この記事をかいた人
- 石橋悠
- 1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。
ゲーム、アニメ、コミックと様々な展開で、プロデューサー(ファンの総称)を魅了し続けている『アイドルマスター シンデレラガールズ』(以下、シンデレラガールズ)。
名だたる声優陣が一堂に会するライブも定期的に行われており、『シンデレラガールズ』の世界は広がりを続けています。
2018年9月8日、9日には、群馬県前橋市のヤマダグリーンドーム前橋にて、アプリ『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』の3周年を記念したライブ「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS SS3A Live Sound Booth♪」(以下、SS3A)が開催されました。
そしてついに、「SS3A」のライブBlu-rayが4月24日に発売! アニメイトタイムズでは、こちらの発売を記念して、ライブに出演したキャストの連続インタビューを掲載していきます。
連載ラストとなる第3回は、福原綾香さん(渋谷凛 役)と安野希世乃さん(木村夏樹 役)のお二人です。
最近、新たに『シンデレラガールズ』に参加したキャストにとっては、尊敬の眼差しを受ける先輩です。特に福原さんは、『シンデレラガールズ』最初期から作品に関わっています。
そんなお二人から見た『シンデレラガールズ』の魅力とは何なのでしょうか?
◆【第1回・藤原肇役:鈴木みのりさん&三船美優役:原田彩楓さん】
◆【第2回インタビュー・喜多日菜子役:深川芹亜さん&鷹富士茄子役:森下来奈さん&南条光役:神谷早矢佳さん】
——まず、「SS3A」のライブを終えての感想からお願いします。
安野希世乃さん(以下、安野):私たちは『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』(以下、デレステ)の3周年コミュで、5人組のイベントに選ばれたこともあって、ライブの冒頭で2階から登場しましたね。
「SS3A」は、衣装もみんなバラバラで、珍しかったと思います。
福原綾香さん(以下、福原):衣類が4種類ありましたね。『デレステ』の通常衣装と、1周年のタイミングで登場して4thLIVEの時に着た赤いチェックの衣装と、イリュージョニスタの衣装と、あと私たちの異彩を放つぐらいクールな衣装(笑)。
安野:「ガールズ・イン・ザ・フロンティア」をイメージしたブラック基調のかっこいい衣装を作っていただいて。ガルフロのみんなと2階に並んでの「とどけ!アイドル」から始まりましたが、なんだかとても緊張しました(笑)。
福原:「SS3A」のライブは、自由度が高かったんですよ。ソロをカバーしたリアレンジ曲もやるしこのイベント用に用意したリミックス・リアレンジも多かったですし。
その中で自由な雰囲気を引き締めるユニットとして、私たちが出たような感じがして(笑)。楽しみつつも、身の引き締まる思いもしつつという感じでした。
——お二人は何回もライブを参加されていると思うんですけれども、やっぱり緊張しますか?
福原:最初のころは、緊張しかありませんでしたね。最近はもういい加減、緊張よりも適切に物事をこなしていこうという気持ちの方が大きくなってきました。
楽しもうという気持ちと適切にやろうという気持ちとの半々です。当時よりは余裕がある気がして、今が一番楽しいというか、どんどん楽しくなっている気がします。
安野:福原さんの「私達シンデレラガールズです」という、最初の掛け声が……。
福原:そうだそうだ! 長く関わらせていただいているんですけど、私は「私たちシンデレラガールズです」の第一声を言う事が今までなくて。
安野:私も横にいて、すごく感動していました(笑)。
——いつもは島村卯月役の大橋さん(大橋彩香さん)ですもんね。
安野:初だったんですか?
