『デビル メイ クライ 5』伊津野英昭ディレクター・河森正治監督インタビュー後編|『DMC5』が完成するまででの取捨選択
2019年3月8日に発売を迎えたPS4ソフト『デビル メイ クライ 5』(以下、DMC5)。本作は、全世界のゲーマーから圧倒的な支持を得るスタイリッシュアクションゲーム『デビル メイ クライ 』シリーズ待望のナンバリング最新作です。
そんな『DMC5』ですが、実はその主人公の一人である、ネロの使用する新たな力「デビルブレイカー」のデザインを手がけているのは、なんと『超時空要塞マクロス』シリーズなどで知られる、河森正治監督なんです。
2019年5月31日からは、東京ドームシティ Gallery AaMoにて、そんな河森監督のクリエイター歴40周年を記念した「河森正治EXPO」の開催も決定しています。
今回は、それらの発売及び開催を記念して、河森正治監督と開発を担当したカプコンの伊津野英昭ディレクターの異色の対談が実現。
後編は、伊津野ディレクターの好きな河森監督作品のお話や、『マクロス』シリーズの秘話など、今回も大ボリュームな対談となりました。
インタビュー前編はこちらから!
◆『デビル メイ クライ 5』伊津野英昭ディレクター・河森正治監督インタビュー前編
伊津野ディレクターの心に刻まれた河森作品とは
――『DMC』シリーズといえば、スタイリッシュな動きが特徴ですが、ある意味、ロボットアニメのギミックが展開する時とか、『マクロス』シリーズでミサイルを撃ち落とすシーンなんかも、スタイリッシュさと通じる部分があるのかなとも思いました。
河森正治監督(以下、河森):撃つ前の段取りのカッコ良さですよね。スピード感とキメポーズのメリハリというか。
絵的なメリハリってすごく大事で、これがないとズルズル行ってしまう。昔のハリウッド映画とかがそうで、決めポーズっていう概念がなかったんですよね。
伊津野英昭ディレクター(以下、伊津野):15年くらい前に、アメリカのスタッフを使って『DMC』を作り始めた時、メリハリっていう言葉を翻訳できる言葉がなくて、決めや止めポーズの概念を伝えるのに苦労したのを覚えています。
そのあたりの違いは、海外の重さで斬る剣と、切れ味で斬る日本刀との差とかにも表れているなと。
――河森監督は、アニメで演出をされる際に、別の作品からカッコ良さのヒントを手に入れることはあるのでしょうか?
河森:同じメディアだと影響されて似てしまうのが嫌なので、近いところだと舞台や演劇とか、あとは離れたところなら武術系の取材にはよく出向きますね。
現実の武術って、高いレベルになるほど地味だったりするので、作品に取り入れるなら何らかの工夫が必要になるんですが、その「どうするか?」があるからこそ、ただの真似にならずに表現できるとも思います。
――最近の『マクロス』シリーズだと、変形の瞬間に静止せず、慣性を乗せた動きになっていると感じていて、すごく気持ちよくて好きです。
河森:手書きの時代は変形の間の形態を描くのがあまりにも大変だったので一瞬にしていたんですね。
それまでのロボットアニメって、変形はすべてバンクシーンというものがほとんどだったのですが、最初の『超時空要塞マクロス』(※1)では、他の作品と似せないために変形にバンクを一切使わなかったんです。なので一瞬で変形が終わるようになっていたんです。
今だとデジタルになったことで、変形の過程をある程度追って見せられるようになったのですが、その変形の最中にも運動はしているわけですから、慣性は乗るだろうという発想で、意図的に演出しています。やっぱりちょっとずつでも表現を変えていかないと、作る側も飽きてきてしまいますからね。
伊津野:流線型の機体が変形する時に、抵抗が増えてエアブレーキが掛かるっていうのもまたいいんですよね……!
