TVアニメ最終回直前!『ゴブリンスレイヤー』をより深く楽しむためのテーブルトークRPG的超解説!!
第1話からショッキングな描写やハードな展開で話題をさらった『ゴブリンスレイヤー』。そして物語は、ゴブリンスレイヤーや牛飼娘が暮らす牧場にゴブリンの大軍勢が攻めてくるという、風雲急を告げる展開になっています!
この決戦を前に、今回は『ゴブリンスレイヤー』という作品について“あくまでもライターの勝手な見解”で解説をしてみようと思います! まさに全編趣味全開!
最近流行の異世界転生作品や、剣と魔法の冒険ファンタジー作品と比べて、本作はなんとなく「匂いが違う」とみなさんは感じませんでしたか?
ファンタジーゲーム風の西洋中世世界を舞台にしている点は、ほかの作品と同じ。それでいてどこか雰囲気が違うのは、多くの作品がコンピュータRPG(オンラインゲーム、RPGアプリ等含む)のゲーム感覚をもとに作られていることに対し、『ゴブリンスレイヤー』はテーブルトークRPGの常識から作られているのがその秘密なのです!
いよいよ最終決戦を迎える『ゴブリンスレイヤー』をより深く楽しむために、今回はテーブルトークRPG視点というかなりマニアックな視点からの解説で、ここまでを振り返ってみたいと思います。ぜひ最後までお付き合いください。
ゴブリンが難敵になるのはテーブルトークRPGが由来!
そもそもテーブルトークRPGというのは、すべてのRPGの元祖『ダンジョンズ&ドラゴンズ(略称/D&D)』が生み出したゲームジャンルです。『D&D』は1974年にアメリカで発売され、空前の大ヒット。RPGはトランプやチェスに次ぐほどの巨大ゲームジャンルに成長し、ゲーム界において20世紀最大の発明と呼ばれました。
テーブルトークRPG(アメリカではテーブルトップRPG)は、1人のゲームマスターと複数のプレイヤーがテーブルを囲み、会話とダイス(サイコロ)を使って進めていくゲームです。想像力に任せて物語も無限に広がり、いくらでも遊べる一方、遊ぶには複数の人数が必要という制約もありました。
そこで、いつでも気軽にRPGを楽しめるよう、1人でプレイするための工夫がなされるようになります。その結果、イギリスでゲームブックが、アメリカでコンピュータRPGが生まれ、どちらも大人気となってそれぞれに発展しました。
日本でも1980年代初頭には、コアなゲーマーや海外SFマニアなどが『D&D(アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズを含む)』を海外から取り寄せ、自分たちで和訳。後の日本語版発売の下地となっていきましたが、日本でRPGを最初にヒットさせたのは、『ウィザードリィ』『ウルティマ』などの大人気コンピュータRPGに学んで日本で制作・発売された『ドラゴンクエスト』(1986年)です。
以来、日本でRPGといえば『ドラクエ』的なコンピュータRPGを指す時代が始まり、元々RPGといえばこれを指していた「テーブルトークRPG」は、マニアックなゲーム扱いをされることになります。まさに「庇を貸して母屋を取られた」状態ですね。
さて。初期のコンピュータRPGでは容量の問題もあって、敵となるモンスターの描写もなるべく簡略化させる必要がありました。ゲームマスターとプレイヤーの会話でゲームを進めるテーブルトークRPGでは、プレイヤーの想像力のすべてがキャラクターの選択肢となるのに対し、コンピュータRPGではキャラクターの行動もモンスターの行動も、プログラムにないことはできません。
本来、闇に潜むことが最大のアドバンテージだったゴブリンは、敵が見えないとゲームにならないという理由から、洞窟の中でも普通に視認できる、ただのヒットポイントの少ない低レベルモンスターにされました。
ゴブリン=雑魚のイメージはこうして作られ、『ゴブリンスレイヤー』の世界でも「ゴブリンは駆け出し冒険者の相手程度」という世間の認識として使われています。
その中で、元々のテーブルトークRPGに登場する「ゴブリンの手強さ」を熟知しているのが主人公・ゴブリンスレイヤーであるという構図になっているわけです。
