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映画『コードギアス 復活のルルーシュ』谷口悟朗監督インタビュー後編

『コードギアス 復活のルルーシュ』谷口悟朗監督インタビュー後編 |今後の『コードギアス』はどうなる!?

『コードギアス』シリーズ完全新作映画『コードギアス 復活のルルーシュ』が、2019年2月9日より、ついに全国公開となりました。

すでにご覧になったみなさんは、衝撃の展開に驚かれたことと思います。

なぜあのような展開になったのか。その答えを探るべく、アニメイトタイムズでは前後編にわけて、谷口悟朗監督に行ったインタビューを掲載。後編となる今回は、映画の内容に触れていきつつ、お話をお伺いしました。

前述のとおり、ある程度、映画のネタバレに踏み込んだ内容となっておりますので、まだ映画をご覧になっていない方はご注意ください。

インタビュー前編はこちら!

前編をご覧になっていない方はまずこちらをチェック!

●映画『コードギアス 復活のルルーシュ』谷口悟朗監督インタビュー前編

ルルーシュというキャラクターが生まれるまで

――本作を制作する上で、現場の共通認識として、これは守ろうと決めていたものはありますか?

谷口悟朗監督(以下、谷口):重視したのは、ルルーシュのキャラクター性ですね。ルルーシュって本質はすごくワガママだし、他人を見下している部分もあったりして決して聖人ではない。

そこの部分を再確認しないと、人間ではなくなってしまいますから、例え映画でもその根っこの部分は変えずにいこうと。

彼は人間のいい部分も嫌な部分もひっくるめて持ち合わせている、等身大のキャラクターなんです。

――ルルーシュのような知略を得意とするキャラクターが、ロボットアニメの主人公となるというのは、ほとんど前例がなかった印象があります。ルルーシュのキャラクター性というのは、どういったところから生まれてきたものなのでしょうか?

谷口:これに関しては、脚本の大河内(一楼)さんを始めとしたいろいろな人からのルートによって出来上がったところがあります。

あくまでその中の一つとして、私からの話をさせていただくと、とにかく「気合いとか大きい声を出した方が勝つ」といったアニメの展開に飽き飽きしていたというところがあります。

『スクライド』(※1)も暑苦しいイメージを持たれている方が多いかもしれませんが、実は要所要所でしか叫ばせていないんですよ。


※1:谷口監督が手がけた、2001年放送のTVアニメ。「アルター能力」と呼ばれる特殊な力をもった人々のドラマを描いた作品。その熱い展開の数々はアニメファンの間で高く評価され、2011年にはTVシリーズを再編集した『スクライド オルタレイション』が制作されるなど、現在もなお根強い人気をもつ。正反対の性格の二人の主人公がライバル的な関係となる構造は、後の『コードギアス』にも受け継がれている。


――あの当時、ロボットアニメの主人公は、ルルーシュとは正反対のキャラクターが多かった印象があります。

谷口:そういうのを理解するのに自分の中で咀嚼する時間が必要になってしまって……。だからドモン・カッシュ(※2)とか、ヒイロ・ユイ(※3)とかは、私にとって理解しやすいキャラクターだったんです。

ドモンとかは「スイッチが入るとうるさくなるけど、ほとんど独り言。それに人の話を聞かない師匠が相手だと怒鳴らないと相手の耳に入らないだろうから仕方がない。そのぶん、普段は静かだし」って感じで。


※2:『機動武闘伝Gガンダム』の主人公。コロニー格闘技の覇者たる証キング・オブ・ハートの紋章を持ち、モビルスーツを生身で破壊するなど人間離れした戦闘力をもつ。熱い口上と共に放たれる必殺技の印象が強いが、普段は口数も少ない物静かなタイプ。

※3:『新機動戦記ガンダムW』の主人公。幼少期からエージェントとしての育てられたクールな少年で、あらゆる物事よりも任務の達成を優先する。ヒロインであるリリーナ・ドーリアンに向けて言い放った「お前を殺す」の台詞はあまりにも有名。


――先程の『スクライド』の話ともつながりますが、確かにドモンは個々のシーンで叫んでいる印象はありますが、純粋な熱血漢とはタイプが違いますよね。普段は口数も少ないですし。

谷口:ドモンはただ人間的に不器用なだけですから。一方のヒイロは与えられたミッションをこなしていく機械のような人物だったのが、少しずつ人間性を獲得していくという流れがあって、これも理解しやすかった。

ルルーシュがああしたキャラクターになったのは、自分が理解できない人物でストーリーを作るのが難しかったからに尽きます。

 

