『攻殻機動隊S.A.C.』Blu-ray BOX発売記念&最新作『攻殻機動隊 SAC_2045』神山健治監督×マフィア梶田氏による取材会レポート|フル3DCGとなった最新作の一番の変化はセリフ量!?
『攻殻機動隊 SAC_2045』のキーポイントは“ポスト・ヒューマン”
先ごろ発表された『攻殻機動隊 SAC_2045』のストーリーには、驚異的な知能と身体能力を持つポスト・ヒューマンという敵と思しき存在が登場します。神山監督は「ポスト・ヒューマンという敵を設定しつつ、彼らがこの世界に登場したとしたら、どういう行動をとっていくのだろうかというシミュレーションをやっています。何年か前によく言われた、AI同士が会話を始めると人間の言葉にする必要がなく、人間はそれを確認することもできないだろうという話です。AI達が会話を始めちゃったら、ヒューマンエラーが地球にとって一番の害と判断して、人間を排除しようとするとか。実際、様々な会社がAIの研究してる中で割とぶち当たる問題」と指摘。
ちなみに海外の方に“ポスト・ヒューマン”という言葉のイメージを聞いたところ「新しい人間というよりは、ディストピアだったりポストアポカリプスだったり、人類が滅亡した世界を想像する単語ですと言っていて、良いイメージが一個もなかった」そうです。
しかし、「希望を見出しにくないと思いながらも決めちゃったからこの名前でいこう、みたいな感じですよね(笑)」と笑顔を見せる神山監督でした。
話題は変わり、公安9課のキャラクターの中でもオペレーターとして登場するアンドロイド・通称「オペ子」が大好きだという梶田さん。
神山監督からは「同じ顔した子が大勢出てきて、指がバシャって割れて、みんながカタカタとキーボードを打ち始めるっていうのは、『攻殻』の一つの“アイコン”なんだけど、『攻殻機動隊 SAC_2045』ではあえて使ってないんですよ」とのこと。
3DCGによるリップシンクの変化
声優の経験もある梶田さんが、『攻殻機動隊 SAC_2045』のフル3DCG化がアフレコに与えた影響を聞くと、神山監督がリップシンクの大変さを語ります。
今回の『攻殻機動隊 SAC_2045』は、最終的に24コマ(1秒あたりに24枚の画像を流すこと)のいわゆるフルコマ(フルアニメ)にしたそうですが、12コマにも挑戦したそう。しかし、モーションキャプチャのデータとの相性が悪く、アニメーターへの負担が大きかったと神山監督。
そして、フルコマでやる上で問題になるのがリップシンクです。「今回、役者に実際のセリフも含めて演技してもらい、それに合わせて口パクを作るんですけど、それをそのまま使うと、口パクが早すぎて絶対に声優さんが乗せられないんです」と物理的な問題を指摘。
「公安9課のキャラクターは声優さんが作ってきたものなので、彼らの中にリズムがあるはずなんです。それを強制的に合わせるのは難しいなっていうのは最初から分かってたので、あえて口パクだけはちょっとゆるいんですよ」という裏話も。
さらに技術的な話題も飛び出します。「セルアニメの口パクの付け方をちょっと踏襲していて、語尾で口を閉じない。6~12フレームくらい、ちょっと口が開いたまま終わってから閉じる。声優さんが声を入れられる幅をそこに持たせようと思ったんです」と細かいこだわりが見える話題には取材陣も食い入るように注目していました。