福原:初だった。いつもはっしー(大橋彩香さん)に任せている安心感があったので(笑)。
はっしーはこんな中でも、すごく頼もしく舵を切ってくれてたんだなと、はっしーのありがたさも痛感しましたね。
安野:私は3rdライブが初めて参加させていただいたライブでした。
3rdは、ちょうどアニメの放送が終わったくらいの時期だったこともあって、参加される皆さんの結束力はものすごくひとつにまとまっていた時期でもありました。
初参加組でいうと、塩見周子役のルゥ ティンちゃんとか、速水奏役の飯田友子ちゃんとかが同期でしたね。「先輩方、一枚岩だわー」みたいな感じで、すごく頼もしく感じましたね(笑)。
だから、不思議と後輩意識がずっと抜けていないんです。4th・5thと参加させてもらいましたが、新しい子が入ってきても、上がいる安心感を感じながらステージに立たせてもらっていますね。
演じている木村夏樹としても役割が決まっていると思うので、夏樹としてのライブの役割とひたすら向き合って3rd、4thをこなしてきました。
今回の「SS3A」では先輩が少ない、むしろ自分がどちらかといえば先輩という立場を初めて認識した公演でした。
福原:やすきちさん(安野さん)の馴染み具合がすごくて(笑)。もっと昔からいたような気するんです。
安野:本当ですか!? 私は未だに、新参者くらいの気持ちです(笑)。
福原:いやいや、半端ない馴染み方でした(笑)。
安野:そこは夏樹のキャラが立っているので。衣装も尖っているし、みなさんに覚えてもらえているのはありがたいですね。
——今回のインタビュー企画を見ても、お二人はやっぱり先輩ですよ。
安野:だから、福原さんと私でいいのかなと思って(笑)。
福原:いやいや、やすきちさんも先輩組に入っています(笑)。
——(笑)。後輩メンバーも先輩方に勇気づけられているというお話をよくしていました。
福原:導けているのかな、大丈夫かな?(笑)
安野:『シンデレラガールズ』はいい意味で部活感があると思っていて。女子校の部活感がある。
上級生が上級生として、「新しく来た子たちの面倒をしっかり見なきゃ!」みたいな意識が強いんですよ。
『シンデレラガールズ』は続いている感じというか、繋がりを感じています。上から下へ、さらにその先へみたいな。バトンが繋がっていく感じ。
福原:確かにそう。特に強く感じたのが5thLIVEツアーの時ですね。
公演ごとに出演者が違っていて、次はどこどこに負けないようにと言っているのを見て、繋がっている感じがしました。夏休みの試合づくしの部活の感じの雰囲気というか。
実は、765の先輩方からふんわりと「『アイマス』は部活だから」と言われたことがあって(笑)。
それを言われた時はあまり感じなかったんですけど、最近は本当に部活だよなと感じます。私たちもいい関係を築けているのかなと思うと、感慨深いものがありますね。
安野:私はすごく感じていました。本当にみんな頼もしい。765の先輩から受け継がれていたんですね。
福原:わざわざ誰かがこういう風にしましょうと取り決めを決めたわけではないんです。ただ「成功させよう」という団結力が芯になっていると思います。「もっとちゃんとしなよ」みたいな雰囲気がなくて。
安野:部活だったりのいいとこどりですよね。
福原:そう。「ちゃんとしよう」という気持ちはあるんですけど、それが強制でもなくて。そういった雰囲気が団結に繋がっている気がします。
安野:みんな、他の人のパフォーマンスをすごく見ているんですよ。他の人の仕上がっているパフォーマンスを見て「もっと頑張らなきゃ、私」と刺激を受けて、他の方へのリスペクトの気持ちも育っていくんです。いい循環が生まれていますよね。
——「SS3A」はこれまでのライブと比べて違いはありましたか?
安野:割合的に初参加のフレッシュな方が多かった印象ですね。ライブとしての印象は違ったんじゃないかな。ピチピチしてました(笑)。
——お二人もピチピチだと思うんですけれども(笑)。
福原:(笑)。特に初参加とかフレッシュ組の方々が白いシンデレラの衣装を着た姿が、初々しさの化身のように眩しかったです……!(笑)
安野:「守りたい、この笑顔」みたいな感じ(笑)。だから、良い初ステージになればいいなと我々も思っていました。
私は初めてMCパートの回しを任されたこともあって、ピチピチでもないのに1人初々しい気持ちで「頑張らねば、頑張らねば」と思っていましたけど(笑)。
——ステージの振る舞いを見ているとかなりキャストのみなさんに任されている感じがありますよね。自分たちで作ってきたアクセサリーなどは毎回驚かされます。
安野:かなり私物を許されている感じはありますね。
福原:それもやっぱり部活っぽいですよね。「ミサンガが作ってきたよ!」みたいな(笑)。
——あれは誰から言われた訳でもなく、みんな揃ってやってくるのでしょうか?
