声優
『WUG FINAL LIVE ~想い出のパレード~』で見たナチュラルグリーンの海を忘れない

人生の第2章がはじまる“素晴らしき金曜日”『Wake Up, Girls! FINAL LIVE ~想い出のパレード~』で見たナチュラルグリーンの海を忘れない

2018年12月22日。

「Wake Up, Girls!を愛してくれた 全てのワグナーさんともう一度ライブがしたい」

「Wake Up, Girls! FINAL LIVE in さいたまスーパーアリーナ 2019年3月8日(金)」

『Wake Up, Girls! FINAL TOUR - HOME - ~ PART Ⅱ FANTASIA ~』の千秋楽で巻き起こった怒号のような歓声と万雷の拍手。

極上のプレゼントが発表されてから、早いものであっという間に3ヶ月が過ぎた。

今日は2019年3月8日。

いよいよ『Wake Up, Girls! FINAL LIVE ~想い出のパレード~』がさいたまスーパーアリーナで開催される。

朝から自分のことでもないのになんだかソワソワ。Twitterを覗いてみるとなにやらザワザワ。お昼の段階でグッズの大半が売り切れているし、#WUG_SSAのハッシュタグはトレンド入りしている。

昨日は雨が降っていたが、今日はパレード日和のいい天気だ。アイスコーヒーといつもの取材道具を持って約束の場所へ足を向けた。

約束の場所へ

正直、僕は2月に行われた「HOME」ツアーで、声優ユニット「WUG」の物語はエンディングを迎えたと思っていた。

「私が泣くときは『WUG』が終わるときですから」

以前からこう語っていた吉岡茉祐さんが「HOME」である仙台のステージで声を詰まらせた瞬間。いつも丁寧に言葉を選びながら喋るクレバーな彼女が「まゆしぃ」じゃない姿を見せた時に声優ユニット「Wake Up, Girls!」の本編は一括りがついたのではないかと思っていた。

だからこそ思っていた。「さいたまスーパーアリーナ」という最高に贅沢な時間は、心から楽しめる笑顔溢れる時間になるのではないか、と。

結果的には半分正解で半分外れだった。最高に楽しめる時間という意味では正解。外れたのは、やはり「さいたまスーパーアリーナ」で声優ユニット「Wake Up, Girls!」は完結したということだ。

そう、「想い出のパレード」は僕がこれまで見てきたライブの中で、過去最高のライブだった。

ライバルは自分たち7人。昨日までの「Wake Up, Girls!」を超えることを優勝という言葉という言葉で示してきた彼女たち。

そのフィナーレとなるライブでは、シングルの表題曲および7人で歌っているカップリング曲、更にはタイアップの楽曲までを披露。

メドレー曲を除いても27曲という、超豪華絢爛なセットリストを用意していたのである。

また、この日の「さいたまスーパーアリーナ」に集まったファンの人数は約13000人。「Wake Up, Girls!」の単独公演としては過去最大級の動員人数を叩き出した。

まさに約6年間の集大成。この言葉が似合うライブのカケラを振り返っていきたい。

さて、そろそろライブ本編の話に移ろう。

これまでにない期待感に包まれた「さいたまスーパーアリーナ」の景色が暗転すると「Wake Up, Girls!」の生みの親、育ての親である3人の声が鳴り響いた。

想い出よこんにちわ

18時30分。

丹下社長(日高のり子さん)、松田耕平(浅沼晋太郎さん)、早坂相(鈴村健一さん)。

「Wake Up, Girls!」の生みの親、育ての親である3人の言葉に導かれ、ライブがはじまろうとしている。

会場全体に目向けると、プレス席に座っていた僕の目に飛び込んできたのは、「ナチュラルグリーンの海」だった。思わず数年前にアニメで見た光景がオーバーラップする。ふぅと息を吹いて、口元が緩むほどに「さいたまスーパーアリーナ」は絶景だった。

想い出深い制服を着た7人がSSAに集い、OPムービーが終わる。

その瞬間「タチアガレ!」のイントロが流れた。

彼女たちにとってハジマリの曲。衣装は制服。そして、スクリーンには映画「Wake Up, Girls! 7人のアイドル」が映し出される。

「想い出のパレード」がいよいよ始まった。

さいたまスーパーアリーナはとても広い。モニターに映し出される映像がなければ、メンバーの表情までは分からない。ただ、今日の7人は今までで一番大きく見えて、一番輝いて見えた。

