アニメ『歌舞伎町シャーロック』小西克幸さん、山下誠一郎さんによる座談会第11弾|対峙したシャーロックとモリアーティを演じる上で感じた難しさとは? ワトソンのエピソードや『歌舞伎町シャーロック』らしいラストを見届けて!
一番の要求は謎の解明にアリ!! そんなシャーロックの思考を割り切って演じる難しさ
――小西さんには、これまでシャーロックとワトソンの関係を中心に伺ってきましたが、#21で、最初にシャーロックを変えたのはモリアーティであることを明言しています。#13以降このシーンに至るまでのシャーロックのモリアーティに対する心情を、どのように捉えて演じられていたのでしょうか?
小西:モリアーティは、シャーロックを前に進ませてくれたというか、自分自身に意味を持たせてくれた人の内の一人で、一番最初だったと思いますが、2クール目には、シャーロックがモリアーティを疑っているような描写が結構入っていて。
アフレコの時はあまり絵がないこともあったので、監督と「どんな心情なんですか?」と話をさせていただいたら、シャーロックとしては「モリアーティをどうにかしたい」というより、事件を解決したいという思いの方が強い、ということをおっしゃっていました。
なので、このシーンも「事件を解決することに興味がある」ということを意識して演じていました。
たぶん、シャーロックにはワトソンという羽と、モリアーティという羽があって、シャーロック自身はそのどちらにも気付いていないので、もがれて、いなくなってから初めて気付くんですよね。
彼自身、もともと人間には興味がなくて、どちらかというと感情のメカニズムや思考にしか興味がなかったのが、ワトソンが来たりして少しずつ血が通い始めましたけど、それでもまだ一番の要求は謎を解いたりすることだったんだと思います。
監督から話をうかがって、こういう道を進むモリアーティを助けたいとか、同情したりという思いからではないと割り切って演じていましたが、みんなでずっと楽しくやってきていたので、小西個人の気持ちとしては割り切りづらいというか。
シャーロック独特の思考なので、そこは難しいところでした。
――なるほど。#19でモリアーティが、シャーロックがモリアーティを止めなかったのはゲームを続けたかったからだと語り、ワトソンがその真偽を問いただすシーンで、視聴者の多くはワトソンと同じく、シャーロックに否定してもらいたい、モリアーティを助けたいからだと思いたかったと思うのですが、シャーロックが何も言わなかったのは、楽しんでいたわけではないけど、謎を解明したいという思いが強かったからなんですね。
小西:以前のシャーロックであれば、そこでモリアーティに「靴にキスしてよ」と言われても、しないと思うんです。
山下:(首を縦に振り、強く)うん、うん。
小西:あれは、自分は意識していないけど、「人を助けなきゃいけない!」という彼の中で起こっている大きな変化の表れなんですよね。
ワトソンのエピソードと、大切なものを失った人たちがどうするのかを見届けて☆
――収録ではその都度、監督・音響監督などから説明を受けて収録されていると伺いましたが、#19~#21の収録現場の雰囲気、共演者の方の反応はいかがでしたか?
山下:毎回、音響監督の長崎(行男)さんがブースに入って、ゲストなどで初めて参加される方にも概要を説明される段階で、先のことをポロっとおっしゃったり……。
小西:「えー! そうなの?」という、衝撃的なネタバレもたまにあるから(笑)。
一同:(笑)。
山下:「このキャラは、この後……」とかサラッと(笑)。
そういうところも含めて、長屋の面々はなんとなくですけど、今後こうなっていくんだということがある程度、指針は見えていたので、この話数で「まさか!」ということはなかったと思います。
小西:この事件の犯人が誰でとか、モリアーティが操っていることとか、アフレコが始まる前に長崎さんから全部説明していただいていたので、(キャスト同士で)改めて話したりする程ではなかったですね。
――そうだったんですね。青山穣さんと橘龍丸さんの座談会の時に、山下さんと吉村愛監督が相談している流れから、早い段階でネタバレを知ってしまった橘さんが、#19の収録の時には「ついに……」という心境だったとおっしゃっていました。
山下:確かに。小西さんが先ほどおっしゃっていたように、僕も吉村監督といろいろお話させていただきました。
#19の「マジレスかよ」と本音で話すところから、果ては父親を殺してしまったりするんですけど、それが悪いことだと自覚がない分、どういうトーンで演じたらいいか、でも演出として盛り上げて見せたい、誇張はしたいというバランスを取るのがすごく大変で。
