TVアニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』リレーインタビュー:総監督・シリーズ構成 劇団イヌカレー(泥犬)「ゲームシナリオと見比べながら、アニメを楽しんでほしい」
2020年1月のオンエアに向けて現在絶賛制作中のアニメ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』。国内のイベントで第1話が上映され、海外のイベントでは早くも第2話までが上映されるなど、様々な展開が始まっています。
今回のインタビューに登場していただいたのは、原作ゲーム『マギアレコード』に深く関わり、アニメ『マギアレコード』では総監督、シリーズ構成を務める劇団イヌカレー(泥犬)さんです。『魔法少女まどか☆マギカ』では異空間設計を担当し、その独特な世界観で多くのファンにインパクトを与えました。劇団イヌカレーさんは今回、『マギアレコード』でどんな活躍をされているのでしょうか。
自然と今の良さが出るアニメーションになれば
――『マギアレコード』のアニメ化おめでとうございます。アニメ化を迎えてのお気持ちをお聞かせください。
劇団イヌカレー(泥犬)さん(以下、劇団イヌカレー):開始当初は、アニメ化云々よりもゲームとしてどれだけちゃんと続くのかという部分しか気になっていなかったので感慨深いですね。
――スマートフォンゲーム『マギアレコード』では劇団イヌカレーさんは魔女、ウワサ、手下のデザインのみならず、ドッペル原案・監修、イベントシナリオ執筆・監修、アニメーション制作など多岐に関わっていらっしゃいます。中でも印象に残っているお仕事は何ですか?
劇団イヌカレー:イベントシナリオの方はかなり自由にやらせていただいています。「もっとシリアスでもいいのでは?」「もっと変でもいいのでは?」「サブストーリーまで大衆に向けた価値観じゃなくともいいのでは?」など、その時々のテーマを踏まえつつ、いつのまにか勝手に連作の体でやらせていただいていたのですが、第10章(第1部最終章)の(イベント)ムービーやTVアニメ化の準備でかれこれ一年以上書いてないので寂しいです。
――今回、スマートフォンゲームだった『マギアレコード』をアニメーション化するうえで、どんな作品にしようとお考えでしたか。
劇団イヌカレー:TVアニメの方だけを観てもストーリー的に完結できるようにとは考えております。そのため細かい部分の設定などは若干変更しているのですが、すでにゲーム『マギアレコード』をプレイしている人にとって全く違うものにはならず、かといってボリュームダウンした再現映像でもないアニメになればいいかと思います。
――シリーズ構成作業をするうえで、意識したことがあればお聞かせください。
劇団イヌカレー:かなり内容のネタバレに抵触するので控えさせていただきますが、某団体のいろいろがゲームと多少違った雰囲気になれば、全体のテーマにもうまくつながるのではと考えています。
――今回、アニメオリジナルの新キャラクターが登場しています。この新キャラクターを入れるうえで意識したことはどんなことでしたか。
劇団イヌカレー:メインキャラの役割を奪うようなことにはならず、あくまでもストーリーありきの立ち回りをしてもらう予定でいます。蒼樹うめ先生にとても良いデザインで仕上げていただけたので、そこからもキャラとして固まったように思います。
ファッション的でなく、アート的なテイストも
――――現在アニメーションの制作を進めていらっしゃる最中だと思いますが、「『マギアレコード』らしさ」をお感じになることはありますか。
劇団イヌカレー:今回は『魔法少女まどか☆マギカ』を観てから入社したようなスタッフも多くいるので不思議な感じです。どちらにせよあの頃とは時代も機材的なものも違うため、『魔法少女まどか☆マギカ』っぽいニュアンスで作ってみたとしても、自然と今の良さなり、今ならではの雰囲気は出るのではないかと考えています。『マギアレコード』では『魔法少女まどか☆マギカ』であえて入れてなかった要素なども、外伝という舞台を際立たせるため意図的に入れていったりはしています。
――『魔法少女まどか☆マギカ』を受け継いでいるなと感じる部分はどんなところですか。
劇団イヌカレー:方向性として「基本はシリアス」という部分を引き継がせていただいております。『マギアレコード』の場合、もっとポップでライトなテイストでのアニメ化も可能性としてはあり得たと思いますし、実際に今回のアニメの中でも『魔法少女まどか☆マギカ』ではなかったようなコミカルなシーンもあったりするのですが、完全なギャグではなくユーモアの範疇のようなあくまでもスパイス的な使い方に留めています。
また映像面としては、シーンによっては多少緩和したりはしているものの、約束事の多くは『魔法少女まどか☆マギカ』からそのまま引き継いでおりますし、総作画監督の谷口(淳一郎)様をはじめとして今まで参加されていたアニメーターの方々も多くいらっしゃいますので、映像的な雰囲気は『魔法少女まどか☆マギカ』に近しい感じで受け取っていただけるのではないでしょうか。
――環いろはという主人公の印象をお聞かせください。
劇団イヌカレー:第1話の段階でいろはが魔法少女として強く見え過ぎないようとはお伝えさせていただきました。いろはは少し思い込みが強かったり、意外と押しが強かったりする部分に、悪気はない感じが出てくれればとも思っていますが、この辺は演出様や作画様にうまく消化していただいていると思います。
シナリオ、コンテへの追記であったり、部分的に口頭でお伝えしていることもありますが、シーンごとのあれこれは監督様の方で取り仕切っていただいております。
――みかづき荘のメンバーの中で、描いていて楽しい魔法少女はどなたですか?
劇団イヌカレー:(由比)鶴乃が出てくると雰囲気が明るくなって良い感じです。鶴乃&(深月)フェリシアの存在は最も『マギアレコード』らしい要素かもしれません。
――ウワサの描写、魔女や結界の描写については、どのように描写しようとお考えでしたか
劇団イヌカレー:魔女結界に限らず、通常シーンのコンセプトデザインなどもやっているのですが、ただファッション的にではなく訴えや投げかけの表現方法としてアート的なテイストを取り入れられないかとは考えています。
ちなみに今回こちらの役回り上、魔女空間に費やせる時間が限られてしまっているため、様々なスタッフの方々に肩代わりしていただいていますので、上手く多様性が出れば良いかとも思っています。
――今回アニメ『マギアレコード』では、劇団イヌカレーさんを総監督に、章ごとに監督が変わるという体制で制作が進められていると発表されています。章ごとの変化や方向性の変化などはお感じになっていますか?
劇団イヌカレー:基本的には各監督様には『魔法少女まどか☆マギカ』に合わせた演出をしていただいているので極端に違ったりはしないのですが、監督毎にどういったカットを一番見せたいのか、尺を使いたいのかという部分についてはけっこう違いがあるように感じます。
――すでに第1話がイベントなどで上映されています。第1話の見どころや作業についてお聞かせください。
劇団イヌカレー:第1話はオリジナル色が強いです。新房(昭之)さん(アニメーションスーパーバイザー/『魔法少女まどか☆マギカ』監督)から「『マギアレコード』は登場人物が多いけど、これは環いろはの話であると明確に分かるようにして欲しいから、第1話はそういった感じに出来ないか」とご提案があり、その通りだなと思ったのでああいった感じに構成しました。
ほかにも魔女との戦闘シーンが多いのですが(七海)やちよのアクションシーンなども、とても素晴らしい作画で動かしていただいております。