『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』日本語吹き替え版スパイダーマン役・榎木淳弥インタビュー|人間臭さが「親愛なる隣人」と愛される理由
映画『スパイダーマン』シリーズの新作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』が2019年6月28日より世界最速で全国公開スタート! マーベルヒーローたちが集結し、壮絶な結末となった『アベンジャーズ/エンドゲーム』のその後を描いた作品で、スパイダーマンの心の葛藤と成長、そして新たな戦いが繰り広げられます。様々なスーツや新ヒーローの登場も見どころです。
そんな注目作の吹き替え版で、主人公のスパイダーマン/ピーター・パーカーを演じた榎木淳弥さんに本作の見どころを語ってもらいました!
マーベル作品を知ったきっかけはゲーム!?
――まずマーベル作品に初めて出会った作品を教えてください。
スパイダーマン/ピーター・パーカー役 榎木淳弥さん(以下、榎木):小学生の頃、マーベルのヒーローがたくさん登場するゲームをやっていたのが、スパイダーマンやキャプテン・アメリカを知ったきっかけでした。
――アニメや実写、コミックからではなく、ゲームが入口というのは珍しいですね。
榎木:今も意識的に過去作は見ないようにしているんです。最初の『スパイダーマン』シリーズと『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ、そしてMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)シリーズや『スパイダーマン:ホームカミング』と演じている俳優さんも違いますし、「スパイダーマンとはこういうもの」という固定観念を持ちたくなかったんです。
スパイダーマンの収録は毎回ハード。反響の大きさに作品の影響力を実感
――『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』からここまで5回に渡って、スパイダーマンを演じてきた感想は?
榎木:毎回、収録はハードですね。(スパイダーマン役の)トム・ホランドさんが畳みかけるように演じていらっしゃるので、それについていくのに必死です。
あと業界の方から「『スパイダーマン』の吹き替えをされているんですよね」と声をかけられることがすごく多くて。その影響力と、やはり世界中で知られ、愛されている作品なんだなと改めて実感しました。
――外画の吹き替えと、アニメの収録との違いやおもしろさ、難しさは?
榎木:お芝居をするという点では、どれも人間をちゃんと演じるという部分が根底にあるのでアニメも外画も舞台のお仕事も変わらないと思います。一番違うなと感じるのは原音があること。
画面上で演じている方のお芝居にある程度沿ってお芝居をしなくてはいけないし、タイミングやセリフの強弱も自分の普段の感覚とは違うところでやらなくてはいけないので、そこを感情でどう表現できるかという綿密なプランが必要になってきます。
ヒーローを楽しめるようになったピーターも『エンドゲーム』のショックをひきずる
――ここまで演じてきたなかで、スパイダーマンやピーターの成長や変化を感じた点はありますか?
榎木:僕が最初に演じた『シビル・ウォー』の時はまだぎこちなさを感じました。ヒーローになりたてで、浮足立っているように見えたけど、『ホームカミング』になるとヒーローをエンジョイしている、自分がスパイダーマンであることを楽しんでいるように感じています。
今回の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』では『アベンジャーズ/エンドゲーム』後の世界で、つらい経験を経てからのお話なので、今まで通りヒーローでいることを楽しんでいるものの、後悔や何かを抱えている様子がお芝居からも感じられて。すべてを発散するのではなく、一歩引いているようなシーンが多かったかなと思います。
――『エンドゲーム』は世界を救ったものの、失ったものも大きかったですよね。
榎木:だから少し休みたいと思ったんでしょうね。あとは夏休みということもあって、旅行に出かけるわけですが……。ヒーローになったとはいえ、ピーターはまだ16歳ですし、同級生たちのように普通の高校生活を楽しみたいという気持ちもわかります。
でも世間は「次のアイアンマンに」と求めてくるし、新たな危機がやってくるわけで。周りの期待と状況に、自分の気持ちが追いついていない様子も見えますし、ショックな出来事にトラウマを抱えているシーンもあります。
演じる時の表現はヒーローなので大きめに。
――ピーターに共感できる点はありますか?
榎木:ピーターは、自分が果たさなくていけない責任の重さについて心の中ではわかっていても、つらい経験を払拭するために「休みたい」「遊びたい」という気持ちが芽生えていますが、僕もそう思うこともあって。
役者の仕事はたくさんの人に喜んでもらえて、すごくやりがいがあります、みんなの期待に応えるために日々努力していますが、時々、疲れが重なると休みたい、充電したいと思うときもあるので、ピーターの気持ちがわかります。大人の僕でさえ、そうなので、高校生のピーターがそう思うのは自然なことなのかなと思います。
――演じるときに心がけたことや新たな発見はありましたか?