安野:もちろん衣装さんには相談しています。「キャラ的にこれを付けたいんですけど、いいですか?」って、みんな自分発信で手作りの小物を作ってきたり、キャラっぽい小物を探して来る子もいますよ。
あと、「ユニットで合わせた小物を付けよう」という話になって確認を取って付けているパターンもあります。
福原:パフォーマンスについても間奏の部分で言うセリフとかわりと自分発信だったりしますね。今回、私は「S(mile)ING!」のリアレンジバージョンで……。
安野:あれはエモかった(笑)。
福原:(笑)。あの間奏で「見えた気がするよ、卯月が見た景色」と言ったんです。それも自分でふと思いついて打診したんです。
それを思いついたのは、練習していた時だったんですけど、「これ言ったらプロデューサーさん泣いちゃうだろうな」と(笑)。
自主練で試しに自分でやってみたら、自分が最初に泣いちゃって(笑)。そういうこともありましたね。
安野:湧いてきたんですね。
福原:曲中に「これ言っていいですか?」とか、「コミュの台詞をここに入れたいんですけど」というのもありましたね。
安野:「Twin☆くるっ★テール」の城ヶ崎姉妹(城ヶ崎美嘉役・佳村はるかさん&城ヶ崎莉嘉役・山本希望さん)とか、掛け合い感がすごいですよね。
あんきら(双葉杏役・五十嵐裕美さん&諸星きらり役・松嵜麗さん)もそうなんですけど、二人組は毎回作りこんでくるなと私もびっくりしています。
——「SS3A」でお二人のお気に入りの曲はどれでしたか?
安野:「銀のイルカと熱い風」が個人的にすごく好きで。最初は、夏樹としてはっちゃけていいのかなみたいな気持ちがあったんです。
でも、この曲を夏樹が歌うなら、全力で歌うなと思ったので思い切ってやりました。激しい曲で必死になりましたね。
福原:夏樹もイルカに乗って(笑)。
安野:(笑)。ただただ曲に精一杯でしたね。
福原:私は「楽園」がすごく好きで。曲が関裕美ちゃんの初々しさだったり精一杯な感じがものすごく出ているんですよ。
安野:応援したくなりますよね。
福原:会沢ちゃん(会沢紗弥)のパフォーマンスがすごくレベルが高いんだけど、初々しくもあり……。ものすごく良いバランスの方なんです。曲中に泣きそうになりながら歌い切ったりするところも本当にエモくて。
私、ステージ裏のモニターで見守っていたら、メイキング用のカメラで撮られていて! まんまと舞台裏映像に使われていました(笑)。「けっこう気持ち悪い顔してる!」って自分で思いました(笑)。
安野:心を奪われている表情を(笑)。
福原:うっすら笑っていたみたいで、恥ずかしかったです(笑)。
——それも見どころですね(笑)。みなさんも普通にファンとして楽しんでいるところもあるんでしょうか?
安野:やっぱりステージ上の全力のアイドルを見ていると、プロデューサーさんと同じ気持ちになっちゃいますね。
福原:見なきゃもったいないなぁって気持ちにもなっちゃいます。
安野:みんな、モニター前にかじりついていますよ。
——ステージの上にいるみなさんを見ていると、アイドルが本当にいるかのような感覚になります。あのあたりは何か意識しているのでしょうか?
福原:私と凛は、似た部分も多いのかなと思っています。頑張ってスイッチのオンオフを切り替えるのではなく、なんとなく凛だったらこうするのかなと考えていますね。
例えば未央(本田未央)が喋っている時はこういう顔して、卯月が喋ってる時はこんな顔をしているのかなという意識は常に持つようにはしています。
安野:私から見ると、凛ちゃんが憑依しているように見えています。
福原:本当ですか!?(笑)
安野:クールのトークパートの時モニター見ると、「うわ、凛ちゃんだ」と(笑)。
福原:でも、やすきちさんもなつきち(木村夏樹)とのスイッチングがすごいなって思います。
安野:だって個人衣装とかあんな感じじゃないですか。あの衣装を身にまとって、髪もすごく気合い入れて、あの出で立ちでステージに出ているのに、中身があんまりにもふわふわのままだと失礼かなという気持ちがあるんです。
多少は夏樹と自分の中間くらいに気を抜かないように、という意識はありますね。あの格好で夏樹として立っている以上、がっかりさせたくない。
夏樹もたまにおどけるところもありますけど、基本はキマっている子なので。あまり腑抜けたところを見せちゃいけないなという気持ちはあります。
福原:がっかりさせちゃいけないなという気持ちがなつきちっぽい(笑)。「がっかりさせたくねぇからな」みたいなことを言いそう(笑)。
安野:言いそうですね!「カッコ悪いところ見せられないからな」って言いそうです。そのパッションを、気持ちだけは引き継いでいるのかもしれませんね(笑)。
——お二人は歌う時はどんなお気持ちなんですか?
