冬アニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』OPテーマ担当アーティスト・BURNOUT SYNDROMESインタビュー│コンセプトベストはアニメファンへ向けた名刺代わりの1枚
「鳥肌が止まらない」のフレーズに込められた意図と想いとは?
――アニメのOP映像は曲頭の歌詞そのままの演出で驚きました。
熊谷:素晴らしかったですよね。そのあとのAメロで日向が雪の中、自転車を押しながら歩いているシーンは想像していたので、ヒリヒリしたフレーズを入れたんです。
OP曲を作る時に大切なことは、一番は絵だと思っていて、アニメーターさんの中では曲を聴く前から「こんな映像にしたい」というイメージがきっとあると思うんです。その絵をどれだけ予想しながら作ることもポイントの1つなのかなと。
石川:すごくうれしかったですね。マンガで読んでいた時も日向が自転車を押しているシーンは見開きで描かれていて印象的だったので、ちゃんと入っていて。
廣瀬:初回放送の当日にワンマンライブでも初披露したんですけど、演奏している時の感覚とOPの映像が自分の中でリンクしていて。「あっ、俺、跳んでる!」という瞬間が何度もあって、映像の雰囲気と演奏している側のイメージが一緒になっているというのはおもしろいなと思いました。
――Bメロ「羽撃かぬ人生なんて剥製と変わらない」のフレーズで、ゴミ捨て場のシーンが出てきたところも印象深くて。
熊谷:今のロックではもっとナチュラルに流れているのがトレンドなのですが、僕らはアニソンとしてA、B、サビがパキっと分かれる作り方をしています。あそこは日向が成長していく中で苦しんでいるシーンを表わしているんだと思うんです。
その他には、サビで「鳥肌が止まらない」という歌詞があるんですけど、本来は寒気や気持ちが悪い時に使われる言葉だから誤用で、幅広い年齢層に向けた作品には適さない表現じゃないかという意見があったのですが、『ハイキュー!!』ファンの方ならきっとプラスに受け止めてくれると思うし、僕自身も読んでいて何度も鳥肌が立ったから。だから使わせていただきましたが、聴いてくださった方からも「あのフレーズが好きです」という声もいただけて良かったです。
――既にライブで披露されているとのことですが、反応はいかがでしたか?
熊谷:よかったですね。
石川:あとアニメOPでは1コーラスなので、2番以降を必死に聴き取ろうとする皆さんの熱意も。それだけ愛されていて、期待されているんだなと実感しました。
――そのほか、お気に入りのフレーズや聴きどころは?
熊谷:2番以降の歌詞も『ハイキュー!!』感があるし、その後が見えてくるし、1番で感じた高揚感をそのまま受け取ってもらえるかなと。アニメサイズしか聴いていない人にも自信を持って、「フルで聴いてみてよ」と言える楽曲になっています。
石川:普通の曲ではあまり歌詞になっていない言葉が多く使われていると思います。「超アウェー」とか「鳥肌」とか聴き慣れない言葉がメロディにのっているのを聴くと、歌いたくなると思うので、ぜひカラオケで歌ってほしいです。
熊谷:1つこだわりがあって、作品のセリフやワードをそのまま使うのは違うなと。パワーがあるから喰われてしまう気がするんですよね。僕は原作との戦いだとも思うし、「僕はこのワードで『ハイキュー!!』の良さを表現したいです」というのがタイアップの醍醐味で。たぶんアニメのスタッフさんたちもアニメでしかできない表現をしようと頑張っていると思うし、切磋琢磨していいものを作り上げていく。だから聴いたことがない言葉でも『ハイキュー!!』らしいものを探してみました。
廣瀬:またライブの話になりますが、曲頭の「爪痕が残るくらい拳を握り締め」のフレーズでみんなが握り拳を高く掲げてくれるのがうれしいし、きっと自分のパワフルな感情がみなぎってくると思うので、アニメを見たり、カラオケで歌う時にもぜひやってほしいです。
「PHOENIX」のMVは過去2作同様に学校を舞台に、教室での演奏も
――「PHOENIX」のMVですが、過去の『ハイキュー!!』OP曲の「FLY HIGH!!」や「ヒカリアレ」でも学校が舞台で女子生徒が主役、そして歌詞を画面上で見せるスタイルでしたが、今回も踏襲していますね。
熊谷:今回は楽曲に沿ったストーリーになっていて、ループものになっているところもおもしろいのでは。
石川:教室での演奏シーンを3回もやらせてもらうことも珍しいですよね。3部作かと思うくらい(笑)。でも3作とも基調とする色が違って、「FLY HIGH!!」は青で、「ヒカリアレ」は白黒で、今回がオレンジで。きれいだなと思いながら完成映像を見てました。
廣瀬:大人になったなと思いました(笑)。撮影中に「FLY HIGH!!」からのMVを見させていただきましたが結構、成長しているんだなと感じられてうれしかったです。
カップリング曲「BREAK DANCER」は音駒高校に寄せた曲?
