【連載第9回・他のサーヴァントに遅れを取ることもなかった】『FGO』がもっと楽しくなる!?『Fate』シリーズに関連した様々な用語・ネタを解説!
他のサーヴァントに遅れを取ることもなかった とは?
ゲーム『Fate/stay night』の[Fate]ルート序盤、セイバーが第4次聖杯戦争に参加していたことを士郎が知った際、セイバーが口にしたセリフ。
この時のセイバーはイレギュラーな形で召喚されたため、マスターである士郎との魔力のパスが正常につながっておらず、魔力残量を気にしながら戦わざるを得ない状況になっていました。
一方で、正常な召喚が行われた第4次聖杯戦争の時は、本来の実力を発揮することができており、他のサーヴァントに対しても互角以上の戦いをすることができていた……という意図の発言になります。
ゲーム版発売当時は別段注目されたものではなかったのですが、その第4次聖杯戦争を描いたスピンオフ小説『Fate/Zero』が世に出たことで状況が変わってきます。というのも、『Fate/Zero』内で描かれていた、第4次聖杯戦争におけるセイバーの戦いを振り返ってみると……。
◆vsランサー
ランサーの誘いに乗っての戦い。魔力の鎧を無力化する「破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)」への対策として自ら鎧を脱ぐも、ランサーが隠していた宝具「必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)」の一撃によって、左腕に治癒不能の呪いを負う。ライダーの介入により中断。
◆vsバーサーカー&ランサー
セイバーの姿を見て暴走を開始したランスロットと、ケイネスにバーサーカーの援護を強制されたランサーとの戦い。本格的な戦闘になる前にライダーが加勢に入り、バーサーカーを撃退したことでランサーも撤退する。
◆vsキャスター
セイバーをジャンヌと誤認するキャスターの罠により、大量の海魔に包囲される。同じくキャスターを倒しにきたランサーと共闘し、キャスターを撃退するも取り逃がす。この際、ケイネスの救出に向かうランサーを見逃す。
◆vs大海魔
圧倒的な質量で冬木を飲み込もうとする大海魔に対し、ライダー・ランサーと共闘。ランサーが「必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)」を自ら破壊したことで左腕の呪いが解除され、使用可能になった宝具「約束された勝利の剣(エクスカリバー)」により、一撃でキャスターごと大海魔を消滅させる。
◆vsランサー
左手を自ら封じた状態でのランサーとの最後の戦い。互角に戦うも、切嗣がソラウを人質に取り、ケイネスにランサーの自害を命じさせたことで決着となる。
◆vsライダー
言峰の計略によって、ライダーとの戦いに。「神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)」で突撃を仕掛けるライダーを「約束された勝利の剣(エクスカリバー)」で一蹴。
「神威の車輪(ゴルディアス・ホイール)」を一撃で破壊するも、それまでライダーが連れていたはずのアイリスフィールがいないことに異変を感じたセイバーは、トドメを刺さずに撤退する。
◆vsバーサーカー
言峰が狼煙を上げた地点で、セイバーを待ち受けていたバーサーカーとの戦い。バーサーカーの真名がランスロットであることを知り、戦意を喪失しかけるも、どんなことがあろうと祖国のために聖杯を手に入れるという目的を思い出し、一撃でバーサーカーを撃破する。
◆vsアーチャー
聖杯を目前にしてのアーチャーとの戦い。バーサーカー戦で疲弊・精神的に不安定になっていたこともあり、アーチャーの「王の財宝(ゲートオブバビロン)」の前に防戦一方となる。
しかし、聖杯の中身を知った切嗣に令呪で命じられ、「約束された勝利の剣(エクスカリバー)」で聖杯を破壊。切嗣の裏切りに絶望しながら、聖杯戦争から退去する。
と、実際に快勝といえるような戦いはほぼありません。
それまでは、マスターの間での「セイバーは最優のクラス」という共通認識、「遅れを取ることはなかった」というセイバー自身の言葉もあいまって、圧倒的な強さで他のサーヴァントを下していた……というイメージを抱いていたプレイヤーが多かったのもあって、『Fate/Zero』以降は、「セイバーが事実を歪曲して士郎に伝えていた」という意味合いでのネタ扱いを受けることになってしまいます。