福原:いつも精一杯だからなー。
安野:そういうところも凛ちゃんっぽい。一心同体というか。
福原:曲によっては、「ガールズ・イン・ザ・フロンティア」みたいに「これが私たちの思いだ!」という思いを届けたい時もあれば、「みんな楽しくやろうよ」と思う曲もありますね。
「SS3A」では、rearrangeも多くて、今回は楽しむ意識が強かったように思います。
安野:非日常感ありましたよね。
福原:曲によってちょっとスタンスを変えるというところが「SS3A」は顕著に出ていたのかなと。
安野:私は「ススメ☆オトメ〜jewel parade〜」を何故かセンターで歌わせてもらいました。最初は、「木村夏樹で「ススメ☆オトメ」のセンターは正気か?」と思いましたよ(笑)。
こんな少人数で1階のセンターは初めてだったんじゃないかな。振りも少なめで可愛い方向だったので、その中でも夏樹らしさは意識しましたね。
ライブ中でも少し余裕が持てる曲だったら、どの方向から見てもなるべく夏樹でいられるように、半歩引いたところから、ちゃんと夏樹かどうかモニタリングしながらやっている瞬間も確かにありますね。
夏樹としても限界を超える熱量を出さなきゃたどり着かない時は、自分としても、きっと夏樹だったとしても、全身全霊で臨まないといけません。やっぱり曲によりますね。
——そう思いながら映像とか観るのも楽しいかもしれませんね。この瞬間はこのモードなんだ、みたいな想像しながら。
安野:夏樹はキメる瞬間が多い役じゃないですか。その夏樹のタガが外れちゃって一生懸命なパフォーマンスをしている瞬間というのも、それはそれでプロデューサー的にエモいと思ってもらえたら幸いです。
——お二人は新しいメンバーをどういう風に見守っていますか?
福原:新しく入ってくる子たちって、本当に完成されている子が多いんですよ。心持ちであったり、姿勢であったり、パフォーマンスであったりが綺麗に粒が揃っている(笑)。
安野:フレッシュながらもポテンシャルの高い子ばかりですよね。今の子は、『シンデレラガールズ』を元々知っていて入ってくる子がほとんどなので。
——前回と前々回お話し聞いていたら、やっぱり皆さん『シンデレラガールズ』に入りたいと言って入ってこられた方ばかりでしたね。
福原:えぇ〜(笑)。
安野:私も実はそうでした。私もプロデューサーだったんです。
私が声優デビューしたてのころにゲームが始まって、「このゲームに出たい!」とものすごく思ったんです。マネージャーさんに「このゲームにすごく出たいんですけど、オーディションってありませんか!?」って言った覚えがあります。
その時はオーディションが来ていなくて、「営業しに行ってくる!」ってマネージャーが言ってくれて。そこから半年後くらいに「遅くなったけどオーディション取ってきましたよ」って『シンデレラガールズ』のオーディション原稿を手渡してくれて。その時は泣きました(笑)。
福原:すごい!
安野:そこから仲間入りできるまでに時間はかかりましたが、最終的に夏樹と出逢えました。
福原:いや、すごい。プロデューサーさんとアイドルみたい(笑)。なんか素敵。そういったドラマがあったんですね。
——やっぱり、みんなの憧れのコンテンツですよね。
安野:憧れでしたね〜。
福原:自分が入った時は、スタートしたばっかりでどうなるかわからないことも多かったんです。全貌を知らないまま乗り込んだ船が豪華客船だったみたいな(笑)。
安野:じゃあ決まってからは、歌録ったりCM録ったりみたいな?
福原:あれよあれよといろんなことをさせていただきましたね。スタッフのみなさんもこんなに大きな作品になるとは思っていなかったんじゃないかな……。
安野:全ての人の予想を越えた豪華客船だったんですね(笑)。
——やっぱり不思議な作品だなと思いますね。すごく夢がある(笑)。
安野:平成のシンデレラストーリーですよ。
福原:まさに!