※1:超時空要塞マクロス
1982年に放送されていたTVアニメ。ロボットアニメにSF、ラブコメ、アイドルという若者文化を取り入れ、『機動戦士ガンダム』や『宇宙戦艦ヤマト』と共にアニメブームを牽引した。河森氏は原作メンバー・メカニックデザイン・絵コンテ・監修などを多岐に渡る分野を担当し、中核スタッフの一人として活躍していた。
――ガウォークに変形しながら減速する一連の動作ですね。これまでのお話を聞いていて、伊津野さんが河森監督のファンだということは伝わってきたのですが、とくに思い入れが深い作品はありますか?
伊津野:やっぱり『超時空要塞マクロス』ですね! 当時、オープニングのバルキリーの変形シーンをコマ送りで切り抜いて、どうやって変形しているのか真剣に考えたりしてました。
――それは……かなり筋金入りのファンですね(笑)。
伊津野:何しろ、当時は情報が手に入らなかったんですよ。プラモデルとかも完全変形できるものはありませんでしたし。
小学校6年生の1年間、「ここは絶対機首なんだけど、どうやったらこの位置にくるんだ!」っていうことばっかり考えていたのを覚えています(笑)。
――手書きの頃は、どうやって変形しているかのプロセスがアニメを見ているだけではわかりにくかったんですよね。それが『マクロス ゼロ』や『マクロスF』で、「こんな複雑な変形の仕方をしていたのか!」と知ることができたというか。
河森:じっくりと変形シーンを見せたのは、『マクロスゼロ』が初めてでしたね。あれはデジタルになったからできことで、これまでできなかったことをやってみようという狙いがありました。
伊津野:まさに『マクロス ゼロ』も、コマ送りしながら見ていました(笑)。VF-25の方は、まだ変形過程が公開される前に、アニメ雑誌で変形途中のプロセスの絵が乗っていたことがあって、一時期それを壁紙にしていましたよ。
――そこまでのファンとなると、河森監督からのデザインが上がってくる度に……。
伊津野:もう楽しくてしょうがないですよ。一番最初にお仕事をお願いしにいった時には自分の宛名でサインも書いてもらいましたから(笑)。
ただ、それでサインをいただいた後は「ここからはファンではなくお仕事のパートナーとしてよろしくお願いします」と、改めて挨拶させていただきました。
河森:確かに、そんなこともありました(笑)。
河森監督から見たカプコン
――河森監督から見て、カプコンさんの開発チームへの印象というのはいかがでしたか?
河森:カプコンさんとお仕事をさせていただいたのは『超鋼戦紀キカイオー』(※2)が初めてだったのですが、その頃からものすごく柔軟性が高い会社だという印象を受けています。
何か提案した時に無理という答えがほぼ返って来ないんですよ。「まずはやってみよう」という、チャレンジ精神にすごく溢れている方々だなと。
なので一緒にお仕事していて楽しいですし、やりとりのキャッチボールとかもやりやすいですね。その分、つまらないものを出すわけにはいかないというプレッシャーもありますが(笑)。
伊津野:僕らとしても、これだけ苦労してデザインしてもらったデビルブレイカーをつまらないと言われるわけにはいきませんから。できる限り面白いものには仕上げたつもりです。
※2:超鋼戦紀キカイオー
アーケードで稼働、後にドリームキャストで発売された対戦格闘ゲーム。ロボット同士が1対1で格闘戦を繰り広げる異色のゲームで、歴代の人気ロボットアニメを彷彿とさせるバリエーション豊かなロボが登場する。河森氏は企画・設定・メカニックなどを担当している。
――『DMC5』はプレイさせていただいていますが、めちゃくちゃ面白かったです。
河森:ウチの会社でも、ハマっている人たちが何人かいるみたいです(笑)。女性スタッフにも評判がいいみたいで。
伊津野:元々男性には刺さるように作っているつもりなのですが、女性の方にも楽しんでいただけているのは、男の子がハマるシチュエーションを、女の子がハマるキャラクターでやったというのが良かったのかもしれないな……と、今話していて思いましたね。
――『DMC』シリーズって、本質は昔ながらのアクションゲームというか、かなりストイックな楽しみ方が強いシリーズで、本作もそれは変わっていないと思いました。ただその一方で、本作はこれまで遊んだことのないプレイヤーも最後までクリアできるように、間口が広く作られているなという印象も受けました。
伊津野:実はそこは結構後付けの部分で、まずはシリーズファンに満足してもらえることを最優先にして作ったのが『DMC5』です。
その上で、なるべく多くの人がゴールまで辿りつけるような道筋を用意してあげる(※3)というのは、今回力をいれてやった部分ですね。