最高に輝くメインステージのど真ん中。吉岡茉祐さんは自身のソロパートで右手にマイクを持ち、こう叫んだ。

「行くぞ...!SSA!!!!!!!」

うん、やっぱり彼女は広い会場がよく映える。今日も絶好調。本気中の本気だ。

「タチアガレ!」が終わり、「16歳のアガペー」へ。吉岡茉祐さんが歌詞の第一声である「だ」を発した瞬間にアリーナ、スタンドのワグナーが崩れ去る。彼女たちはあの光景を見てどんなことを思ったのだろうか。いや、いつも通り笑顔を浮かべていたに違いない。

1番が終わるとセンターステージへと移動。2番のサビでは吉岡さんと田中さんが高木さんのツインテールをいじる。

これまでライブの千秋楽で魅せてきた“ワチャワチャ感”をいきなり持ってきた。そうだ、楽曲のカウントダウンはもう始まっている。ここからの一曲、一曲全てが最後のパフォーマンスになるのだ。

続いて「7 Girls War」のイントロが流れるとTVアニメ「Wake Up, Girls!」のOP映像がスタート。会場全体の温度もぐんぐん上がっていく。

まさに「この一瞬に悔いなし」。

いま、この場所で生きている実感を感じているように、観客席から出るコールの音量はドンドン上がっていく。スタートから最高に盛り上がっていることを確信した。そんな時だ。

「7 Girls War」の2番が終わった間奏中、左手首のApple Watchが振動した。

当然、今日はステージから目を離していい日ではない。でも何故だろう。この通知だけ見なきゃダメだという胸騒ぎがあった。目を落としたディスプレイにはこう表示されていた。



2月の「わぐりすらん」で「7人が羨ましくてしょうがなかった」と思いの丈をステージで伝えた「I☆Ris」芹澤 優さん。どこまでもドラマチックな瞬間を生み出す先輩である。

ステージに目を戻すと、吉岡茉祐さんと青山吉能さんが並び立っていた。

ここでいきなりのサプライズが。

青山吉能さんが「7 Girls War」のソロパートで昔の歌い方を披露したのだ。田中美海さんのモノマネがとても似ているフレーズといえば、察しがつくだろう。その特徴的な語尾の跳ね上げ方に会場の一部が騒つく。うん、今日のライブは本当に本当に最高で贅沢だ。

6人よりも1テンポ早くジャンプするシーンでの言葉は「いくよ!!!」ではなく「ありがとう!!!」。

とにかく楽しそうに歌う彼女たちを見ていると、「この時間がずっと続けばいいのにな」なんて、柄にもないことを思ってしまった。

7人がそれぞれのポーズを取り、楽曲が終わった瞬間、「最高だ!WUGちゃん!」どこかでこんな叫びが聞こえた気がした。

6年間を感じさせるステージ

いよいよはじまった「思い出のパレード」。この日最初のMCはこうだ。

「私たちの6年間を感じさせるステージにします!」(高木さん)

「皆さんも今日は楽しむだけ!今日の私たちを目に焼き付けて帰って下さい!」(山下さん)

「本当に夢みたい!この後も『WUG』ちゃんに負けんなよ〜!」(田中さん)

「やってきましたね!エクストラステージ!思う存分楽しんで下さい!」(吉岡さん)

「今日という瞬間は戻ってきません。皆さんでこの瞬間を楽しみましょう!」(永野さん)

「何度も諦めたSSAの夢が叶いました!皆さんのおかげです!」(奥野さん)

「パワーをもらって、与えて大戦争にしたいと思っています!」(青山さん)

「制服でまだ歌いたい歌があるんです」

吉岡さんの声をキッカケに「ゆき模様 恋のもよう」が流れはじめる。

舞台「Wake Up, Girls! 青葉の記録」で初披露された名曲は「Wake Up, Girls!4th LIVE TOUR ごめんねばっかり言ってごめんね!」でも一曲目に選ばれるなど、彼女たち7人が持つ健気さ、清潔感、可憐さを十二分に表現する楽曲として愛されてきた。