——(笑)。安野さんは後輩たちをどう見ていますか?
安野:『シンデレラガールズ』が好きでオーディションに参加させていただいた過去があるので、「『シンデレラガールズ』に来てくれてありがとう」という気持ちですね。
入ってきてくれる子たちも「『シンデレラガールズ』が好きで、今回決まって嬉しいです」って言ってくれる子が多いんです。
神谷早矢佳ちゃん(南条光役)とかそうでしたよね。新しく入ってきてくれる子が既にプロデューサーでいてくれたっていうことは、自分が『シンデレラガールズ』に入ってからの期間も応援してくれた子でもあると思うんです。
いろんな気持ちが溢れちゃって、何て言ったらいいか分からないけど、「ありがとう」と言いたい(笑)。
——長いことお二人が演じているアイドルについては、どう考えていますか?
安野:私は最初、木村夏樹が自分から遠いところにいる女の子だなと思っていたんです。
オーディションを受けられるようになって、最初の頃はずっとクールの方ばかり受けてたんです。私がクールP(プロデューサー)だったというのもあって(笑)。
だから奈緒(神谷奈緒)とか千枝ちゃん(佐々木千枝)とかも受けましたよ(笑)。
福原:えぇ〜!
安野:クールPだったこともあって、オーディションが夏樹との出会いでした。そこからは夏樹と向き合うようになって。
まずは、すごくコミュ力が高いなと思っていました(笑)。バックパックとギターだけを持って旅に出て、友達あっちこっちで作っちゃうような子ですよね。
元々アイドル志望じゃなかった彼女がアイドルになったこともあって、咲く場所を選ばないというか、器の形を柔らかく変えられる柔軟さがあるなと思います。どこにいても彼女らしさを失わない、柔軟な子だなって思っています。
——演じて行く間に新しい発見はありましたか?
安野:発見というか、演じる機会をいただくタイミングごとに新しく夏樹を知っていく感じでしたね。
何度も何度も「私でいいのかい、夏樹?」と確認しながら収録しています。「あんたがやるしかないんだから、しっかり頼むぜ」と夏樹に背中を押される気持ちで(笑)。
本当に彼女は人間ができているんですよ。本当に18歳なのかなって思うくらい人間の器が大きい。
彼女の人間性が先にあるから、それを汲み取って、彼女の言葉に耳を澄ませて演じていこうという気持ちですね。かっこいい人間・木村夏樹を追いかけ続けてきた年月という感じですね(笑)。
——なるほど。福原さんはいかがですか?
福原:凛はすごくクールで一本気なところもあれば、プロデューサーを弄ぶ悪戯っぽいところもあって。すごく理想の少女像みたいなものを体現した子なのかなと思っています。
お仕事に対して真っ直ぐな気持ちがあって、ひたむきだし、とにかく若さの美しさみたいなところがすごく前面に出ている子です。
少女らしい部分が全面にでているので、私だけが年齢を重ねていってどんどん大人になっていくのが……(笑)。
安野:いやぁ〜!(悲鳴)
福原:言いながら刺さった(笑)。私がだんだん熟れてしまうと、大人の本気感と銀座のママ感が出ちゃうんですよ(笑)。同じことを言っても、年齢感で違うものになってしまうんです。
いつも立ち返って15歳なりの一生懸命さと15歳なりの小悪魔感を意識しています。
彼女はそんな中でもものすごく成長していて。新しく入ってきた子、例えば乃々ちゃん(森久保乃々)に慈しみの深い視線を送ったりもできるようになっていますね。
長く付き合っていくにあたって、そこだけは、少女らしさは絶対に失わないでおこうといつも胸に止めています。
——確かに凛は少女らしさがあります。そのイメージの大本は何ですか?
福原:私のイメージする少女らしさって、出たての時の中島美嘉さんとか「夢見る少女じゃいられない」の時の相川七瀬さんのとかですね。
突っ張っているけどスレているわけじゃなくて、純粋だからこそ斜に構えちゃうみたいな、そういうところのイメージです。
なので、根は純粋で優しいけど、一本気だからこそクールに見えてしまう感じです。クールに振る舞ってるわけじゃなくて、結果的にクールに見えているだけなんです。
安野:凛は永遠の少女ですよ(笑)。私、逆にいくら年を重ねても夏樹の男気とか器のでかさには追いつかないんじゃないかと思いながら年を重ねています。
今持てる自分の、想像出来る限りの大人っぽさを想像して演じていても、「もっと大人でいいよ」とか「子ども過ぎる」ってディレクションされるんです。夏樹に関しては、大人すぎるからもっと若くしてと言われたことがないかも……。
福原:私は逆に「それだとおばあちゃん」とか言われる(笑)。
安野:えぇ〜!