ただ、それでも本質的に難しいゲームであることには変わりないので、どのくらいの人に諦めずに楽しんでもらえるかという不安はあります。うまくなるためには、どうしても練習が必要になりますから。
※3:ゴールまで辿りつけるような道筋を用意してあげる
本作には誰でもカンタンにコンボが繰り出せる「オートマチックアシスト」をはじめ、ゲーム中に入手できるオーブを消費して、いつでも途中からコンティニューできるよう、初心者向けの配慮が多く用意されている。
また、ボスの特定の攻撃をガーベラで反射できたり、バスターアームでの特殊なカウンターが隠されていたりと、手慣れたファンが攻略法を発見する楽しみも沢山ちりばめられている。
――最初の本格的なボス敵な存在であるゴリアテにはかなり苦労しました。
伊津野:そういう苦労を、頑張って乗り越えた時の楽しさというのを思い出して欲しくて作ったゲームでもあるんです。練習しないとなかなか面白くならないというのは、ちょっとスポーツにも通じる部分があるのかなと。
ただ、アクションが苦手な方にも、別の方法を探すことで最終的にはクリアできる道筋は用意したつもりなので、是非諦めずに挑戦していただきたいです。
――今回はデビルブレイカーがあるので、プレイヤーによって攻略法も大きく変わってきそうですよね。
伊津野:そこは狙って作った部分でもありますね。「俺はこれで突破した」「こっちの方が楽だったよ」みたいに、各自バラバラの方が盛り上がると思いますし、どのデビルブレイカーをもっていくのかについてもプレイヤーの色が出るので、皆さんの実況プレイを見るのが楽しみなんです。
河森:そういう意味で、ブレイカーを8本分をお願いしてもらったのは良かったですね。これが1本に集約しなければいけないとなったら、削ぎ落とさないといけないアイディアが多くなっていたと思いますから。8本あったことで、いろいろなアイディアを盛り込めましたね。
▲攻撃の反射や咄嗟の姿勢制御を可能とするデビルブレイカーであるガーベラ。リフレクターを支える円形のパーツの中央ではなく、円の下側を腕が通るような構造になっているのがこだわりのポイントで、ネロが腕を上げた状態でも綺麗な円形に見えるような工夫がされている。
なお「ガーベラ」は花の形に似ていることからの命名だが、ブレイクエイジ(必殺技)の名称は「ステイメンレイ」、DELUXE EDITIONに収録されているガーベラの別バージョンの名称は「GP-01」と、河森監督ファンならクスッとするような小ネタが隠されている。
河森監督とゲームの意外な関わり
――河森監督は多数のゲーム作品に参加されていますが、ゲームとアニメでデザインの傾向の違いはあるのでしょうか?
河森:初めてゲームのお仕事をさせていただいたのは、『アーマード・コア』(※4)からなのですが、3Dゲームの場合、アニメとは違って、操作するプレイヤーから見える「背中側から見たキャラクター」を意識しなければいけません。
アニメーションの場合は一番見栄えのいいアングルを想定したデザインができるのですが、とくに本作のようにカメラを自由に操作できるゲームだとそれは難しい。
なので実際のゲームプレイ時や、アクションを行わせた時にどうすれば見栄えがよくなるかということは気にしますね。
あとは、繰り返し何度も見ることになるのもゲームの特徴かなと。アニメだと、このワンショットのためだけにデザインを考えることもありますが、ゲームでは飽きが来にくいというのが大事なのかなと。長時間見ていると、新しい発見ができたりすると面白いですよね。
※4:アーマードコア
1997年にプレイステーションで第一作が発売された、フロム・ソフトウェアのロボットアクションゲーム。膨大な種類のパーツから自分の好みのロボットをカスタマイズして自由に動かせるのが特徴で、操作方法が非常に複雑なことでも知られる。河森氏は第一作から現在まで、シリーズを通してメインメカニックデザインを担当している。
――とくに『DMC』は、敵のモーションを見ることが重要なゲームなので、最初の頃はなかなかデビルブレイカーの細かいアクションに気づくのが難しそうですよね。逆に、うまくなって余裕ができるようになってきたプレイヤーは、実はかなり細かいギミックが仕込まれていることに気づけるようになると。
河森:そういうことですね。『DMC5』もバックビューが基本になるので、背中からできるだけはみ出すようにギミックを工夫しています。
――これはプレイヤーとしてもクリエイターとしてでも良いのですが、河森監督個人としてはゲームにまつわる思い出はありますか?