榎木:他の作品にも通じることですが、「あまり表現しすぎないこと」を心がけています。日常でも楽しんでいても100%その気持ちが表に出ることってなかなかないですよね。声の表現だと皆さんに伝わるように全力でやってしまいがちですが、そうすることでリアリティに欠けてしまうんじゃないかと最近思っていて。だから収録では抑えるところは日常のトーンで、声を出しすぎないように意識してやっていました。
でもこの作品ではディレクターさんから「大きめにやってもらったほうが表現としておもしろいんじゃないか」と指摘していただいて。確かにヒーローなので、普通のしゃべり方をしてもケレン味が出ないので、ピーターと同じように楽しんで表現したほうがわかりやすいし、日本人の感覚にもあっているんじゃないかなと。最初のリハーサルでは抑えていたけど、本番では出すところは強く出したり、時にはホランドさんよりも強く、大きく表現するシーンもありました。
――あと見どころのバトルシーンも熱量が高くて大変そうですね。
榎木:そうですね。更に今回は『ホームカミング』の時よりもかなり空を飛んでいる気がします。糸を使ってブンブン飛び回っている印象が強くて。収録も大変でしたが、何とかのどを壊さないように。日常シーンと戦闘シーンの順番を入れ替えてもらって、のどを温存しながら収録しました。
いろいろな場所でのバトル、セリフ数が膨大、様々なスーツが見どころ
――実際の映像をご覧になった感想は?
榎木:この取材の時点では完成版を見ていませんが、間違いなくおもしろい作品になっているなと。アクションシーンも前回よりもパワーアップしているし、ピーターが旅行に出て、その途中途中で戦っていくので、いろいろな場所、いろいろなシチュエーションで戦闘が見られるのがおもしろいです。殴る・蹴るなどシンプルな肉弾戦もあって、それも新鮮でした。
そしてスパイダーマンがやたらとしゃべっています(笑)。台本が200ページ以上あって、ほぼ全ページに登場していて、チェックが大変でした。でもその分、スケール感があるし、MJとのロマンスもあるので、デートムービーとしても楽しめるんじゃないかなと思います。
あと『ホームカミング』でもいろいろなスーツが登場しましたが、それ以上のスーツが出てくるところも見どころです。予告編ではブラックスーツが出ていましたが、新機能も活躍するシーンもあるのでご期待ください。
新ヒーロー、ミステリオの登場とピーターの成長に注目!
――今作では新たなヒーロー、ミステリオも登場しますね。
榎木:エレメンタルズに立ち向かう仲間として加わりましたが、かなり心強い援軍です。ヒーローとしての力だけではなく、アイアンマンの代わり、お兄さんや父親の存在と錯覚するほど頼りになって。実際、すごく活躍するので注目してください。
――そしてピーターの成長譚の側面もあります。
榎木:「鉄の意志を引き継ぎ、真のヒーローへ」というキャッチコピーがありますが、ピーターがどのように悲しみを乗り越えて、アイアンマンの心を継いでいくのか、見守っていただけたらと思います。ヒーローとしてのピーターと、普通の高校生としてのピーターの成長も。MJとの恋の行方もお楽しみに。
人間臭さが「親愛なる隣人」と愛される理由。万人が楽しめる最高のエンターテイメントをぜひ劇場で!
――改めて『スパイダーマン』シリーズの魅力とは?
榎木:強すぎないところでしょうか。戦闘能力は高いけど、高校生ゆえに人間としてまだまだ未熟で。悩んだり、落ち込んだりすることも多いヒーローだからこそ人間臭いし、共感もできて。そこが「親愛なる隣人」と呼ばれるゆえんなのかなと思います。
――最後に皆さんへメッセージをお願いします。
榎木:今までのMCUシリーズを追ってきた方は必ず楽しんでいただけると思いますし、『エンドゲーム』を見た方には見逃せない作品になっていると思います。吹き替え版と字幕版それぞれに良いところがあるので、ぜひ両方合わせて見ていただけたらうれしいです。
そしてまだ『スパイダーマン』を見たことがない方も楽しめる内容になっていますし、今作を見てから、過去にさかのぼって、もう一度、今作を見るという楽しみ方もあります。また純粋にヒーローたちやアクションは子供が見てもカッコいいと思ってももらえるし、派手な絵作りとアクションでエンターテイメントとして爽快な気分になれます。どんな方にも刺さる『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』をぜひ劇場でご覧ください。
作品情報
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』
公開日:2019年6月28日(金) 世界最速公開!
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
ピーター(トム・ホランド)は夏休みに、学校の友人たちとヨーロッパ旅行に出かける。しかしそこに待っていたのは、元S.H.I.E.L.D.長官であるニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)だった。迫りくる新たな脅威を察したニックは、その戦いに向けてスパイダーマンの力を必要としていたのだ。目の前に立ちはだかる圧倒的な敵にピーターは怖気づくが、ニックはその使命をスパイダーマンに託す。
ヴェネチア、ベルリン、ロンドンといったヨーロッパ都市をはじめ、各国を危機に陥れるのは、“火”や“水”など自然の力を操るエレメンタルズ。ニックは異次元から来たというミステリオ(ジェイク・ギレンホール)をピーターに引き合わせ、彼もまた、ピーターと共に敵に立ち向かっていく。
そしてこの戦いに、ソーやキャプテン・マーベルの力は借りられない。ピーター=スパイダーマンはこの厳しい戦いにどう立ち向かうのか――今、世界は彼に託される・・!