福原:慈しみを持ちすぎて優しいママになっちゃうから。世話焼きおばちゃんじゃなくて優しい先輩を演じないとね。
安野:なるほど……。アイドルによって課題がありますよね。
——『シンデレラガールズ』に関わってどんな作品だと思いましたか?
福原:最近ふと思ったんですけど、ものすごく個性豊かでスパイシーな面々が、揃って大きなお鍋で煮られているようなものなのかなって(笑)。
安野:個性が強いですよね。
福原:まろやかなコクを出してくれる子もいるし、尖った味を出してくれる子もいる。結果的にみんなが集まって、みんなが大好きなカレーになるみたいな(笑)。
安野:言い得て妙ですね。カレーであると。
——確かに、スープだけ飲んでも旨いし、具だけ食べても旨いし、合わせて食っても美味しいと。
福原:それぞれから出汁は出ているから混ざり合っているんですよ。
——確かに、これは見出しに使えそうです……!
安野:見出し出ましたね!(笑)
あと私は、『シンデレラガールズ』って、ひとつの大きなユニットじゃない気がするんです。
だから全体としてアイドルグループとしての印象を整える必要がないというか。こういう風に振舞ったほうがいいという決まった事柄もないし、一人一人が生きている人間、生きているアイドルとして向き合っていった結果、すごく尖ったごった煮になったんじゃないかなと。それが魅力ですね。
——勉強になります……! また、ライブももちろん『シンデレラガールズ』魅力的だと思います。ライブのすごいところはどう考えていますか?
安野:まず愛がすごい(笑)。本当に愛で回っているなと思うんですよ。
応援するプロデューサーさんも、ステージに立つ私たち演者も、ステージや演出を作るスタッフさんも、本当にアイドルに愛情と信頼を寄せているんです。
その三方向からの愛と信頼の矢印がステージ上で綺麗に交差することで、そのアイドルが本当にステージ上に存在できている気がします。私たち三者が相見えるライブのステージ上にしかない奇跡が、きっと生まれているんじゃないでしょうか。
福原:作っている私たちは、「これは感動するな、やばいな、これは可愛いなぁ」とか酔いしれているわけではなくて、ただただ自分たちの届けようとしているものが大好きなんです。
モニターで他の人のパフォーマンスを見たり、自分たちがパフォーマンスをする側だけど、お客さんとして見れたらどんなにいいだろうって思いますね。
客席から見たいなという瞬間ばっかり。きっと私たち二人だけが思っている訳じゃなくて、もしかしたら演者みんなが思っているんじゃないかと。キャストですら観たいライブです。
安野:好きすぎて歯止めが止まらない。そんな愛情で回っているコンテンツ(笑)。もう勢いが止まりませんね。
——せっかくお二人揃ったのでお互いに聞いてみたいことはありますか?
安野:凛ちゃんと出会ってからの時間がだいぶ長くなる福原さんですけど、出会って何年くらいになるんですか?
福原:今2019年ですよね。7年くらいかな。
安野:一人のキャラクターを7年も演じるって、この仕事をしていてもなかなかないですよね。アイドルを実際に背負って、凛ちゃんと一緒に歩いてくる7年間で、凛ちゃんから影響を受けて変わったところはありますか?
