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春アニメ『かくしごと』村野佑太監督インタビュー

春アニメ『かくしごと』村野佑太監督インタビュー|ハートフルに振ることで新しい感動がある。その意外性こそ久米田康治ファンが惹きつけられるポイント

答えは全て原作の中にある。だから、漫画に穴が開くほど読み調べた

ーー絵作りで意識・工夫されたのはどんなところですか? 個人的には、コミックスの表紙やカラーページに通じる爽やかな青色が印象的でした。

村野:漫画原作ものを監督するのは初めてだったのですが、以前、大地丙太郎監督のもとで演出をしていた際に、「漫画原作物を扱う際、答えは全て原作の中にあって、アニメ屋が勝手な解釈を入れるべきではない」と強く言われたんですね。アングルや色合いは勿論、そのコマに背景まで描いてあるのか、キャラしか描いていないのか、それら全てに作家の個性や解釈が含まれているんだから、その意図を読み取る努力をしろと教えられました。なので『かくしごと』はその方程式で臨んでいます。

久米田先生が好まれる構図やアイレベルの高さ、コマ割りをする際に何を優先しているか。逆に優先度が低く、率先して嘘をついているポイントはどこなのかを、漫画に穴が開くほど読み調べました。

青色の描写も当然原作にインスパイアされています。撮影処理をかけた上でちゃんと原作のイメージする青色になるよう、背景作業段階から色合いは計算されています。

ーーオープニング・アニメーションで意識・工夫をされたところは?

村野:OPでは「久米田先生らしい」と「久米田先生らしくない」の両立を目指しています。扉絵や単行本の表紙を見てもわかるように、久米田先生のレイアウトはとてもオシャレで決まってるんですね。それは是非取り入れたいと思っていましたし、原作にない絵面でも、久米田先生の好まれるアングルを参考に絵コンテを構成しています。なので、絵面的には「久米田先生らしい」と思ってもらえると思います。

「久米田先生らしくない」というのは、いわゆる爽やかさですね。『改蔵』『絶望』などの久米田作品に触れてきた人であればあるほど、久米田先生の作品に期待するのは、世間に対しての嘲笑を含んだシニカルでブラックな路線だと思います。それはそれで間違ってないと思うのですが、自分が『かくしごと』の原作に触れて一番最初に受けたのは、その価値観の転換だったんですね。「ああ、こんな作品を描くんだ、久米田先生……」という。その初見の感触を大事に、しっかりと伝えられればと思い作っています。

ーーエンディング・アニメーションで意識・工夫をされたところは? あわせて、大滝詠一さんの『君は天然色』をED曲に選んだ理由も教えてください。

村野:『かくしごと』もそうですが、『南国』のように初期作品に至るまで、久米田先生の作品にはどこか永井博さんとか、わたせせいぞうさんの80年代アートを参考にされている部分がありますよね。久米田先生ご自身も以前そうおっしゃっていたと伺っていました。

それを聞きつけたプロデューサーが『君は天然色』はどうだろう、と話を進め始めたんですね。非常に面白い組み合わせだと思いました。そういう話になってから改めて曲を聞きましたが、40年前の曲とは思えないほどカッコよく、不思議と作品にも合っているんですね。「これはアレンジじゃなくて原曲でいくべきだ」と思っていたら、プロデューサーも最初からそのつもりだったらしく、テンション上がりました。

そしてやるからには、中途半端にアニメっぽい背景にするのではなく、もう完全に永井博さんなどの持つアートイメージにしようと。今回エンディングは10GAUGEの依田伸隆さんにディレクターをお願いさせていただいたのですが、溢れ出す映像イメージがどれも面白く、とても興奮した打ち合わせになりました(笑)。

「いつもの久米田作品だと思ってたら違った!」という声と「違うと思ってたけどいつもの久米田作品だった!」という声、その二つを共存させることが目標だった

ーー実際に映像をご覧になった感想と、放送後の反響についてどう思われましたか?