――『ガン×ソード』(※4)のヴァンもそうなのですが、聖人君子的な主人公へのアンチテーゼ的な側面もあるのかなと感じていました。

谷口:どちらかというと、自分に対して嘘をつかないようにしていると言えばいいでしょうか。

そこを守っていかないと、作品を作っていけなくなるんです。作中で嘘ばかりついていると、だんだんと誰に向けての嘘なのかが分からなくなってくる。

フィクションではあるのですが、自分の中で納得できるだけのリアリティは欲しいんです。

例えば敵がもし味方になるパターンがあったとして、そこに至るまでのきちんとした理由があれば受け入れるんですが、なかったとしたらなかなか難しい。


※4:谷口監督が手がけた、2005年放送のTVアニメ。カギ爪の男を追う流浪の男・ヴァンと、その同行人である少女・ウェンディの旅路が描かれる。「痛快娯楽復讐劇」と銘打たれ、否定するべきものとして描かれがちな「復讐」を、メインテーマとして見事に描ききった作品。


――確かに、『コードギアス』のルルーシュとスザクもなかなか共闘しません。最終的には肩を並べて戦うんですが、それもお互いの打算が噛み合った結果というか。

谷口:少し話が変わるのですが、荒木飛呂彦(※5)さんの作品って、何度も登場人物達が自分の立ち位置について確認するような台詞やシチュエーションがあるのですが、あれは荒木さん自身が作品を描きながらキャラクターの立ち位置を再確認しているのではないかなと。

そうしないと、キャラクターがその通りに動いてくれないことがあるんですよね。そこを守るというのはすごく大事なことだと思っています。で、この問題は関係者全員が納得する必要もないんですよね。個々の中で完結すればいい話なので。ただ、それがないと観客に自信を持って届けることができなくなるので。


※5:漫画家。代表作は『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ。独特のコマ割り、台詞回し、擬音と唯一無二の個性をもち、全世界に熱狂的なファンを持つ。キャラクターの心理描写にも長け、『ジョジョの奇妙な冒険』などで展開される頭脳戦は高く評価されている。


ファンが予想したルルーシュの生死

――ルルーシュの生死については、「コードギアス 反逆のルルーシュR2」放送終了当時からファンがかなり鋭い予想をしていたと記憶しています。ファンがその伏線に気づくというのは予想していましたか?

谷口:気づく気づかれないというのは、もう気にしてもしょうがないという感じですね。ファンの人からすれば予想通りだったら嬉しいと思うでしょうし、外れたらそれはそれで受け入れられるでしょうし。で、そこに関して考えても仕方がないので放置しています。

例えばスター・ウォーズのエピソード9って、7・8からの流れを考えると、概ねどういう結末を迎えるかはだいたい予想できますよね。だからといって、それを無理して変えようとすると破綻をきたします。

――例え予想をされていたとしても、本来の形のままの方がいいと。

谷口:ネットが発達し始めた時、ネタバレが流出するのを気にして「ネタバレが流出してしまったらギリギリで最終回を変えようか、どうする?」という流れが(アニメ業界に)一時的にあったんです。ただ、そんなのは作品が破綻するだけで、良いことなんて何ひとつないんですよ。

結局それは、その週に放送される時のことしか考えていないんです。その作品が5年後、10年後にも残ることを考えた時、ファンが予想していたものと同じだったからと言って、変える必要はないと思っています。

なのでどう予想されているかということは、まったく気にしなかったですね。

――TVシリーズのラストでは馬車に乗っていたC.C.のシーンが、『Ⅲ 皇道』では一人でロバに乗っているシーンに変更されていましたね。

谷口:TVシリーズのラストについては、視聴者の方々の想像にお任せします。むしろそのために、三部作ではC.C.が一人旅をしている絵に変更を加えたくらいでしたから。

おそらく気づいておられる方は少ないと思いますが、追加した最後の花のカットにも意味があるんですよ。あの花じゃないとダメなんです。

――谷口監督は、意識してそうした細かいネタやメッセージを仕込まれているのでしょうか?