ただし、意外と知られていない事実として、この時のやりとりには続きがあります。
「他のサーヴァントに遅れを取ることもなかった」と話すセイバーに対し、士郎は自身の不甲斐なさを謝罪するのですが、それに対してセイバーは「私も負け知らずだった訳ではありません。私は勝ちきれなかったからこそ、こうして貴方のサーヴァントとなっている。傷を負うことには慣れていますから、貴方が悔やむことなどない」と述べています。
そのため、苦戦することもなく聖杯戦争で勝利した……と言っているわけでは決してないのです。
またセイバーの戦いをよく振り返ってみると、苦戦を余儀なくされたのは最初のランサーとの戦いで左手が使えなくなっていたことの影響が大きく、呪いが解除された大海魔戦以降は、相性が悪いアーチャー戦を除いてほぼ一瞬で決着がついています。
万全の状態であれば、セイバーが圧倒的な強さをもつサーヴァントであることは間違いなく、セイバーが士郎に嘘をついていたわけではないことが分かります。(ほんの少しだけ、話を盛ってしまった可能性はありますが……)
余談ですが、このシーンでは2度の聖杯戦争に続けて同じクラスで召喚されたことへの説明として、セイバー(アルトリア)が、自身の霊基がセイバークラスにしか該当しないため……といった話をしているのですが、『FGO』において全クラス制覇しそうな勢いでバリエーションが増え続けている現在のアルトリアを見ると、「本当に……?」とツッコミを入れそうになります。(『Fate/stay night』におけるアルトリアは死亡する前の肉体で召喚されており、座から召喚された他の英霊とは異なる存在であるため、『FGO』とは召喚の前提条件が異なる可能性が高いですが)
何かと誤解を招きがちな「他のサーヴァントに遅れを取ることもなかった」。そもそも『Fate/Zero』は、『Fate/stay night』の前の時系列で起きた第4次聖杯戦争を描いた作品ではあるのですが、ゲーム版の『Fate/stay night』とはパラレルワールド的な関係にあるとされています。
ゲーム版『Fate/stay night』と『Fate/Zero』の第4次聖杯戦争では、それぞれ起きていたことが微妙に異なる可能性が高いのです。
ただ、『Fate/Zero』よりも後に作られた[UBW]ルート及び[HF]ルートの映像化では、『Fate/Zero』との結びつきが強くなっており、『Fate/Zero』の内容を踏まえることで、より深く作品を楽しめる作りにもなっています。
延期となっていた、[HF]ルートの最終章を描く映画『Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring song』の公開日も、2020年8月15日に決まりましたし、この機会に『Fate/Zero』の原作やTVアニメを見返してみるのもオススメです。
今後も本連載では、様々な『Fate』シリーズに関連したネタを紹介するのでお楽しみに。
[文/米澤崇史]
『Fate』シリーズ用語・ネタ解説
◆第01回・ランサーが死んだ◆第02回・ええー? ほんとにござるかぁ?
◆第03回・何度も出てきて恥ずかしくないんですか
◆第04回・おっと心は硝子だぞ
◆第05回・スカディシステム
◆第06回・すまない……(すまないさん)
◆第07回・王の話をするとしよう(マーリン)
◆第08回・いろんなガチャ宗教
◆第09回・他のサーヴァントに遅れを取ることもなかった
◆第10回・サクラファイブ
◆第11回・ガチャは悪い文明
◆第12回・沖田さん大勝利
◆第13回・おい、その先は地獄だぞ
◆第14回・フィーッシュ!!
◆第15回・俺のサーヴァントは最強なんだ!
◆第16回・ドスケベ公
◆第17回:ボクはキミの剣
◆第18回:溶岩水泳部
◆第19回:私は悲しい……(ポロロン)
◆[HF]第三章公開記念番外編・『Fate』シリーズには桜がいっぱい!?
『Fate/Grand Order』概要
タイトル名:Fate/Grand Order(フェイト/グランドオーダー)
ジャンル:FateRPG(フェイトRPG)
iOS/Android にて好評配信中
企画・開発・運営:DELiGHTWORKS Inc.(ディライトワークス株式会社)
製作:TYPE-MOON / FGO PROJECT
価格:基本無料(ゲーム内課金あり)
Fate/Grand Order 公式サイト
Fate/Grand Order 公式ツイッター(@fgoproject)
ハッシュタグ:#FGO