村野:「原作漫画に忠実にありたい」と口で言うのは簡単ですが、いざやろうとするととても難しいなと思いました。例えば、久米田先生の原作ではスピード線や集中線のような効果を一切かけてないんですね。とても実写映像的というか、人物のたたずまいや台詞のリズムで魅せていくスタイルです。

本来ならアニメでもそれを踏襲したいのですが、ギャグの勢いを出す為にはやはりそういった効果線を使わないと画面がもたないんですね。表現媒体が違うので完全に見た目を一致させる必要はないとはいえ、追求しがいのあるテーマだなと思いました。

放送後の反響としては、「いつもの久米田作品だと思ってたら違った!」という声と、「違うと思ってたけどいつもの久米田作品だった!」という声が入り混じっていたと聞きました。この作品ではその二つを共存させることを目標にしていたので、素直にとても嬉しかったですね。

ーー最後に視聴者へ、アニメの今後の見どころ紹介やメッセージをお願いします。

村野:アニメも後半に差し掛かるということで、ここから物語の核心に迫った展開が多くなります。可久士と姫が辿り着く親子の幸せの形をしっかり大切に描こうと思いますので、楽しみに待っていていただけたらと思います。アニメスタッフにも、そして同時期に原作終了させる為に孤軍奮闘していらっしゃる久米田先生にも、応援宜しくお願いします!

[取材・構成/田中伸吾]

TVアニメ『かくしごと』作品情報

放送情報

TOKYO MX:2020年4月2日から毎週木曜24時00分~
サンテレビ:2020年4月2日から毎週木曜24時30分~
BS日テレ:2020年4月2日から毎週木曜23時30分~
AT-X:2020年4月2日から毎週木曜23時30分~
リピート放送:毎週(土)15:30/毎週(日)23:00/毎週(水)7:30

<朝の家族放送>
TOKYO MX:2020年4月5日から毎週日曜11時00分~

※放送日時は変更になる場合がございます
※朝の家族放送はリピート放送となります

 

配信情報

dアニメストア:2020年4月2日から毎週木曜24時00分~
dTV:2020年4月2日から毎週木曜24時00分~
ほか
 

イントロダクション

ちょっと下品な漫画を描いてる漫画家の後藤可久士。
一人娘の小学4年生の姫。

可久士は、何においても、愛娘・姫が最優先。

親バカ・可久士が娘・姫に知られたくないこと。
それは……自分の仕事が『漫画家』であること。

自分の“かくしごと”が知られたら娘に嫌われるのでは!?

“愛と笑い、ちょっと感動のファミリー劇場がはじまる――”
 

 

スタッフ

原作:久米田康治(講談社「月刊少年マガジン」連載)
監督:村野佑太
シリーズ構成・脚本:あおしまたかし
キャラクターデザイン:山本周平
総作画監督:西岡夕樹/遠藤江美子/山本周平
プロップデザイン:ヒラタリョウ
美術監督:本田光平
美術設定:岩澤美翠
美術:草薙
色彩設計:のぼりはるこ
撮影監督:佐藤哲平
撮影:旭プロダクション白石スタジオ
編集:白石あかね
音楽:橋本由香利
音響監督:納谷僚介
音響制作:スタジオマウス
音楽制作:エイベックス・ピクチャーズ
アニメーション制作:亜細亜堂
製作:かくしごと製作委員会
 

キャスト

後藤可久士:神谷浩史
後藤姫:高橋李依
十丸院五月:花江夏樹
志治仰:八代拓
墨田羅砂:安野希世乃
筧亜美:佐倉綾音
芥子駆:村瀬歩
六條一子:内田真礼
ナディラ:加藤英美里

マリオ:浪川大輔
古武シルビア:小澤亜李
東御ひな:本渡楓
橘地莉子:和氣あず未
千田奈留:逢田梨香子
汐越羊:古城門志帆
城路久美:原由実
大和力郎:小山力也
内木理佐:沼倉愛美
 
公式サイト
公式ツイッター(@kakushigoto_pr)

(C)久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会
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