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漫画「虫籠の錠前 BUG&BAT」成田良悟さん&どーるるさん対談

リスペクトと信頼が生んだ漫画「虫籠の錠前 BUG&BAT」! 成田良悟さん&どーるるさん対談

マスターには2つの可能性があった

――二兎とマスターが『虫籠の錠前 BUG&BAT』のメインキャラクターですよね。この2人についても詳しくお聞きしたいです。

成田:ドラマの方は男性キャラがメイン。男性同士のバディものになっています。なので、漫画は男女のバディものであり、ラブコメ要素を入れたものにしたいなと。なので、最初に女性キャラを考えました。そこで、透明になれるということを思いついたんです。

潜入工作もできるし、バトルもできる。強いキャラクターを想定したのですが、対となるキャラクターも超能力者だとドラマ版との差異がなくなるなと。そう考えて、2人の設定を考えていきました。

また、ドラマは予算の制約がありますが、漫画はそのような要素がないじゃないですか。なので、ど派手な超能力だったりビルが爆発したりとかそういったものに取り組みたいなと。

ただ、作画の手間もありますよね。ここに5万人の人間が集まっている! なんて設定作っちゃうと大変ですし(笑)。

どーるる:そうですね(笑)。

成田:なので、爆発だったり空を飛んだりは漫画という形で、ドラマとは別のベクトルで荒唐無稽なものを出してきたいと思いました。

ドラマだとマスターは完全に脇役ですよね。ほぼ喋らないキャラ。そんなマスターを実は超能力者たちとは別の系統で能力を持っている形にしたら面白いなって。

だから、WOWOWさんには2つご提案したんですよ。

まずは、寺生まれのTさん(掲示板サイトのコピペで度々出現する架空の人物。颯爽と悪霊を退治する謎の人物でもある)のようなイメージの霊能力者。すごく強い霊能力者で魂の色が見えるから、二兎が透明になっていても視える。

もう1つが、吸血鬼で赤外線みたいな感じで見えるから(二兎が)透明になっていても視ることができる。なんだったら、彼女が透明になっていることすら気付かない。

comicoのご担当者の方に「どちらがいいですか?」と聞いたところ、吸血鬼の方が話的に広がりもあるということで、後者に決まったんです。

実はタイトルに書いてあるんですけどね。『BUG&BAT』、1話でも「蟲は自らが餌となって……」というセリフのところにコウモリが描いてあったりとか。これが吸血鬼の暗喩になっていて、どーるるさんにすごくキレイに描いていただいたので、とても感謝しています。

マスターは人間の超能力者同士の細かい争いには、ほとんど我関せずというスタンス。でも、二兎に少し興味を持ってやり取りをしていく感じ。ここから2人の関係がどう変化していくのかについて、漫画で描いていきたいと思いましたね。

――どーるるさんはキャラクターをはじめて見た時にどう思いましたか?

どーるる:とにかく二兎ちゃんがとても可愛いと思いました(笑)。ドラマで二兎ちゃんを演じている萩原みのりさんの写真を見たり、プロットを合わせて読むと本当に「可愛い」の一言で。

第1話で二兎ちゃんはすごくシリアスに登場しますよね。なのに、マスターが絡むとただの女の子になってしまったりとか。マスターは能力が違うというか種族が違うので、全然違う角度から二兎ちゃんに言葉を掛けてくるのが彼女にとっても新鮮に感じるでしょうし。

ただの恋愛だけじゃなくて、友情もあったり、信頼関係の構築もあったり。2人の場面は描いていてとても楽しいですね。

成田:それは私も嬉しいです。どーるるさんが私の文章を漫画にする時にこだわっていることはどんなことなんですか?

どーるる:二兎ちゃんとマスターが2人で居るシーン。表情の変化にはこだわっています。先程から二兎ちゃんのお話ばっかりですね(笑)。

成田:(笑)。

どーるる:マスターから予期せぬ一言をもらったときの彼女の反応を、絵だと表現しやすいので。この時、「内心疑っているだけなのか、それともちょっと好意があるのか」だったり。眼の表情に変化を入れていることも多いです。

後は、色でも表現しています。彼女の心理状況に応じて、光の彩度を上げたり、下げたりしているんです。

成田:なるほど。

どーるる:『comico』は縦読みじゃないですか。なので、視覚的にもカッコよく魅せられるように試行錯誤しながら取り組んでいるんです。

私、縦読みならではのコマ割りってあると思っていて。見開きではない顔のアップだったり、横書きとは違う演出だったり。成田先生からいただいたプロットで、ここのセリフは重要だと思ったら……違ってたら申し訳ないですけど。

成田:いえいえ。そんなことないですよ。

どーるる:ありがとうございます。私が重要なセリフだと解釈したところは、できるだけキャラの表情が見えるようなコマ割りにしていますね。

逆に私が描いた漫画を見て、成田先生はいかがですか?

成田:まず、漫画が縦に進んでいくのはとても新鮮ですよね。最近、ようやく大手の漫画サービスでも縦書きが増えてきましたけど、『comico』さんは草創期からそのスタンスで漫画を発信していて。どーるるさんもそこで培った演出や力があるなと。

どーるるさんの漫画は読んでいて、キレイに物語が入ってきます。指を動かすとそのまま頭の中にスルスル入っていく感じ。見開きではない、縦書きならではの描き方がすごく上手。

私も漫画原作はいくつか担当していますが、縦書きはこういった演出があるんだなぁと新しい発見になっています。

そうした前提のコマ割りや演出があってこそ、『虫籠の錠前 BUG&BAT』はものすごく面白くなっている。本当に漫画の読み方の時代も変わったなと。色々と考えさせられますよ。様々な形式が出てくるのはいいことですよね。私も参加できて嬉しいなって思っています。

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