冬アニメ『魔術士オーフェンはぐれ旅』原作者・秋田禎信さん&オーフェン役・森久保祥太郎さんインタビュー|森久保さんが現場一番の若手から若手を引っ張る座長へ
孤独な執筆作業と対照的なアニメ制作に憧れ
――ちなみにお二人が出会った時のことを覚えていますか?
森久保:20年前、アフレコ現場に来てくださって、初めてお会いしたことは今でも覚えてます。
秋田:森久保さん、優しいんですよ。僕はしょせん制作スタッフ側の人間で、演者さんとは壁があるものと思っていましたが、森久保さんは平然と話しかけてくれて。こういうところが若手たらしと言われる所以なんでしょうね。
森久保:僕も当時は若かったですよ! 先生とは年齢も近いし、今はフランクにお話しさせていただいていますが、お会いするまではこんなに大作を書く先生だし、近づきがたい方なのかなと思ったら、みじんも感じさせない腰の低さで。それは今も変わらず。
秋田:すべての人を恐れていたので(笑)。
森久保:「あなたの作品ですよ~!」と声を大にして、伝えたいくらい。自分がどんなにすごいのか、まったく受け入れないんです、当時から。お忙しい方なので毎回ではないけど、現場によく来てくださいましたよね。
秋田:「人の現場にお邪魔するのもちょっと」という気後れもあって。
森久保:こんなところも(笑)。でも『オーフェン』のラジオのパーソナリティもやらせていただいて、そこでもちょくちょくお会いして。
秋田:この滑舌の悪い私が電波にのっていいのだろうか? と思いつつ。
森久保:でも全然、印象は昔から今に至るまで変わりませんね。見た目の年もとらないし。
秋田:いや、体のあちこちにボロが出てますよ。
森久保:それはお互い様です(笑)。
秋田:役者さんは集団で作品を作り上げていくわけですが、僕の仕事は孤独なので憧れるんですよね。暗い冬の外から明るい窓を眺めるみたいな(笑)。だから当時から皆さん、まぶしかったんです。世界で一番明るい場所かもしれないと思うほど。
――アニメシリーズで好きなエピソードを挙げていただけますか?
秋田:僕の中で一番印象が強くて、さんざんぶん殴られたような感覚だったのがハーティアの「エビ男」をずっとこすられ続けたこと。
他に使いやすいフレーズがなかったんでしょうけど、何とも言えない気持ちでした(笑)。若い頃に勢いで書いたエピソードを、改めて他の人の手で、見方でいじって見せられるというのが新鮮だったんです。おもしろかったし、学んだことも多かったし。
森久保:きっとハネさせやすかったんでしょうね。僕は冒頭のシーンが今でも印象に残っていて。月明かりが照らす湖で、クリーオウが水浴びをしていて、高い塔の上にオーフェンが立っていて風を吹かれていて。
秋田:口で説明されると「何でだろう?」と思いますよね。時代性と言うか、今見たら新鮮だったり、驚きがあるかもしれませんね。
森久保:20年前はTVシリーズならではの演出や構成で、原作とはひと味違うイメージのシーンもありましたよね。
秋田:放送されるのが土曜日の夕方ということもあって、いろいろとTV的な制約もあったようで。
森久保:原作にあって、出せなかったものもあって。武器とか。
秋田:ナイフはダメだけど、斧はOK、とか。
森久保:その点、今回の2020年版は原作に忠実に作られているので、20年前のシリーズとは違った印象で見てもらえるのかなと思います。