公演情報
公演日:2018年12月12日(水)~17日(月)
場所:東京・DDD青山クロスシアター
企画・音楽・出演:増田俊郎
演奏:増田俊郎(Key.&Perc.)、高杉登(Perc.)、梶間陽子(Key.&Perc.)
出演:中野裕斗、土井美加、うえだゆうじ、小林愛
全席指定8,800円(税込)
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公演に関する問い合わせ CATチケットBOX 03-5485-5999(平日10~18時)