劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅲ.spring song 杉山紀彰さん&川澄綾子さんインタビュー|士郎とセイバーの出会いは、まさに「運命」だった【連載第2回】
原作のバッドエンドにまつわる話題も
――士郎とセイバーというコンビについて、おふたりが好きな部分はありますか?
杉山:聖杯戦争に勝つために、卑怯な手だったり、汚いやり方をしないところでしょうか。士郎はどんな不利な状況でも真っ直ぐに相対しようとして、セイバーもそれに同意してくれる。二人がもっている魂の本質が近いからこそ成り立つ、見ていても気持ちのいいコンビなのかなと。
川澄:セイバーはサーヴァントとして士郎に使役されている立場なのですが、士郎が対等以上の存在としてセイバーを信頼してくれていることが、このコンビの良いところだと思っています。
他の『Fate』シリーズの映像化を見ても、基本的にマスターは、サーヴァントの真名を知った上で、その過去の功績も含めて畏敬なりの感情を抱くことが多いのですが、士郎はセイバーの過去について何も知らないにも関わらず、その在り方だけを見て素直に尊敬し、尊重してくれている。その素直さがあるからこそ、コンビとしてしっくりくる関係になっているのかなと思います。
――士郎とセイバー以外だと、お気に入りのコンビはいますか?
杉山:どのペアもすごく魅力的なので、一つを選ぶのは難しいですね。例えば凛とアーチャーは、士郎とセイバーとはまったくタイプが違っていて、一見噛み合っていないように見えるシーンもあるのですが、心根の部分では互いを理解し合っていて、足りない部分をうまく補い合っているところとかが好きです。
あとは桜とライダーの関係もそうで、ライダーは桜のことをすごく心配していますが実際に口にはしなかったり、逆に桜もライダーに気を使っていたり、それぞれのコンビごとに違った魅力があると思います。
川澄:杉山さんと同じで、すべての陣営にドラマがあるので、一番を選ぶのは難しいのですが、特殊な例として印象深いのが、言峰(ランサー、ギルガメッシュ)とか、臓硯(真アサシン)のコンビでしょうか。
『Fate』シリーズのマスターとサーヴァントは、士郎から見ると敵という立ち位置になってしまうのですが、その2人の間には物語があり、2人なりの信頼や絆の様なものが存在しています。ですが、二つの陣営のあり方はその中でも異質というか‥。
ただ、そうした陣営が存在しているということが、[HF]というルートの特徴でもあると感じています。
――原作のゲームだとたくさんのバッドエンドが用意されていますが、おふたりの中で印象に残ったバッドエンドはありますか?
杉山:その話で思い出深いのが、最初に『Realta Nua』の収録をした時、バッドエンドで断末魔を上げるシーンが異様に多くて(笑)。普通に収録をしたらそこで声が枯れかねないので、その日ごとの収録の最後の1時間とか30分に、バッドエンドだけをまとめて収録するというやり方をしていたんです。
――(笑)。確かに、バッドエンドの数が尋常ではありませんからね……。
杉山:しかも、ゲームをプレイされた方は分かると思うのですが、引きちぎられたり潰されたり、士郎の死に方のバリエーションが凄まじく多いんです。なので「潰された時はこんな声で、刺された時はこんな声になるかな」と、毎回想像力をフルに発揮しながら断末魔を録っていた時の記憶がとくに強いですね(笑)。
杉山さんの収録は本当に大変だったと思います‥。ですが魅力的なバッドエンドがたくさんあるのも『Fate』ならではですよね。とても膨大な数があるので大変なのですが、全部のバッドエンドを確認していただくのも楽しみ方の一つなのかなと思います。
――そうですね。その際は、士郎の断末魔も注目ポイントになりますね(笑)。
士郎:そうですね、是非断末魔が使いまわしではないことにも注目していただいて(笑)。ゲームの断末魔って何パターンか録ったものを使い回すことが多いのですが、『Fate』では全部別々に収録していますからね!(笑)