【今一度考えてみよう】“オタク”がいなくなった世界に考える、1000日後のエンターテインメント
オタク第四世代と令和
2008年に岡田斗司夫さんが「オタクはすでに死んでいる」を刊行してから12年が経った。
この本の中では、オタクを第一、第二、第三世代と区切りそれぞれの特徴と性質を定義づけしている。
40代が第一世代。第二世代は20代後半から30代半ば。20代前半が第三世代(全て2008年当時の年齢なので12を足した数が今の年齢に当たる)となっている。
第二世代まで「なぜ、その作品が生まれたのか。その歴史を紐解くような考察」が多かったが第3世代は「自分が感じたインパクトを重視している」という。
僕は1984年生まれの36歳。12年前は24歳になる。つまり、第二世代の終わりであり、第三世代の幕開けといった時期に生まれ、人生を生きてきた。
1995年10月に『新世紀エヴァンゲリオン』の第一話を見た。学校で『エヴァンゲリオン』面白いよ! と言っても誰も共感してくれなかった。近所のお兄ちゃんだけが、僕の理解者だった。そんな時代があったのだ。
平成後期になると、アニメや漫画が大衆のものに広がっていった。それまではなぜか秘匿すべき趣味としてとらえられていたオタクカルチャーも、テレビやいろんなメディアで「アニメ好きなんです」と公言する著名人が珍しくなくなるほどだった。
さらに今では、スクールカーストの頂点にいるような人々が、アニメの話を学校でするようになった。それが平成の時代だった。
そして、オタク第四世代。現代の20代はもうアニメや漫画、ゲームが文化のメインストリームになっている。もう、オタクという言葉自体が死語となっていくかもしれない。アニメが好きな人、漫画好き、といった具合に。
ただ、現実から逃げる術としてアニメ、漫画、ゲームなどをフロンティアにしていた人々が、その居場所まで奪われてしまうことがないようにしなければいけない。それは、我々エンターテインメントに関わる大人の大切な仕事であると思っている。
すべての人にすべての素晴らしい作品を。どの“好き”も尊いものと、すべての人が考える世界になっていることを願っている。
この数十年で時代は大きく変わった。これからもっと、もっと変わっていくと思う。
1000日後、きっと僕たちは今までとは少し違うけれど、今を良くしようとするこれまでのような生活を取り戻しているに違いない。だらこそ、こう想うのだ。
今、この瞬間に思いついたこと。実現したいことにチャレンジして欲しいと。
新しい世代がこれからのエンターテインメントを作っていくのだから。
[文・川野優希]