この記事をかいた人
- 石橋悠
- 1989年福岡県生まれ。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者。
――柴山監督は長編作品の監督を務めるのは初めてとのことですが、勉強になったことや大変だったこと、楽しかったことや思い出に残っていることなどがあれば教えてください。
柴山:(一瞬考えてから)いやもう、いろいろあったんで……(笑)。
一同:(笑)。
柴山:そうですね……勉強になったことはやはり佐藤監督からが一番多くて。劇場を意識したコンテの描き方、そこに存在するようなキャラクターの描き方は勉強になりましたし、音響監督も佐藤監督がやられていたので、音響も……というようにひとつひとつがすべて勉強でしたね。
あとは……楽しかったことでしたっけ? そうだな……。
佐藤:なかったら「なかった」で。
柴山:いやいやいや!
一同:(笑)。
柴山:大変なことは多かったんですけど、その中でも今回はオリジナル作品ということで、着地点がなかなか見えないという大変さがありました。同時に「自分たちが作ってる感」というのもすごく強くて。
猫世界も、僕とイメージボードを描いていただいた永江さんで相談しつつ、佐藤監督にディレクションをもらって作っていたんですけど、そのやりとりがすごく楽しかったんです。オリジナル劇場作品の醍醐味だなと思いました。
――佐藤監督はそんな柴山監督の姿を見て、どんな風に感じましたか?
佐藤:柴山監督にやってもらうにあたって、作品を成立させること以上に、次になにかバトンを渡したいというような気持ちが僕らの世代にはあると思います。
でも、人によっては届かないこともけっこうあって。スルーされたり、「結局佐藤監督はなにがやりたいんですか?」みたいに聞かないと動けない、みたいなこともあったりするんです。
けれど、こういうもので重要なのは「自分でこうしたい」というものがあって、それをちゃんと作っていくことだと思っていて。実際そういう人じゃないと伝わらないですし、コンテや原画チェックの仕上がりを見ていても、「こうしたい、こうすべき」という目標をちゃんと持ってやっている人なんだなと思っていました。
これは次世代を担っていってもらわなければいけないと思います。
柴山:ありがとうございます……!
佐藤:一番最初の、コンテ入る前から「猫世界のイメージ、こんなのはどうでしょう?」みたいに提案してくれたりと、「どんどん食い込んでいこう」という意識が強かったですから。とても大事なことだと思いますし、期待しています。
柴山:ありがとうございます。……照れますね(笑)。
一同:(笑)。
――では最後の質問です。今回は社会情勢もありまして、Netflixでの配信という形になりました。今回に限らず、劇場アニメを取り巻く環境も変化しているように感じますが、現場に立たれているおふたりはアニメ業界の変化をどのように感じていますか?
柴山:僕は内容的に大きく変わることはないのかなと思っているんですけど、題材としてコロナを直接的に描く作品もあるんでしょうけど、比喩的に描く作品も出てくるんだろうな、とも思っています。
世界が縮小しているというか、窮屈になってきているところなので、近年は状況的にもなかなか作るのが難しかったんですけど、ファンタジーがこれから増えるのでは、という風にも思っていて。自分でも一度挑戦してみたいなというのもあって、そんなことを考えています。
佐藤:映画に限らずTVもそうですが、業界全体がプロデューサー含め、目線が国内に向いている気がしていて。ビジネスが国内でまずどうしていくか、みたいなことが議論になっていくんですけど、これから先はプランニングの段階から世界を気にして、「じゃあ世界でどう勝負する?」ということを、そろそろ本気で考えていかないと立ち行かなくなるんじゃないかなという気はしていますね。
世界で勝負したという経験値が日本のアニメーション業界は少ない気がするので、そこに関しては我々がこれから頑張るべきポイントだと思いますし、そうならなければいけないんじゃないかなと思っています。
[インタビュー/石橋悠]
1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。
私はあなたの力になりたい。好きって言われたい―
笹木美代(ささき・みよ)は、いつも明るく陽気な中学二年生の女の子。空気を読まない言動で周囲を驚かせ、クラスメイトからは「ムゲ(無限大謎人間)」というあだ名で呼ばれている。しかし本当は周りに気を使い、「無限大謎人間」とは裏腹に自分の感情を抑えて日々を過ごしていた。
そんなムゲは、熱烈な想いを寄せるクラスメイトの日之出賢人(ひので・けんと)へ毎日果敢にアタックを続けるが全く相手にされない。めげずにアピールし続ける彼女には誰にも言えないとっておきの秘密があった…。
それは、猫の姿になって大好きな日之出に会いにいくこと。
実はムゲは、ある夏祭りの夜お面屋にいた猫の店主から、「かぶると猫へと姿を変えることができる」という不思議なお面をもらって以来、猫・太郎として日之出の家に通っていたのだ。
普段はクールに振舞う日之出だが、太郎にだけは素直な気持ちを打ち明けることができ、いつしか太郎は日之出の支えになっていた。≪人間≫のときには距離を取られてしまうが、≪猫≫のときには近づけるふたりの関係。ムゲもまた、猫でいれば周囲との関係に悩むことない自由さを知り、次第に心地よさを覚えていく。猫として長く過ごすほど、いつしか猫と自分の境界があいまいになるムゲ。ある日、再び現れた猫店主から、猫の“お面”とムゲの“顔”を交換し、≪人間≫を捨て≪猫≫として生きるよう迫られる…
このままずっと、あなたのそばにいたい。でも、≪私≫に戻ることができなくなる――
自分が誰に支えられているのか。大切なものに気がつくとき、二人の世界が変わり始める。
Netflixアニメ映画「泣きたい私は猫をかぶる」
●出演:志田未来 花江夏樹
小木博明 山寺宏一
●監督:佐藤順一・柴山智隆 脚本:岡田麿里
●主題歌:「花に亡霊」ヨルシカ(ユニバーサルJ)
●企画:ツインエンジン
●制作:スタジオコロリド
●製作:「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会
Netflixにて6月18日(木)より全世界独占配信!