第1話で新米の剣士が言います。「ゴブリンなんて身体も知性も子供並みだし、怪物の中でも最弱だよ」と。これがまさにコンピュータRPGにおけるゴブリンです。
テーブルトークRPGではこれに「夜目が利く」という特徴が入ります。この夜目ですが、より詳しく説明するとインフラビジョンといって、サーモグラフィーのように熱分布でものの形を捉える能力です。これは光源を一切必要としないので、真っ暗闇でもゴブリンは活動できるわけです(逆に、強い光には弱いため、女神官の《聖光》で目が眩む)。
その結果、「馬鹿だが間抜けじゃない」ゴブリンが人間相手に使う戦法は、「人間には見通せない闇の中から一方的に矢を射かける」。
▲闇の中からゴブリンに矢で射られる女神官
矢の1本、見えているゴブリン1匹程度なら弱くても、十数本の矢が闇の中から飛んできたら、全身を鎧で固めた戦士でも防ぎきれるでしょうか。
1980年代中盤から1990年代初頭、日本語版『D&D』発売に始まってテーブルトークRPGが急速に普及し、日本中で新たなゲーマーを生み出していた頃、駆け出し冒険者にとってゴブリンは「パーティーが全滅させられることも珍しくない」難敵だったのです。
▲闇の中からの不意打ちもゴブリンの常套手段。魔術の才能を過信した魔術師は、大勢のゴブリンに襲いかかられ、残酷な結末に……
▲一方、闇の中から飛んでくる矢をいとも簡単に切り払ったゴブリンスレイヤー。闇自体が強敵であることを熟知した上で、常時ゴブリンの襲撃に備えているからこそ可能な技
またこの世界には、ゴブリンシャーマン、子鬼英雄(ゴブリンチャンピオン)といった上位種も登場します。これも実は『D&D』ゲーマーの間では有名な世界設定集『The Orcs of Thar(タールのオーク達)』でよく知られた存在です。
プレイヤーがゴブリンやオークなどの亜人種モンスターをキャラクターに選び、狼(ダイアウルフ)に乗って戦うといった遊び方をするためのルールで、ゲームマスターがとてつもなく強いゴブリンをラスボスとして登場させる場合などにも使われました。
テーブルトークRPGでは、ゴブリンは弱いどころか、いくらでもパーティーを全滅に追い込める、狡猾な敵なのです。
▲敵の術者から真っ先に潰すのは、冒険者もゴブリンも基本戦術!
「名前を呼んではいけない怪物」の元ネタ
第8話に「名前を呼んではいけない怪物」という敵が登場しました。これに関しても実は、ロールプレイングゲーマーの間では有名な逸話があります。
この怪物の元ネタは、『D&D』に登場する超強力クリーチャー「ビホルダー」です。
ただし、ビホルダーはゴブリンやトロールのような西洋のおとぎ話由来のモンスターではなく、『D&D』を生んだアメリカのゲーム会社・TSR社が創作したオリジナルモンスターです(通称/TSRモンスター。なお現在はウィザーズ・オブ・ザ・コースト社が版権を保有)。
しかし、インパクト抜群の見た目や、恐るべき能力の数々によって、様々な作品に強敵として登場してきた歴史を持ちます。
このクリーチャーを日本で一躍有名にしたのが、週刊少年ジャンプで連載された大人気ファンタジーコミック『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』が起こした「とある事件」でした。
ジャンプ連載時、敵クリーチャーとしてビホルダーが登場。それが単行本化の際には、いきなり本体に手足が生えて大鎌を持ち、「鈴木土下座ェ門」と改名されていたのです。
当時、TSR社では社長が変わり、版権管理をより厳しくする方針に変わっていました。それを受けて、TSR社の日本総代理店(『D&D』日本語版販売元)だった株式会社新和からジャンプ編集部に対し、「アメリカ式の訴訟を起こされる前に、日本式で謝罪しておいたほうがいい」と提案がなされたようです。
これ以降、ビホルダーは「名前を呼んではいけない」怪物になりました。あえて作品に登場させる際には、Dr.モロー氏のコミック『賽の目繁盛記』に出てきた「スカイライン(仮)」のように、名前や描写に様々な配慮をするようになったのです。
その上で、「混沌の眷属」だから迂闊に「名前を呼んではいけない」怪物として登場させた『ゴブリンスレイヤー』は、まさしく「わかっている」使い方をしていると言えましょう!
