【密着レポート第2回】『HUMAN LOST 人間失格』当初は実現が危ぶまれていた企画だった!?「CGアニメの最前線」でスタッフたちは何を思う? 独占コメントあり!
2019年11月29日より全国公開予定の映画『HUMAN LOST 人間失格』。
本作は、太宰治の不朽の名作「人間失格」を原案に、SFやヒーローのエッセンスを加えて大胆なアレンジを加え、木﨑文智監督、コザキユースケさん(キャラクターデザイン)、冲方丁(ストーリー原案・脚本)さんなど、錚々たるスタッフ陣とポリゴン・ピクチュアズの手によってアニメ映画化された作品です。
今回はその公開に先駆けて実施された、全4回に渡る業界人トークつきの関係者限定試写会に潜入。
第2回では、第1回から引き続いての出演となる木﨑文智監督と橋本太知プロデューサーに加えて、コンセプトアートを担当した富安健一郎さん、ポリゴン・ピクチュアズの森弘光さんが登壇。アニメ・特撮研究科の氷川竜介さんがMCを務める中、「CGアニメの最前線」と題したトークが繰り広げられていました。
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◆第1回「ダークヒーロー特集 最強MARVELから大ヒットJOKERまで」
細かい設定を詰める時間がなくなったことで、一度は絶望的な状況にも
まず本作のコンセプトアートは、富安さんが「ダークヒーロー」という要素を最初の出発点として作り上げたというもの。
木﨑監督が企画書をもらったときには、すでに富安さんが描いたコンセプトアートが完成していたようで、「(最初にコンセプトアートを見た時)『このコンセプトは本当に実現できるのか?』と思いました。とにかく緻密で、とても量産できるレベルではないくらいハイクオリティだったんです。どちらかというと富安さんはフォトリアルなアートを描かれる方なので、セルルックのアニメとの相性的な問題もありましたから」と木﨑監督。
富安さん自身も、制作陣のクリエイティビティーを刺激するために、敢えて難しい表現方法に挑戦した狙いがあったことも明かされます。
さらにそのコンセプトアートに加えて、丸の内の中心にS.H.E.L.L.の本部があり、日本の人工心臓として世界そのものを延命しているというコンセプト、キャラクターデザインを務めるコザキユースケさんが発案した、“鬼”をモチーフとしたダークヒーロー的なデザインの3つの要素が柱となり、現在の『HUMAN LOST人間失格』の形が作られていくことになったのだとか。
一方、そうした発想で作られたコンセプトに沿って、実際に制作を行ったポリゴン・ピクチュアズの森さんは「企画自体がすごくぶっ飛んでいるので、社内でも若い世代のリーダー層を集めて、いつもなら無理だと判断するところを、挑戦状だと思って越えていた結果、居間のクオリティのものができた感覚があります」と、本作がポリゴン・ピクチュアズの中でも若いメンバーによって作られたものであることを明かします。
また作中に登場する爆弾を詰んだ霊柩車のデザインをモデラーのスタッフがいつのまにか作っていたというエピソードもあったほど、個々のスタッフに自由な裁量が与えられており、制作陣の高いモチベーションを生み出す原動力にも繋がっていたそう。
実はこれには、シナリオの打ち合わせに時間を掛けすぎたあまり細かい部分の設定を詰めていく時間がなくなり、ポリゴン・ピクチュアズの面々にすべて任せざるを得ない状況になっていたためであったことが明かされます。
そうした事情もあり、一度はかなり絶望的な状況にまで追い詰められていたものの、蓋を開けてみると若いスタッフの頑張りによって、想定を越えたアクションシーンが次々と上がってきたことで乗り切ることができたのだといいます。
木﨑監督は「今回はポリゴンの皆に頭が上がらない状態で……本当に感謝しています」と、ポリゴン・ピクチュアズのスタッフ陣への感謝を何度も口にする一幕も。
また木﨑監督は、フルCGアニメには本作が初挑戦。何が可能で不可能かという判断が難しかったことから、スタッフに対して無茶振りをしてしまうことも少なくなったそうなのですが、その無茶振りを受ける立場だった森さんは「最初は無理だと思っていたことも、やってみると案外できた」と当時を振り返ります。
さらに森さんは、「集まってくれたスタッフ陣が優秀だったのもありますが、今回は長回しのカットが多く、レイアウトが長尺でも十分もつような作りになっているんです。それでカット数を抑えられたのも、不可能だと思っていたことができた要因なのかなと。そのあたりのレイアウト感覚は、CGデザイナーにはなかなかないんです」と分析。
これまで手書きのアニメを手掛けてきた木﨑監督の存在があったからこそ、ハイクオリティなアクションシーンを作ることができたのだとも語っていました。