谷口:それについて自分で言うのは野暮ですから、気づいてくれる人にだけ伝われば良いなと(笑)。

10年、20年経ってから、「実はこのシーンにはこういう意味があって」と言われることもあるわけですからね。

――個人的に、本作の中で印象的だったことがもうひとつあって。カレンがルルーシュと再会する時、C.C.はルルーシュとカレンの方を意識して見ないようにしているように見えたんです。二人の関係性って、どういったものになっているのかなと。

谷口:お気づきの通り、そこは意図してそうした演出にしています。

二人が内心でどう思っているかは、皆さんの想像にお任せしますが、あの二人の間には友情に近い関係性が構築されていますね。

――そういった、気づける人にだけ感じ取れるシーンが豊富に用意されているのも面白いですね。

谷口:作品のテーマには直接関係ない、さりげないカットかもしれないけど、誰かの心の中に引っかかって残るものってあると思うんです。

それが次の種になって芽を開くこともあると思いますし、そうした要素は入れておきたいという想いはありますね。

誰も賛同してくれないことを承知でいうと、『復活のルルーシュ』では、ニワトリが走るカットが個人的にすごく気に入っているんです。本当にうまいアニメーターが担当してくれていて、あれはとても良いニワトリですよ(笑)。

――ここに来て、意外すぎる注目ポイントが(笑)。

谷口:例えば、押井監督(※6)はよく自分の作品に犬を出されます。

押井監督の思惑とは別に、観客は犬は何を考えているのか、その瞳に何が映っているのか、これを切り取ることにどういう意味が込められているのかなど、いろいろと想像してしまいますよね。

そういった意味を全部台詞とか解説で開いてしまうと、結果的に面白くなくなってしまうんです。それでは映像ではなく論文です。


※6:押井守監督。代表作は『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』や、『イノセンス』等。最先端の技術や実写映画での手法を積極的に用いた、作家性の強い独創的な作品を多数生み出している。愛犬家としても知られ、手がける作品の多くで犬が登場している。


ナイトメアフレームの戦闘シーンには3DCGも

――『コードギアス 復活のルルーシュ』では、ナイトメアフレームの戦闘シーンが3Dと手書きの両方が混ざった構成になっていましたが、これにはどういった意図があったのでしょうか?

谷口:『コードギアス』シリーズとして今後を見据えた時、ある程度3DCGを取り入れていかないと、技術的な部分で将来が厳しくなってくるだろうという判断ですね。

『コードギアス 亡国のアキト』(※7)のように、最初から全てCGにする手もあったとは思いますが、要所要所に手描きを挟んでいかないと色気が出せなくなる危険性もあったんです。

2Dで済むところと3Dで済むところの見極めも含めて、今後のシリーズとしてチャレンジしたかったから採用しています。


※7:2012年~2016年にかけて制作が行われたOVA。『コードギアス 反逆のルルーシュ』と『コードギアス 反逆のルルーシュR2』の間で起こっていた、E.U.(ユーロピア共和国連合)とブリタニア帝国の戦いを描いた作品。『反逆のルルーシュ』とは異なり、作中のナイトメアフレームは全編3DCGとなっている。


――『コードギアス』のTVシリーズをやっていた頃のロボットアニメは、まだ手書きが主流のイメージでしたが、現在は完全に3Dがメインストリームとなった印象を受けます。

谷口:そもそもの問題として、ロボットを描けるアニメーターが少なくなってきていますから。TVシリーズの頃ですらそうです。

その頃に描いていた人たちも歳をとって引退していきます。手書きのメカ作画ができる人というのは年々減ってきていますね。

だから手書きのロボットアニメ、それもTVシリーズというのは、遅かれ早かれなくなっていくのは避けられないと思います。

――手書きのロボットアニメを観て育ってきた世代としては、寂しいものがあります。

谷口:本音を言うと、それを言うなら手描きのロボ物にもっと皆さんお金を使ってください、ということにつきます。私達はボランティアじゃない。スタジオの維持にだってお金がかかるわけです。

アニメファンが手描きのロボ物にお金を出さないのなら、そのジャンルは消えるというのは当たり前の話だと思います。

ただ、誤解しないでほしいのは、3Dは手描きの代替物じゃないってことです。これはこれで別の表現方法なんですよね。そこの技術は上がってきていますし、3Dじゃないとできないデザインや演出というのもあるんです。

手書きでやる場合、パーツの裏がどう見えるかという共通認識をスタッフの間で作らないといけませんが、複雑怪奇なデザインだと、それが不可能になってくるんです。

その点、CGは実際に見れば分かるという強みがあります。

『コードギアス』からは離れるのですが、CGじゃないとほぼ不可能というデザインでは、『revisions リヴィジョンズ』(※8)で既にやっていて。

もしあれが手書きだったら、ワンカットを作るだけでも限りなく大変で、TVシリーズなんて到底無理だったと思いますね。


※8:2019年1月よりフジテレビ「+Ultra」枠にて放送されている谷口監督によるTVアニメ。渋谷の中心部が、そこで過ごしていた人々ごと、300年以上先の未来へとタイムトラベルするという、衝撃的な舞台設定が特徴の作品。日本有数の高い3DCG技術をもつスタジオである「白組」によって制作されている。