同曲について奥野さんは以前こう語ってきた。

『ゆき模様 恋のもよう』は誰のパートが聞き所みたいな感じじゃないと思うの。キャラで歌ってるんだけど、すごく柔らかく優しく歌ってて。 私、そこがすごく大好き。懐かしさもあり、切なさもあるメロディが心に染み渡っていく感じ。(奥野さん)

懐かしさと切なさの溢れるメロディを受けて、「言の葉 青葉」へ。

さいたまアリーナの広い会場に響き渡る。仙台発の歌声。紡がれていく音の雫の一つひとつに耳を傾けると、幸せな気持ちになれる。

2014年2月26日に発売された彼女たちの記念すべきはじまりのCD。

今改めてミュージックビデオを見てみると、声も表情も幼い。6年という期間で彼女たちは色々な壁を乗り越え、成長を続けてきたことがよく分かった。

8人目のメンバーへプレゼントとこの上ないサプライズ

過去最高の「言の葉 青葉」を歌いきり、TVアニメ「Wake Up, Girls!」の映像がスクリーンに映し出された。

ムービーの終わりにはこのメッセージが。

「そして次のステージへ」

衣装を着替えたメンバーが姿を現す。正直、TVアニメ「Wake Up, Girls!新章」のコーナーが始まると思っていた。だが、僕の予想を7人は軽く超えてきた。

「さいたまスーパーアリーナ」に鳴り響くファンファーレ。そう、「One In A Billion」だ。

ステージの立ち位置を見ると、吉岡さんの隣が空いている。いや、「Wake Up, May’n!」の8人目のメンバーがいる場所にメンバーカラーである白のスポットライトが当たっている。

「ワグナーさん!私たちを応援してくれてありがとうございます!そして、May'nちゃん!私たちと出会ってくれてありがとう!」

奥野香耶さんが代表して、会場にいる“ワグナー”と8人目のメンバーへメッセージを贈る。

また、スクリーンに映し出された高木美佑さんは、笑顔でWUMポーズを取っていた。

サプライズの後は「素顔でKISS ME」。センターステージを上手く活かしながら、全方向が最前列となるように工夫されたフォーメーションを組んでいる。

ここで奥野香耶さんの低音がズシンと来る。そう、奥野さんは歌の表現力が凄い。

先日放送された「鷲崎健のヨルナイト×ヨルナイト」に「Wake Up, Girls!」の7人がゲストに登場した際、鷲崎健さんは奥野香耶さんの魅力について「歌が上手い」と語っていた。改めて、このライブを見ていて気付いたのだが、奥野さんは楽曲に応じて表現を変えている印象を受けた。

低音から高音。同じ音の高さでも声質を使い分ける。彼女は自分の魅力をステージで上手く表現できるようになったことで、より幅広いパフォーマンスができるアーティストに進化したのだ。独特の感性も彼女だけが持つ強みである。

次はどの楽曲が来るのか。ステージを注視していると、青山吉能さんがセンターへ移動した。

ここで盛り上がらないと死神の格好をした天使に何をされるか分かったものではない「恋?で愛?で暴君です!」へ。

スクリーンに映し出される山下七海さんがとにかく輝いている。指先で描くハートは26000以上の瞳を釘付けにする。

そして、さいたまスーパーアリーナのステージは新しい変化を生み出すのだろうか。この曲を境に青山吉能さんの歌声がさらに輝きだした。

7人それぞれが別のトロッコに乗りスタートした「キャラソンサビメドレー」でそこに気付いた。七瀬佳乃の「ステラ・ドライブ」である。マイクの音量を上げたのかと錯覚するほどに高く、大きく、美しい歌声がさいたまスーパーアリーナ全体に鳴り響いた。

メドレー終了後は7人全員での「Non stop diamond hope」。

会場全体がオレンジ・紫・黄・赤・藍・緑・青に染まった。眼を見張るほど美しい。写真は撮れないので心のシャッターだけ切っておこう。

すべてが名シーンに見えた

「ワグ・ズーズー」のスタートでは、アリーナ最後列が最前列に変化した。 7匹のアニマルがスクリーン全体に広がるなど、演出面も見逃せない。目のやり場に困るとはまさにこのことだろう。

