映画『バンブルビー』トラヴィス・ナイト監督インタビュー|日本文化を愛してやまない監督がつくる人と地球外生命体の心の物語
過去5作品の全世界累計興行収入が43億7700万ドル(約5000億円)突破の世界的大ヒットシリーズ『トランスフォーマー』。そのシリーズ最新作『バンブルビー』が、2019年3月22日(金)に日本公開!(3月21日(木)には先行上映あり!)
監督を務めるのは、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を手がけるなど、日本に造詣が深いトラヴィス・ナイトさん。アニメイトタイムズでは、そんな監督にインタビューを実施。本作にかけた思いなどを伺いました。
目次
頭の中のアイディアをとにかく形にしたかった
――初めに、監督が以前手がけられた『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を拝見したのですが、要所要所でアニメ的なニュアンスのある作品だなと感じました。監督とアニメの関係について、お話を伺いたいと思います。
トラヴィス・ナイトさん(以下、トラヴィス):私は、非常に内向的な性格で、どこへ行くにもスケッチブックと鉛筆を持っていくような子供だったんだ。母親に連れられて出かけるときも、兄の球技の試合を応援に行くときもね。どんなときも絵を描いてた。
そして絵を描くのと同じくらいアニメが大好きだったんだ。『ルーニー・テューンズ』や、成長してからは宮崎駿の作品をよく観ていたよ。そして、私は好きなだけではなく、自分でアニメが作りたかった。自分で漫画を描いて、それを動かしたいとずっと思っていたんだ。
そのために、アニメがどうやったら作れるのか研究したこともあった。最初は、手描きのアニメを作ってみたんだ。その次に、人形を使ったストップモーションを試してみたりもした。私は、『レイ・ハリーハウゼン』が大好きだったからね。私の頭の中には、常にたくさんのアイディアがあって、どうやってそれをアニメにしようか、常に好奇心に満ちていたんだ。
――宮崎駿さんの名前が出ましたが、とくにお気に入りの作品などはありますか?
トラヴィス:宮崎駿の作品で最初に観たのは、『ルパン三世 カリオストロの城』だよ。エキサイティングで、エネルギーを感じるアニメだった。『千と千尋の神隠し』も大好きだ。映像やストーリーのあまりの美しさに感動して、とても心に響いたのを覚えているよ。
――日本のアニメの特徴はどんな所だと思いますか?
トラヴィス:アメリカ人として日本のアニメを観るとき、アメリカやヨーロッパ、西洋とはまったく違うものに感じるんだけど、どう違うのか、それを言葉にするのはとても難しいんだ。日本には多くのアニメがあって、種類も豊富で、それぞれ異なる深みがある。それ自体が、日本のアニメの特徴なのかもしれないね。
――『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』では、日本の文化がよく表現されていました。そんな作品を手がけた監督に伺いたいのですが、アニメと文化に繋がりはあると思いますか?
トラヴィス:アニメに限らず、アートというものは文化から生まれてくるものだからね。建築物や絵画、ファッション、食べ物、それらと同じように、日本のアニメもその文化を象徴するものになっていると思うよ。
チャーリーとバンブルビーの心の物語
――『トランスフォーマー』、元々は日本の玩具シリーズから広がり、日本人にとっては特別な思い入れのある作品ですが、監督にとってはどのような意味を持っているのでしょう?
トラヴィス:私は8歳のとき、父親に連れられて初めて日本を訪れたんだ。そこで触れた日本の文化に、人生観が変わるほど感動させられた。その経験が、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』にも反映されている。
『トランスフォーマー』はその反対で、日本からはるばる我が家にやってきてくれた存在なんだ。玩具やコミック、アニメに私は夢中になった。最初のアニメシリーズを観たとき、こんなにかっこいいものはない、と思ったよ。
宇宙から金属生命体が地球に攻めてくる、というストーリーにも引き込まれたし、車やラジオが金属生命体に変形する、といアイディアにも唸らされた。そして、子供の頃から愛してきた作品を、今度は自分に任せてもらえることになったんだ。私にとって、この仕事は最高の体験になったよ。
――本作のトランスフォーマーたちは、アニメシリーズに近いデザインになっていましたが、意識した点はありますか?