▲アニメで登場した大目玉も「配慮」したのか、原作コミックに登場する「ビホルダーに酷似した」大目玉とは姿形が異なる。ちなみに『D&D』のビホルダーは、TSR社が版権関係から「クトゥルフ」を使えなくなった代わりに投入したクリーチャーであるため、混沌の神々に匹敵するほどの魔物として設定されている(特に真祖ビホルダーがヤバい)
名もなき冒険者の、死と隣り合わせの冒険だからこそのスリル!
RPGの元祖『D&D』では、キャラクターは呆気なく死にます。初期のコンピュータRPGの名作『ウィザードリィ』も、キャラクターが簡単に死に、ロストすることで有名でした。
これを厳しすぎると感じた後発のテーブルトークRPGでは、ヒーローポイントシステムが導入され、キャラクターはそう簡単には死なず、英雄的な活躍もできるようになりました。
コンピュータRPGの名作となった『ドラゴンクエスト』でも、勇者は何度死んだところでそのたびに教会で目覚め、神官に「なさけない」とお説教されるだけで済みます。
これを『ゴブリンスレイヤー』では、実にわかりやすい形で世界観に取り入れています。
魔神王を倒す、伝説級の活躍をしているのが勇者たちで、いわばコンピュータRPGのキャラクター。
▲第10話に登場した勇者一党。ゴブリンスレイヤーたちとは遥かに離れた場所で、世界を救う戦いをしていた
一方、死んだらそれまでの名もなき冒険者、オールドスタイルのテーブルトークRPGのキャラクターが、ゴブリンスレイヤーたちです。
テーブルトークRPGでは「強い者が生き残るのではない。生き残った者が強くなる」と言われますが、何度も死ぬような経験をしてもギリギリで生き延び、少しずつ成長してきた者だからこそ放つ「強さの説得力」をゴブリンスレイヤーは持っています。
剣の腕前を簡単に「スキル」のひと言で済ませる作品が多い中、ゴブリンスレイヤーは魔法の武器など使わず、敵ゴブリンから奪った槍でも棍棒でも使って死に物狂いで戦います。
数え切れない戦いを潜り抜けることで身についた経験と、ゴブリンに対しては一切容赦しないという精神力。これがゴブリンスレイヤーの強さの源であり、そこにはスキルもヒーローポイントも介入しません。
ダイスを何百回と振り、たとえ残りヒットポイントが1まで減ろうとも生き残ってきたテーブルトークRPGのキャラクター。そんなしぶとさ、叩き上げの強さがゴブリンスレイヤーにはあるのです。
▲戦いの局面に合わせて様々な作戦を思いつくゴブリンスレイヤーは、危機に瀕したパーティーにとってどれほど頼りになるリーダーか!
▲矢が刺さったり腕の肉を噛み千切られたりと、血まみれになりながらもゴブリンスレイヤーについていく女神官は、まさにテーブルトークRPG的なキャラクター。ただ、アニメとしてはヒロインがここまで酷い目に遭うのも珍しい?
▲剣の乙女はいかにも訳ありの高レベルNPCといった感じ。ゴブリンの悪夢に悩まされる日々から救い出してくれたゴブリンスレイヤーに惹かれる経緯は、王道ゆえにドラマティック!