福原:そうだなぁ。凛も私も一本気なところとか、猪突猛進型なところが似ているんです。
でも7年の間に周りを見て、ちゃんと自分が立たされている状況を理解したり、周りの子を見ることもできるようになりました。
だから、私もそれを見習わなきゃと思いますね。凛がこんなに周りを見ていて、私はこんな視野狭いままだったら絶対にいいわけがないと思うんです。
以前に比べたら、周りに委ねることができるようになったし、柔軟性は凛と一緒に過ごすことで身に付けさせてもらったというか、育ててもらった感じがしますね。
安野:素敵な話ですね(笑)。プロデューサーに甘えていいんだよ〜。
福原:(笑)。じゃあ私からの質問ですね。私、やすきちさんの歌がめちゃめちゃ好きで。
歌声自体に、すごく味があるので、どうやって歌をうまくしていってるのか聞いてみたいです。
安野:わ〜嬉しい(笑)。でも、元々私は、自分の声質に特徴がないと思い続けて生きてきたんですよ。歌の練習をしていても、何かひとつ特徴が無いなって、ずっと思っていたんです。
夏樹と出会って、確かに私は歌に関して殻を破ることを教えてもらえたかもしれません。
ロックはあまり聞いたことがなかったんですけど、夏樹が歌いそうな歌を知りたくていろいろと聞くようになったんです。
「こんな歌い方があるんだ。夏樹はきっといろんな音楽を聴いて、彼女なりの歌い方にたどり着いたに違いない」と自分なりにも試行錯誤して、今の歌い方に辿り着いた感じかな。
福原:めっちゃいい話……。
安野:最初の時、夏樹役に決まって「Rockin' Emotion」を一週間後くらいに歌ったんです。その時は収録に時間がかかりましたね。強い歌い方も分からなくて、1回声が駄目になって1時間くらいお休みしてからもう1回頭に戻って録ったりしていましたね。
それが夏樹と共に歩む時間を経て、私自身の歌い方は昔と今とで変わったなと思います。尖ってきた(笑)。
夏樹ならこうするかなっていう歌が頭の中には鳴っていて、その表現を未熟なりに試行錯誤して選び続けてきたら、自分のイメージする夏樹の歌に近づいてきた感じはあるかもしれません。導いてもらっていますね。
——夏樹に導いてもらっている、ですか。
安野:こういう歌い方をするようになって、「安野さんはけっこうハスキー成分があるね」って言われるようになったんですよ。それまでは気づかずに、指摘されることもなくて。
その枯れ感がたまに出るのがロッカーっぽくていいねと褒めてもらえたりして、私の中にも僅かなロック成分があったんだと嬉しくなりますね(笑)。
夏樹と出会ってなかったら絶対に知らなかった歌の表現を教えてもらいました。
福原:目覚めさせてくれたんですね。
安野:夏樹に感謝です。
——やっぱりお二人ともなるべくしてなったんですね。ではそろそろお時間です。最後に、これからもずっと一緒に付き合っていく自分が演じているアイドルに一言メッセージをいただければと思います。
安野:じゃあお手紙みたいに(笑)。
「夏樹へ。出会ってからこれまで一緒に歩んできてくれて本当にありがとう。
元々私も大好きな『シンデレラガールズ』だったけど、出演が決まってから今日まで、ライブだったり初めての体験が本当にたくさんあって、正直、夏樹とじゃなかったら、夏樹に引っ張ってもらえなかったらやって来れてないと思います。
夏樹に出会ったのは遅かったかもしれないけど、あなたと過ごしてきた時間が本当の意味で私が『シンデレラガールズ』と共に見た景色だし、宝物の時間です。
これからも隣で胸を張って走れるように頑張るから、どうぞこれからもよろしくお願いします」という手紙を書いてきました(笑)。
——ありがとうございます。では、福原さんお願いします。
福原:凛へ。出会った時はこうなるとは、まさかこんな形に作品が大きくなってアイドルもたくさん声がついて、こんなに大きなライブをさせてもらえるとは思ってなかったよね。
この作品でいろんな意外なこととか、「まさかそんなことを任せてもらうなんて!」とか、ビックリするようなことが本当にたくさんあって。
ビックリしながらも凛と一緒に、できるだけ柔軟に、凛だったらこうやるのかなっていうのをしっかり胸に一緒に頑張ってきたね。
これからも多分、まだまだビックリするようなことたくさんあると思うけど(笑)、でもこれまで二人でいた時間と、凛との絆を信じて一緒に歩んでいこうと思っています。
いつも私も凛に引っ張ってもらってばっかりだけど、時々凛のことも引っ張っていけるように頑張っていくから、これからもよろしくお願いします。
——これからも楽しみにしております。インタビューは以上になります、ありがとうございました!
[インタビュー/石橋悠]
◆【第1回・藤原肇役:鈴木みのりさん&三船美優役:原田彩楓さん】
◆【第2回インタビュー・喜多日菜子役:深川芹亜さん&鷹富士茄子役:森下来奈さん&南条光役:神谷早矢佳さん】
1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。