『異世界チート魔術師』原作者・内田健先生インタビュー|「楽しい」からこそ、ここまで書き続けられた
小説投稿サイト『小説家になろう』(以下、なろう)で連載中、ヒーロー文庫より書籍版が刊行中の内田健先生によるライトノベル『異世界チート魔術師』。
現代から異世界に召喚され、意図せずして最強でチートな力を得てしまった少年・西村太一が、様々な人々と出会いながら冒険していく様を描いた作品で、すでにシリーズ累計は200万部を突破。2019年7月からは、TVアニメの放送もスタートしています。
そんな盛り上がりを見せている『異世界チート魔術師』ですが、今回アニメイトタイムズでは、原作者である内田健先生を直撃。
本作が生まれるまでの経緯を中心に、作家として原点からプロデビューに至るまで、多岐に渡るお話を聞くことができました。
作品のファンはもちろんのこと、ライトノベル作家を目指しているみなさんにも必見の内容になっています!
TVアニメ化にあたって意外な設定が必要に!?
――すでにアニメの放送もスタートしていますが、現在の心境をお聞かせください。
内田:実は僕は、「いずれアニメ化したい!」ということをモチベーションに小説を書いていたわけではなかったので、不思議な感覚です。
実感そのものはあるんですが、どこか他人ごとというか、未だに現実感がない……。というのが正直なところかもしれません。クレジットを見て、「ああ、僕の名前が載ってる」とぼんやり思ったり(笑)。
今までずっとサラリーマンをやってきたのもあって、自分の作ったものがアニメになるというのが、あまりにも非現実的すぎるんですよ。
――実際に、完成した作品をご覧になられていかがですか?
内田:「アニメってすごい!」と改めて思いました。小説だと、どうしても読者さんのイメージに依存してしまう部分が大きいのですが、アニメではその部分を明確に提示してくれているのがありがたいですよね。
アフレコの様子も見学させていただいたのですが、「エンドテロップでしか(名前を)見たことのない人たちが大勢目の前にいる!」と感動しっぱなしでした。
分野こそ違いますが、自分も同じ個人事業主として、声優の方々のプロフェッショナルな仕事ぶりには、刺激を受けましたね。
――放送も遅い時間だったりしますが、リアルタイムでご覧になられているのでしょうか?
内田:東京MXさんの放送時間にあわせて、Twitterでリアルタイム実況をしたりもしています。
というのも、アニメ放送中、『Re:ゼロから始まる異世界生活』(※1)の長月達平先生が、放送中にTwitterで実況や使わなかった設定を公開されているのを見て、羨ましいなと思っていたので、自分もやってみたいなと(笑)。
※1 『Re:ゼロから始まる異世界生活』
「死に戻り」の能力を得て異世界転生した少年・スバルが過酷な運命に立ち向かう様を描く、長月達平氏のライトノベル。『小説家でなろう』発の作品で、書籍版はMF文庫Jより刊行中。2016年にはTVアニメが放送され大ヒットし、現在も新作劇場版にTVシリーズ第2期の放送も決定している。
――アニメ化に際し、先生の方から何か要望を出されたりしたのでしょうか?
内田:アニメの基本的な制作方針については、今年のAnimeJapanで筑紫監督がおっしゃられていた、「流行りの異世界転生モノとは少し違った作品を作る」というのが、素晴らしいなと思っていて。
アニメに関しては、あくまでも「自分の作品を元にした別の作品」だと自分は考えています。アニメスタッフの方々もクリエイターとしての矜持をお持ちでしょうから、変に口出しはしない方がいいだろうと思って、全面的にお任せしています。
具体的にやったことといえば、アニメ版の設定資料や台本などが上がってきた時に、原作との食い違いや台詞回しに違和感がないかをチェックしたくらいでしょうか。
――アニメ用に新たに必要になり、作成した設定などはなかったのでしょうか?
内田:新しく用意したのは、作中に登場する街や国の地図ですね。
もちろん、小説を書くにあたって大まかな地形や位置は考えていたのですが、しっかりとした地図というのは作っていなかったので、なかなか大変でした。
自分にできたのは、ファンタジー風のマップ作成ツールも使いながら、なんとか大まかなものを作ったら、「あとはお願いします」というくらいで(笑)。
「なろう」に掲載されている他の方の作品を読んでいると、最初の段階からがっちりとした地図を自分で描かれている方もいますが、純粋にすごいなと思いますね。僕には、そっち方面のスキルはなかったので……。
――本作の第一話が「なろう」に投稿されたのは、およそ7年ほど前になりますが、当時書いたものを読み直したりして、「この部分を直したい」という思いが後から出てくることもあるのでしょうか?
内田:一度投稿した後に、読者さんから「これはないだろう」という意見をもらったりすると、やはり後から「この箇所を直したい」という想いが湧いてくることはありますね。
ただ、一度出してしまった原作というのは変えようがないので、コミカライズやアニメ化の際には、そういった反省部分を反映させた形でリメイクをしていただけています。
そういう意味でも、今回アニメ化という機会をいただけたのは、個人的にもすごくありがたかったなと思います。