ラストバトルはまさしく「ゴブリンスレイヤー」!
第10話の最後、牧場の外に無数のゴブリンの足跡があったことからも、ゴブリンの大軍勢の襲撃が近いことが暗示されています。
ゴブリンスレイヤーがどれだけゴブリン退治のエキスパートといえど、いかんせん1人では限界があり、このままでは唯一残った幼なじみの牛飼娘も死ぬよりつらい目に遭いかねません。
女神官、妖精弓手、鉱人道士、蜥蜴僧侶といった仲間たちは、頼めばきっと手助けしてくれます。それでも、おそらく手は足りないでしょう。
最終決戦に際し、ゴブリンスレイヤーはどんな手を使うのか。原作ファンにとっては、あのシーンがどうアニメで描かれるのか。
大いにご期待ください。絶対に面白いと保障します!
[文責/設楽英一]
放送情報
AT-X
毎週土曜24:30~
リピート放送/毎週日曜21:30~、毎週火曜16:30~、毎週金曜8:30~
TOKYO MX、サンテレビ、BS11
毎週土曜25:30~
【STAFF】
原作:蝸牛くも(GA文庫/SBクリエイティブ刊)
キャラクター原案:神奈月昇
監督:尾崎隆晴
シリーズ構成・脚本:倉田英之
脚本:黒田洋介
キャラクターデザイン:永吉隆志
音楽:末廣健一郎
オープニングテーマ:Mili
エンディングテーマ:そらる
アニメーション制作:WHITE FOX
【CAST】
ゴブリンスレイヤー:梅原裕一郎
女神官:小倉 唯
妖精弓手:東山奈央
牛飼娘:井口裕香
受付嬢:内田真礼
鉱人道士:中村悠一
蜥蜴僧侶:杉田智和
魔女:日笠陽子
槍使い:松岡禎丞
BD&DVD発売情報
ゴブリンスレイヤー 1【初回生産限定】
2019年2月20日(水)発売
◆収録話数 第1話~第4話
【Blu-ray】価格:14,040円(税込)/品番BJS-81415
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https://www.animate-onlineshop.jp/products/detail.php?product_id=1573510&utm_source=atimes&utm_medium=animate&utm_campaign=1542435805&transactionid=acd0f41016f2efc48ea2f8fdba1f272b16ad3f6b
【DVD】価格:11,880円(税込)/品番JDD-81415
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◆初回生産特典
原作 蝸牛くも先生書き下ろし小説(80P)
キャラクター原案 神奈月昇先生描き下ろし三方背BOX
キャラクターデザイン 永吉隆志描き下ろしデジトレイ
特製ブックレット
イベントチケット優先販売申込券
全巻購入キャンペーン応募券①
◆映像特典
ノンクレジットOP・ED
◆音声特典
第1話 スタッフオーディオコメンタリー(監督:尾崎隆晴、シリーズ構成・脚本:倉田英之)
第2話 キャストオーディオコメンタリー(梅原裕一郎、小倉 唯)
※仕様、特典内容は変更となる場合があります。
【Blu-ray/DVD第1巻早期予約特典】
■キャラクター原案・神奈月昇先生描き下ろしA3クリアポスター
早期予約締切:2019年1月14日(祝・月)
★特典はご予約いただいた店舗様にて、商品引き渡し時お渡しいたします。締切後のご予約・ご購入分については先着となり、なくなり次第終了となります。あらかじめご了承ください。一部販売店、通販サイトではお取り扱いがない場合もございますので、ご予約・ご購入・詳細については事前に各販売店様にてご確認ください。
TVアニメ『ゴブリンスレイヤー』公式サイト
『ゴブリンスレイヤー』原作公式サイト
『ゴブリンスレイヤー』公式ツイッター(@GoblinSlayer_GA)
(C)蝸牛くも・SBクリエイティブ/ゴブリンスレイヤー製作委員会