映画『空の青さを知る人よ』長井龍雪 監督&田中将賀さんインタビュー|友か仕事仲間か? 超平和バスターズが作品を作り続けられるわけ
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(以下、あの花)』『心が叫びたがってるんだ。(以下、ここさけ)』で確固たる地位を築いたクリエイターチーム「超平和バスターズ」。
アニメーション監督・長井龍雪さん、脚本家・岡田麿里さん、アニメーター・田中将賀さん。これまで彼らが生み出してきた作品は、どこか不思議で、どこか切なくて、どこか暖かい。
そんな彼らの最新作『空の青さを知る人よ(以下、空青)』が2019年10月11日より公開となります。
超平和バスターズが『あの花』『ここさけ』、そして『空青』を作れたのはなぜなのでしょうか?
長井さんと田中さんに超平和バスターズの関係性についてお聞きしました。
「秩父三部作」って響きがいい
ーーまずは本作の制作が決まった経緯からお聞かせいただければと。
田中将賀さん(以下、田中):元々『ここさけ』って秩父の予定じゃなかったんですよ。『ここさけ』が秩父だったから、『ここさけ』が終わった後にプロデューサーが「よし! じゃあ秩父で三作やっちゃう!?」って言ったみたいな流れだったと思います。
長井龍雪さん(以下、長井):三部作は俺も言ってたからね。
田中:言ってた?
長井:言っておけば作りやすいかなと。
ーー二部作よりも、三部作?
長井:「三部作」って響きがいいですからね。
田中:それでたぶん「しょうがないな」って作らせてくれたと思うんですよ。
一同:(笑)。
長井:しょうがなくはないでしょう(笑)。
田中:違うかな?(笑) そういう流れも一個あったと思うんですけど、割と自然な流れで「じゃあ次の映画も」みたいな感じで、お仕事をいただいたような気がします。
長井:そうですね。
田中:自然とみんな次の話っていう方向に行ってた気がします。
長井:ありがたい話です。
ーーみなさん、「チーム」って感じがしますよね。
長井:ありがとうございます。
ーー監督はご出身新潟のほうですよね?
長井:そうです。新潟です。
田中:全員田舎者です。夢見て東京に来た人の集まりなので。
ーー東京のほとんどの人は東京以外の出身ですからね。
田中:そうそう。でも実は、「秩父3部作」の話で、企画の最初から秩父っていうのが決まってるのは今作が初めてなんですよ。
実は『あの花』の時も決まっていなかったし、さっき言ったとおり『ここさけ』も決まってなかったんです。
そういう意味で最初は、秩父ありきで話を作るのに、抵抗ありましたよね。慣れてないから。だから本当に、「秩父に根差した何かをつくろう」みたいな真面目な感じでスタートしたような気がします。
だからそれこそ、ご当地のお祭りを一生懸命調べたり、特色とかいろんなものを調べたり、それを基にしてお話を作ろうとした流れがありました。
たぶんその流れで、中村正道(CV:落合福嗣さん)と相生あかね(CV:吉岡里帆さん)が市役所の職員って設定になって。そういう名残があるんですよ。
ーー秩父スタートで、今まで使ったものが使えないという状況も出てくると思うのですが。
田中:あんまりそういうのは考えなかったですね。それこそ「ここ使ったから」とか、「とっておきのこの場所も使っちゃってるからどうしよう……!」みたいな悩みは無かったですね。
長井:無かったです。
田中:ただ、いわゆる主人公たちが住んでる場所とか、メインのロケーションみたいなものは一個欲しいなというのはありました。
ロケハン中に、今までの作品は、町中というか駅に近かったから、今回は山のほう行ってみようという話になって。
毎回そうなんですけど、今回もなんとなく降りて見た景色を「いいね、ここにしよう」って感じでしたね。
ーー偶然や不思議な出会いが多いのでしょうか?
田中:僕らもだいぶ秩父に慣れたんですよ。なんとなく地理感をつかんできた。
長井:逆にそれで嘘をつけなくなって、「ここから家に帰るならこの道は通らなきゃダメだよな」みたいなものはありましたね。