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- 石橋悠
- 1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。
ラルフとヴァネロペの冒険が再び! ディズニー映画の人気作である『シュガー・ラッシュ』の続編『シュガー・ラッシュ:オンライン』が2018年12月21日(金)より日本全国の映画館で公開となります。
今作の舞台は、前作のアーケードゲームの世界から飛び出し、広大なインターネットの世界! インターネットは、ラルフとヴァネロペにとっても未知の世界。二人はどんな体験をするのでしょうか? そして、二人の友情は……?
さらに本作では、歴代のディズニープリンセスが一堂に会することも話題となっています。実は、これにはプロデューサーを務めたクラーク・スペンサーさんの采配があった様子。
そこで本稿では、スペンサーさんに行ったインタビューの模様をお届け。『シュガー・ラッシュ:オンライン』に隠された秘密に迫ります!
——今日は何媒体ぐらい取材されたんですか?
クラーク・スペンサーさん(以下、スペンサー):10くらいかな。
——毎回、映画が公開されるたびにかなりの数取材が来ると思うので、大変かと思うのですが。
スペンサー:実はインタビューされるのが大好きなんです。自分たちが作り上げたお話を皆さんと分かち合うチャンスだし、作るにあたっての色んなディティールを皆さんとお話ができる。
それからこうやって世界を旅することで、国によってキャラクターとの関わり方とか、どのキャラクターに共感するというのが違うのを知れるんです。それがすごく楽しいんですよ。
私たちは4年ほどかけてカリフォルニアに閉じこもって映画を作っていますので、それを世界中の人にお見せするというのはやはり楽しいです。
——なるほど。日本で公開されるお気持ちはいかがでしょうか?
スペンサー:非常にワクワクしています。この映画作りの全てのプロセスの中で、この時がとても大好きなんです。公開前で期待が高まっていて、今作も前作と同じくらい日本のみなさんに愛されるといいなと思っている、この時期が大好きなんです。
この映画は非常にコメディが描かれています。おそらく映画で初めてインターネットの世界が擬人化された形で描かれています。そして何より、とても感動的な話なんです。
物語は、友情についてのお話です。小さい町にいた2人が、インターネットという大きな都会に来て、1人は早く小さな町に帰りたい、もう1人はずっとここにいたいと思ってワクワクしている。
この2人の友情は、もしかしたら違う道に行かなければならないのかもしれないという、非常に心を打たれる物語になっています。
——舞台をインターネットに移したという理由はなぜだったのでしょうか。
スペンサー:続編を作る時には、しっかりした理由が必要だと思います。
前作のラルフの最後の台詞というのが、「ヴァネロペが僕のことが好きなら、僕はそんなに悪くないかもしれない」というもので、非常に心打たれるエンディングだし、可愛らしい言葉でした。
しかし、よく考えてみるとラルフは未だに自分のことを“ヴァネロペが自分のことを好きということ”で定義している。つまり、まだ自分を愛しきっていない、自分を受け入れ切っていないんです。
なので、まだ彼にもやることが残っているんだ、という話を制作チームでしていました。
でも、これを同じアーケードのゲームセンターの話にしたら同じことになってしまうので、全然違う世界に置いた方がいいんじゃないかと。
じゃあインターネットのような、もっと巨大で素早くて、もっと変化し続ける世界に入ったのならばアーケードの正反対なところになって面白いことになるんじゃないかと思ったんです。
インターネットというアイデアが出てきて初めて、2作目を作ってもいいかもという風に思ったんです。
——AmazonがあったりeBayがあったり、その中でGoogleのビルが一番高いというビジュアル的にも、インターネットの世界がこうなっていると面白いなと単純に思いました。
スペンサー:私たちはインターネットのあらゆる面を見せたいという風に思ったんです。
気がついたかどうかは分かりませんが、あの世界は重層構造になっています。
制作にあたって、インターネットの初期のパイオニアの方達とお話をしたんですが、彼らが言っていたのは、インターネットの初期の頃、果たしてこれがどれくらい続くか分からなかった、永続するものと思っていなかったということです。
なので、とりあえずウェブサイトを作って、その上に新しいものを作って、その上に次を作ってというふうにインターネットが出来上がっていったんです。
ローマの都市みたいに、古い年の上に新しい年、その上に新しい年が重なって築き上げられているという話を聞いた時には、映画で表現するならビジュアル的に垂直なものがいいと思いました。
一番下には初期の頃のオールドなネットがあって、その上に何があるかよく分からない、ウイルスもそこにあるようなダークなネットがある。そして、その上に今私たちが使っているネットがある。
いつもインターネットでは新しいものができているので、工事中のものがあって、というように表現しています。
さらに視覚化する時に、インターネットの主要なエリア全部をカバーしたいと思ったんです。なので、オンラインゲームもあるし、ソーシャルメディアもあるし、検索エンジンもあるし、それからお買い物をするショッピングサイトもある。
みなさんが使っている、色んなネットのエリアをカバーして見せようと思いました。
——実際の企業を映画に登場されるのも大変だったそうですが、なによりディズニープリンセスたちを登場させたのも大変だったと思います。その辺りについてもお聞きしてもいいでしょうか?
スペンサー:ヴァネロペが色んなプリンセスと会うというのは、実はかなり初期のアイデアなんです。初期の頃のアイデアが最後まで残るというのは珍しいんですよ。
ストーリーを考えていく、どんどん進化させていく上で削ぎ落とされていくんですが、これは最後まで残ったという珍しいケースです。
ヴァネロペは自分探しの旅に出ます。「私の運命というのは、自分が思っていたのと違うところにあるのかもしれない」と。
自分の本当の運命について語るには、ディズニーのプリンセス以外にいないだろうと、そういうアイディアがあると監督たちが私に言ったんです。
その時に、私は「お楽しみの部分・笑える部分とディズニーキャラクターであるプリンセスたちを、きちんと尊重して彼女らを祝福するような、バランスが取れるシーンが描けたらできる」と言いました。
そうしたら、脚本を書いたフィル・ジョンソンとパメラ・リボンが素晴らしい仕事をしてくれました。良いバランスが取れたものができたと思います。
——なるほど。では最後に、本作に込めたテーマというのは、どういうものだったのでしょうか?
スペンサー:それは「友情は変化していくものだ」ということなんです。ラルフとヴァネロペというあの親友どうしでも道が分かれて行くんです。
だけれども、それでもお互いをサポートしていき、「お互いが下した決断を裁いてはいけない」ということがテーマなんです。
ラルフはインターネットの世界に入って、やっぱり自分の居場所はアーケードにあると気がつくわけです。一方、ヴァネロペは私の運命はやはりインターネットの世界にあると思うんです。
それはどちらでもいいんです。それぞれがそれぞれの道を決めて良いんです。本当の友達ならば、そこで友情というのが生き延びると思います。違うところに住んでいるけど、友情は生き残っていくと思います。なので、このテーマは観客に共感を呼ぶと思います。
私も5歳の時に両親が引っ越しをしたので、親友と別れてしまったんです。その時もこれで僕たちは終わりだと思ったんですが、場所が違っても本当の友人であれば友情は続きます。実は今でもお友達なんです!
そういう形で友情は変化していくというのが『シュガー・ラッシュ:オンライン』のテーマなんです。
[インタビュー/石橋悠]
1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。
■作品名:『シュガー・ラッシュ:オンライン』
■公開日:12月21日(金)全国公開
■全米公開日:11月21日(水)
■原題:Ralph Breaks the Internet: Wreck-It Ralph 2
■監督:リッチ・ムーア&フィル・ジョンストン
■製作:クラーク・スペンサー
■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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