ナナヲアカリ新作のテーマはなぜ“変”愛に? 2020年冬クールで最もバズったアニソン「チューリングラブ feat.Sou」、実体験に基づいた曲など6曲をパッケージ 「自信を持ってお届けできる作品に」
豪華クリエイター陣とのコラボレーション
──今作もクリエイター陣が豪華で。ナナヲさん自身から直接アプローチすることが多いそうですが、今回もそうだったんでしょうか?
ナナヲ:今回もそうですね。いろいろな方の作品を聴いて「この人と一緒に作ってみたいな」と思ったらトントンとドアを叩いて「すみませーん!」と(笑)。
──(笑)今回新しくコラボレーションした方からはどんな反応が返ってきました?
ナナヲ:面白かったのが……煮ル(果実)さんにお願いしたら「お引き受けさせていただきます」といった内容のメールをくださって。その後打ち合わせをさせてもらったんです。
そしたら、「実は僕作ってきたんです。絶対似合うと思うので」と言ってベースとなるトラックをその場に持ってきてくれてたんです。初めてのことだったので面白かったのと同時に、めちゃくちゃ嬉しくて「うおおお」ってなりました(笑)。
みきとPさんは中学生のころから聴いていた大好きなボカロPさんで、お引き受けいただけるとなったときに、逆にみきとさんのほうから「てにをはさんが作詞して、emonさん(Tes.)が編曲したら面白いことになりそうだなと思ったんだけど、どうかな?」というご提案をしていただいて。
皆さんのなかで“ナナヲアカリ”というイメージが完成していて、逆提案してもらえるのはすごく嬉しかったですね。
──煮ルさんは4曲目の「ヒステリーショッパー」、みきとPさんはラストの6曲目「逆走少女」を手掛けられています。「ヒステリーショッパー」は作曲・編曲の他、歌詞も煮ルさんが担当されていますが、今作のなかでは異色の物語というか。
ナナヲ:はい。ラブソングを集めた作品にしたいとは思っていたんですが、煮ルさんがまっすぐ恋愛を書くのってなんか違うなと思っていて。それは満場一致だったんですね(笑)。それで煮ルさんの曲だけは承認欲求的な愛や、インターネット上の歪んだ愛情のお話になりました。
収録曲のなかには実体験も
──では収録曲についてさらに詳しく教えてください。「チューリングラブ feat.Sou」を1曲目に持ってきたのは、ナナヲさんのなかでどんなこだわりがあったのでしょうか。
ナナヲ:凄く悩みましたね。最初にするか、最後にするか……。「チューリングラブ」はナユタンさんとSouくんの力も借りて、試行錯誤しながら作った曲だったんです。
この曲である種広がったというか。アニメのタイアップもついて、ミュージックビデオが2日間で最速100万回再生突破して、ラブアルバムを作るキッカケにもなった曲なので……1曲目って絶対聴いてもらえるから、この曲は最初に聴いてもらおう!と。
──「チューリングラブ」はキャッチーなダンスもSNSで大きな話題になって。この曲でナナヲさんを知ったというかたも多かったでしょうね。
ナナヲ:ありがたいことに、今までナナヲアカリを知らなかった層の子たちが踊ってくれていたりとか、Vtuberさんが歌ってくれていたりとか……
そういうのを見ると「あっ知らないところでナナヲアカリが聴かれている!」って嬉しい気持ちになります(笑)。いろいろな方に聴かれているんだなと、他の曲よりも実感していますね。
──では、ナナヲさんが作詞作曲を手掛けられた2曲(3曲目「MISFIT」5曲目「note:」)についても教えていただけますか。
ナナヲ:どちらもラブアルバムを作ると決まってから書いた曲なんです。移籍第一弾シングルに収録されていた「愛の歌なんて」という曲があるんですが……「MISFIT」は、実は仮タイトルが「続・愛の歌なんて」だったんです。
「愛の歌なんて」を書いたのは19~20歳のころで。それから4~5年前経って、いま「愛の歌なんて」を書いたらどうなるんだろう?と思って書きました。
根底は変わっていないんですが、ちょっとしたニュアンスや、昔だったらこういう表現にはなってないだろうなと思う部分がたくさんあるので聴き比べて欲しいなと。
──年齢的にも愛に対する捉え方が今とは違いますよね。それは「愛の歌なんて」を読んでもらえば伝わると思いますが……。
ナナヲ:自分でもかなり変わったなと思っています。
──<あなたが生きてくれるのなら>という最後の言葉に顕著ですが、「MISFIT」には救いとなる言葉が入っていますよね。まさにこの2年間の変化が表れているというか……。