――そしてカップリング曲「BREAK DANCER」ですが、クラブ系のクールなサウンド感のオルタナティブロックで印象がまったく違っていて驚きました。
熊谷:このバンドでは今までやったことがないサウンドですが、やったことがないことに挑戦するのが好きで。あとシングルを作る時はカップリングを含めて、1つのコンセプトでまとめたいと思っていて。例えば「ヒカリアレ」のカップリング「PIANOTUNE」では歌詞に「南無阿弥陀仏」がありますが、「ヒカリアレ」のキリスト教感と対になっておもしろいかなと思ったり。今回はどうしようかなと考えた時、「PHOENIX」が『ハイキュー!!』の烏野高校に寄っているので、この曲は音駒高校に寄ってみたいなと思って作ったんです。
また「PHOENIX」はバーサーカーのイメージで書いていて、とにかく戦うのが楽しいと。そのためだったら傷つくこともいとわない、才能ある連中だとしたら、この曲は地べたをはいながらも才能ある連中をどう一発で狩り落とすかを考えている、持たぬ側の曲になっています。
――確かに戦いを想像させるワイルドさがありますね。アニメの試合シーンで使われるとハマるかもと思っていました。
熊谷:音駒戦がアニメで描かれるとしたらこの曲でいきたいなと思いながら作ったので。
石川:また今までの曲はずっと空を見ていたし、ライブでも「高く飛べますか! ジャンプ! ジャンプ!」と言っていたけど、一度地面を見てみたら「こんなにカッコいいんだ」と気付いた感じです。
廣瀬:これぞ、熊谷という感じです。僕が好きな楽曲がそうだからかもしれないけど、タイアップだけでなく、アルバムにもおもしろい曲が多くて、その良さがこの1曲にぐっと詰め込まれたみたいな。
EDM系のサウンドと言葉のギミックの数々に熊谷ワールド全開!
――そしてカッコいいけど、ダンサブルなので、クラブで流したり、踊ったりするのも気持ち良さそうです。この曲は熊谷さんお1人で編曲もされているので、引き出しが広いなと。
熊谷:僕、バンドサウンドと同じくらいミクスチャー系、EDM系も好きなんです。だから趣味全開で書いてみました(笑)。シングル曲から入ってきてくれた方にも驚いてもらえるかなという想いもあって。ビックリしつつ気に入ってもらえたらうれしいです。
石川:僕はヒップホップが好きなんですけど、この曲にはラップの要素も多くて。例えば「こんな鬱蒼とした一生は何の嘘? まるで雑草 そんな如何仕様も無い妄想」ではたくさん韻を踏んでいたり、言葉のギミックが散りばめられていて、内容だけでなく、耳でも楽しめるかなと思います。
熊谷:これだけ言葉を詰め込むと韻を踏んであげないと聴きにくくなるし、日本語って詰めるとインストみたいなものになってしまうので。僕自身はガラスが割れるSEが気に入っていて。アニメ的というか。1つではあの音が出なくて、破砕音を何重にも重ねているんです。音楽のみでアニメと戦おうとしている意欲がSEから伝わるので、あの瞬間が好きです。
廣瀬:この曲でBURNOUTの深い、深い沼にハマっていくきっかけになる曲かなと思っています。
――シンプルなストレートロックもいいけど、他の引き出しもあるんだぜと。
熊谷:みんなの新鮮な驚きが欲しくて。「PHOENIX」をはじめ、タイアップ等でご一緒する音楽プロデューサーのいしわたり淳治さんから「その曲は聴いてくれる人の人生とシンクロするのかな?」と助言をいただくんです。
「PHOENIX」がある程度、才能がある人間の戦いの歌だけど、世の中にそんな人たちばかりではないと思うんです。そう考えるともしかしたら感情移入できない人もいるかもしれない。そういう人たちをカップリングで救いたい、そんな気持ちもあって。自信はないけど上を目指したいという志はある、そんな人たちと歩幅を合わせられれば、みんなハッピーになれるかなと。
――サウンドのグルーヴ感と併せて、テンションや気持ちが湧き上がってくるので、それぞれの勝負の時に聴くといいかも。
熊谷:聴くスポーツドリンクみたいに(笑)。