最終回目前! 春アニメ『かくしごと』原作者・久米田康治先生インタビュー「やっぱり自分はギャグ漫画しか描けないんですよ」
『行け‼︎南国アイスホッケー部』『かってに改蔵』『さよなら絶望先生』など、数々のヒット作を生み出してきた久米田康治先生。そんな久米田先生の最新作『かくしごと』がTVアニメ化され、絶賛放送中です。
漫画家・後藤可久士(CV:神谷浩史)と娘・姫(CV:高橋李依)の日常を描いた本作では、漫画家の生活が赤裸々に描かれるとともに、心あたたまる親子のやりとりが描かれています。この春、後藤親子に癒されたというかたも多いのではないでしょうか。
いよいよ本日、6月18日(木)にTVアニメ『かくしごと』が原作より一足先に最終回を迎えます。原作とアニメが歩幅をあわせて完結に向かう今、本稿では原作者の久米田康治先生にメールインタビューをしました。『かくしごと』制作裏話や、アニメについての感想など、たっぷり教えていただきました。
「漫豪」は悪口なので、謝らなくても許してくれる藤田和日郎さんだけ
――ご自身のお仕事である漫画家を題材にして描くにあたって、こだわった点や苦労された点は?
久米田康治先生(以下、久米田):とにかく世界観の維持の為に、最初に決めた「やらない事」を守る事に拘って苦労しました。下ネタはやらないとか、超能力者は出てこないとか、残虐なシーンは描かないとか、どうしても何でもアリの作風だったので「日常」から逸脱しない事に心がけ自制するのが大変でした。
特に下ネタ。
――これまでの作品と『かくしごと』との違いや、爽やか・ハートフルな方向性で描く上で意識されているのはどんなことでしょうか?
久米田:業界漫画で陥りがちなただの「グチ」にならないように、なんとか笑いに昇華させるように工夫はしたつもりです。でも、自分としてはマイルドに描いたはずの編集者にイラつく読者も多かったみたいで、工夫が足りてなかったなと反省してます。
――メインキャラクターたちを描く上で意識されていることを教えてください。まずは後藤可久士についてお願いします。
久米田:娘がいなければクズみたいな所があるけれど、娘への愛故、何か許される人間であること。娘以外の女性には興味無い所ですかね。
――後藤姫についてお願いします。
久米田:親から見た子がそうであるように、とにかくミステリアスな所。多くを語らず、読者から見ても何考えてるか、よくわからないよう心がけました。
――十丸院五月についてお願いします。
久米田:編集のダメな部分を凝縮したような男なのですが、決定的な亀裂は生じないギリギリの所で踏みとどまるように心がけました。結局のところ担当編集と漫画家は相性が全てなので。
――墨田羅砂についてお願いします。
久米田:癒し系というか全てに対してガツガツしてない緩衝材的な役割ですかね。後藤先生に対しては決して恋愛感情を抱かずお父さん的にしか見ていないという所。
――六條一子についてお願いします。
久米田:やっぱり自分の生徒である姫ちゃんの事を一番に考えてる所ですかね。それを無視して後藤先生に好意を寄せると嫌なキャラになってしまいますから。
――キャラクターを演じる声優さんのお芝居をご覧になっての感想は?
久米田:神谷さん(後藤可久士役)には安心の一言ですね。ちゃんと笑いどころを意識して読んでくださるから。
高橋さん(後藤姫役)に関しても、凄く役に真摯に取り組んでくれて、10歳と18歳の姫ちゃんの演じ分けは大変だったと思いますが『なるほど姫ちゃんてこんな声だったのか』と納得させられました。
あと、いつも思うんですが彼ら、体力と持久力おばけですね。あんな長い時間集中して声出せるなんて常人じゃ無理。声優じゃなくて良かったです。
――久米田先生のお気に入りのキャラクターは誰ですか?
久米田:アニメで声がついてマリオは良いなぁと思うようになりました。キャラが見えたというか、もっとアニメ化が早ければ漫画にも反映出来たのに残念。
――作中には“漫豪”として不二多勝日郎が登場しますが、久米田先生が“漫豪”と考える漫画家は、モデルとなった藤田和日郎先生以外にいますか?
久米田:漫豪は悪口なので、謝らなくても許してくれる藤田さんだけにしておいてください。
ていうか藤田さんじゃなく、不二多は架空の漫画家ですよ。何言ってるんですか。