会場が暗転し、「ファミ通 presentsWUGちゃんねる」と「Wake Up, Girls!のがんばっぺレディオ!」のコラボレーションムービーが流れる。

この動画は一般公開されているため、ぜひフルバージョンを楽しんで欲しい。

早着替えが終わると、センターステージに7人が姿を現し、「HIGAWARI PRINCESS」へ。

この日のステッキは虹色に輝くステッキ。「さいたまスーパーアリーナ」のプリンセスは7人全員だ。

プリンセスたちが次に披露したのは「スキノスキル」。

声優アーティスト「Wake Up, Girls!」のラストシングルだ。歌い出しは奥野香耶さん。Aメロから一気に世界観を作り上げた。

「Wake Up, Girls!」のことを「スキガスギル」人たちだけが集まったさいたまスーパーアリーナ。全員が最高の笑顔を浮かべている。幻想的で最高の空間とはまさにこのことだろう。

そして、「Wake Up, Girls!」が別作品のアニメタイアップという新しい可能性を示した「僕らのフロンティア」へ。

青空には清潔感があり、素直な歌声がとてもよく映える。「HOME」ツアーを機にCDとは違う歌い方に踏み出し始めた田中美海さん。

この日も、その瞬間に感じたことをそのままに表現する感情のこもった歌声が会場全体に響いていた。

「憧れのほうへ この手のばした」

「ブルースカイ」に変化したアリーナとスタンドに広がるイエローのサイリウム。

最高に気持ちが乗った最高の歌声は、胸に心にグッと来た。

約束の場所にたどり着いた

MCを挟み、7人の個性を約束の地で披露する時間がやってきた。

「それでは聞いて下さい!『7 Senses』」

スクリーンにはTVアニメ「Wake Up, Girls! 新章」のOPが流れる。

彼女たち自身がモーションキャプチャーを担当した映像と一緒にパフォーマンスする7人。こちらも最近ではほぼ見ることがなかった映像なだけに、レア感たっぷりだ。

映像が映し出された1番はキャラクターで、2番は本人たちで。それぞれ歌い方を変えている印象を受ける。

そうだ、7人ではなく14人で約束の地に辿り着いたのだ。

「さぁ、皆さん。声出していくよ!来いやー!!!」

吉岡茉祐さんの声を皮切りに、ライブ中盤にして、観客席から最大ボリュームのコールが鳴り響く。

以前、青山吉能さんの歌が乗ってくると「焦る」と語っていた吉岡茉祐さん。どんどん覚醒していく青山さんの声に呼応するように、吉岡さんの声もドンドン洗練されていくようだ。

繊細で美しい声はそのままに、力強く挑戦的な声。どんどんメンバーの最高記録が更新されていくライブ。

本当に伝説と言っても過言ではないのだろうか。

そして何よりも永野愛理さんだ。

以前、取材で作曲家の田中秀和さんに「7 Senses」のソロパートを締めるのがなぜ、永野愛理さんなのかと聞いたことがあった。

その時に彼はこう語った。

「最後のサウンドが永野さんだったら、聴いてる方々がグッとくるのかな?っていう、僕の感性で配置してみました」

永野愛理さんと林田藍里。それぞれの個性が合わさった最高のソロパートを受けて、最後のサビに突入する。

「約束の地で待ってて」

誰1人欠けることなくこの場所にたどり着いたこと。それは当たり前のことではないだけに、本当に価値がある。

約束の地には笑顔が良く似合う。ライブのど真ん中で「極上スマイル」がはじまった。泣き顔でスマイル。これまで多くのライブを締めくくってきた一曲にもう言葉は必要ないだろう。

だが、ライブはまだまだこれからである。

ここからはTVアニメ「Wake Up, Girls!」、「Wake Up, Girls! 新章」を通じて誕生した3つのユニット「I-1club」、「ネクストストーム」、「Run Girls, Run!」14人のメンバーが綴ったメッセージムービーが流れる。