河森:僕はトランプだったり野球盤だったりのアナログゲームから遊び始めて、関数電卓を使ったゲームが出てきた頃からゲームを遊んできている人間なんです。
ゲームの凄まじい速度で進化していくプロセスを目の当たりにしてきているので、時代とゲームの進化というのがリンクしているように感じていますね。
ただ、ゲームが家庭用に持ち込まれた頃には、仕事の方が忙しくなっていたのもあり、クリエイターとしては関われても、あまりプレイはできていないのが心苦しいです。
伊津野:ファミコンが出たのが1983年、『超時空要塞マクロス』の放映が始まったのが1982年で、ほぼ同時期でしたからね。
河森:ただ、アーケードゲームの時代は結構遊んでいて。
最初の『マクロス』をやった時、横浜の実家から杉並のスタジオまで通っていたんですが、片道二時半かかるにも関わらず、まず大学で授業に出て、途中渋谷のゲームセンターでプレイしてから仕事に行ったりもしていました(笑)。
『ゼビウス』(※5)とかはとくに好きで、店内の上位10位くらいのランキングにずっと入っていたんですが、それを抜かれた時に「俺の時代は終わったな」と思いましたよ。
一同:(爆笑)。
伊津野:個人的に河森さんがすごいのは、ゲーム文化を一切敵視されていないことだと思うんです。ゲームとアニメは娯楽としては競合分野でもありますし、ゲームに対してあまり良い感情をもっていないクリエイターの方も少なくないのも事実です。
河森:そのあたりは、僕はプレイステーションの立ち上がりの時期に、『オメガブースト』(※6)の前身となる企画や、『アーマード・コア』と、クリエイターとして関わらせてもらったのが大きかったのかもしれません。
やっぱり、開発から噛んでいるタイトルっていうのは燃えるんですよね。『DMC5』もそのタイプで、企画の立ち上がりからゲームが出来上がっていく工程を見られるのはすごく楽しいんです。
※5:ゼビウス
1983年に、ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)がアーケード向けにリリースした2Dスクロールシューティング。当時の常識を打ち破る美しいグラフィックに、作りこまれた世界観で多くのゲーマーを魅了した。後にファミリーコンピューター(ファミコン)向けにも移植され、ファミコンブームを牽引した一作品にもなった。
※6:オメガブースト
1998年にソニー・コンピューターエンターテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)から発売された、プレイステーション向け3Dアクションシューティングゲーム。『グランツーリスモ』で知られる、ポリフォニー・デジタルが開発を担当した、貴重なロボットゲーム。河森氏はCG監修・メカデザインといった形で関わっている。
――河森さんは武器も一緒にデザインをされることが多いのではないかと思うのですが、とくにバルキリーは変形機構の中に組み込まれることもあり、かなりデザインが制限されるのではという印象があります。
河森:そうですね。『マクロス』の場合はやっぱり空気抵抗というのが前提になるので、戦闘機形態の時に空力的に無理のないガンポッドという形を選択しています。
ただ、それだけだとやっぱり寂しいので、銃身が伸びるギミックや冷却穴を開けたりするわけですが、人型ロボットの武器自体がインフレしていて種類も多いので、とくに銃とかはどんなに工夫してもどこかで見たようなデザインになりやすいですよね。
そこは自分にとっても課題になっている部分です。
――その点でいくと、武器とは少し違うのですが、ピンポイントバリアパンチ(※7)の発想には「そんな使い方もあったのか!」と本当に驚かされました。
河森:あれはいろいろ考えましたね。ただのパンチだと殴ったら壊れますけど、ピンポイントバリアをつければどうにか殴れるだろうっていう。
伊津野:あれはやっぱり、どうしてもパンチがしたかったからなんですか?
