春アニメ『BNA ビー・エヌ・エー』吉成曜監督&脚本・中島かずきさんインタビュー|獣人モノにすることによって可能となる思考実験
4月から放送がスタートするTVアニメ『BNA ビー・エヌ・エー』。TRIGGER最新作であり、監督・吉成曜 ✕ 脚本・中島かずきということでも話題になっているが、その中心人物である2人に、『BNA ビー・エヌ・エー』飲み力についてたっぷりと話を聞いた。
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監督・吉成曜✕脚本・中島かずきがどのように誕生したのか?
ーー作品の始まりはどういうところからだったのでしょうか?
吉成:『リトルウィッチアカデミア』に続く企画を考えていたところで、変身モノみたいなのが最初のアイディアとしてあったんです。メルモちゃん(『ふしぎなメルモ』)みたいなものをやらないかという話もあったけど、それは僕がピンとこなくて、ヴァンパイアものとかだったらできるんじゃないかなぁというのはあったんですね。
あとは配信がNetflixなので、ちょっとハードなほうが好みに合っているのではないのかというところまで考えてしまって、そこから発想していきました。結局、変身モノであり獣人モノという感じになったんですけど。
それに最初、アニメミライで『リトルウィッチアカデミア』を企画したときに、少年が主人公で、ネガティブだけど捨てられない炎みたいなのをどうやって肯定していくかっていう作品も考えていたんですけど、女の子が主人公というのが最初に決まったので、変身モノで獣人モノというフォーマットは残して、テーマは別のことを考えました。
中島さんには、そこまで考えたところで一方的に助けを求めたという感じなんだったんですけど……。
中島:全然そんなことないですよ。僕のほうから加わっていった感じです。
ーーでは、企画があって、途中から中島かずきさんが参加した感じだったんですね。
吉成:はい。中島さんにも興味を持っていただけたので、参加してもらいました。こちらの作業がなかなか煮詰まって先に進まないときに中島さんの力をお借りできたら……ということでお願いしたんです。
ーー中島さんが加わって、どんな変化が起こりましたか?
吉成:前に進みましたよね(笑)。本当ににっちもさっちもいかない感じになっていたので。中島さんに興味を持ってもらえたのは、確か街の部分ですよね?
中島:街を書けるな、と思ったんですよ。『ルポ 川崎』(磯部涼著)という本を読んで、こういう街の書き方があるんだ! と思って。あれは川崎のある底辺に生きている者たちがラップに出会って、社会の中でどうしていくのかというルポルタージュだったんですけど、それを読んでいて、街があってその中で生きる若者達という形でこの作品を書けるなら面白くなるんじゃないかと思ったんです。
僕が加わったときは女の子が主人公であり、同時に大神士郎もいたんです。彼が主人公の影森みちるに獣人としての在り方を教えていく。獣人には裏の組織があって、闇には闇の生き方があり、光の世界に生きていた女の子が闇の世界に行ってしまい、そこで生きるためにはどうしたらいいのかという術を見つけていく、みたいなザクッとしたモチーフがあったので、女の子が知らなかった社会に飛び込む話であったら、社会構造をしっかり書かないとかけないだろうなと思ったんです。
なので僕は獣人というのが地球上にいたとして、世界とか社会の関わりの中でどういう状況になっているのか。獣人がいる社会のシチュエーションを考えますねという話をしたんです。そこから獣人とは何なのか、そして今どんな状況にあるのかという外回りを作っていった感じです。みちるが、ある種閉塞された社会で、自分の状況を切り拓いていく話にしたいというテーマまでは僕が加わったときにあった感じでしたよね?
吉成:そうだと思います。でも、ほとんど何もできていなかったに等しいですけどね(笑)。ほとんどのものを中島さんに作り上げてもらったところはあります。テーマとキャラクターばかりで概念しかなかったので、そこを肉付けをしてもらった感じになります。
中島:でも大きなストーリーの流れはあったので、それに沿って、だったらこういうことじゃないですか?っていうのを提示していく。主人公はたぬきという設定だけど、実はまだ何か秘密がある。じゃあそれはどうしてなのかっていうのを考えて、士郎側も何か神秘的なものにしたいというところ。
このへんは二転三転あったんですけど、それだったらこういう理由があればいいですよね? と考えて、結果的に2つのことがちゃんと物語の中で収まって大きなカタルシスにつながればいいなと思いました。
ーー中島さん的には、ある程度流れが決まってるところに加わるという抵抗もなく?
中島:抵抗っていうのはなく、シチュエーションを作る、獣人社会を作るというのは、結構楽しみながら頑張ってやっていましたよ。でも真ん中にいるのがみちるという女の子で、そこに日渡なずなという友達がいて、10代の女の子の存在をできるだけ生っぽく作りたいということを監督は思っていたので、そこが苦労した部分でした。
それこそ堤プロデューサーや、うえのきみこさん樋口七海さんという女性の脚本家さん達と打合せを重ねながら、みちるを作っていきました。