『ケンガンアシュラ』鈴木達央さんインタビュー|アフレコ現場は声の拳願絶命トーナメント!? 座長が語った“役者道”に男が漢に惚れた話
一年に及ぶ収録
――先ほどの賑やかで空気感が良いだけではなく、非常にハードな現場だということが分かりました。
鈴木:ええ。実際、いろんなものを背負ってやってましたよ。今思い返してみても、本当に濃厚な1年でした。
――いつごろ録られていたのでしょうか。
鈴木:一年半前くらいだと思います。
――そんな前なんですね。では、念願叶っての放送(配信)ということで。
鈴木:そうなんです。念願叶ってですね、本当に。アフレコが10ヵ月以上かかってますから。
――10ヵ月!? 普通はそんなに長くやりませんよね?
鈴木:はい。やりません。フィルムの上がりや撮り直しを待っていた関係もあるんですが。
――収録はプレスコだったのでしょうか?
鈴木:プレスコではないので、映像はありました。ただ、闘っていくシーンは難しいシーンも多くて。
例えば、アギト・大久保戦は寝技の応酬になるので、絵が難しくて。そこだけ後日別録りになっていました。
あとは、ちょっとここのシーンもう一回録らせてください、っていうのはちょこちょこありました。
――スタッフのこだわり、熱意を感じます。
鈴木:そうですね。連続して10ヵ月ではないにしろ、気持ちは切れずにすべてやっていけました。
特に後半戦。なんといえばいいのか分からないんですけど気持ちが昂ぶっていて。
俺、呉雷庵とやるのがワクワクしてたんですよ。実は、演じている禎丞(松岡禎丞さん)とこれだけ台詞を交わして闘いあう、取っ組み合いをするのってやったことがなくて。
お互い「楽しみだな」って話は飲みの席で話していたりして。禎丞は『ケンガンアシュラ』で一番仲良くなった後輩ですね。
そういうこともあって本当に楽しみで。お互い、声カッスカスになるまで叫びました。あからさまに背中がつってたり、首変に痛いなっていう感覚はありつつもずっと叫んでましたね。
両陣営の応援のガヤを試合のパートが終わった後に収録するんですけど、禎丞もその時はさすがに声カッスカスになっていて(笑)。
一同:(笑)。
鈴木:「タツさん、なんで声が出るんですか?」って。「お前とは鍛え方がちげーんだよ!」って返しましたけど(笑)。
――(笑)。今作を通して鈴木さん自身もさらに強くなった感じがします。
鈴木:そうですね。ちょうどこの前、後半戦が全部出来上がったということで、行ける役者さんとスタッフさんとで集まって観賞会をしたんです。
最初から最後まで通して観終わった時に、「俺、ここに魂の一部をちゃんと置いてきたんだな」ってすごく思いました。
観ている間、「こうしなきゃ、ああするべきだった」っていうのが一切なくて。ずっと安堵していました。フィルムの中に自分の魂の核を置いてくることが出来たと分かって、とても嬉しかったですね。
もちろんこれは俺のやり方で、言ってしまえば自己満足なのかもしれないですけど、フィルムを作るってこういうことなんだな、と思いました。
「音を作る人とこんなに仲良くなる役者いないよ」って言われるくらいスタッフさんとめちゃくちゃ仲良くなって、一緒に作って。それが心地よかったんですよね。
王馬が喋っているのを観ても「ああ、よかったな」って思えて。どこか他人ごとになっているんですよ。それって王馬が、役とかキャラクターじゃなくて、一人の人間になってくれたことなのかなと思います。
――そこまで作りこめるのはなかなか経験できることではないと思います。
鈴木:そうですね。いっぱい悩んだですが、本当にいい経験させてもらったなと。
格闘ものということで、殴り合って血が出なきゃ始まんねえみたいな作品なので、観ることにハードルの高さを感じるかもしれないんですけど、たくさんの方に観てもらいたいです。
格闘技も盛り上がりを見せている昨今ですし、そういったファンの方々にも観ていただけたらなと思いますね。