劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」 Ⅲ.spring song 下屋則子さんインタビュー|[Fate][UBW][HF]――桜と一緒に歩んだ道筋を振り返って【連載第5回】
2020年8月15日(土)より全国で公開された劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」 Ⅲ.spring song。『Fate/stay night』の最終ルート[Heaven's Feel](以下、HF)を劇場三部作で映像化した本作も、いよいよ完結編となる第三章の公開がスタートしています。
今回アニメイトタイムズでは、その[HF]第三章に出演するメインキャスト陣に、全5回に渡るインタビューを実施。今回はその最後の連載となる、下屋則子さんへのインタビューをお届けします。
アニメイトタイムズでも、[HF]の公開に合わせて何度も下屋さんにインタビューをさせていただきましたが、今回はこれまでどんな気持ちで[HF]、そして『Fate/stay night』という作品と向き合ってきたのか振り返る、総決算的な内容にもなっています。是非ともご一読ください。
第二章インタビューアーカイブはこちら!
●下屋則子インタビュー【連載第1回・前編】●下屋則子インタビュー【連載第1回・後編】
●下屋則子&杉山紀彰インタビュー【連載第2回】
●下屋則子&伊藤美紀インタビュー【連載第3回】
●下屋則子&Aimerインタビュー【連載第4回・前編】
●下屋則子&Aimerインタビュー【連載第4回・後編】
●下屋則子&川澄綾子&植田佳奈インタビュー【連載第5回】
●下屋則子&浅川悠インタビュー【連載第6回】
第三章インタビューアーカイブはこちら!
●杉山紀彰インタビュー【連載第1回】●杉山紀彰&川澄綾子インタビュー【連載第2回】
●植田佳奈&諏訪部順一インタビュー【連載第3回・前編】
●植田佳奈&諏訪部順一インタビュー【連載第3回・後編】
●下屋則子&浅川悠インタビュー【連載第4回・前編】
●下屋則子&浅川悠インタビュー【連載第4回・後編】
●下屋則子インタビュー【連載第5回】
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●『Fate/stay night [UBW]』川澄綾子さん&下屋則子さんの溢れるセイバーと間桐桜への愛。声優インタビュー
[Fate][UBW][HF]の3ルートがあるからこその『Fate/stay night』
――[HF]の第三章を、演じ終えた瞬間の気持ちをお聞かせください。
下屋:『Fate』シリーズを通して、物語の本筋に関わる桜を演じきれたのも初めてでしたし、桜の半生を演じきれたという達成感が強かったです。
1つの作品とキャラクターにじっくりと向き合えたこの3年間は、今までにない経験だったのもあって、第二章の時は、「あと1章しかないんだ」という寂しさが強かったんです。
でも最終章のアフレコが終わった時は、本当に「やりきったぞ」という気持ちが大きくなっていましたね。
――きっと長年の『Fate/stay night』ファンは、寂しさを感じている人も多いと思うのですが、作品を見終わってみると、感動の方が勝る気持ちになる方も多そうだなと。
下屋:そうですね。ゲームで[HF]をプレイして、大筋の結末をご存知の方も多いと思うのですが、またアニメーションとして一つの終わりの形をご覧になっていただければ、そうした気持ちになってもらえると思います。
あとは、第三章の2時間って本当に濃いんです。いくつもの戦いが行われますし、それを乗り越えてもさらに強敵が表れてきて……きっと見終わった後には、士郎と同じ疲労感みたいなのも感じていただけるのではないかなと(笑)。
――『Fate/stay night』の3つのルートの映像化について、それぞれどんな気持ちで演じていたかをお聞かせ下さい。
下屋:まず『Fate』ルートでの桜は日常の象徴のような存在で、聖杯戦争が始まるとフェードアウトしてしまう立ち位置でした。聖杯戦争がどういったものかを完全には理解できていないまま演じていて。その後、ゲームの収録で全貌を知り、衝撃を受けたのを覚えています。
ただ、それで桜のバックボーンを知ることができたのは大きくて、[UBW]の時は物語には直接描かれないですが、間桐邸で行われていることや桜の過去は変わらないということを念頭に置いた上で演じるようにはしていました。
――[UBW]の収録の時は、もう[HF]の劇場化も発表されていたと思うのですが、少し[HF]への意識もあったりしたのでしょうか?