再び姿を現した「Wake Up, Girls!」はTVアニメ「Wake Up, Girls! 新章」のEDテーマ「雫の冠」を歌い上げる。

切なくて、儚くて、胸にスッと入ってきて、暖かい気持ちになれる。落ちサビで吉岡茉祐さんは世界記録を更新する歌唱を魅せた。

そして、「Wake Up, Girls!」を語る上で外せない「少女交響曲」へ。

田中美海さん、奥野香耶さん、高木美佑さんの歌声がより強いものに変化していく。コーラスワークもほぼCDバージョンとは別モノになった。

また、心が一気に引き込まれたのが、落ちサビの青山吉能さん、吉岡茉祐さんのツインだ。

リーダーとセンターによる最大の見せ場。青山吉能さんの繊細で美しいファルセットと吉岡茉祐さんの情熱的で感情的な歌声の共演だ。

お互いがお互いに負けたくない。でも、それ以上に最高のパフォーマンスを魅せてワグナーへの感謝を伝えたい。

そんな気持ちが山下七海さんと田中美海さんにも広がっていくように、過去最高の「少女交響曲」が実現した。

数ある名曲の中で人気投票1位を記録した楽曲は伊達ではなかった。

WUG最高!!!!!!!

いよいよこの時が来た。「Beyond the Bottom」のイントロが流れる。

真っ白に染まる「さいたまスーパーアリーナ」。約束の場所でずっとこの景色が見たかった。

青山吉能さんはソロパートで感情の起伏を抑えた歌唱と感情を爆発させる歌唱を織り交ぜていく。

そして、一番が終わる時、おそらく会場全体のワグナーがこう思ったに違いない。

来るか!来るのか!?と。その期待を上回るほどの元気な声が鳴り響いた。

「WUG最高!!!!!!!」

持ってった!田中美海さん(片山実波)の声が「さいたまスーパーアリーナ」全体に響く。そう、この光景がずっと、ずっと見たかった。

2番が終わり、山下七海さんのソロへ。可愛く、愛くるしいだけじゃない。もちろん、歌が上手いだけでもない。

彼女が持つ唯一無二の歌声は瞬間的に心を奪う魔法の力がある。

ソロパートが終わると7人のダンスへ。会場の照明がMVを彷彿させるように細かくスイッチする。

そして、高木美佑さんが吉岡茉祐さんをセンターに導く。僕はこの振り付けがすごく好きだった。

サビの後半でセンターに立ち、祈りを捧げている時の奥野香耶さんのパフォーマンスは神々しい雰囲気を放つようになった。

もう彼女たちはどん底にはいない。色々な経験を経てちゃんと自分たちの足でタチアガルことができたのだ。

MONACA組曲

ここからは声優ユニット「Wake Up, Girls!」最終章を彩った4曲へ。

起承転結をテーマにしたMONACA組曲。「海そしてシャッター通り」、「言葉の結晶」、「土曜日のフライト」、「さようならのパレード」。

原点の回顧、刺激的な挑戦、切ない旅立ち、笑顔での別れ。

『Wake Up, Girls! FINAL TOUR - HOME - ~ PART III KADODE~』の各会場で初披露されていった楽曲。ツアーでは4曲の中から会場別に一曲のみが披露されていたが、4曲連続で聞くとなると、全く違った魅力が目の前に飛び込んでくる。

組曲とは幾つかの曲を組み合わせて一つの曲にしたものを指す。つまり、この4曲は一気通貫で聞くことで真価を発揮するのだ。

MONACAの高橋邦幸さん、広川恵一さん、田中秀和さん、神前暁さんが彼女たちだけのために紡いだ旋律に作詞家・只野菜摘さんが言葉を編んで乗せる。

僕が惹かれた「Wake Up, Girls!」の音楽とは希代のクリエイター陣が心血を注いで完成した魂の作品たちだ。

最高の楽曲と詞に振り付け、衣装、ヘアメイク、ステージ演出。クリエイターたちが作り上げた土台の上に7人の歌声が重なることで、「Wake Up, Girls!」のライブが完成する。

MONACA組曲のフィナーレである「さようならのパレード」。これまでの3曲を見た上でこの曲を目の当たりにした時、感情的になるなという方が無理な話だ。

爽やかで未来への一歩を感じさせる美しいメロディ。「想い出のパレード」ライブ本編を締めくくるのは、新しい始まりを祝福する楽曲だった。

間奏中には「Wake Up, Girls!」コールが鳴り響く。

「さようならのパレード」のアウトロでメンバーが1人、また1人とメロディに合わせて挨拶をしていく。

ステージ上部に目を向けると、さいたまスーパーアリーナの巨大スクリーン映し出された「緑と青」それぞれのWake Up, Girls!のロゴマークが映し出されている。

