この記事をかいた人
- 小澤めぐみ
- 営業職を経験後、記者業務に携わりフリーへ。主に男性声優、漫画、アニメなど浅く広く…今はもっぱら藤沢朗読劇中毒
『少女革命ウテナ』『輪るピングドラム』など数々のヒット作を生み出している幾原邦彦さんが監督を務める新作オリジナルTVアニメ『さらざんまい』が、2019年4月よりフジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送。
主人公・矢逆一稀(やさかかずき)を村瀬歩さんが演じるほか、久慈悠(くじとおい)役・内山昂輝さん、陣内燕太(じんないえんた)役・堀江瞬さんらメインキャストに加え、諏訪部順一さん、宮野真守さん、細谷佳正さんらも出演しています。
また、幾原監督と言えば、独特なビジュアルが癖になる作品が特徴的。もちろん、その独自のセンスは『さらざんまい』でもいかんなく発揮されています!
本稿では、村瀬さんと堀江さんにインタビューした模様をお届け。キャラクターの印象や作品の感想、魅力について伺いました。
ーーまず、出演が決まっての感想をお聞かせください。
矢逆一稀役・村瀬歩さん(以降、村瀬):もともと幾原監督の作品がすごく好きで、オーディションを受けさせていただいた時に「これは絶対に俺が取る!」みたいな思いで臨ませていただきました。
オーディションは、一稀と燕太、悠を全部受けたんですけど、誰が一番しっくりきたかという話になり、一稀かなと思っていたので、一稀に決まってうれしかったですね(笑)。
参加させていただくことが夢のようなことなので、自分がこの先、これよりうれしいことがあるのかと困惑中な感じです。
自分が関わった作品のオンエアチェックはしますが、それ以外で自発的にアニメをあまり見ることが少ない中で、幾原監督の作品が猛烈に好きで。繰り返し何回も見ているんです。
幾原監督とご一緒できるなんて、うれしいというか、あっていいのかなという感じでビックリです!
陣内燕太役・堀江瞬さん(以降、堀江):幾原監督の作品は、僕も中学生の頃に初めて見た時からずっと知っているので、すごい監督だという印象です。
そんな監督の作品のオーディションを受けられて本当に嬉しくて。僕の中で記念受験という感じで、自分がその作品に出ることまでは全然想像していなくて……。
しかも、受かったというお知らせを村瀬さんから聞いて。
村瀬:そうだ! 多分僕が一番最初に決定して、その時はまだ他のキャストが決まっていないということだったので、決まったら教えてくださいという話をして。
他の方も決まりましたとメールが来た時に堀江くんの名前があって、その日ちょうど現場が一緒だったんです。
堀江:そうなんだ!?
村瀬:そう。なので、堀江くんに、よろしくねという話をしたら「え?」みたいに驚いていて。
堀江:その時は本当と思わなくて、受け入れられなくて、実感が後からじわじわきたんですけど……。
僕も燕太がしっくりきたので、燕太役に決まってすごくうれしかったです。
ーー作品の世界観や台本を読んでの印象を教えてください。
村瀬:最初の印象は台本だけ読んだら、難しくて分からないなという感じですね(笑)。
基本的に会話で説明をしないんですよ。諏訪部さん演じる「ケッピ」により新しい単語が出てきた時に、みんながよく分かってないことを代弁してくれるキャラクターはいるんですけど、当然のこととして受け止めていくんです。
セリフから読み取れる情報はいろいろあるけど、台本だけだと整理の付け方が難しいなという印象です。それこそ、VTRを見て「そういうことか」と、答え合わせをしたりする感じです。
収録現場で「監督はこういうものを作りたいんだ」「こういうテーマにしているんだ」というのを伺ったり、1話ずつ演じながら段々と、じゃあこういう読み解き方にしていこうという感じで変えています。
堀江:村瀬さんも最初はそうだったんだと、今知って安心しました(笑)。
僕自身も第1話の台本をいただいて読んだ時に、「これどうしようかな」と思ったんですよ。この困惑と最終回まで向き合っていかなきゃいけないのかなと、台本を読んだ瞬間に、すごいものに関わってしまったと、ある意味恐怖を感じました。
VTRを見たり、監督のお話を伺い、その最初の恐怖とか困惑というものが回を重ねるごとにどんどんなくなっていきました。
監督の考えが分かるようになってきてからは、台本を読むのが楽しくなりました。監督の頭の中がより身近に感じられるようになったというか。
村瀬:のぞいているよね。
堀江:そう。のぞき穴がだんだん広がっていくような感覚でしたね。
ーー実際に、監督からはどのようなお話があったんですか?
