『ケンガンアシュラ』鈴木達央さんインタビュー|アフレコ現場は声の拳願絶命トーナメント!? 座長が語った“役者道”に男が漢に惚れた話
2019年夏。Netflixである作品が配信された。人気声優・鈴木達央さんが主演・十鬼蛇王馬を演じた『ケンガンアシュラ』だ。
Web漫画(裏サンデー)として人気を博した同作品。格闘技を通じた漢としての生き方やヒューマニズムを謳った同作品がいよいよ2020年1月からテレビで放送される。
今回、アニメイトタイムズは『ケンガンアシュラ』の主人公である十鬼蛇王馬(ときたおうま)の声優を務めている鈴木達央さんにインタビューする貴重で贅沢な機会を得た。主演として、座長として。鈴木達央さんはどんな生き様を魅せたのか。その胸中に迫る。
鈴木達央と十鬼蛇王馬
――鈴木さんはもともと『ケンガンアシュラ』はご存じでしたか。
鈴木:『ケンガンアシュラ』は連載当初から知っていて。単行本が出るたびに読んでいました。ですので、アニメ化を知った時は「ついにアニメになるのか」と楽しみになりました。
作品を通じて、十鬼蛇王馬に対して共感する部分や強く感じる部分が大きかったんですよ。オーディションの話が届いた時に「やれるならぜひやりたいな」とは思っていました。
ただ、原稿を読み進めていくうちに「なにがなんでもやりたい……。(役を)取りたい」という気持ちはどんどん強くなっていって。
オーディションの際は、本当に試合をしに行くような、作品風に言えば自分の拳願仕合が始まるかのような強い気持ちで臨みました。
――今、ちょっとびっくりしたのですが……。
鈴木:どうしました?
――作品を観ていて、鈴木さんの声や演技が十鬼蛇王馬に凄くハマっていると思っていたんです。ですので、オーディションではなく、鈴木さんの指名だと思っていました。
鈴木:おっ! それは嬉しいですね。
――ちなみに鈴木さんが王馬に共感していた部分とはどんなところですか?
鈴木:妬みや嫉み。そんなネガティブな部分。昔、周りに対して自分が思っていたことですね。
『ケンガンアシュラ』をやりきった今や、普段自分が仕事をしている際にはもう思わないんですが、「俺、昔こんなこと思ってたな」みたいな。自分の中のネガティブな部分とのシンクロがすごく大きくて。
そういう意味で、王馬の気持ちはすごく分かりましたし、彼なりの筋の通し方しかしないといった部分も強く共感しました。
そう作品を読み進めていたので、憧れみたいな部分もありますね。めちゃくちゃ強いし。
フィクションではありますが、漫画に慣れ親しんで育った僕から見ても、リアルに考えてしまう。「こんな風になれていれば、そりゃこういう風に考えるよな」と考えることは多かったですね。
――なるほど。アニメの第一声である「かかってこい」からとにかく強そうな雰囲気が出ていましたよね。では、ここからは役作りについても教えてください。
鈴木:王馬を作っていくにあたって、強い人間がなにかを行使する、自分の拳を使おうとする時ってどこか皆“余裕”あるよなって考えたんです。
そういう人たちって、余裕があってむしろ優しかったりもする。
ただ、その中に野性味があって、まだまだ危なさというか、「これ、言葉間違えたら手が飛んでくるな」みたいな怖さを持っていて……実はこれって初期の王馬に近いイメージなんです。
――確かに。山下一夫(CV.チョーさん)が初めて王馬に会った時、「雄として負けた」みたいな台詞がありましたが、まさにそんな余裕と危うさを感じました。
鈴木:王馬の内面については、言ってしまえば私利私欲みたいなところから始まるわけじゃないですか。外に出てみれば、自分がある程度強いと分かっている。それを使ってどうにかしていこうといろいろ動く。
それでも、どうにもならない相手、倒れない相手がいて、王馬の気持ちが変わっていく。そんな流れがあったので、物語が始まった当初は不完全でなければならないんです。
――王馬の成長を大切に演じたということですね。
鈴木:物語が進む中で「成長していく、変わっていく」王馬が見えなきゃいけない。初めから完全な形でやってしまうと、「ただ心変わりした人」になってしまうんですよね。
彼自身が成長、進化している様子を、声のニュアンスや堂々とした佇まい、野性味などで表していけたらいいな、と思いながら演じました。
――これが鈴木さんの作り上げた王馬なんですね。
鈴木:ええ。ただ、そういった読み取り方であっているのかは、原作サイドの担当編集・小林翔さん、ヤバ子さん(原作者・サンドロビッチ・ヤバ子さん)、だろめおんさん(作画担当)に確認しました。
岸誠二監督や音響監督の飯田里樹さんたちに「自分はこんな風に考えていて、こういったプランでやっているんですけど、大丈夫ですか」と話したり。
とにかく細かく、丁寧に十鬼蛇王馬というキャラクターを作り上げていきました。