ナナヲ:そう、まさに! 昔は「ひとりで生きているんだ」と思っていたんですが、実際はまったくそうじゃなかった。誰かがいるから自分が存在している。そう気づいた上での言葉というか。「大衆的な愛のうたは歌いたくない」という気持ちなども色々混ざった曲です。
──もう一方の「note:」はいかがですか? おそらく昔の恋人に向けたであろう切ないバラードです。
ナナヲ:実体験を書いたんです。上京してきてから意味の分からない恋愛をしたことがあって。大恋愛というか、こじらせすぎた結果、本当によくない恋愛をした時期があったんです(笑)。
──ああ、なるほど……。
ナナヲ:若気の至りというか……(苦笑)。人のことを好きになりすぎて没頭してしまって、人間として不安定になってしまって。
3、4年前の出来事なんですが、やっとちゃんと向き合えて、当時死ぬほど好きだった人と決別できた。この曲を書き終わってすごくスッキリしました。「あのときの自分が成仏した!」と(笑)。だから成仏ソングでもあります。
──成仏ソング(笑)。でも当時の一生懸命だった自分を認めてあげられる曲にもなったのではないでしょうか。
ナナヲ:そうですね。ナナヲのなかでは次に進めるぞっていう前向きなラブソングになりましたね。
──歌詞のなかに時々敬語が入ってくるところにクスりとしました。
ナナヲ:(笑)そうそう! いろいろな感情が出てしまっているっていう。
──曲順的には前後してしまいますが2曲目の「もしも信者」、儚くも強烈なインパクトを残す曲ですよね。DECO*27さんが手掛けられた楽曲です。
ナナヲ:DECOさんとはインディーズのときから一緒にやらせてもらっているんですが「アカリちゃんの恋愛観をすべて知りたい! それを書き起こすから。俺がナナヲアカリになって書く!」と。その結果生まれた曲がこれってどういうこと!? って(笑)。
──<痛いけど 君に会える 痛いけど>っていう。
ナナヲ:とんでもなくこじらせている(笑)。DECOさんと二人きりで長時間しっかり話させていただいて。「その考え方ヤバいね」ってメモっていただいたりとか(笑)。
──編曲を担当されているのはTeddyLoidさん、ギターはRockwellさんですね。
ナナヲ:そうなんです。TeddyLoidさんは今回初めてお願いしました。ボーカルディレクションはDECOさんが立ち会ってくれて。DECOさんはいつもボーカルディレクションもしてくださるんです。
──じゃあ阿吽の呼吸のようなところもありました?
ナナヲ:スムーズでした! いつも「もうちょっとこういう風に歌ってもいいかも」ってアドバイスをしてくれるんです。昔よりも歌える幅が広がったので「じゃあやってみます」と。だからすごく早く終わって「はやっ!」と。
──逆に時間が掛かったという曲もありますか。
ナナヲ:「逆走少女」はワチャワチャしているので時間が掛かりましたね(笑)。
──6曲目の「逆走少女」……ものすごくパンチのある曲がラストにきますよね。
ナナヲ:本当にやり逃げのような(笑)。「逆走少女」はさきほどお話した通り、みきとさんから逆提案をいただき作った曲なんですが、レコーディングでは友達募集Pさんがエンジニアをしてくれて。
てにをはさん、みきとPさん、友達募集Pさんと、ナナヲでスタジオに入りました。てにをはさん、みきとさん、ともぼさんってめちゃくちゃ仲いいんです。
だからすごくワチャワチャしてて楽しい空間で。あの曲のままレコーディングしたような感じでした。一番のポエトリーのところがあるんですが──。
──男性の声が入ってますよね? 気になっていました! どなたが歌ってらっしゃるのかなと!
ナナヲ:あれ、みきとさんなんですよ(笑)。ガヤにはてにをはさんも入ってくれて(笑)。最初の<逆走!>っていうところは、みきとさんが「本当に後ろ向いて歌ったらいい感じなんじゃない?」って。マイクに背を向けて叫んでああいう音になったんです。
──じゃあリアルに逆走されていたんです!? 声が遠いですよね。
ナナヲ:そうなんです(笑)。
──ミュージックビデオはからめるさんが手掛けられています。からめるさんにお願いした経緯を教えてください。
ナナヲ:物凄く荒ぶってる曲じゃないですか(笑)。デモを聴いたときから、ナナヲの脳裏にはもうずっとからめる猫がいたんですよ。MVの話になったときに「やってもらえるかは分からないけど言うだけタダだし言ってみよう!」って感じで……
そしたら「女の子を使ってアニメーションを作るのは初めてですけど頑張ります!」って言ってくれて。それで楽しいMVができました。すごく良いですよね、あれ。
──本当に。中毒性高すぎませんか? まさにノンストップで何回も見てしまうんですが……。
ナナヲ:ナナヲも(笑)。「面白すぎるだろ!」って。