村瀬:テーマとして、「ミステリー」と「ギャップ」というお話をされていました。
ミステリーというのは、1話ごとに物語が展開していく中で、最後に「え?」となるような新しいことが出てくるところです。
その疑問も次のお話で解決するんですけど、また新しいことが出てきて、次の週で解決して……と続いていく、1週間それでやきもきするという展開です。
あと、意外と伏線が張られていて、後半になって気づくことも多いと思いますよ。
そして、ギャップというのは、ギャグ的なコメディラインのシーンとシリアスなシーンがあるところですね。
ーーお二人が演じられるキャラクターは、それぞれどのようなキャラクターですか?
村瀬:一稀は自己犠牲の精神が強くて、他の人と関わりたい気持ちがあるんだけど関われないみたいなアンビバレンツなものを抱えながら生きています。
その中で、いろんな出来事が起こって、彼がどう変わっていくのか、彼の周囲に対する関わり方がどう変わっていくのか、というのがメインのテーマになっています。
一稀を客観的に……(堀江さんの方を向いて)見てどう?
堀江:ちょっと面倒くさそう。
村瀬:そうだよね。すごく面倒くさいと思う。どこか放っておけない気はするから、燕太とか他の人が関わってくれるんだよね。
堀江:客観的に見たらもしかしたら、燕太が一番視聴者の気持ちとリンクする部分が多いのかなと思います。
基本的にその場その場で燕太が巻き込まれて、びっくりしたり悲しんだりするところが、視聴者の視点と重なる部分が多かったので。
その共感も途中からひっくり返ることもあるんですけど、キャラクターに最初に抱いた印象を信用してもらいたくないなと思います。
村瀬:ある意味ギャップだよね。
堀江:そうですね。たぶん印象が変わります。
ーーご自身のキャラクター以外で気になるキャラクターがいれば教えてください。
村瀬:悠ですかね。僕は比較的なんとなくセリフを言っていくとキャラクター性に気づくタイプの役者なんです。
悠に関しては見た目も、オーディションのセリフも「これ、うっちー(内山昂輝さんの愛称)じゃん」って思いました。これは内山くん以外は考えられないなと。
しかも、その話を音響監督さんと話していたら実際に内山くんに決まったんです。
内山くんの演技って、消えちゃいそうな感じがありながらも存在感がある不思議な雰囲気があるなと思うので、悠のお兄ちゃんとの関係性も怪しい感じが合っていていいですね(笑)。
堀江:僕は玲央と真武の2人組が気になりました。最初の台本を読んだ時に、1話はコメディタッチが多い中で、2人が出てくるところだけがやたらとシリアスに描かれていたんです。
例えば、TVのニュースが流れる場面があるんですけど、コメディに描かれているのに、取り上げられている内容がかなり残酷だったりするんです。
そこと関係しているんだろうなと思わせる登場の仕方をしていたりするので、その時からずっと気になっていて。謎めいた2人なので視聴者の方も「この2人はなんぞや」と思ってもらえると思います。
ーー浅草を舞台にしていますが、浅草といえばどんなイメージですか? 何か思い出などがあれば教えてください。
村瀬:スカイツリーですかね。実は浅草に行ったことないんですけど(苦笑)。
堀江:僕は、浅草の印象はいっぱいありますけど、実は行ったことない所がたくさんあるんです。
村瀬:花やしきとか?
堀江:花やしきは、撮影で行かせていただいたことあるんですけど、その時が初めてだったのでこういうところがあるんだなと思いました。
村瀬:そうなんだ。ジェットコースターの近くに建物があるんでしょう?
堀江:そうそう。ジェットコースターがスレスレを走ってるみたいな。
村瀬:面白いね。
堀江:僕的には浅草は、1人で気分転換に行くことがあって好きな街です。
アフレコではまだ絵が付いてなかったりするのですが、アニメを見た時に浅草をよく知っている人ほど没入感がすごそうだなと思います。
ーー作品にちなみ、実際に河童に遭遇したらどうしますか? また、河童にされたらどうしますか?
