『バンドリ!』花園たえ役でお馴染み、大塚紗英ソロデビューインタビュー|ミニアルバム『アバンタイトル』収録曲の中には『バンドリ!』へのリスペクトも
最初にリリースする作品に“BanG”を入れるのは決まっていた
――アレンジの伊藤賢さんは、信頼関係が出来上がっている方なのですか?
大塚:私がライブでやっている曲のほとんどは伊藤さんがアレンジをしてくださってます。すごくシンプルかつ正確にアレンジをしてくださるんです。
そんな正確で発注通りの仕事をしてくれる伊藤さんなんですけど、1曲目の「フォトンベルト」では私のSスイッチが入ってしまい(笑)、伊藤さんが遊んだらどうなるんだろうと思って結構意地悪な発注をしました。
概念ばっかりで、「ディズニーランドみたいな感じ」とか、間奏も「お任せ!」みたいな感じだったので大変だったと思います。バンド紹介になるソロ回し部分は、「8小節間フリー」って渡していたので、よくあんなに素晴らしい感じで返してくれたなぁと思うし、良すぎて笑いました。
――バンド回しを入れたのは、どうしてですか?
大塚:いつもお世話になってるバンドメンバーさんへの感謝というか。バンドメンバーさんとまた一緒に演奏したい願いがあって、そのみなさんが自己紹介のときに弾くというヴィジョンがあったので作ってもらいました。曲中にバンド紹介を入れちゃおうって。
――ちなみに歌詞に《BanG BanG》とあるのは、『バンドリ!』へのリスペクトですよね?
大塚:もちろんです! もし自分がデビューして、最初にリリースする作品に“BanG”を入れるというのは、自分の中で勝手に決まっていたんです。
Poppin'Partyのデビュー曲が、「Yes! BanG_Dream!」で、“BanG”って銃を打つフリをするんですけど、あまりフリがある曲がない中で、それはずっとやってきたから、私のデビューする曲でも同じフリを入れるというのは、なんか良いなぁと思って。
――エモいですよ。でも個性的な曲が並んでますけど、3曲目の「マーキング」は驚きました。いきなり昭和の歌謡曲が来たなと。
大塚:変わった曲が作りたいというのがあったのと、私、水樹奈々さんへのリスペクトがあるし、『バンドリ!』の上松(範康)先生の曲がすごく好きなんです。
それこそ『バンドリ!』のオーディションのときって、声優さんのバンドというのは知らず、上松先生のプロデュースするガールズバンドということで受けたところはあるので、そういう上松さんが書く奈々様の歌謡曲テイストの曲っぽいのが自分にも欲しいと思ったんです。
で、そこにどうやって自分の色を残そうかと考えた結果、リリックに独特の昭和臭を漂わせることになったという(笑)。
――歌謡曲チックな感じはすごくわかります。
大塚:「深愛」とか、TVアニメ『WHITE ALBUM』の感じというか。あの世界観、あの感じを出したかったんです。
――そうかと思えば、「What's your Identity?」は、疾走感溢れる王道の曲ですしね。
大塚:私、『週間少年ジャンプ』の主人公になりたくて…(笑)。歌詞自体は等身大に近い、思ってることをそのまま歌詞にしたんです。この曲はアニメの主題歌になったので、『エッグカー』の壮大でファンタジーな世界観に合うように、伊藤さんにストリングスとかできらびやかにしてもらいました。
――続く「ドン引きされるほどアイシテル!」と「7月のPLAY」は対象的な恋愛ソングで。
大塚:自分がいる場所とかも鑑みて、そうじゃない曲も歌ってるんですけど、実は恋愛の曲を書くのがわりと得意なのでやりたかったんです。
「ドン引き~」は恋愛の明るくてポップな世界観の曲、「7月のPLAY」はドープでブラッキーな曲になっているので、ここのバランスは結構良くて気に入ってます。
――「ドン引き~」も爽やかなんだけど、一筋縄ではいかない人なんだなと思いました。
大塚:キラキラなJ-POPにしたいという気持ちはあるんですけど、私の色って何だろうと考えて、“ドン引きされるほど”っていうワードに繋がったんですけど、結構「変態だね」って言われてショックを受けたんですよ(笑)。
歌詞に《日々鮮明にキミのレプリカを飼育中》ってあるんですけど、意識せず語呂の良さもあって歌ってたら、そこが変態を感じると言われて、そうなんだ!って。
――確かにかわいいとも受け取れるんですけど、“飼育中”とかがちょっと引っかかるんですかね。
大塚:それこそ花園たえちゃんが持ってる世界観とかそういうところあると思うんだけどなぁ。“添い寝中”とかにしとけば良かったのかな……日本語は難しいなぁ(笑)。
――それが個性ですから(笑)。「7月のPLAY」はアレンジも楽器の音色もめちゃめちゃカッコいいですよね。
大塚:私も気に入ってます! シャレオツにしたい気持ちで作りました。
――ただ、歌詞はやばかった。一番ダメな恋愛だなと。
大塚:私が普段仕事をさせて頂いているコンテンツさんのことを考えると、圧倒的に触れてはいけないテーマにあえてガンガン触れていくという(笑)。
最初に披露したのが個人のファンミーティングだったんですけど、歌詞を出しながら披露したので反響も大きくて、「すごくエロい歌詞を書くんですね」とファンの方に言われました。
――《君は1度も1度も好きって言ってない》って完全にダメなやつですよ。
大塚:ダメな恋愛ですよねぇ…。でも、曲を作ってるときって、このストーリーにのめり込んでいるから、主人公の気持ちになってるんですよ。本当は好きでいてくれてるんじゃないの?って期待もあるから、最後は《行く末は何処にある?》って、どっちのニュアンスにも取れるような言葉にしてるんです。
ただ、実はFC限定盤に「まにまに」という曲が入ってて、その曲は、「7月のPLAY」のアンサーソングとして書いたんです。しばらく経って「7月のPLAY」の歌詞を見直したときに、これはどう考えてもうまくいかないなって私も思っちゃって(笑)。
その「まにまに」はデビューが決まりそうな、わりと最近書いた曲で、自分の中でもいろいろと覚悟をしなければいけないときだったんですね。何となくいろんなものを捨てる感覚……たとえば生半可な自分とか、現状を捨てるみたいな感じで、そうしなければ前に進めないっていう気持ちがあったんです。その意思が曲にもすごく反映されていて、恋愛の曲でアンサーソングなんだけど、2番のサビあたりに自分の今の本当の気持ちが入ってるんです。
だからそちらも聴いてほしいんですよね。FC限定盤だから、あまりキャッチーさとかを意識しないで作っているので、歌詞も技巧的になってて、小説的な作り方をしているんです。起承転結の転じる部分のDメロで、つまりその歌詞が何を言っているかの答え合わせをしてるんです。そういう意味で、珍しく自信がある曲なので、ぜひ!
――いよいよ、デビューミニアルバム『アバンタイトル』が発売されますが、3形態同時購入特典に大塚紗英オリジナル朗読ボイス付きフォトカード(全3種)があるそうですね。大塚さんが書き下ろしたという。
大塚:はい。全部自分で書いて、録らせていただきました! もう深夜テンションで書きなぐったんですけど、気合いで書きました。いろいろなキャラクターが出てきて、アゴがしゃくれるんじゃないかと思いながら録った声もあるので、そちらもぜひ聞いてください。
[文&撮影・塚越淳一]