まさに大団円。6年間続いてきた舞台のエンディングのようだ。

奥野香耶さんが叫ぶ。

「みんなで...!せーの!」

Wake Up――。

TUNAGO

この日、「Wake Up, Girls!」は様々な衣装に袖を通し、ビジュアルでも自分たちの歴史を表現していた。

制服、FANTASIA、5周年、Memorial。では、アンコールの一発目にはどんな衣装で姿を現すのだろうか。

そんな期待を膨らませていたら、見ただけで気持ちを爆発させる7色のドレスで登場したのだから、驚きを隠せない。

「想い出のパレード」のアンコールは明るく、元気に盛り上がる「SHIFT」だ。

うん。アンコールの幕開けを引き立てる最高の一曲だ。

2018年6月15日にユニットの解散が発表され、誰しもがどんな気持ちでライブを楽しめばいいのかと様々な感情を胸に浮かべて会場に足を運ぶ中、『Wake Up, Girls! FINAL TOUR - HOME - ~ PART Ⅰ Start It Up, ~』で一番最初に披露したのが「SHIFT」だった。

「何があっても楽しもう!」

湿っぽさを払拭するようなメッセージをビッグバンドの楽曲とステージ上でドレスを脱ぎ去るというパフォーマンスで魅せた「Wake Up, Girls!」。

ライブが終わってしまうことの悲しさを吹き飛ばす。最高のアンコールがはじまった。

山下七海さんのソロパートでいたずらっぽく微笑む姿と歌声により一層引き込まれる。

そして、ライブのアンコール曲としては定番になってきた印象ある「地下鉄ラビリンス」へ。「HOME」ツアーで魅せたラップバトルもそのまま持ってきた。

「そんなんじゃ『WUG』ちゃんに負けちゃうんですけど〜!」会場を煽る青山吉能さんの表情がとても楽しそうだ。

「東北に感謝の思いを込めて、次の曲を歌いたいと思います。聞いて下さい。『TUNAGO』」

イオン東北「にぎわい東北」イメージソングである「TUNAGO」。

故郷が賑わい広がっていく。そんな暖かい情景を優しい歌声で表現する7人。センターに立つ、奥野香耶さん、永野愛理さん。東北出身の2人がいることでこの歌の深みが増す。

ラストのサビに入る前に高木美佑さんのソロも忘れてはならない。

そう、高木美佑さんのソロパートがサビへのつなぎとなっている楽曲は非常に多い。彼女が持つ天性の明るさ。高木美佑さんの声が明るい世界観を作り出しているのだと、「想い出のパレード」で再認識できた。

てがみとPolarisとタチアガレ!

この日、ワグナー筆頭である大田邦良(下野紘さん)の声が会場に鳴り響くことはなかった。いや、1人ひとりが大田邦良だと認識したのは丁度、ダブルアンコールの時だった。

「Polaris」の衣装で現れた7人。この日のために用意した「てがみ」を1人ひとりが読み上げた。

ありがとうの気持ちを自分らしく明るく、元気に伝えた高木美佑さん。

震える手を抑えながら、感謝の気持ちを伝え、明日への決意を語った山下七海さん。

涙をこぼしながら声優としての覚悟を語った田中美海さん。

敢えて「これからも『Wake Up, Girls!』をよろしくお願いしますと語った吉岡茉祐さん。

「サクラのような人になります」と、自分の生きる道を宣言した永野愛理さん。

ユニークな表現を交えながら自分の中の葛藤と未来への希望を伝えた奥野香耶さん。

「Wake Up, Girls!」リーダーらしく、家族愛と人生第2章への決意を語った青山吉能さん。

「てがみ」での想いを伝えた後、7人は北斗七星のフォーメーションを取った。

「聞いてください。『Polaris』」

「Polaris」

作詞・Wake Up, Girls!
作曲、編曲・田中秀和(MONACA)