河森:そうです(笑)。理屈でいうなら、マニュピレーターをつけなければいいんですが、マニュピレーターだと壊れそうだけど、なぜかドリルだと大丈夫なように感じるのも一種の刷り込みですよね(笑)。
けど、そのよくわからない刷り込みとリアリティをどう組み合わせるかというのも、エンターテイメントの醍醐味じゃないかなと。
※7:ピンポイントバリアパンチ
『マクロス』シリーズに登場するYF-19、YF-21が使用した攻撃。機体全体ではなく、被弾箇所にあわせて小規模なバリアを展開する「ピンポイントバリア」を応用した武器で、拳付近にバリアを展開させながらパンチを行うことで、マニュピレーターの強度を高めている。
『DMC5』は、自分たちが楽しいと思える要素だけに注力した作品
――せっかくの機会ですので、お二人がお互いに聞いてみたいことがありましたら。
河森:個人的に聞いてみたかったんですが、今のゲーム業界って、日本以外だとどのあたりの市場が伸びているんでしょうか?
伊津野:やっぱり、今勢いがあるのは中国や韓国などのアジア圏ですね。『DMC』シリーズ自体は、アジアに限らず、いろんな地域でまんべんなく売れるタイプのゲームだったのですが、中でもアジア圏の勢いはすごいものがあります。
――そのあたりのお話は、アニメ業界にも通じるものがあるのではないでしょうか。
河森:それはありますね。ただ、中国の場合、進出するタイミングによってうまく入れる時と入れない時があって、なかなか難しいですね。少し経ったら、前回話した時と事情がまったく変わっていたということも少なくないですから。
――最近は『DMC5』のような純粋なステージクリア型のアクションゲームというのは少なくなってきている印象を受けるのですが、ゲームデザインを従来作から大きく変えるという迷いはなかったのでしょうか?
伊津野:それは『DMC』ファンからは望まれていないであろうという判断ですね。
シリーズファン以外の人たちからは、例えばオープンワールドにしたらいいとか、COOPプレイを導入したらいいとか、事務所に来る依頼をこなしていく形式にしたらいいとか、いろんなアイディアをいただくんですけど、皆が『DMC』で楽しんでいるのはそこではないだろうと。
とにかく戦って戦って、強敵を倒すまでの創意工夫と、それを乗り越えた時の達成感こそが『DMC』の最大の魅力だと思うんですよ。なので今回は、意図的に探索要素も抑え目にしていて、かなりバトルだけに特化したゲームデザインになってるんです。
――確かに、プレイしていてもバトルの作り込みというのが尋常じゃないと感じていました。
伊津野:ゲーム作りというのは携わるスタッフも製作期間も無制限ではないので、今作はバトルに集中、特化させた方がいいだろうと判断しました。プレイヤーとしても、いかに戦闘を乗り越えるかに頭を使っているので、鍵の場所がどうたらだとか、行き先がわからないだとか、他のことを考える余裕もあまりないと思うんです。
河森:さっきのフォトリアルの話にもつながりますが、すべてのゲームがオープンワールドになっていくと、誰が作っても同じになっていって、作品同士の差別化というのがどんどん難しくなっていきそうですよね。
細かいゲームシステム的な差別化はできると思いますが、世界観的な部分も、皆が現実に寄せようとしていくとどうしても似通ってしまうでしょうから。
ある意味、この差別化という発想自体が、少し時代とズレているのかもしれませんが、今後どうしていくべきなのか難しいところですよね。
伊津野:ゲーム中にできることの選択肢を広げると、プレイヤーに面白くないこともさせられるようになってしまうというのが問題だと思っていて。
せっかく面白いことをいっぱい入れているのに、そうじゃない要素も入っていることで評価を落としてしまうのはすごく勿体ないなと。
なので今回は、自分たちがもっとも楽しいと思うところにひたすら注力して、そこをプレイヤーの皆さんにも楽しんで欲しいという気持ちで、割り切って作りましたね。