下屋:演じているのはあくまでも[UBW]の桜なので、そこに関してはあまり意識しないようにしていました。[HF]のことを考えてしまうと、[UBW]の桜にも影のようなものが出てしまうと思いますから(笑)。
――[HF]に関してはいかかでしたか?
下屋:[HF]って、同じ『Fate/stay night』という作品でも、他とものすごく温度差があるルートじゃないですか。なので、長年向き合ってきたキャラクターではあるんですけど、改めて1から役作りをするくらいの気持ちで挑みました。
幼少期にどんなことがあって、どういう目的で士郎と出会って、どんな気持ちで衛宮邸に通い続けてきたのか。今まではそこまで深く掘り下げることはなかったので、もう一度最初から桜に向き合ってみようと。
――下屋さんとしては、どんなところが[HF]ならではの魅力だと感じましたか?
下屋:[Fate]と[UBW]って、主人公とヒロインの恋にしてもどこか爽やかで、すごく王道的なかっこよさがあるじゃないですか。対して[HF]は、それまでのルートならすごくカッコいいシーンのはずだったサーヴァント同士のバトルの中でも影が現れたり、ホラーチックな表現になっていて。桜と士郎の恋愛にしても、爽やかさというよりは生々しさの印象が強いですよね。
そこに魅力を感じられるかは好みが別れる部分もあるかもしれませんが、最後のルートだからこそ濃縮された、他のルートでは触れられなかったマスター達の事情やそれぞれの葛藤の人間ドラマ、聖杯戦争の真実といった要素もあって。
それらを知らなくてもそれぞれのルートの物語は成立するのですが、やっぱり[HF]まであってこその『Fate/stay night』なんだなと、改めて感じました。
そういう王道とはまた違う面白さがあるのも、『Fate/stay night』という作品の奥深さであり、魅力だと思っています。
――第三章での桜は、いわゆる「黒桜」とも呼ばれる、「マキリの杯」としての姿で登場しますが、どのようなことを意識して演じられていたのでしょうか?
下屋:「どうしてその状態になったのか?」というポイントが大事なのかなと思っていました。第二章では、桜が「マキリの杯」になるまでの過程がすごく丁寧に描かれていたのですが、だからこそ「マキリの杯」になった桜が、どんなことを考えて、何を目的としていたのかということを知る必要があるなと。
そこは須藤監督や奈須さんとも相談して、しっかりと方向性を決めてから演じるようにしていました。
というのも、これまで他の作品でもいわゆる黒桜を演じる機会はたくさんあったのですが、そういう場合の桜はラスボス的なキャラクターとしてデフォルメされていることが多かったんです。[HF]の黒桜は、マキリの杯になった後も、元の桜自身の人格が存在していることを意識するようにしていました。
――桜のサーヴァントはライダーですが、第三章での陣営としてはセイバーオルタが相棒的な存在になるのではないかと思います。川澄さんとの距離感というのは今までと違いましたか?
下屋:そこは川澄さんともお互いに「難しいね」と話していた部分でしたね。セイバーオルタと桜は、お互いのことをどう思っていたのか分からない部分が多くて。
桜も、セイバーが大切だからあの状態にして残したわけではないと思いますし、たぶんセイバーの方も桜を守りたいから従っているわけではない。だから「桜はセイバーのことをどう思っているか」と聴かれた時は難しくて、私は結構ドライな関係なんじゃないかなと思ってます(笑)。
――[HF]のキャストの皆様は『Fate』ルートのアニメ放送時期以前からも共演などされていたかと思いますが、その頃と比べて関係性は変化したりしましたか?
下屋: 昔からの長い付き合いのある方々とも[HF]に携わった3年間で、グッと距離が縮まった気がしています。川澄さんと佳奈ちゃんは、[UBW]とかのイベントでもよく一緒だったと思うのですが、桜のポジションが特殊なのもあって、私はイベントで共演する機会も限られていたので。それがこの3年で、キャスト同士で話す機会も増えて、一気に距離が近くなったなと。
――浅川さんとの対談でも、[HF]で仲良くなったということを話されていましたね。
下屋:そうですね、本当に浅川さんとは今までお話しする機会が少なくて。挨拶はしていましたけど、まともにお喋りをしたのは[HF]第一章の間桐家舞台挨拶の時が初めてだったくらいでしたから。
というのも、桜は聖杯戦争が始まったらフェードアウトしちゃうし、ライダーは聖杯戦争が始まってから登場し、、早めに退場することが多かったので、収録のタイミングも被ってなかったんです。