北極星を意味するこのタイトルには2つの意味がある。

「Wake Up, Girls!」が誰かにとっての道標となる「Polaris」でありたいということ。

そして、曲を聞いたあなたも「Wake Up, Girls!」にとっての道を照らしてくれる「Polaris」だということ。

真っ白に染まった「さいたまスーパーアリーナ」の中で最後の「Polaris」がはじまった。

メンバーやスタッフ、ファンへの感謝の気持ちが溢れ出し、感情を抑えきれない青山吉能さん、永野愛理さん、奥野香耶さん。

楽曲を明るい雰囲気にするという自分の役割を深く受け止め、サビの直前に「Polaris」を明るく彩った高木美佑さん。

センターステージへ移動する際、手を繋ぎながら何度も何度も練習したハモりを美しく響かせる田中美海さんと山下七海さん。

「最後まで私のソロはいらない。歌って欲しいメンバーがいる」

歌詞全体を取りまとめ、歌割りにも自分自身の気持ちを込めた吉岡茉祐さん。

ステージで輝く「Polaris」を優しく見守る白から常に張り詰めた気持ちを堪えながら、「自分を探し」を続けてきた彼女の色である情熱の赤に「さいたまスーパーアリーナ」の景色が変わった時、吉岡茉祐さんは心からの恩返しを歌声に込めた。

「満天の星空を...ありがとう!」

空高く飛び出した銀テープが、まるで打ち上げ花火のようだ。

プレス席から会場全体を見渡すと、ワグナーが肩を組んでいる姿が見える。

なんと美しい光景なのだろうか。「KADODE」で見た絶景を今度は「さいたまスーパーアリーナ」で見ることができた。極上のエンターテイメントは人の心を1つにすることができるのだ。

感動のエンディング。ただし、会場からは「Wake Up, Girls!」コールが鳴り止むことはなかった。

初となるトリプルアンコールでもう一度姿を見せた「Wake Up, Girls!」。

「私たちの始まりの曲、もう一度歌わせてください!」

吉岡茉祐さんはここでいつもの言葉を会場に投げかけた。

「灰になる準備はできてますか!」

最後の最後は、はじまりの曲で。

青山吉能さんは「絶対誰にも渡さない」と語っていたソロパートを7人全員で歌うこと選んだ。

メインステージへと戻る「Wake Up, Girls!」。

最後はマイクを通さず、自らの声で自分たちのユニットを叫ぶ。

リーダーとは残酷な存在だ。終末を自分の喉を震わせた音で伝えなくてはならない。絶対に言いたくない。まだ終わらせたくない。悲痛な表情と言葉にできない感情を抑え込み、泣き顔でスマイルを浮かべる。

青山吉能さんは「Wake Up, Girls!」のリーダーとして、メンバーを代表し、勇気を奮い立たせ6年に及ぶ活動を締めくくる言葉のキッカケを作った。

「以上...、「Wake Up, Girls!」でした!ありがとうございました!!!!!!!」(Wake Up, Girls!)

想い出のパレード

「想い出のパレード」が終わった。曲の合間にある休憩すら最小に抑えて、「Wake Up, Girls!」は最後まで全力のパフォーマンスを魅せた。

そう、この日の「Wake Up, Girls!」はやっぱりいつもと少し違った。

敢えて書くが、歌詞を間違えたり飛ばしたりする箇所があった。普段のライブではまず無い光景に会場も騒ついていた。

だが、人間とは間違える生き物である。

アニメ「Wake Up, Girls!」で白木徹は「人間である前にアイドルである」という信念を持っていた。

勿論、リアルの「Wake Up, Girls!」は声優アーティストであり、アイドルではない。洗練された完成品でもない。

大阪、宮城、神奈川、熊本、徳島、岩手、千葉というバラバラな土地に住んでいた女の子たちが一歩踏み出す勇気を持ち、ユニットを結成し、そして家族になった。

そんな7人は「人の心を揺さぶる何か」を持っていた。

この「何か」の答えを探しに「さいたまスーパーアリーナ」へと足を運んだわけだが、結局明確な答えは見つからなかった。

焦らずにじっくり、これからふと楽曲を聴いたり、彼女たちの新しい活躍を見る過程で考えてみることにしよう。

彼女たちがタチアガルのはこれからなのだから。

「さいたまスーパーアリーナ」に訪れた人、スケジュールの都合でそれぞれの場所から応援した人。みんなが受け取った「消えないスタンプ」。最高のお守りを貰った“ワグナー”は、彼女たちの未来を応援するに違いない。

