劇場アニメ『サンタ・カンパニー~クリスマスの秘密』を彩る茅原実里さん「Christmas Night」インタビュー|クリスマス一色に染まった、ハートフルなシングルをお届け
「やってミルク!」は魔法の言葉?
──制作はどのように進められていったんですか?
茅原:いつもは(所属してるレーベルの)ランティスが主体となって制作、レコーディング、完パケまでを行うんですが、今回は糸曽監督がいつもお仕事をされている有限会社スーパーラブさんという音楽制作会社さんが主体となって制作を進めていったんです。
そういった制作方法も初めてだったので「どんな感じなんだろう?」とワクワクしていました。もうね、すっごく楽しかったんですよ~!
──ぜひいろいろと聞きたい……! 順を追っておうかがいできればと思うのですが、さきほどコンペの話題があがりましたが、全曲コンペ形式で選ばれていったんです?
茅原:「キラキラ輝く、世界の時間」、「Santa Company The Musical」の作詞以外は、全曲コンペ形式でした。その3曲のために何十曲も集めたらしいんです。
私はある程度絞られてから打ち合わせに参加したんですが、後半の絞られた曲に実際に歌を入れてみて、多数決で曲を決めていきました。すごく丁寧な作業でした。
──実際に歌入れもされたんですね。ちなみに、茅原さんから熱望された曲というのはあったんですか?
茅原:ありましたよ!でも基本的に『サンタ・カンパニー』のための楽曲作りだったので、自分がどういう曲を歌いたいかというより、監督のイメージに合う楽曲が選ばれるべきだなというスタンスではありました。
──そんな経緯を経て選ばれたのが、この3曲。それぞれ個性的でカラーの異なるクリスマスソングです。
茅原:もう本当にステキな3曲が揃ったなぁと。順位をつけるのはよくないんですが、1曲目の「キラキラ輝く、世界の時間」は一番好きな曲です。
初めて聴いたとき、この曲にときめいたし、出会えてよかったって心から思えました。家で練習をしているだけでも幸せな気分になりました。
──1曲目の「キラキラ輝く、世界の時間」は愛に溢れた温かなバラードですね。
茅原:聖夜にピッタリな、綺麗なメロディのバラードです。監督の歌詞もすごくステキで、歌いながらウルウルくる瞬間がありました。
特に<世界の時間が キラキラ 輝きだして 夢が溢れる>というフレーズが凄く好きで。私はそのフレーズから、監督の“世界中の子どもたちにこの作品を届けたい”という思いを感じました。
そこにシンパシーを感じてグッときちゃうんです。監督の優しさでできてる曲だなと。
──ナチュラルな響きの英語も魅力的です。
茅原:英語は監督のこだわりがあったので、カタカナ英語になりすぎず、世界のどの国の人が聴いてもナチュラルに響くようなものにしたいなと思っていました。でもすっごく難しくて(笑)。
<May the miracle at Christmas night. >(訳:クリスマスの夜、奇跡が起こりますように)というはじまりから苦戦したので、ボイストレーニングの先生に英語の発音を習いながら練習しました。
──レコーディングはいかがでした?
茅原:どの曲もそうなんですが、プリプロで方向性を含めてしっかりと練っていたので、本番ではぶれることがなくて、イメージがしっかりできている状態だったんです。
だからすごくスムーズだったと思います。レコーディングの雰囲気もすごく良くて、気持ちよく歌えました。
スーパーラブの音楽プロデューサーの松原(憲)さんが中心となってディレクションをしてくれたんですが、松原さんは大ベテランのかたで、ものすごくエネルギッシュで、常にテンションが高くって(笑)。
こうやってお話してても思い出し笑いしてしまうくらい、楽しかったなぁ。
──いったい何が起こったんです?(笑)
茅原:レコーディングって普通はトークバック(ディレクターがいるコントロールルームから収録ブースへ指示を出すためのコミュニケーションツール)を使うんですが……松原さんの声が全然聞こえてこなくて、ボタンを押し忘れたのかな?と思っていたんです。
でも怒鳴っているような声は聞こえてきていて「あれ?」と思ってたら、「大声で叫べばトークバックを使わなくても聞こえるんで!」っていうのを理由に、凄い地声で叫んでて(笑)。
──わははは! 豪快!(笑)
茅原:私、普段はレコーディングがはじまるとブースから出たくないタイプなんですよ。自分のスイッチがオンになって集中したら、録りおえるまでは基本的にブースにいたい人。外に出て誰かと話すということもあんまりないんです。
でも今回はそれどころじゃなくて、松原さんがドアをバンッとあけて入ってこられるんです(笑)。もうそれがすごく面白かった。
──松原さんの存在感たるや……! 面白いエピソードがたくさんでてきそうですね。
茅原:まだまだあります(笑)。松原さんって「やってミルク!」が口癖なんです。歌い始めるときに必ず「よし、やってミルク!」っていうので、私も「歌ってミルク!」と返していたんですが……(笑)。
私は存じ上げなかったんですが『OH! スーパーミルクチャン』というアニメ(2000年1月27日から4月13日までスペースシャワーTV、WOWOW他で放送された日本のギャグアニメ)からきているんだそうです。
気になったので自宅で見てみたら、可愛い見た目とは相反して、パロディ要素満載のシュールなアニメで。面白かったです(笑)。
──「やってミルク!」っていい掛け声ですね。元気がでそうです。
茅原:そうなんです。松原さんにそういわれると、やってみるか! って思えて。
2曲目の「Santa Company The Musical」は初めてのミュージカル曲だったので、すごく難しくって。プリプロから松原さん自身が歌って「こんな感じ!」と教えてくれていたんですが、はじめての経験に結構苦戦していたんです。
それでレコーディングのときに松原さんのディレクションがヒートアップして「とりあえずやってみようぜ!」と言われて。そのとき「もういっか、ダメ元でやってみよう!」って思えて。
私はこれまで、なかなかそう思って歌う勇気が無かったんです。私の性格的にやってみてできなかったら、すごく落ち込んだり、許せなかったり、絶望感に浸ったりするんですが……そういった価値観をすべて壊してくれたんですよね。
──凄い……! 「Santa Company The Musical」は表情もテンポもくるくると変わっていきますもんね。
茅原:キーチェックの段階から曲を捉えるのが難しくて。インテンポ(正確な速度)ではなく、緩急がついた展開なんですよね。自由でありながら、きちんと制限もされている。なんとも難しかったです(笑)。
どういう方向性で歌うのがいいのか、松原さんとディスカッションしたときに「想像以上に、ザ・ミュージカルという雰囲気で歌ってほしい」ということだったので、恥ずかしかったり、探ったりするのではなく、失敗してもいいからもう迷わずに思いっきりやろう!と。
──本当に舞台で歌われているかのような、そんな臨場感がありました。
茅原:ありがとうございます。実際自分が舞台に立ってお客さんの前で歌っているイメージで歌っていったんです。
こういった楽曲を歌える機会はなかなかないので、楽しめたら最高だな!って切り替えて。後半は気持ちよく、歌わせていただきました。松原さんのおかげですね。