――3Dには、そうした負担を軽減できるという面もあると。

谷口:3Dは3Dの良さがあり、手描きは手描きの良さがあるので、繰り返しますがどちらかの代替物というわけでないんです。

純粋に表現方法の違いなので、今後の『コードギアス』シリーズの展開を考えた時に、3DCGも使えるようになっておかないと、プロジェクトとして行き詰まってしまいますから。

ラストシーン、そしてこれからの『コードギアス』について

――シャムナのギアスは、これまで登場したギアスの中でもとくに強力なものになっていました。あれはどういった話し合いの中で作られたものだったのでしょうか?

谷口:あれは大河内さんから提案されたものだったのですが、最初に聞いた時は、「さすがに反則技すぎるだろう」と思いました(笑)。

ただ、今作ではそれくらいの相手じゃないと話が成り立たないだろうなとも思いました。

あとは、通常のギアス能力とは違う、偶発的に生まれたという位置づけにしようというところに落とし込みました。

もしこれに勝つとしたら、全てのケースを想定して選択肢を絞り込んでいく方法しかないだろうなというのは、その時から考えていましたね。

――最後に、あのラストを見てしまうと、ファンとしては「続き」というものが気になってくるところだと思います。『コードギアス』シリーズの今後について、現段階でお話できることをお聞かせください。

谷口:それについては私ではなく、製作委員会がジャッジするところだと思っています。

ストーリー原案監督という立場から『コードギアス』シリーズの今後の発展はお願いしていますが、今回は「『反逆のルルーシュ』を再構成して劇場総集編3部作にまとめる」「ルルーシュの物語に一区切りをつける」という監督としての私に課せられたミッションをこなすことだけに専念しています。

というのも、その先の展開まで考えようとすると、今後の伏線であったりとか、不必要な色気のようなものが作品内に出てしまうんです。きっかけは巻いていますよ、パールパーティのシャンティとかね。でも、それらは作品内だけでも完結するように心がけました。

下手をすると自分自身が聖域に置かれる危険性もある。本プロジェクトに関してはファンの方々からも「監督は谷口じゃないといけない」と思われることは避けたい。

『スター・ウォーズ』や『ガンダム』シリーズだって、いろいろな人が監督をすることで、新しい可能性が生まれたわけですから。

――新しい『コードギアス』シリーズの展開にも期待しています。ありがとうございました。

[取材・文/米澤崇史 石橋悠]

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『コードギアス 復活のルルーシュ』作品情報

2019年2月9日(土)公開(全国約120館予定)

あらすじ

光和2年。世界は再編成された超合集国を中心にまとまり、平和な日々を謳歌していた。

しかし、平和は突如として終わりを告げる。仮面の男・ゼロとして、ナナリーの難民キャンプ慰問に同行したスザクが謎のナイトメアフレームに敗れ、2人は連れ去られてしまった。

シュナイゼルの密命を受け、戦士の国・ジルクスタン王国に潜入したカレン、ロイド、咲世子はそこで、謎のギアスユーザーに襲われる。そして、その場には襲撃者に“元嚮主様”と呼ばれる、C.C.が居た。

かつて神聖ブリタニア帝国の大軍すらも打ち破った無敵の王国を舞台に、人々が描く願いは、希望か絶望か。

果たして、ギアスのことを知るジルクスタン王宮の面々と、C.C.の思惑とは——。

スタッフ

監督:谷口悟朗
脚本:大河内一楼
キャラクターデザイン原案:CLAMP
キャラクターデザイン:木村貴宏
ナイトメアフレームデザイン原案:安田朗
ナイトメアフレームデザイン:中田栄治
メカニカルデザイン・コンセプトデザイン:寺岡賢司
メインアニメーター:木村貴宏、千羽由利子、中田栄治、中谷誠一
美術監督:菱沼由典
色彩設計:柴田亜紀子
撮影監督:千葉洋之
編集:森田清次
音響監督:井澤基、浦上靖之
音楽:中川幸太郎
配給:ショウゲート
製作:サンライズ、コードギアス製作委員会

キャスト

C.C:ゆかな
スザク:櫻井孝宏
ナナリー:名塚佳織
カレン:小清水亜美
ロイド:白鳥 哲
咲世子:新井里美
シャムナ:戸田恵子
シャリオ:村瀬 歩
フォーグナー:大塚明夫
シェスタール:島﨑信長
ビトゥル:高木 渉
クジャパット:津田健次郎

公式サイト
公式Twitter(@GEASSPROJECT)

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