【今一度考えてみよう】“オタク”がいなくなった世界に考える、1000日後のエンターテインメント
2020年4月7日に東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県を対象に発令した非常事態宣言を受け、僕たちの生活は一変した。毎日、毎週、毎月のように開催されていた、リアルな現場で楽しむライブやイベントは軒並み自粛となり、不要不急、消毒、自粛というワードばかりを見る日々が続く。
記念ライブや久しぶりのツアー。年に一度のお祭り的なイベント。その全てが誰のせいでもなく、延期あるいは中止という結果となってしまった。また、2020年夏アニメの延期が発表。新作映画に関しても公開延期の報道が次々と行われた。
関西大学名誉教授である宮本勝浩さんの推定によると、今後2年間での経済的減少額は7都府県で約30兆円にも及ぶという。
未曾有の経済的ピンチ。いつ何時どのタイミングで自分に襲いかかるか分からないウイルスの恐怖。2つの危機は日本、そして世界で大きな衝撃を与え続けている。
ただし、悲観してばかりでは人としての光を失ってしまう。元気があるから笑顔になるのではなく、笑顔になるから元気になれるのだ。
そう考え、これから1000日後のオタク系エンターテインメントについて考えていきたいと思う。
各クリエイターたちが鳴らしていた警鐘
不思議なもので、いつの時代でも先見の明を持った人物が現れる。明治維新の立役者である坂本龍馬や戦国時代に名を馳せた武将・織田信長。
時代の流れを読み解く力に長けているのか。それとも人には見えない第六感が天啓として降りてくるのか。その答えは神のみぞ知るところだが、間違いなく現代のクリエイターたちにも同じ素養が備わっているようにも感じる。
2019年4月11日に放送開始された幾原邦彦監督の新作アニメ『さらざんまい』や同年11月8日に発売された小島秀夫監督作品の『DEATH STRANDING』は「人と人とのつながり」がテーマの中軸にあった。
アニメやゲームで鳴らされていた警鐘。僕たちは2019年の段階から「人と人とのつながり」について考えなくてはならなかったのかもしれない。
インターネットは偉大である。今こうしてあなたが目を通している僕の原稿も、インターネットが無ければ発信することすらできない。人々の暮らしは大きく、変化し豊かになったと思う。
ただ、SNSについてはもう一段深く考えなくてはならない。
誓ってSNSを否定するわけではないが、日々誰かが傷つくリスクを抱えた場所になってしまったようにも見える。女子プロレス団体スターダムの木村花さんが自ら命を絶ってしまったことは、決して忘れてはならない事件である。
また、深夜ラジオというパーソナリティとリスナーの“聖域”ですら心休まる場所ではなくなってしまった。
人と人が距離を置くようになってから、色々なものが見えてくるようになった。そもそも、顔が見えない相手から飛んでくる悪意(誹謗中傷)はインターネットれい明期から存在はしていた。もっとも、当時は本人や周囲が探さなければ見つからないところにあった。決して褒められたものではないが、今よりは幾分かマシというものだろう。
では、今はどうか。本人のSNSアカウントにダイレクトアタックよろしく。本人を前にして決して言えないような発言が飛び交い続けている(もしも言えるのだとしたら、中々図太い神経をお持ちかよほどぶっ飛んでいるかだ)。
著名人を中心にSNSの書き込みに関しては刑事告訴の可能性が高くなっている。弱者が強い時代は終わり、インターネットを発端に裁判所で裁きが落ちる時代へ。
少し話しは逸れるが、スマホを持って下を向いている姿は現代の懺悔だという見方がある。従来、神父のみが聴いていた懺悔をインターネットの海へ放流する。するとどうだろう。「本人の気分が健やかになる」のだ。
今から1000日後。SNSでの書き込みは規制の一途を辿っているだろう。リスクのある単語がそもそも書き込めない仕様になったり、書き込みはできるが強制ミュートが導入される可能性だってある。
言論の自由よりも目の前の平和。プラットフォームに関わる人々の精神的不安を取り除く方が大切だという流れになっても何ら不思議ではない。