『FGO』など開発のディライトワークスが開催する肉会Vol.7に直良有祐さんが登場! アートやグラフィック、イラストなど、お仕事の方法論や考え方を明かす!
大人気スマートフォン向けFate RPG『Fate/Grand Order (FGO)』の企画・開発・運営を行うディライトワークス株式会社が、毎月1度のペースで開催している“肉会(MEAT MEETUP)”。その第7回目となる「Vol.7 秘密の肉会 ~直良のアートディレクション編~」が、2018年12月7日(金)に開催されました。
今回はアートディレクション編という事で、スクウェア・エニックスの人気RPG『FINAL FANTASY』シリーズに関わってきた直良有祐さんが登壇。ディライトワークスでアート部のマネージャーを担当する角崇康さんとグラフィック部でマネージャーの田口博之さんらを加えた3名で、そのお仕事について掘り下げていきました。
また、イベント終了後の懇親会では12月ということで“クリスマス”がテーマに。クリスマスハムやターキーが振舞われ、訪れた来場者のみなさんを楽しませていました。
イラストとデザイン画の違いを明確にする意味とは
トークに移るとまずは3人の自己紹介となりました。直良さんは現在ディライトアートワークスとディライトグラフィックワークスを統括するクリエイティブオフィサーを務めています。
こちらのアート部門は主にゲーム全体の世界観やキャラクター、ストーリーなどビジュアルに関わるものを取り扱い、グラフィック部門はゲームを構成する要素を扱っています。
角さんは2017年1月に入社し前職ではUIなどをメインにやっていたそうです。ディライトワークスで初めて「アートとはなんぞや」という部分を任されたのだとか。
田口さんは1992年からゲーム制作をに携わり、アートもやっていたことがあるそうですが、ゲーム作りの手触りやユーザーとの距離感を好んでディライトワークスに2018年の4月から入社したとのこと。
自己紹介が済んだところで最初に取り上げられたのは、「イラスト・デザイン画など名前がありすぎる件について」という議題。この違いを理解していないとアートディレクションにおいてトラブルが起きることがあるのだとか。
業界でもこの違いを説明できる人は少ないようで、実際に直良さんからそれを問われた角さんも「最初は正直よくわからなかった」とコメントされていました。
田口さんも「多くの人はイコールだと思っている」としており、ここで改めて議題となったことでイラストとデザイン画の違いが曖昧になっていることがわかりました。
すると直良さんは、イラストを「対象となる人の感情に作用させるモノ」だと定義しました。対象となる人と言うのは主に“ユーザー”のみなさんなのだそう。商品そのものや、その看板となるものをイメージすると良いようです。
対するデザイン画は「チーム内で関連する人の仕事を決めるモノ」でした。例えばキャラクターのモデリングなら、このデザイン画を基にしたりなど、次の人への仕事のバトンタッチになるそうです。
それを踏まえた上で次のセクションは「アートのコンセプトが必要なのかわからない件について」。最初に直良さんはインターネット上で“ファンタジー”という単語を検索した結果を見せると、この言葉から連想される世界観が多種多様であることを話しました。
画像検索を見てみても様々な世界観のファンタジーがあることがわかり、ひとつの作品を完成させるにはそのコンセプトが明確になっている必要があることが判明。
そのゴールを明確にするための作業として必要なのが、チーム内で最終イメージを共有するために、作りたいものを可視化すること。
商品イメージの可視化のためスポンサーや会社などへ提示すること。作品の特徴づくりのためにヴィジュアルアイディアの提案することの3つでした。
特に時間をかけているのが作品の特徴作りの部分だそう。ここが肝になり作品のウリや幅、トーンが決まるので、ここを武器にしたいと思っているとのことでした。またこの部分のゴールは「人が見たことのないものには価値がある」ことを目指しているそうです。
キャラクターを通して世界をどう描くかを明確に
その後はアートのコンセプトとは何かという部分が掘り下げられることに。ディライトワークスではこれを「キャラクターを通して世界をどう描くか」と定義しているそう。
10年心に残るキャラクターを作るためには、やはり軸が一つ必要になるようです。直良さんはユーザーに届いた時を振り返えると、作品を大切にしてもらう事と作品の世界観とキャラクター、名場面はセットになっていたと回想しました。