河森:シリーズものの場合、どれくらい前作から変化をつけるかというのは難しい部分ですよね。僕の場合は、新しいことをしたがるタイプなので、逆にユーザーさんやクライアント側から、「これ以上は変えないでください」と止められることが多いです(笑)。
伊津野:河森監督の一ファンとして意見を述べさせてもらうなら、そこはやっぱり挑戦して欲しいです。きっと河森さんがそういう発想を思いついた時が、一番作品面白くなると思いますし。そこからしばらくしたら、また従来の路線っぽいものも作っていただいて……(笑)。
――それは完全に同意です! それでは最後に、『DMC5』のプレイヤーの方々へと、5月31日から開催される「河森正治EXPO」に関するメッセージをお願いします。
伊津野:河森さんや僕ら開発チーム一同、いろいろな人間の想いがいっぱい詰まっているゲームです。とくにこのインタビューを読んでくれた皆さんには、普通にプレイしている時にはなかなか気づかない、細かい部分にも目を向けてもらいながら、楽しんでいただければと思います。
河森:アクションの爽快感はもちろん、リアルタイム映像作品としての素晴らしさもあり、とにかく遊んで楽しいゲームになっているので、ぜひ細かい部分が見える余裕ができるようになるまで、やりこんでいただければと思います。
また今回はカプコンさんや伊津野さんの尽力もあり、デビルブレイカーのデザインを完成させることができましたが、自分がこれまで手がけてきた他の作品も、ほんとうに沢山の方々に支えられてできたものばかりです。
デビルブレイカーを8本デザインするだけでも、これだけのやりとりがあるくらい、試行錯誤しながら作品作りをしてきていて、「河森正治EXPO」では、そういう40年間のその開発プロセスも可能な限り展示しようと思っています。興味のある方は、是非とも足を運んでいただければ。
――ありがとうございました。
ゲームとアニメという異なる分野で活躍する二人のクリエイターの、異色の対談となった今回のインタビュー。
とくにデビルブレイカーのデザインに関する話題は、ここではすべてを書ききることができなかったほど、次から次へと飛びだす制作時の思い出を、本当に楽しそうに語られている姿が印象的で、河森監督と伊津野ディレクターが、非常に熱い想いの元『DMC5』の製作に関わっていたかを伺い知ることができました。
5月31日から開催予定の「河森正治EXPO」では、そんな『DMC5』のデビルブレイカー関連の展示も行われ、これまで河森監督が関わってきた様々な作品が一堂に会する必見の内容。
筆者も発売中の『DMC5』をプレイしつつ、開催を首を長くして待ちたいと思います。
[インタビュー/米澤崇史 石橋悠]
「デビル メイ クライ 5」商品内容
■通常版
【パッケージ版】 6,990円+税
【ダウンロード版】 6,480円+税
■デラックス エディション(ダウンロード版のみ販売)
7,400円+税
<PC(Steam)>
7,436円+税
◆「デビル メイ クライ 5」公式サイト
◆「デビル メイ クライ 5」公式Twitter
『河森正治 EXPO』イベント情報
■開催日
2019年5月31日(金)~6月23日(日)
■開催時間
10:00~20:00(最終入場 19:30)
※期間中毎週月曜10:00~19:00(最終入場 18:30)
※5月31日(金)は13:00開場
■会場
東京ドームシティ GalleryAaMo(ギャラリーアーモ)
■入場券
2019年3月23日(土)より販売開始
【券種】
一般入場券 前売1,800円/当日2,000円
K-40シアター付き入場券 前売2,200円/当日2,400円
※「K-40 シアター」は、新作映像を含む河森正治 EXPO限定の特別映像を上映します。
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