最後の総括

2019年3月9日。

僕にとってこの原稿が「Wake Up, Girls!」について書いた最後のものになる。本稿の公開日は3月13日を希望した。

永野愛理さんが色んな想いを込めた数字である「313」。

311の次にある素数が313。また、3つの数字を足すと「7」になる。

3月11日から前へ。自分にしか割り切れない想いを抱えながらも一歩、また一歩と前進し続けてきたその歴史に敬意を表して。

元・声優ユニット「Wake Up, Girls!」の吉岡茉祐さん、永野愛理さん、田中美海さん、青山吉能さん、山下七海さん、奥野香耶さん、高木美佑さん。

彼女たちを支えてきたクリエイターの方々、スタッフの方々、関係者の方々。そして、ご家族、ご友人の方々。

最後に、7人を心から応援したあなた。

それぞれの「人生の第2章」が極上の笑顔で溢れていることを心から祈っている。

ああ、今日もいい天気だなぁ。まずは大切な人たちと一緒にSAKURAを見よう。

文・川野優希

セットリスト

M1.タチアガレ!
M2.16歳のアガペー
M3.7 Girls War
M4.ゆき模様 恋のもよう
M5.言の葉 青葉
M6.One In A Billion
M7.素顔でKISS ME
M8.恋?で愛?で暴君です!
M9.キャラソンサビメドレー
ハジマル/吉岡茉祐
可笑しの国/永野愛理
ステラ・ドライブ/青山吉能
スキ キライ ナイト/奥野香耶
オオカミとピアノ/山下七海
歌と魚とハダシとわたし/田中美海
WOO YEAH!/高木美佑
Non stop diamond hope/ALL
M10.ワグ・ズーズー
M11.HIGAWARI PRINCESS
M12.スキノスキル
M13.僕らのフロンティア
M14.7 Senses
M15.極上スマイル
M16.雫の冠
M17.少女交響曲
M18.Beyond the Bottom
M19.海そしてシャッター通り
M20.言葉の結晶
M21.土曜日のフライト
M22.さようならのパレード
EN1.SHIFT
EN2.地下鉄ラビリンス
EN3.TUNAGO
DEN.Polaris
TEN.タチアガレ!

Wake Up, Girls! FINALLIVE ~想い出のパレード~ がBlu-rayで発売決定!

商品名:Wake Up, Girls! FINALLIVE ~想い出のパレード~
発売日:2019年6月28日(金)
声優ユニット「Wake Up, Girls!」のラストライブを映像化!特典映像にオフショットを収録予定。
価格:9000円(税別)
品番:EYXA-12529



CD発売情報

タイトル:Wake Up, Best!MEMORIAL
アーティスト:Wake Up, Girls!

アニメイトオンラインショップでの購入はこちら

発売日:2019年1月23日(水)
CD8枚組+Blu-ray Disc:7,777円(税抜) 
品番:EYCA-12100~7/B

<CD8枚組 収録予定曲>
タチアガレ!
7 Girls War
太陽曰く燃えよカオス (岡本未夕 ver.)
言の葉 青葉
16歳のアガペー
あぁ光塚歌劇団
極上スマイル (Wake Up, Girls! ver.)
ワグ・ズーズー
素顔でKISS ME
Regain Brave
End of endless
プラチナ・サンライズ
セブンティーン・クライシス
地下鉄ラビリンス
少女交響曲 (Album ver.)
お約束たいそう
WOO YEAH!
ハジマル
歌と魚とハダシとわたし
オオカミとピアノ
可笑しの国
スキキライナイト
ステラドライブ
SHIFT
スキノスキル
Beyond the Bottom (Album ver.)
Polaris
同じ夢を見てる
雫の冠
7 Senses
TUNAGO
ゆき模様 恋のもよう
One In A Billion -Wake Up, Girls! ver.-
恋?で愛?で暴君です!
僕らのフロンティア
青い月のシャングリラ
Into The Light
snuggery
ヒカリキラリミルキーウェイ
それいけオトメ
It's amazing show time☆
走り出したencore
タイトロープ ラナウェイ
outlander rhapsody
Party! Party!
プライド
ユメ、まっすぐ。
ぽんとPUSH! もっとSMILE!
シャリラ!
ドラマチックを君と
Dice of Life!
Non stop diamond hope~Airi ver.~
Non stop diamond hope~Yoshino ver.~
Non stop diamond hope~Minami ver.~
Non stop diamond hope~Nanami ver.~
Non stop diamond hope~Kaya ver.~
Non stop diamond hope~Miyu ver.~
Non stop diamond hope~Mayu ver.~
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