村瀬:まず写真を撮りますよね多分。で、売れるところに売るかな(笑)。
堀江:お金かぁ(笑)。
村瀬:お金になりそうかと(笑)。自分が河童になったらどうするだろう……まず、人間に戻りたいですね。河童のままじゃ仕事できないし、とりあえず自分を河童にした相手に問い詰めるかな。
戻れない時は仕方ないし、人間の世界にいたら見世物にされそうだから、河童として生きる。
堀江:確かに、お金儲けのことしか考えていない人間に捕まることもありますね……。僕もまずは写真を撮って。
村瀬:やっぱり写真だよね、その後ムービーだよね(笑)。
堀江:逃げないかどうかというところが気になりますけど、とりあえずTwitterに上げて1ネタ(笑)。
村瀬:だいぶバズりそうだけど。やっぱり売った方がいいよ、何だっけ雑誌に。
堀江:ムー? じゃあ、僕もお金欲しいので売ります(笑)。
ーーでは、好物のきゅうりとか使って捕まえますか?
村瀬:いや、きゅうりちらつかせてとか、そこまではしないです。
堀江:え、そこまではしないんですか?
村瀬:河童が超能力とか使って自分の体を爆発とかさせられたら、なんか怖い。
堀江:河童は意外とグロテスクな見た目してますし、何をするか分からないですからね。深追いはせず、売れそうだったら売ります。
ーー(笑)。では最後に、放送を心待ちにしているファンの方へメッセージをお願いします。
村瀬:今回久しぶりに幾原監督の完全新作ということで、関わらせていただいて本当にありがたいなという気持ちです。
物語のスケールの大きさも見どころなんですが、一稀を含め燕太、悠の人間関係も見どころです。
彼らを取り巻く環境が目まぐるしく変化していって、その中で彼らが絆やつながりを大切にするのかしないのか、したいのかしたくないのか、それを通して改めて、自分の普段の生活とか人との関わり方を考えさせられる作品でした。
監督の描く世界観もすごく面白いので、是非楽しみにしていただけたらなと思います。
堀江:僕自身お芝居をする側としても、見る側としても毎週毎週台本を見た時にすごくハラハラドキドキしながら、次の展開はどうなるんだろうと、気になりながら向き合ってきました。
本当にお話自体面白くて、幾原監督の作品がもともと好きだった人も、今まで触れてこなかったという人も、この作品はダイレクトに伝わってくる物語だと思っているので、ぜひ見ていただきたいです。
僕自身この作品を通して、普段見落としているかもしれないつながりというか、人と人との間の自分を中心にした相関図みたいなのを意識しました。
自分が気づいていないだけで、自分に対する周囲の心の機微なども考えさせられたので、この作品を通して皆さんの中で何か残るものがあればいいなと思っております。放送を楽しみにしていてください。
[取材・文/小澤めぐみ]
営業職を経験後、記者・編集業務に携わりフリーへ。男性声優を中心に、漫画、アニメ、外ドラ、BLなど浅く広く好奇心は一人前。飲食、旅行、音楽、(ヘタだが)写真撮影、話を聞くことも好きで、近年の自粛生活は苦痛。最近のお気に入りは『薬屋のひとりごと』『異世界でもふもふなでなでするためにがんばってます。』。王道モノから西東問わず歴史モノなど“ファンタジー”や“ミステリー”が好物。今はもっぱら藤沢朗読劇中毒
2019年4月よりフジテレビ “ノイタミナ”ほかにて放送
舞台は浅草。
中学2年生の矢逆一稀、久慈悠、陣内燕太の3人はある日、謎のカッパ型生命体“ケッピ”に出会い、無理やり尻子玉を奪われカッパに変身させられてしまう。
『元の姿に戻りたければ“ある方法”でつながり、ゾンビの尻子玉を持ってこい』ケッピにそう告げられる3人。
少年たちはつながりあい、ゾンビの尻子玉を奪うことができるのか?!
同じ頃、新星玲央と阿久津真武が勤務する交番でも何かが起ころうとしていたー。
監督:幾原邦彦
チーフディレクター:武内宣之
シリーズ構成:幾原邦彦/内海照子
キャラクター原案:ミギー
キャラクターデザイン・総作画監督:石川佳代子
コンセプトデザイン:柴田勝紀/松嶌舞夢
美術監督:藤井綾香 スタジオPablo
音楽:橋本由香利
原作:イクニラッパー
制作:MAPPA/ラパントラック
矢逆 一稀:村瀬 歩
久慈 悠:内山昂輝
陣内 燕太:堀江 瞬
ケッピ:諏訪部順一
新星 玲央:宮野真守
阿久津 真武:細谷佳正