後半になってくると毎回、監督に「お時間ありますか……」と相談していた気がします。
“悪”という見せ方よりは、フラットな感情で「どうして人を殺したらいけないんですか」という当たり前なのにゾッとする感覚が、絵と音でどれだけ伝わるか、どこまで出せばいいのか。
例えばそういう怖さは、雰囲気や視線、一挙手一投足でわかるところなんですけど、絵で見せる部分はお任せするしかないので、じゃあ声でどういうことができるのかというところを、監督や長崎さんに何度も、何度も相談しながら作り上げていったのは、思い出深いことではあります。
――#21は衝撃的なラストでしたが、残り3話分はどのような展開が待っているのか、ヒントをお願いします。
小西:『歌舞伎町シャーロック』は序盤1話完結型で駆け抜けてきたんですけど、最後はゆっくり、しっかり作っているイメージがあって、今までとはまた違う濃厚さを感じますね。
単純に、この先どうなってしまうのか。モリアーティの生死だけでなく、モリアーティによって、シャーロックや周りにいる人たちもどうなっていくのかという、全部の謎が一気にわかってくると思います。
シャーロックが主人公ですけど、ワトソンを中心に今までキャラクターたちが積み上げてきて、#22がワトソンのエピソードになっているので、そこを通した後どうなっていくのかが、すごく面白くなるんじゃないかと。
今までワトソンは、「助けてください」とか「僕が助けます」と、誰かの力になりたい良い子ちゃんではあるけど、自分のことは全然話してこなかったので、どういう人間だったとか、どう思っていたとかが少し見えて、#24まで一緒に駆け抜けて見ていただきたいと思います。
この先のエピソードも含めて全部見た後に、エンディング「パレード」の映像を見ると、だいぶエンディングの意味が変わってくると思います。
山下:ここから『歌舞伎町シャーロック』らしい結末というか、ひと区切りを迎え、最終話まで見た時にはいろいろな意見や感想が出る作品だろうなと思っているので、見た上で自分なりの感想を持ったり、自分自身についても考えることがあると思います。
#21で大事な存在が欠けても、みんなは生きていかなければならなくて。大切なものを失った人は、その後どうしていくのかというところは、すごくセンシティブなことだけど重要なことだと思うので、見届けていただきたいと思います。
TVアニメ『歌舞伎町シャーロック』作品情報
放送情報
TBS:毎週金曜深夜 1:55~
MBS:毎週金曜深夜 1:55~
BS-TBS:毎週土曜深夜 1:00~
AT-X:毎週火曜 夜8:00~
リピート放送 毎週木曜 昼12:00~/毎週土曜 深夜4:00~
※放送日時は変更になる可能性がございます。
《配信》
dアニメストア:毎週土曜 昼12:00~
AbemaTV:毎週火曜12:30~
ほか
イントロダクション
新宿區イーストサイド……混沌を極めたその街の中心には、ネオン瞬く歌舞伎町が広がっていた。
光が強けりゃ影も濃い。悪人どもの潜む暗がりの、そのまた奥に探偵長屋の明かりが灯る。
ハドソン夫人の営むその長屋は、なくて七癖、曲者ぞろい。野心満々のケッペキ探偵に、男を化かす姉妹探偵。はたまた刑事くずれのオッサン探偵がいるかと思えば、ヤクザを破門されたアンチャン探偵……
そして真打は、落語をこよなく愛する天才探偵シャーロック・ホームズ。切り裂きジャックによる猟奇殺人が起きたその夜、舞台の幕は上がった。
探偵どもの化かし合いを横糸に、シャーロック、ワトソン、モリアーティ、三つどもえの友情を縦糸に……
ミステリー? いやさコメディ? なんともはや、判別不能ドラマのはじまりはじまり~。
スタッフ
監督:吉村愛
シリーズ構成:岸本卓
キャラクターデザイン・総作画監督:矢萩利幸
プロップデザイン:清池奈保・津坂美織・久原陽子
色彩設計:藤田恵里香
美術設定:金平和茂
美術監督:片平真司(スタジオアカンサス)
3D監督:磯部兼士(ランドック・スタジオ)
特殊効果:村上正博
2Dワークス:濱中亜希子
撮影監督:荒幡和也
モーショングラフィックス:大城丈宗
編集:濱宇津妙子
音響監督:長崎行男
音楽:伊賀拓郎
オープニングテーマ:EGO-WRAPPIN’「CAPTURE」
エンディングテーマ(#1~#12):ロザリーナ「百億光年」
エンディングテーマ(#13~):石崎ひゅーい「パレード」
アニメーション制作:Production I.G
キャスト
シャーロック・ホームズ:小西克幸
ジョン・H・ワトソン:中村悠一
ジェームズ・モリアーティ:山下誠一郎
京極冬人:斉藤壮馬
メアリ・モーンスタン:東山奈央
ルーシー・モーンスタン:東内マリ子
ミッシェル・ベルモント:青山穣
小林寅太郎:橘龍丸
ハドソン夫人:諏訪部順一