そうして世界観を描くためのキーワードとなる「世界とキャラクターとの関り」を語って行ったところで、例題として、“古典ファンタジーを最新オリジナルで作ったら売れるのでは?”というオーダーがあったら、との例題が飛び出します。
ここで重要になるのが良くある文言「考えるな、感じろ」ではなく「感じるのではなく、考える」ということ。とりあえず手を動かすのではなく、考えることから始めてコンセプトを明確にしなければならないというのです。
この考える作業のために行っているのが、コンセプトシートを使ってのアイディア出し。実際に直良さんが肉会の講演用に簡易的に埋めたものも出てくると、その考え方を生み出すプロセスが明らかになって行きます。
こちらのスライドを見ると、オーダーの“古典ファンタジーを最新オリジナルで作ったら売れる?”を、“旧き良きモノを最先端にアップデートして描く”と置き換え、メインコンセプトとした時に直良さんがどのような考えで要素を付け足していくのかが明らかになりました。
また、この評価シートはその考えが正しいかどうかのジャッジにも使えるのだとか。その評価ポイントは“新規性・独自性があるか”“時代に寄り添えているか”“描き切れているか”の3つになるそうです。
この描き切れているかという部分は明確な基準をもうけることが難しく、現在は直良さんの感覚で判断している部分になるのだとか。
加えて常に“商品”を作っているということを頭に置いて作業をしていると明かすと、大切なことはキャラクターを描き切ることだとしてデザイナーの仕事を一覧にしてまとめて行きました。
その後はその仕事をどのように振り分けるかと言う話に。人には得手不得手があるため、お互いの仕事を理解し合いながら制作を進めることが重要なようです。
次いでイメージボードやキービジュアル、キーデザインなど、これまでのクリエイティブを例に違いを掘り下げていくことに。キービジュアルはユーザーのみなさんも目にすることが多いものですが、これは作品のゴールやテーマを表現したものになっています。
対してイメージボードはバトルシーンやレベルなどの各シーケンスを表現したもので、キーデザインがディレクターやデザイナーへ向けてメインとなるデザインの指針がわかるものになるのだとか。
重要なのは集団作家性
これまでのトークを受けて最後に、直良さんのアートディレクションの手法が明かされました。
ひとつの題材に対して絵のオーダーをする場合、作家性の高い人よりは人とのコミュニケーションの中で作品を生み出す“集団作家性”の高い人になってくるそうです。
これは作品のイメージを外さなければという前提はあるものの、要求したもの以上のものを生み出すためなのだそうです。
最後に「コンセプトを決めてゴールを見せる」「デザイナーの仕事をゴールに導く」「皆の力を最大化する」「作品を通して世界を描き切る」「その世界をユーザーに届ける」という5つの要素でこの講義をまとめました。終了後は質疑応答の時間も設けられ、直良さんに「ゲームを基準にして発信する理由」が問われました。
これに対して直良さんは「ゲームが好きだから」と一言。ゲーム業界は5年経ったら技術が古くなるため常に変化し続けていますが、その変化が楽しいのだそうです。その変化についていくのは歳を追うごとに厳しくなる部分もあるようですが、それでも好奇心が勝つのだそうです。
この他にもいくつか質問が投げられたところで、お肉を交えた懇親会の時間となりました。以下より、来場者を楽しませた料理の数々に加え、当日展示されていたコミックマーケット95ディライトワークスブースの販売グッズ「Fate/Grand Order バトルキャラ風アクリルスタンド(全4種)」をフォトレポートでお届けします。
お肉の写真をフォトレポートでお届け!
料理
アクリルスタンド
7回目となった「肉会(MEAT MEETUP)」ですが、既に第8回目の開催も決定しています。
次回はディライトワークス株式会社 クリエイティブオフィサーの塩川洋介さんがスタジオヘッドを務める、「DELiGHTWORKS SWALLOWTAIL Studios(ディライトワークス スワロウテイルスタジオ/DSS)」のキャリア相談会となります。興味のある方は、ぜひともご参加を。
[取材・文・撮影/胃の上心臓]
ディライトワークス公式サイト
肉会VOl.8詳細はコチラ