トラヴィス:『バンブルビー』という作品は、彼にとっての始まりの物語、所謂オリジンストーリーなんだ。そんな作品にしようと思ったとき、私がアニメを観て育った80年台の世界が頭に浮かんできた。舞台にするならこれしかないと、昔のニュアンスやテイストを盛り込みたいと思ったんだ。
初期の作品はデザインが非常にシンプルで、だけど大胆な変形をする玩具だった。私が初めて玩具に触れたときの感動や発見を、もっと多くの人に味わってほしかったから、今回はそのニュアンスを表現していくことにしたんだよ。
――本作では、チャーリーとバンブルビーの関係が印象的に描かれていました。監督は、この2人の物語をどのように表現しようと考えていたのでしょうか?
トラヴィス:チャーリーとバンブルビーは、同じコインの表と裏なんだ。お互いが同じような喪失を抱えていたり、傷ついていたり、孤独を感じて生きている。そんな2人が出会い、理解しあい、そして癒やされていく。心を再生させることで、強く、前を向いて生きていけるようになるんだ。人生を変えるような友情を育む過程を描いたことで、この2人は非常に思い入れのあるキャラクターになったよ。
『バンブルビー』には、愛や思いやりという優しい感情が心の再生に繋がっていて、人生を変えていくこともある、というメッセージが込められている。アクションアドベンチャーだけど、物語の核となっているのは、チャーリーとバンブルビーの関係なんだ。
――そんなバンブルビーですが、日本語吹替版で(バンブルビーを追い込む側)シャッター役を担当した声優の悠木碧さんという方が、「私がバンブルビーの母親になってあげたい」と言うほど彼の大ファンなんですよ。
トラヴィス:シャッターがバンブルビーの母親になるのは、難しいだろうね……(笑)。
【関連記事】 悠木碧さん、バンブルビーの母になる「ビー、私がママだよ…。」
【関連記事】 映画『バンブルビー』シャッター役の吹き替え声優に悠木碧
――そうですね(笑)。しかしそれだけ、バンブルビーというキャラクターが魅力的な存在なんだと思います。そこまでファンが虜になってしまう理由はなんだと思いますか?
トラヴィス:バンブルビーは、トランスフォーマーたちの中でもっとも親しみやすく、とても人間らしい心を持った存在なんだ。人間と関わりを持って、人間を守るために戦ってくれる。力が強いわけでも、速さに自信があるわけでもないのに、一生懸命で、温かい心を持った存在なんだ。
だからこそ、彼は親しみやすくて、もっとも身近に感じることができる。みんながバンブルビーに惹かれるのも、彼が人間の心を持ったトランスフォーマーだからかもしれないね。
[取材・内田幸二 文・原直輝]
映画『バンブルビー』作品情報
■監督:トラヴィス・ナイト 『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』
■原案:クリスティーナ・ホドソン
■脚本:クリスティーナ・ホドソン、ケリー・フレモン・クレイグ
■製作:ドン・マーフィ、トム・デサント、ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ、マイケル・ベイ
■製作総指揮:
スティーヴン・スピルバーグ
ブライアン・ゴールドナー
マーク・ヴァーラディアン
クリス・プリガム
■キャスト:
ヘイリー・スタインフェルド(『トゥルー・グリット』、『スウィート17モンスター』)
ジョン・シナ、ジョージ・レンデボーグJr.
ジョン・オーティス、
ジェイソン・ドラッカー
パメラ・アドロン
ステファン・シュナイダー
■全米公開:2018年12月21日
■原題:Bumblebee
■配給:東和ピクチャーズ
公式サイト
公式Twitter(@bumblebee_jp)