この記事をかいた人
- 石橋悠
- 1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。
――田村さんは今回、キャラクターデザインを兼任されていますけども、お気に入りのキャラクターや、こだわりのデザイン部分はどんなところでしょうか?
田村:一番理解しやすかったのは、やっぱり須賀ですかね。世代的にも近い設定ですし、須賀の気分は分かりやすかった。
描いているうちに、陽菜も帆高も好きになりましたね。
――大人になると須賀はかなり感情移入できるなと思いました。監督からはキャラクターについてどういった指示を?
新海:特にメインの5人の帆高、陽菜、凪、須賀、夏美は、それぞれはっきりした役割があるので、コンテを描くときや作画の打ち合わせをするときも注意して見ていました。
例えば、凪であれば帆高より大人びていなければいけないし、帆高よりずっと落ち着いてるキャラクターです。
でもだからこそ、最後に感情を爆発させた時に観客がグッとくるようなエモーションが生まれるような仕掛けにしたかったんです。
夏美はもうとにかく綺麗なお姉さん(笑)。綺麗なお姉さん枠ですよね。ちょっと色っぽくて、夏美は少し青少年をドキドキさせる役でもあるわけです。
ちょっと胸元が見えたりもしますが、ただ今の時代、どこまでの表現が許されるんだろう? という不安もあって。誰かを不快にさせる可能性があるわけですよね。
でも、田村さんと相談したら、「家族に見せられるものにしますから」と答えてくださって。
田村:胸につける影の大きさをどれくらいにするかっていうので結構議論しました(笑)。どこまでいくかみたいなことは話していましたね。
新海:かといって、10代の男の子は、ドキドキするのが当たり前だと思うんです。20代くらいの女性がいたら、目が吸い寄せられちゃう。そこを描かなければ、それはそれでとても嘘が大きくなってしまう。
それをどれくらいのバランスでできるのかについて、意外に一番やりとりが多かったところかもしれません。
――難しい問題ですが、 確かに夏美はめっちゃくちゃ可愛かったです……!
田村:実は最初に「夏美はすごい美女なんです」って言われて。夏美はどう描いたらすごい美女になるんだろうって、相当悩みましたよ。
新海:そうですね(笑)。
――そんな抽象的な(笑)。
新海:とにかく美女と言いました(笑)。
――まだまだお話をお聞きしたいのですが、最後の質問です。監督が舞台挨拶などで「賛否両論出ると思う」とおっしゃっていましたが、その通り様々な感想が出ていて流石だなと思いました。ネット上では、冲方丁さんが「僕だったら『天気の子』をこうする」というものを挙げていたり、ファンからは「『天気の子』は2000年代の美少女ゲームだ」とも言われています。新海監督はそのあたりをどう分析されていますか?
新海:僕は、冲方丁さんのは怖くてまだ読めてないです(笑)。ブックマークだけはしています。
「2000年代美少女ゲームが原作である」みたいなみんなのネタもネットで見ました。
例えば、夏美ルートにいってしまう場合、ここのイベントは発生しない、いろいろあってトゥルーエンドがこの映画とか。
なるほどねと。確かにそんな解釈もできるかもねと思ったりしましたね。
それで盛り上がってる事自体はすごく嬉しいんですよ。今の若い子とかで「え? これ美少女ゲーム原作だったの?」って真に受ける人がいたりして(笑)。違うって否定して回るのも大人気ないから黙っているんですけど。
でも、彼らの言ってる気分が分かるんですよ。彼らが言っている2000年代の美少女ゲーム的なエモーショナルな表現というのは、美少女ゲームに留まっていないと思うんです。同時代の漫画とか小説にも溢れていたんです。
僕らが2000年代に見ていたもの、彼らが『天気の子』を見て想像した美少女ゲーム的な要素は、スタンダードなエンターテインメントだった気がするんです。
その表現が今に真っ直ぐ繋がっているだけなんです。彼らが「俺達だけが分かる新海誠」と思ってるものは、実はそうじゃないよと。「僕らが好きだったものは、実はマスだったんじゃないの?」って思いますね。
日陰者みたいな気分で彼らは語っていますけど、彼らのような人々にリーチする力のある人物が自分の世界や想像性を共有して、それが広がってきてるような気がするんです。
僕は昨日、新宿を歩いていたら、小学生の女の子を連れたお母さんに声をかけられて、「今、バルト9で見たんです!」って言われたんです。「この人監督よ! 握手してもらいなさい!」って。
小さな女の子に、僕のことが分かったのかな? と思いながら、「ありがとう」って握手したんです。
2000年代に僕らが見ていたものが続いてきて、『天気の子』になって、20代の母親が小学生の女の子を連れて行って見るような映画になっているんです。
だからもっと誇りに思っていいと思うんですよね。自分が好きなものを。
[インタビュー/石橋悠]
1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。
◆『天気の子』醍醐虎汰朗さん&森七菜さんインタビューはこちらから!
「あの光の中に、行ってみたかった」
高1の夏。離島から家出し、東京にやってきた帆高。しかし生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく見つけた仕事は、怪しげなオカルト雑誌のライター業だった。
彼のこれからを示唆するかのように、連日降り続ける雨。そんな中、雑踏ひしめく都会の片隅で、帆高は一人の少女に出会う。ある事情を抱え、弟とふたりで明るくたくましく暮らす少女・陽菜。彼女には、不思議な能力があった。
「ねぇ、今から晴れるよ」
少しずつ雨が止み、美しく光り出す街並み。それは祈るだけで、空を晴れに出来る力だった――
原作・脚本・監督:新海誠
音楽:RADWIMPS
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:田村篤
美術監督:滝口比呂志
製作:「天気の子」製作委員会
制作プロデュース:STORY inc.
制作:コミックス・ウェーブ・フィルム
配給:東宝
公開日:7月19日(金)全国東宝系公開
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